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プライバシー侵害として防犯カメラ撤去・慰謝料支払を命じた地裁判決紹介

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令和 5年 9月 9日(土):初稿
○令和5年9月8日(金)は、仙台近郊にある市の法律相談担当でした。5件の予約相談があり、内2件が隣人との紛争で、1件目は自宅からの外出と帰宅時に隣人が監視していることを止めさせたい、2件目は隣人が、居宅数カ所に監視カメラを設置して、監視していることを止めさせたいとの相談でした。

○そこで事前に監視カメラに関する裁判例を調べると平成27年11月5日東京地裁判決(判タ1425号318頁)がありましたので、関連部分を紹介します。概要は、原告らが、被告設置全カメラ4台による監視が原告らのプライバシー権侵害の不法行為として全カメラ撤去と慰謝料の請求等をしたものです。

○判決は、設置カメラ4台の内カメラ1の撮影が、常に行われており、原告らの外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるという原告らのプライバシー侵害としては看過できない結果となっていること、他方、被告は、本件カメラ1の設置について、被告所有建物の1階居室の南側窓とその窓付近を撮影して防犯を図るものであるとするが、窓の防犯対策としては二重鍵を設置するなどのその他の代替手段がないわけではないこと、その他上記の種々の事情を考慮すると、本件カメラ1の設置及びこれによる撮影に伴う原告らのプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えているというべきである等として、カメラ1の撤去及び原告1人について各10万円の慰謝料支払を命じました。

○この判例については、虎ノ門桜法律事務所弁護士ブログ「プライバシーを侵害するとして、防犯カメラの撤去等が認められた事例」として紹介されています。


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主   文
1 被告は,原告らに対し,別紙カメラ目録記載1のカメラ1を撤去せよ。
2 被告は,原告らに対し,各10万円及びこれに対する平成25年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,これを6分し,その5を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は,原告らに対し,別紙カメラ目録記載のカメラ4台(以下「本件全カメラ」という。)を撤去せよ。
2 被告は,原告らに対し,各100万円及びこれに対する平成25年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(附帯請求の始期は,原告ら主張に係る被告の不法行為日である被告が本件全カメラを設置した日の後の日である。)。

第2 事案の概要
 本件は,
〔1〕原告らが,被告による本件全カメラの設置とこれによる監視が原告らのプライバシー権を侵害していると主張して,不法行為に基づき,被告に対し,本件全カメラの撤去並びに損害賠償各100万円及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,
〔2〕これとは別に,原告P1が,同原告と被告がそれぞれ区分所有権を有する区分所有建物の共用部分に被告が同原告の承諾なく本件全カメラを設置したことは,同原告の区分所有権を侵害するものであると主張して,被告に対し,区分所有権に基づく妨害排除請求として,本件全カメラの撤去を求める事案である。

1 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠により容易に認めることができる。)

     (中略)

第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件全カメラの設置に伴う原告らのプライバシー侵害の有無)について
(1)肖像権について

 人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁,最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)。もっとも,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,撮影の場所,撮影の範囲,撮影の態様,撮影の目的,撮影の必要性、撮影された画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきであると解する。

(2)本件カメラ1による原告らのプライバシー侵害の有無について
ア 原告らは,本件カメラ1は,原告P2宅の通用口,原告P3宅の玄関及び原告らの日常生活に必要不可欠な場所である本件道路を撮影していると主張する。

これに対し,被告は,本件カメラ1の撮影範囲は,被告所有建物の1階の賃借人居室2戸の南側窓とその窓付近に限られており,原告らのプライバシーを侵害するものではないと主張し,本件カメラ1を含む本件全カメラの撮影範囲を示す証拠として乙2号証,乙3号証及び乙10号証の被告撮影に係るカメラの映像写真を提出するため,まずは,本件カメラ1の撮影範囲について検討する。 

 この点,本件訴訟の訴状が被告に送達されたのは,平成26年6月12日(以下,同日を「本件訴状送達日」という。)であるところ,乙2号証及び乙3号証は同年9月19日時点の,乙10号証は同年12月20日時点の本件全カメラの映像であって,いずれも本件訴状送達日より後に撮影された映像である。

そして,原告ら代理人作成に係る「写真撮影報告書2」(甲21)によれば,本件カメラ1,本件カメラ2及び本件カメラ4については,本件訴状送達日の前後で撮影している向きが変わっていることが認められ,これらのカメラの向きを調整したこと自体は被告も認めるところである。そうすると,乙2号証,乙3号証及び乙10号証は,いずれも本件カメラ1の撮影範囲を正確に示すものとはいえないというべきである。

 他方,前記第2の1(2)アのとおり,本件カメラ1は,別紙図面1の〔1〕の位置において,本件訴状送達時点頃までは別紙図面3に記載の「本件カメラ1」の矢印の方向に向けて設置されていたところ,同カメラの仕様は,撮像素子(イメージセンサー)が「1/4インチ SHARP製CCD」,水平解像度が「420TV Line」,レンズが「3.6mm F1.2」,視野角が「水平51°,垂直48°」である(甲17)。

しかるところ,原告らが本件カメラ1の上記仕様と同等の撮像素子が「1/4インチ SHARP製CCD」,水平解像度「420TV本」,レンズが「3.6mm」の小型カラーカメラ(以下「実験用カメラ」という。)を用いて,本件カメラ1の設置位置と類似する場所(原告P3宅玄関入口まで約11.6m,原告P2宅通用口まで約22.3mの距離の地点)から上記の本件カメラ1の撮影方向に向けて撮影実験を行った結果(甲39)によると,〔1〕被告所有建物の1階居室南側窓及び同窓付近が映ること,〔2〕原告P3宅玄関入口付近に立っている人は,顔を識別できるほどではないものの,かなり鮮明に映ること(甲39・13頁の画像データ9),〔3〕原告P4が原告P4宅の玄関から出入りする際も,顔を識別できるほどではないものの本件カメラ1に人の出入りがはっきりと分かる程度に映ること(同頁画像データ8・14頁画像データ10),〔4〕原告P2宅通用口の前付近においても,上記〔2〕及び〔3〕ほどは鮮明ではないものの,少なくとも人が通過していることは映像上認識することが可能であること(同10頁画像データ3・同16頁画像データ14),〔5〕本件道路を東から西に向かって通行して,原告P2宅の西側にある公道に至るまでの間,本件道路を通行している人については,終始撮影されていること(同9~17頁)が認められる。

 以上のような事情からすると,本件カメラ1は,少なくとも本件訴状送達までの間は,本件道路のほか,原告P3宅玄関入口,原告P4宅の玄関付近及び原告P2宅通用口付近を撮影していたものと推認することができる。

また,上記のとおり,被告は,本件カメラ1,本件カメラ2及び本件カメラ4の撮影範囲を調整していることが認められるが,同調整後の本件カメラ1の撮影範囲をみると,いまだ本件道路の相当の範囲が撮影対象となっていることが認められる(乙2,3,10)。

イ 日常生活において,原告P1,原告P4,原告P3は,本件道路を,それぞれの居宅から公道に至る通路として使用しており,また,原告P2は,原告P2宅通用口から出入りするときに使用していることが認められる(甲42~45,原告P1本人,原告P3本人,原告P2本人,原告P4本人)。

ウ 原告らは本件カメラ1を含む本件全カメラの設置の目的について,原告らを監視する目的であると主張し,被告は防犯が目的であると主張するので,この点についても検討する。
 上記アのとおり,本件カメラ1が,被告所有建物の1階居室南側窓や同窓付近及び本件道路のほか,原告P3宅玄関入口付近,原告P4宅の玄関付近及び原告P2宅通用口付近まで撮影対象となっていたことが認められる。

 しかしながら,本件全カメラは,固定されており,特定人を捉えたら追跡したり,監視を続けたりする性質のものではないことが認められること(乙10,弁論の全趣旨),また,被告は,あえて防犯カメラ作動中であることを記載したプラスチックのプレートを本件全カメラの下に明示し,カメラの存在が表からも分かるようにしていることが認められること(被告本人4~5頁),前記第2の1(2)アからエまでのとおり,本件全カメラの設置位置は,本件全体建物のうち被告所有建物が存在する西側部分であるが,原告P1所有建物やP3宅からは遠く,本件全体建物のうち被告所有建物が存在する西側部分がよく映る位置にそれぞれ設置されていること,本件カメラ1も主たる撮影対象が被告所有建物の1階居室南側窓や同窓付近とされていることなどに鑑みると,本件全カメラの設置につき,防犯目的が含まれていることが認められるが,他方,原告らに対する監視目的が含まれているとまでは認めることはできない。

エ また,本件全カメラの撮影された映像の保存期間は約2週間であって,その期間を過ぎると自動的に上書きされるという仕組みになっていることが認められる(被告本人11頁)。

オ 以上の各事実によれば,上記アのとおり,本件カメラ1の撮影場所は屋外であるものの,撮影の範囲は,本件道路のほか,原告P3宅玄関入口付近,原告P4宅の玄関付近及び原告P2宅通用口付近にまで及んでいる。このような場所は,自宅の中ではないものの,そこを通行することは日常生活を営む上で必要不可欠な場所ということができるところ,本件カメラ1は,原告P3,原告P4及び原告P2が日常生活においてこれらの場所を利用する際に常に撮影対象となるものであって,上記原告らの外出や帰宅等という生活状況が把握されることとなっているものであり,結果として,少なくとも原告P3,原告P2及び原告P4については,この範囲を撮影されることによるプライバシー侵害の程度は大きいというべきである。

 他方,原告P1については,他の原告らのように,自宅玄関付近を撮影されているというわけではない。しかしながら,上記アで説示したとおり,本件カメラ1は,人が東側から本件道路を通行して原告P2宅の西側にある公道に出るまでの間を終始撮影していることが認められる。本件道路のうちの一部である本件私道A部分については,前記第2の1(1)アのとおり,原告P1が2分の1の持分権を有する土地であるところ,原告P1が主張するように本件道路が同原告が公道に出るための唯一の通路であるのかどうかという点は措くとしても,関係者がお互いの所有土地を提供し合って利用されている本件道路については,原告P1が当然に通行して公道に出る権利がある道路であり,実際にも,原告P1は,日常の外出時には本件道路を通行していることが認められる(甲42,原告P1本人)。

本件カメラ1は,原告P1が日常生活において本件道路を利用する際に常に撮影対象とするものであって,同原告の外出や帰宅等という生活状況が把握されることとなっているものである。また,本件道路は,公道から本件道路に接する土地上の建物や本件全体建物に至る通路として利用されているものであって(前記第2の1(1)カ),これらの建物とは無関係な者が利用することは想定されていない利用者が限定された道路であって,本件道路を利用する際に常に撮影されることに伴う原告P1のプライバシー侵害の程度もやはり大きいものというべきである。

 このように,本件カメラ1の撮影が,常に行われており,原告らの外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるという原告らのプライバシー侵害としては看過できない結果となっていること,他方,被告は,本件カメラ1の設置について,被告所有建物の1階居室の南側窓とその窓付近を撮影して防犯を図るものであるとするが,窓の防犯対策としては二重鍵を設置するなどのその他の代替手段がないわけではないこと,その他上記の種々の事情を考慮すると,本件カメラ1の設置及びこれによる撮影に伴う原告らのプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えているというべきである。

カ 以上からすると,本件カメラ1の設置及びこれによる撮影は,原告らのプライバシーを違法に侵害するものといえる。

キ なお,被告は,本件カメラ1の設置につき,原告P1の承諾を得ていたと主張し,原告らのプライバシー侵害はないと主張するが,原告P1が,原告らのプライバシーを侵害するような撮影範囲であることを前提にして,本件カメラ1の設置を承諾したと認めるに足りる証拠はなく,被告の主張は採用できない。

(3)本件カメラ2,3による原告P1のプライバシー侵害の有無について

     (中略)

2 争点2(原告らによる撤去請求及び損害賠償請求の可否)について
(1)原告らによる本件カメラ1の撤去請求の可否について

 上記1(2)アのとおり,被告は本件訴状送達後に本件カメラ1の撮影角度を調整しており,上記変更後の本件カメラ1の撮影範囲については,変更前よりも限定的になってはいる(乙10)ものの,被告が本件訴状送達によって本件訴状における原告らのプライバシー侵害の主張を認識した後に撮影範囲を変更したこと,また,同調整後の本件カメラ1の撮影範囲には,いまだ本件道路の相当の範囲が撮影対象となっていることが認められることに鑑みると,原告らは,被告に対し,プライバシーの権利に基づく妨害排除請求として,本件カメラ1の撤去を求めることができるというべきである

(2)原告らによる損害賠償請求の可否について
 上記1(2)アのとおり,本件カメラ1の撮影範囲が原告らのプライバシーを保護すべき場所に及んでいるものの,これらの場所は屋外であって全くの私的空間ではないこと,同ウのとおり,本件カメラ1の設置につき,防犯目的があることが認められ,他方,原告らに対する監視目的が含まれているとまで認めることはできず,監視目的で設置された場合に比べると悪質性は低いこと,同エのとおり,本件カメラ1で撮影された映像が約2週間経過後には自動的に上書きされて消去され,映像が永続的に保存・管理されるものではないことなどに鑑みると,原告らのプライバシー侵害に伴う慰謝料額は,各自10万円と認めるのが相当である。

  (後略)
以上:6,333文字

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