令和 5年 4月18日(火):初稿 |
○「私が刑事事件について引退表明した理由1」に記載した通り、難聴の進行で刑事事件の接見での聞き取りが困難になった等の理由で、平成21年から法テラスへの国選刑事事件名簿登録を辞め、事実上、刑事事件から引退して15年になります。この15年の間、私選の刑事事件を数件相談を受け、事務所に所属する若い弁護士に受任して貰いましたが、私自身は刑事事件は受任していません。 ○それが自転車事故で傷害を受けた方から自転車事故運転者の刑事責任として業務上過失犯になりませんかと質問され動揺しました(^^;)。私の記憶では自動車運転者の過失は業務上過失責任になりますが、自転車運転は業務上過失にはならないと記憶していました。しかし、私が刑事事件を離れて15年も経っており、果たして自転車事故は業務上過失責任にならないと断定できるか不安になりました。 ○ネット検索すると谷原誠弁護士のブログにズバリ「自転車事故にも業務上過失致死傷罪適用の可能性あり」なんてページがありました。2011(平成23)年9月9日の記事です。刑事事件を受任していた平成20年以前は、交通事故加害者の刑事事件は相当扱ってきましたが、当時は、刑法211条業務上過失致死傷罪としての受任でした。 刑法第211条(業務上過失致死傷等) 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。 ○自転車事故加害者の責任は、原則として刑法での以下の過失傷害・過失致死と思われます。 第209条(過失傷害) 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 第210条(過失致死) 過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する ○自転車事故でも過失が重大な場合は、刑法211条の重過失致死傷罪として、業務上の過失と同様の犯罪になります。相談を受けたケースは、自転車に乗ってスマホゲームに夢中になって、歩行者に衝突してケガをさせたもので、これは重過失致死傷罪に当たりませんかと質問され、刑事事件を離れて15年にもなると刑事事件の感覚も失われており、これも判断が難しいものでした(^^;)。 ○近年自転車での重大事故が増えて、令和5年4月1日から自転車運転者もヘルメット着用が努力義務化されています。 道路交通法第63条の11 1 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。 2 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。 3 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。 ○谷原誠弁護士は「自転車は、今や高速度で走行し、他人に重大な傷害を負わせる可能性が一般的・類型的に大きいものとして、業務上過失致死傷罪が適用になるでしょう。」と記載しています。ヘルメット着用努力義務が規定されたことなどからその予想は当たっているかも知れません。 ○平成25年に制定された自動車運転致死傷罪での刑罰部分は以下の通りです。 第2条(危険運転致死傷) 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。 一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為 二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為 (中略) 第7条(過失運転致死傷) 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。 以上:1,605文字
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