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未成年者不法行為について監督義務者責任免除を認めた最高裁判決説明

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令和 3年10月 6日(水):初稿
○「未成年者不法行為について監督義務者責任免除を認めた最高裁判決紹介」の続きで、その内容説明です。この判決は、以下の民法第712・714条について極めて重要な判例ですので、その内容備忘録です。

第712条(責任能力)
 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
 前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。


○先ず事案概要です。
・未成年者B(当時11歳)は,平成16年2月当時,小学校(本件小学校)に通学していた児童
・本件小学校は,放課後,児童らに校庭(本件校庭)を開放しており,本件校庭の南端近くには,ゴールネットが張られたサッカーゴール(本件ゴール)が設置
・本件ゴールの後方約10mの場所には南門があり,南門の左右にはネットフェンスが設置され,これらの高さは約1.2~1.3m
・本件校庭の南側には幅約1.8mの側溝を隔てて道路(本件道路)があり,南門との間には橋が架けられていた
・Bは,同月25日の放課後,本件校庭において,友人らと共にサッカーボールを用いてフリーキックの練習をし,本件ゴールに向かってボールを蹴った
・ボールは南門を越え,本件道路上に転がり出て、折から自動二輪車を運転して本件道路を進行してきたA(当時85歳)がボールを避けようとして転倒して負傷
・Aは、平成17年7月,誤嚥性肺炎により死亡
・Bは,事故当時,責任を弁識する能力がなく,Bの親権者である被告らは,Bに対し,危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけを施してきた
・原審大阪高裁は、Bの親権者である被告らの責任を認め,Aの相続人である原告らの損害賠償請求を合計1184万円余りの限度で一部認容
・被告らが上告受理の申立

○民法第714条1項但し書き「監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」との規定については、監督義務違反の内容についてその違法行為がされることの予防についての過失ではなく、責任無能力者の行為についての一般的な監督行為を怠ることを意味するなどとされ、広範囲に及ぶ監督義務を怠らなかったとの免責事由の立証に成功することは極めて困難であり、従前,最高裁において,民法714条1項ただし書による免責を明示的に認めた判例はないとされていました。

○監督義務者の監督義務が被監督者の生活全般に及ぶものであるとしても,その内容及び履行の有無をどのように検討すべきなのかが問題となり、責任無能力者の行為の態様は,監督義務者の監督義務の履行の有無の判断に際して十分に考慮されるべき事柄であり、監督義務の内容及び監督義務の履行の有無に関しては、責任無能力者の行為の態様等の事情から具体的に検討すべきことが示唆されてきました。

○本件最高裁判決要旨は以下の通りです。
(監督義務についての一般論)
親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。

本件における未成年者の行為態様,客観的な状況,監督義務者の対応等の諸事情を検討すると
・Bは,放課後,児童らのために開放されていた本件校庭において,使用可能な状態で設置されていた本件ゴールに向けてフリーキックの練習をしていた
・本件ゴールに向けてボールを蹴ったとしても,本件道路上に出ることが常態であったものとはみられない
・Bの行為が通常は人身に危険が及ぶものとはみられないものであったこと
・また,親権者である被告らは,Bに危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしていた
・損害を発生させるに至ったBの本件における行為について具体的に予見可能であったなどの特別の事情があったこともうかがわれない
との事情の下においては,被告らは,監督義務者としての義務を怠らなかったというべき
としました。
以上:1,902文字

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