令和 2年 1月30日(木):初稿 |
○判例時報令和2年1月21号に育児休業後のパート契約(有期雇用契約)への変更及びその後の解雇が育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律23条、23条の2に違反する違法、無効なものであるとされ、これらの取扱いについて不法行為の成立も認められた平成30年7月5日東京地裁判決が掲載されました。 ○当事務所で現在取り扱っている事件に一部関連するため備忘録として関連部分を掲載します。育児・家族介護を行う労働者の福祉に関する法律は全く不勉強で、先ず関連条文の備忘録です(^^;)。 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第1条(目的) この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。 第23条(所定労働時間の短縮措置等) 事業主は、その雇用する労働者のうち、その3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(1日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるものを除く。)に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(以下この条及び第24条第1項第三号において「育児のための所定労働時間の短縮措置」という。)を講じなければならない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないものとして定められた労働者に該当する労働者については、この限りでない。 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者 二 前号に掲げるもののほか、育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの 三 前二号に掲げるもののほか、業務の性質又は業務の実施体制に照らして、育児のための所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者 2 事業主は、その雇用する労働者のうち、前項ただし書の規定により同項第三号に掲げる労働者であってその3歳に満たない子を養育するものについて育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないこととするときは、当該労働者に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく育児休業に関する制度に準ずる措置又は労働基準法第32条の3第1項の規定により労働させることその他の当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(第24条第1項において「始業時刻変更等の措置」という。)を講じなければならない。 3 事業主は、その雇用する労働者のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていないものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく連続する3年の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置(以下この条及び第24条第2項において「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」という。)を講じなければならない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち介護のための所定労働時間の短縮等の措置を講じないものとして定められた労働者に該当する労働者については、この限りでない。 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者 二 前号に掲げるもののほか、介護のための所定労働時間の短縮等の措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの 4 前項本文の期間は、当該労働者が介護のための所定労働時間の短縮等の措置の利用を開始する日として当該労働者が申し出た日から起算する。 ○事案概要は以下の通りです。 ・被告会社に期間の定めなく雇用され、事務統括という役職にあった原告が、自身の妊娠、出産を契機として、被告会社の取締役である被告C及び被告会社の従業員から、意に反する降格や退職強要等を受けたうえ、有期雇用契約への転換を強いられ、最終的に解雇された ・原告は、上記降格、有期雇用契約への転換及び解雇がいずれも無効であるとして、 主位的請求として、被告会社に対し、事務統括としての雇用契約上の権利を有する地位にあること及び年次有給休暇請求権を有することの確認、未払賃金の支払等を求めるとともに、上記解雇等が原告に対する雇用契約上の就労環境整備義務違反又は不法行為に当たるとして、被告らに対し、民法415条及び民法709条等に基づき、連帯して、慰謝料等の支払を求め、 予備的請求として、有期雇用契約に基づき、被告会社に対し、有期雇用契約上の権利を有する地位の確認等を求めた ・判決は、被告会社は、産休、育休の取得という法律上当然の権利を一時的とはいえ認めないという明白に違法な態度を執り、証拠上裏付けのない事実や解雇の理由とはなり得ない軽微な事実により、結果的に原告の解雇にまで至っていることなどの事実が認められるとして、請求を一部認容 ○判決は、大変長いので、主文と事案概要・結論のみ紹介します。 ****************************************** 主 文 1 原告が、被告会社に対し、事務統括たる期間の定めのない雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 原告が、被告会社に対し、19日間の年次有給休暇請求権を有することを確認する。 3 被告会社は、原告に対し、平成28年10月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、21万2286円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 被告会社は、原告に対し、平成28年10月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、1万円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 被告らは、原告に対し、連帯して、67万円及びこれに対する平成28年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 原告の被告らに対するその余の主位的請求及び予備的請求の趣旨第4項に係る請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は、これを4分し、その1を原告の負担とし、その2を被告会社の負担とし、その余を被告Cの負担とする。 8 この判決は、第3項から第5項までに限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 (中略) 第2 事案の概要 本件は,被告会社に期間の定めなく雇用され,事務統括という役職にあった原告が,自身の妊娠,出産を契機として,被告会社の取締役である被告C及び被告会社の従業員から,意に反する降格や退職強要等を受けた上,有期雇用契約への転換を強いられ,最終的に解雇されたところ,上記降格,有期雇用契約への転換及び解雇(以下,これらを「解雇等」という。)がいずれも無効であるとして,主位的請求として,被告会社に対し,事務統括としての雇用契約上の権利を有する地位にあること及び25日間の年次有給休暇請求権を有することの確認,平成28年10月から本判決確定まで,別紙1記載の金員の支払を求めるとともに,解雇後の月例賃金(別紙1は平成28年9月から平成29年8月までの1年分が記載されているところ,同年9月から本判決確定までの間も,各月ごとの所定労働日数に所定労働時間である8時間を乗じた時間分の時給の支払を求めるものと解される。),事務統括手当月額1万円及び賞与として毎年7月に20万円,毎年12月に40万円の支払並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,上記解雇等が原告に対する雇用契約上の就労環境整備義務違反又は不法行為に当たるとして,被告らに対し,民法415条及び民法709条等に基づき,連帯して,解雇時までの未払事務統括手当相当額合計18万5000円,未払賞与相当額合計180万円及び慰謝料300万円の合計498万5000円の支払並びにこれに対する雇用終了日の翌日である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,さらに,期間の定めのない雇用契約であることが否定された場合の予備的請求として,有期雇用契約に基づき,被告会社に対し,有期雇用契約上の権利を有する地位,年次有給休暇日数の確認,平成28年10月から本判決確定まで,別紙2記載のとおりの雇止め以降の賃金の支払(別紙2も平成28年9月から平成29年8月までの1年分が記載されているところ,同年9月から本判決確定までの間も,各月ごとの所定労働日数に所定労働時間である6時間を乗じた時間分の時給の支払を求めるものと解される。)及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,主位的請求と同様に,上記雇止め等が債務不履行又は不法行為に当たるとして,被告らに対し,民法415条又は709条等に基づき,連帯して,慰謝料300万円及びこれに対する雇用終了の翌日である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 (中略) 第4 結論 以上によれば,原告の主位的請求のうち,被告会社に対し,雇用契約に基づき,事務統括たる期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成28年10月から本判決確定の日まで,毎月25日限り事務統括手当月額1万円及びこれに対する各支払期日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は全部理由があり,19日間の年次有給休暇請求権の確認及び平成28年10月から本判決確定の日まで,毎月25日限り賃金月額21万2286円及び前同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとともに,不法行為に基づく損害賠償請求のうち,平成26年4月以降支払われるべきであった事務統括手当合計17万円,慰謝料50万円の合計67万円及びこれに対する不法行為の後である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余の主位的請求は理由がないからこれを棄却し、予備的請求については,有期雇用契約上の地位の確認,未払賃金請求及び25日間の年次有給休暇請求権の確認請求については判断の必要がなく,債務不履行又は不法行為に基づく慰謝料請求は,主位的請求が認容された限度では判断の必要がなく,その余の慰謝料請求は,主位的請求と同様の理由により理由がないから,以上の趣旨で予備的請求の趣旨第4項に係る請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官 春名茂 裁判官 西村康一郎 裁判官 鈴木麻奈美 以上:4,895文字
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