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無断録音テープ反訳書証拠能力肯定平成4年7月27日東京地裁判決要点紹介

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平成26年 1月22日(水):初稿
○「無断録音証拠能力認定昭和46年4月26日東京地裁判決紹介」に「無断録音テープの証拠能力に関する判例・学説論文は意外に少なく、なかなかデータが集まりません」と記載していました、その後見つけた無断録音テープ反訳書の証拠能力についての平成4年7月27日東京地裁判決(労働関係民事裁判例集43巻4号715頁、判タ802号145頁、判時1431号162頁、労働判例614号56頁)を紹介します。

○JR東日本の車掌区長が国労組合員である内勤車掌に対して行った担当職務の指定変更が不利益取扱い及び支配介入に当たるとした東京地労委救済命令の取消を求める訴えを会社側が提起しましたが、判決は、東京地労委命令を支持しました。

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(証拠能力を否定する原告の主張)
 本件命令は、B区長のA分会長に対する発言について、同分会長が同区長に無断で録音したテープの反訳書である乙第83号証に基づいて認定した。しかし、その証拠能力は否定さるべきである。
 すなわち、A分会長は、補助参加人分会員Dの乗務停止処分問題を口実にB区長に面会を求め、不当労働行為的言辞を引き出して、それを無断録音した上、労働委員会における不当労働行為救済申立事件での証拠として使用することを企図したものであるから、右無断録音は、録音の目的、手段、方法が著しく反社会的であり、労使間の信義を著しく損なう行為である。したがって、乙第83号証は証拠能力を有しないというべきである。
 また、仮に、同号証に証拠能力が認められるとしても、B区長の右発言は、A分会長が不当労働行為的言辞を引き出そうという目的のもとに種々誘導した結果なされたものであるから、極めて信用性に乏しいものである。

(証拠能力を肯定する被告の主張)
 原告は、B区長がA分会長に語った本件指定変更の動機に関する発言を録音したテープの反訳書である乙第83号証の証拠能力を争うが、右発言が録音されたのは、A分会長がテープレコーダーの性能を試すために持っていた偶然の結果にすぎない。また、原告は、不当労働行為的言辞を引き出そうとしたと主張するが、同分会長はほとんど一方的に話を聞いていただけで誘導したりしたことはまったくない。これをもって反社会的であるとか、労使間の信義に反するなどとはいえない。

(裁判所の判断)
 なお、原告は、B区長のA分会長に対する右5(八)の発言を録音した録音テープの反訳書である乙第83号証には証拠能力がないと主張するが、この点に関する当裁判所の判断は次のとおりである。
 前掲乙第83号証の内容に前掲乙第110、第115号証、弁論の全趣旨を総合すると、A分会長は、当時、補助参加人分会員が管理者に呼び出されて脱退の勧奨を受けることが多いという認識にたち、そのような不当労働行為を阻止するためには証拠を残す必要があると思い、同分会員に呼び出しのあったときに持たせようと考えて、録音の前日にマイクロテープレコーダーを購入していたものであること、もとより、同分会長は、当日は、あらかじめ無断録音をする意思で右テープレコーダーをポケットに入れて区長室に赴いたものであるが、その場の状況は、同分会長の方からB区長の不当労働行為的発言を引き出そうとした形跡は何もなく、同分会長は、ほとんど一方的に話を聞いていただけであること、とくに、同分会長の方からCの話題を出したようなこともなかったこと、また、もともと、同分会長としては、もっぱら、D車掌に反省の態度をとらせるなりして同人に対する処分を軽減してもらう方策はないかと探りに行ったものであること、このような状況からして、テープレコーダーの性能を試すために無断録音をしたという同分会長の弁明はあながち排斥し得ないことがそれぞれ認められる。

そして、乙第83号証の内容をみると、それは、前記のように直截な不当労働行為意思の表明に終始しているものであって、一方において、本件訴訟の中心的争点に直接かかわる極めて重要な証拠としての意味をもっているのに対して、他方において、原告の営業上の機密や話者であるB区長個人の私生活上の秘密などには直接何の関係もない。以上のような事情に照らすと、無断での録音ということ自体で原告及びB区長の法益を害する側面があるとしても、それだけで著しく反社会的であるとか、労使間の信義に反するとまではいえず、その証拠能力を否定するのを相当とするには至らない。


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