平成24年 3月16日(金):初稿 |
○最近は従前に比較して相当少なくなりましたが、民事調停が出されて裁判所から呼出状が来たが出頭しなければなりませんかとの相談があります。民事調停とは、民事調停法第1条に規定されている通り「民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする。」簡易裁判所で行う制度で、日本調停協会連合会のHPによると ①申立手続は簡単,調停終了まで自分で出来ます。 ②手数料は裁判より安い。 ③解決までの期間が短い。 ④裁判の判決と同じ効力。 ⑤相手との直接交渉はしなくてよい。 ⑥プライバシーが守られ,安心。 等々のメリットが強調されています。 ○この民事調停に関する相談は最近は少なくなったと感じていますが、仙台に関して言えば仙台弁護士会ADRの設立によってこちらを利用する方が増えているからと思われます。ADRとは、国民生活センターHPの「ADR(裁判外紛争解決手続)の紹介」によると「ADRは、Alternative* Dispute Resolution の略称です。また、『裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律』では『裁判外紛争解決手続』と規定されています。」また、「相手と直接交渉していては解決しそうにない、中立的な専門家にきちんと話を聞いてもらって解決したい、信頼できる人を選んで解決をお願いしたいというようなケースは、ADRで解決を考えてみるのも良いでしょうと説明されています。 ○調停にしてもADRにしても、裁判よりは手間暇とお金がかからないで迅速に解決が出来るとの触れ込みで、ADRに関して言えば、中立的な「専門家」が話しを聞いて解決に導いてくれることが強調されています。仙台弁護士会ADRに関して言えば、弁護士という法律専門家が話しを聞いて解決の努力をしてくれることがメリットとして強調されています。 ○調停にしてもADRにしても、申立をする方は、わざわざ弁護士を依頼しないでも、安い費用で手続が利用できるとのメリットがありますが、一般的には、お金の支払を典型に何らかの義務を課せられる立場にある申立をさせられる方にとっては、簡単に申し立てられ,呼び出しを受けるのはたまったものではありません。自分にはお金の支払等なんらの義務もないと思っている方にはなおさらです。 ○そこで調停を申し立てられ、簡易裁判所から呼出状を受け取り、憤慨して,弁護士に相談に来る方も居ます。自分には何らの落ち度もなく、何らの支払義務もないのに支払を求める調停が出され、憤懣やるかたない、自分の方が逆に訴えたい位だが、こんな不当な調停の申立に応じて、簡易裁判所に行かなければならないのでしょうかと言う相談もあります。 ○弁護士を依頼して訴えを提起せず、先ず調停或いはADRの申立をする事案は、証拠が乏しいとか、請求の理屈に難があるとか、訴えを出しても必ず認められるとの自信がない場合が多く、請求される方にとってはとんでもない言いがかりであると思う事例も多々あります。 ○このような事例でも、民事調停法第34条に「裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処する。」との規定によって罰則付きの出頭義務が課されており、形式上は、原則として出頭義務があります。なお、過料とは刑事罰ではありません。 ○しかし、調停とは、第1条に「当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的」するもので、当事者に「互譲」の気持がない限り成立し得ないもので、事案によっては全く「互譲」の余地が無く出頭しても意味がない場合があります。この場合、自分の主張と調停成立の見込みは全くないので出頭しないので直ちに「不成立」にされたいとの書面を裁判所に提出するだけで宜しいですよとアドバイスすることもあります。 ○で、不出頭による5万円の過料との罰則が適用される場合が実際にあるのだろうかと調べてみたら、注解民事調停法392頁に昭和58年の古い記録ですが、全国簡易裁判所民事調停既決事件数10万7294件中過料の制裁を受けた人員数は1名となっていました。これは30年も前の古い記録で、現時点ではどうなっているのかは、文献が見当たらず不明です。おそらくは過料が適用される例は殆どないと思われます。 以上:1,764文字
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