平成22年 1月 8日(金):初稿 |
○「マンションの駐車場に乗り捨てられた自動車の処分方法2」でマンション駐車場内に放置されたBクレジット所有名義の自動車について「最終的にはBクレジットに対し駐車場部分土地ついて放置自動車の収去明渡と甲さんとの駐車場契約が解除された時点からの明渡済みに至るまでの駐車場賃料相当額の支払を求める訴えを提起するしかありません。」と記載していましたが,この点について重要な最高裁判例が出されましたので紹介します。 ○それは、平成21年3月10日最高裁判決(判例時報2054号37頁)で、事案は以下の通りです。 駐車場所有者XとAが駐車場賃貸借契約締結したが、Aの賃料不払いで契約解除されたところ、Aは自動車を駐車場に放置したまましておいた。本件自動車は、Aが所有権留保特約付きでYクレジットのローンを組んで購入したもので、自動車所有名義はY名義に登録されていた。 そこでXは自動車登録名義人であるYに自動車撤去と駐車場明渡及び駐車場使用料相当損害金の支払を求めて提訴した。これに対しYは、Aに対する立替払契約に基づく債権を担保する目的で本件自動車について所有権を留保しているにすぎなず、Yは本件自動車の所有者登録名義を有するのみで、本件自動車を占有していないから本件土地を占有するものには当たらず、撤去義務も損害金支払義務もないと主張した。 これについての第1審平成18年11月27日千葉地裁判決(金商1314号29頁)は、本件自動車の所有権留保権者であるYは、債権回収の妨げにならない限り本件自動車の使用をAに委ねていると認められるから、Yが本件自動車の所有権を留保しているからといって本件自動車が駐車されている本件土地を占有しているとは認められないとして、Xの請求を棄却し、第2審の平成19年12月6日東京高裁判決(判タ1293号150頁)も、Yの留保所有権は、実質的には本件自動車の担保価値を把握する機能を有する担保権の性質を持つに過ぎないから、YはAから本件自動車を引き揚げてこれを占有保管すべき義務を負うとはいえないなどとして一審判決を支持し、控訴を棄却しました。 これに対し、前記最高裁判決は、Yが、立替金債務の担保として自動車の所有権を留保する場合において、Aとの契約上、期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は自動車を占有、使用する権原を有せず、その経過後はAから自動車の引渡しを受け、これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができるとされているときは、Yは、Xの土地上に存在してその土地所有権の行使を妨害している自動車について、 ①上記弁済期が到来するまでは、特段の事情がない限り、撤去義務や不法行為責任を負うことはないが、 ②上記弁済期が経過した後は、留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない として、本件では、弁済期が到来したかどうかを検討することもなく、Xの請求を棄却したのは法令解釈の違法があるとして高裁判決を破棄して、差し戻しました。 ○最高裁の論理は、所有権留保権者は、所有権留保特約を実行出来る立場になったときは、所有者としての責任を負い、その立場になっていないときは、責任を負わないと言うものです。自動車を放置しているような人は自動車クレジット債務も支払っていないのが通常ですから、所有権留保者のクレジット会社に自動車撤去請求が出来ますが、もしAがクレジット債務を完済して所有権留保特約も消滅し,クレジット会社が単に登録名義人だけの場合は、クレジット会社に対し自動車撤去請求が出来ない困った事態になります。 以上:1,492文字
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