平成21年 2月13日(金):初稿 |
○ストーカー規制法の備忘録を続けます。 ストーカー規制法第2条でストーカー行為について、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行う「つきまとい等」と定義されています。 この「恋愛感情その他の好意の感情」とは、当初恋愛感情その他の好意の感情を持ち、相手方がそれにこたえて何らかの行動を取ることと望むことが含まれており、「又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情」とは、読んで字の如くです。 ○典型例は恋愛感情を抱き交際を求めることと離婚等いったん解消した関係の復活を求めることがあげられていますが、この法律の草案提案者の説明によると「国民に対する規制の範囲を最小限にするためにも、規制の対象を恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるものに限ったところであります。」(平成12年5月16日参議院地方行政・警察委員会松村龍二議員答弁)とされています。 ○男女関係が解消された後に一方が他の一方に慰謝料請求をする場合は、慰謝料とは「精神的苦痛を慰謝するために支払う損害賠償金」ですから、正に「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」を含むものであり、慰謝料請求での「つきまとい等」も典型的なストーカー行為にあげても良かろうと思いますが、私が所持している解説書ではこの点を明確に記載したものは見あたりません。 ○男女が同棲して内縁関係になり共同である事業を営んでいましたが、その事業がうまく行かず,損金だけ残して廃業後、金の切れ目が縁の切れ目となり、女が男の元を去り、男が共同事業での損金の分担支払を求めて女を追いかけ回しているような事案は、果たして「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」があり、ストーカー行為と評価できるかどうかという問題があります。 ○形式的には、事業での損害分配の請求ですが,本音のところは、逃げた女を追いかけ回しているだけであり、実質的には典型的なストーカー行為に該当するものですが、形式的には「恋愛感情その他の好意の感情」には無関係な単に事業上の損金分配の問題であり、ストーカー行為には該当しないと男が主張している場合、刑事犯の構成要件厳格解釈の原則からは、難しい問題となります。 ○離婚問題で、慰謝料請求での「つきまとい等」なら「怨恨の感情の充足」目的で限りなくストーカー行為に近くなりますが、慰謝料請求ではなく、実質夫婦共同財産の分配である財産分与請求で行う「つきまとい等」なら「怨恨の感情の充足」目的ではないので、ストーカー行為には該当しないことになりますが、慰謝料と財産分与請求は明確に分別できずこれまた難しい問題になります。 以上:1,175文字
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