平成20年 5月17日(土):初稿 |
○マンション法の問題ではありませんが、マンション生活で良く問題になるのが、音の問題です。「ツルカメスタジオ作製記-防音工事等」に記載したとおり、当事務所も14階建てマンション7階部分にあり、ツルカメスタジオと称する約14坪の会議室に結構な費用をかけて防音工事をしたことがあります。 ○しかし「ツルカメスタジオのその後と今後の利用」に記載したとおり、「真下以外の部屋の方にインタビューすると、大音量を出しても殆ど判らないとのお答えを頂きましたが、真下の方だけは結構響いて不快な思いをされていることが判り」その後は、大音量を出しての利用は控えております。マンションにおいては結構な防音構造にしても、階下への遮音は相当難しいようです。 ○私のような難聴者であれば補聴器を外すと余程大きな音でないと気にならなくなりますが、健聴の方の場合、マンションに居住すると特に階上からの音は相当気になるようです。マンション階上の3,4歳の幼児が飛び跳ねる音が社会生活上の受忍限度を超えたとして、その幼児の父親に36万円の慰謝料支払義務を認めた判例がありますので、マンション生活で元気に飛び跳ねる幼児を持つ親御さんは注意が必要です。 ○その判例は平成19年10月3日東京地裁判決(判タ1263号297頁)で事案概要は以下の通りです。 ・Aは昭和63年6月頃建築の本件マンションを平成8年7月に妻と共有で購入して居住 ・本件マンション遮音性能は3級で「やや劣る水準」 ・Bは、平成16年2月、本件マンションA住戸直ぐ上の住戸を賃借し、妻、3歳長男と居住 ・B住戸からの音はBが居住する以前は問題なかったが、B居住後、B長男の走る、飛ぶ、跳ねる音がA住戸に響くようになった ・Aは本件マンション管理人に依頼して平成16年3月4日、Bを含めた各住戸に子供の走る、飛ぶ、跳ねる音に注意勧告書面配布 ・しかしB住戸からの音は改善されず、同年4月22日、Aは直接B宛にB住戸からの子供の走る、飛ぶ、跳ねる音がA住戸に響き困っているので改善されたいとの要望書投函 ・Aは同年5月、B住戸を訪ねて、Bと話し合うも、Bはこれ以上静かには出来ないので文句があるなら建物に言ってくれと乱暴な口調で突っぱねる。 ・その後もAはBに会うと音に対する配慮を求め続けるもBはこれを無視し、管理組合による注意勧告、警察官来訪にもBは耳を貸さず音を出し続ける ・そこでAは訴訟提起に備えて騒音測定計をリースで準備し、平成17年11月にBが本件マンションを退去するまで計測 ・計測の結果、B住戸からの騒音は50~65db程度のものが多く、午後7時以降、時に深夜に及ぶこともしばしばあった ・Bは住戸の床にマットを敷くもその効果は不明 ○AはBに対し、慰謝料200万円、弁護士費用40万円の合計240万円の損害賠償を求める訴えを提起し、平成19年10月3日東京地裁判決は、慰謝料30万円、弁護士費用6万円の合計36万円の支払いをBに対して命じました。 ○その理由には、Bの住まい方の他に、Aに対する態度の悪さを指摘しており、かような苦情を受けることがあったら音を出さないように努力するのは勿論、誠実に対処することが重要ですとの教訓でした。 以上:1,317文字
|