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退職時の有給休暇-退職申出(辞表提出)との関係

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平成20年 3月 6日(木):初稿
○弁護士になると法律は何でも知っていると誤解される場合もありますが、実は、そうではありません。私の司法試験受験科目は、必須科目が憲法、民法、刑法、商法の4科目に、訴訟法選択科目の刑事訴訟法、法律選択科目の刑事政策、教養選択科目の心理学の合計7科目を勉強しました。

○選択科目は一定範囲の科目から受験者が自由に選択できるものでしたが、実務に就くと上記受験科目以外にも知っておかなければならない重要科目が山のようにあり、上記受験科目は実務で必要な法律情報の内ごくごく一部に過ぎません。実務法曹の弁護士になったら司法試験受験科目以外に勉強しなければならない法律が山のようにあります。

○実務で良く相談を受ける法律としては労働基準法がありますが、私は大学の講義でも、司法試験でも労働法は選択せず、まとまった勉強はしておらず、労働者側から労使関係の相談を受け、これは難しい事件と判断した場合は、司法修習同期で労働法専門の馬場亨法律事務所を紹介しています。

○しかし顧問会社から使用者側として時々労使関係について相談を受けることがあり、弁護士である以上労働法の基本は知っておく必要があり、私の備忘録として、分類;貸借売買等に細分類;雇用労働をもうけて、労使関係相談の結果も残しておくことにします。単に労働ではなく雇用としたのは、労使関係の基本は民法契約の雇用に定められており、これを修正したのが労働基準法等の特別法で、労使の定めも基本は民法にあるからです。

○先日、ある顧問先から有給休暇についての質問を受けました。有給休暇の定めは民法にはなく、労働基準法39条に定められており、ちと長いのですが全文を後記します。
質問内容は定年前に、平成20年1月末日に1ヶ月先2月末日を雇用契約終了時とする辞表を提出した社員が20日間の有給休暇期間(週休2日制のため1ヶ月に相当)を残していた場合、有給休暇を与える必要があるのかと言うものでした。
その会社の就業規則では、社員側からの退職申出は退職時の少なくとも1ヶ月前に申出をして申出時から1ヶ月を経過した時点で雇用契約が終了するとなっているとのことです。

○雇用契約の期間の定めは、民法では626条で原則5年(例外10年)と定められていますが、労働基準法では第14条で原則3年(例外5年)と定められ労基法が優先します。普通の会社では定年制を定めても正社員については雇用期間は定めがないが一般で、労働者は自由に雇用契約解約(退職申出)が出来、民法の定めで2週間後に契約は終了します。

○本人が有給休暇を取ることを申し出れば会社としては当然有給休暇を与えて2月は会社に出勤しなくても給料を出す必要があります。しかし会社としては2月1日からその社員が出てこないことを認めると引き継ぎが出来ずその労働者担当業務に混乱を来すので困ると言います。会社は、「事業の正常な運営を妨げる場合」は労基法39条4項の時季変更権を行使出来ますが、労働契約は2月末日で終了しますので変更する時季が残されていません。

○この場合残念ながら、変更する時季がないので、会社は時季変更権は行使できないものと思われます。かような「嫌がらせ」的退職の申出をするのは日頃会社に対する怨みを持っていたからと思われ、会社としては、退職申出者にせめて業務引継日数の退職時期延期をお願いするしかありません。引継をしないで強行に退職して担当業務につき会社に損害を与えた場合の退職金との関係は後日検討します。

*******************記*******************

労働基準法第39条(年次有給休暇)
 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。

2 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出動した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。

6箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
              1年   1労働日
              2年   2労働日
              3年   4労働日
              4年   6労働日
              5年   8労働日
              6年以上 10労働日


3 次に掲げる労働者(1週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前2項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の1週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第1号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の1週間の所定労働日数又は1週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
1.1週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
2.週以外の期間によつて所定労働日数が、定められている労働者については、1年間の所定労働日数が前号の厚生労働省令で定める日数に1日を加えた日数を1週間の所定労働日数とする労働者の1年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者【則】第24条の3

4 使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

5 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

6 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法(大正11年法律第70号)第99条第1項に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

7 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第1号に規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間は、第1項及び第2項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

以上:3,180文字

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