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国選弁護人は辛いよ-被告人の無茶な言い分に従うとき

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平成19年10月16日(火):初稿
○「ある覚醒剤事件1、2」で、証拠上どうみても有罪としか思えないのに無罪と言い張る覚醒剤事犯A被告人の控訴審で、ほとほと困って裁判長に解任されたいと申し出るも受け付けられず、最後は手抜き弁護をした弁護人が被告人服役後復讐される恐怖を描いた映画「ケープ・フィアー」を見て、被告人に復讐されないように一生懸命被告人の言うとおりの弁護活動をしたとの情けない話を披露しました。

○私は刑事弁護事件は、最近は年間数件の国選事件を担当する位で私選事件は殆ど扱いません。刑事事件での国選弁護人は、法テラスが国選弁護人契約弁護士の中から、国選弁護人の候補を指名して裁判所に通知し、裁判所は、この指名された候補者を国選弁護人に選任します。

○法テラスが出来るとき、各地の弁護士会では特に刑事弁護の国選弁護人選任制度を巡って各地の弁護士会で喧々囂々(けんけんごうごう)の議論となり、法テラスの国選弁護人契約数が少なくて、国選弁護人制度が維持できなくなるのではとの危惧もありましたが、各弁護士会執行部の努力で、契約数も確保して、法テラスによる国選弁護制度が機能し、私自身も国選弁護人契約をしております。

○本音を言うと、もう国選弁護人担当からは外れたいのですが、少しはやらないとそのしわ寄せが、若手弁護士や特に刑事事件に力を入れている弁護士各位の負担が増えるだけなので、それでは申し訳ないとの義務感から国選弁護人契約をしております。しかしコスト的に見れば国選弁護は全く割に合わない仕事です。

○その国選弁護人で希にですが、どうしようもない無罪主張事件に遭遇することがあります。前述のA被告人より更にひどい内容で、私自身の個人的感想では有罪明白であり、被告人がどう見ても支離滅裂・無茶苦茶な論法で、無罪だと言い張っているような事案にたまに逢ったときは、気が重くなります。

○刑事弁護人の役割は、権力を持たない被告人は検察官の前では圧倒的に力が弱く、被告人の立場に立って被告人に光を当て、被告人の正統な利益を擁護するものですが、中には身勝手極まりなく、光を当てる部分が全くない被告人も居ます。端的に言えば弁護の余地のない被告人です。

○かような被告人は、感覚が普通人とは異なり、普通の説明が全く通じません。私選では絶対に受けないのですが、国選弁護人なった以上は原則として辞任は許されません。そんな被告人でも、どこか有利な点を探し出し、どうしても見つからないときは、第3者から見たら荒唐無稽と評価されるような主張でも、私情を抑え・恥を忍んで、しなければなりません。正に国選弁護人は辛いよなのです。
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