平成19年 5月 1日(火):初稿 |
○ある事業倒産事件をモデルにしたフィクションを続けます。 昭和○年12月19日、午後8時頃にようやくイカ釣り漁船第二B丸の冷凍イカ全部が水揚げされ買受人E水産の冷凍庫に保管されましたが、S事務員は水揚げ作業を手伝ったヤクザの親分とホテルのツインルームに同宿を余儀なくされ、周りの部屋はヤクザの子分達が宿泊し、ヤクザ達に監禁された状態になりました。 ○後で判ったことですが、A社専務が債務者B社社長から第二B丸の入港日時と入港場所を聞き出すに当たって、競売代金の中から1000万円をバックするとの密約を結び、その上で情報提供を受けました。ところが、B社社長は、その1ヶ月前に第二B丸所有権を債権者の1人F社に代物弁済として譲渡し、その後第二B丸操業での収穫物は、F社に帰属するとの内容の公正証書まで作っていました。 ○B社社長としては、このまま第二B丸を普通に入港させても、収穫冷凍イカはF社に譲渡済みで自分には一銭も入らないことから、A社専務の1000万円バックするとの話しに飛びつき、且つ、A社専務が競売代金取得後、約束通り1000万円をバックしてくれるかどうか、不安もあったので懇意にしているヤクザの親分に相談し、F社に気付かれる前に迅速に水揚げして1000万円を確保すること、そしてヤクザの親分には首尾よく1000万円取得した場合、半分の500万円を報酬として支払うと約束し、更にヤクザの親分にはA社専務への威嚇を依頼していたのです。 ○ヤクザの親分にしてみれば、僅か1日の冷凍イカ水揚げ作業を手伝いで500万円の報酬が入る仕事であり、B社社長に確実に1000万円が入るようにするため、競売代金受領等の実務手続をするA社依頼の弁護士事務所事務員の身柄を確保する必要があった訳です。 ○S事務員は、全く予想外に、生まれて初めてヤクザの親分とツインルームに同宿する羽目になり、しかも、度々、仕事がうまく行かなかったらお前のボスに落とし前をつけて貰うと脅され続けました。S事務員は当時42歳で、40歳でようやく結婚して、生まれた子供が1歳になったばかりで、子供のことを思い不安で眠れぬ夜を過ごしました。 ○翌20日の午前9時にS事務員はホテルから、苫室地方裁判所のD執行官に電話すると、D執行官は売却金3000万円の小切手は午後1時には交付できるが、その前に話しがあるとのことで直ぐに執行官室に来るよう指示され、A社専務運転の車にB社社長、ヤクザの親分と同乗して、執行官室に向かうと、D執行官は、午後1時に3000万円の小切手を渡すが、水揚げ総量が当初の予定より少なかったので3000万円の内から200万円を買受人E水産に戻すことを約束して欲しいと言います。 以上:1,116文字
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