平成19年 1月25日(木):初稿 |
○私は昭和55(1980)年4月に弁護士登録をして平成19年4月で弁護士稼業28年目に入ります。当初2年間は沼波法律事務所に勤務し、昭和57年5月に独立して小松亀一法律事務所を開設し、現在に至っています。 ○間もなく弁護士稼業丸27年経過しますが、この間、大小様々な事件を取り扱い、その数は、数千件に及びます。これらの一つ一つの事件での実務体験が弁護士を育てる一番の教師であり教材となって、弁護士業務を支える血となり肉となっています。 ○私の司法修習生時代は司法研修所修習が前期4ヶ月、後期4ヶ月の8ヶ月、中間16ヶ月が実務修習として各地方裁判所に配属され、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護各4ヶ月ずつ実際事件を通じて実務修習をしました。弁護修習では沼波義郎先生の事務所に配属されてそのご指導を受け、そのご縁で、沼波法律事務所に2年間勤務させていただきました。 ○人によって感想は異なると思いますが、私の場合、司法修習時代の実務体験は、殆ど記憶になく、現在の弁護士業務には、殆ど役に立っていません。司法修習時代の実務への関わりは、あくまで傍聴人的立場で責任を課されないためです。 ○司法修習生時代の実務体験は、あくまで見習いの仮体験に過ぎません。裁判修習の時は判決を、弁護修習の時は訴状や準備書面を書きましたが、これらの書面には、自分の名前も記載されず、責任も全くありません。このような中途半端な立場での体験では、感銘力も弱く、業務体験としての血や肉にはならなかったのです。 ○前述の通り、実務体験が弁護士を育てますが、この実務体験は、実際、お客様からお金を頂き、全責任を負わされて初めて実務体験を言えるものです。実務家となり依頼者からお金を頂き、その対価としての実務労働は、司法修習時代の労働とは真剣度が全く異なります。 ○実務で使う書面は自分の名前で書き、自分が全責任を負い、時に裁判官或いはお客様からお叱りをこうむり或いは思わぬ敗訴判決を受け、ガックリと肩を落とす虚脱感や絶望感、又逆に、結果がうまく言ったときの感激と高揚感等、失敗、成功の結果を受け止める感銘力は、司法修習生時代の仮体験でのそれとは雲泥の差があり、真の実務体験で受けた感銘の一つ一つが、心身に染み込み、正に「血や肉」となってくれます。 ○そこで分類「法律その他」に細分類「思い出の事件」を設けてこれまでの実務体験で特に感銘力の強かった思い出に残る事件を記録していくことにしました。勿論、生の事件そのままではなく、適度に設定を変えて、フィクションとして記載していきます。第1回はテーマ「男性事務員がヤクザに監禁された事件」を予定しています。 以上:1,090文字
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