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婚約不当破棄に100万円の慰謝料支払を命じた地裁判決紹介

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令和 7年 4月24日(木):初稿
○原告女性が、原告と被告男性は婚約ないし内縁関係にあったにもかかわらず、被告がこれを不当に破棄したと主張し、被告に対し、不法行為に基づき慰謝料1000万円と弁護士費用の賠償などを求めました。

○被告は、内縁関係を否認し、婚約破棄についても、結婚できなかった原因は、結婚後の居住地について、双方が折り合えなかったことによるものであり、被告が不当に婚約を破棄したものではないと争いました。

○これに対し、原告と被告の内縁関係は否認するも、被告は、原告に婚約前に、将来の希望として海外に居住することを話していたことは認められ、海外に居住することについて、原告からの明確な同意を得ないままに、原告と婚約し、その後、原告らの居住地の問題や子供らの教育方針について、双方の意見が対立し、意見の調整がつかないまま、被告が、原告に対し、入籍できないことを告知したもので、被告としては、結婚後の居住地等の問題が、結婚の際の障害となり得ることを容易に認識し得たにもかかわらず、その点を原告との間で明確にしないまま、原告と婚約していることからすると、被告が、これらの問題を契機として、原告に婚約を破棄したことについては正当な理由があるということはできず被告の婚約破棄は不法行為に当たるとして慰謝料100万円と弁護士費用の支払を命じた令和5年12月22日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○婚約期間が4年半以上に及びその間、2人の間に子供Dが生まれ、養育費額を月額19万6000円とする審判も出ていることが考慮されたと思われますが、このケースで慰謝料100万円の認定は評価の分かれるところです。

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主   文
1 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和元年6月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告の、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する令和元年6月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が被告に対し、原告と被告が婚約ないし内縁関係にあったにもかかわらず、被告がこれを不当に破棄したとして、不法行為に基づく損害賠償として合計1100万円(慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円)及びこれに対する不法行為日後の日である令和元年6月1日から支払済みまでの民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の遅延損害金の支払いを求める事案である。

1 前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)原告は、昭和53年生まれの女性であり、前夫との間に平成22年○○月にC(以下「C」という。)を出産したが、その後、平成27年6月、前夫と離婚した。
 原告は、平成30年○月、被告との間の子であるD(以下「D」という。)を出産し、現在、上記二人を養育監護している。

(2)被告は、昭和57年生まれの男性である。

(3)原告と被告は、同じ職場に勤めていたところ、平成24年2月頃から親しくなり、その後、交際に発展し、平成26年10月、被告は、原告に婚約指輪を渡した。

(4)令和元年5月31日、被告は、原告から入籍の予定について問われた際、原告に対して、被告と入籍できないことを明確に伝えた。

2 争点
(1)原告と被告が内縁関係にあったか(争点1)。
 なお、原告と被告が婚約関係にあったことは、当事者間に争いはない。
(2)内縁ないし婚約の不当破棄の有無(争点2)
(3)損害額(争点3)

     (中略)

第3 争点に対する判断
1 認定事実

 前記前提事実に加え、証拠(掲記の証拠のほか、甲25、乙13、14、原告本人、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)原告と被告は、同じ職場に勤務しており、平成24年2月頃から親しくなり、交際を始めた。平成26年10月には、被告は、原告に対し、婚約指輪を渡し、婚姻の約束をした。この時点までに、被告は、原告に対し、将来的には海外で勤務したい希望があることは話していたものの、海外で勤務する際に、原告が同行してくれることが結婚の前提となること等、入籍の際の具体的な条件を伝えることはなかった(甲19の1~19の3)。

(2)その後、原告は、平成28年1月から海外のビジネススクールに留学したが、その間も、原告と被告は交際を継続し、同年の夏には、被告が原告の父親に会って会食するなどしており、被告が、一時帰国した際には、被告が原告の自宅に宿泊する等していた(甲16、17(枝番を含む。))。

(3)被告は、海外留学中にシンガポールで就職することを決め、平成29年7月に海外留学から帰国後は、原告の自宅に居住していた。被告は、帰国後、原告に対し、シンガポールに一緒についてくることを求めていたが、原告と被告が同居中、原告と被告との間で、被告や子供の居住地について明確な合意が形成されることはなかった(乙1、2)。

(4)被告は、同年8月中旬頃、原告から妊娠したことを告げられたが、被告にとっては予期せぬ懐妊であったことから、被告は原告への不信感を募らせるとともに、被告の友人に対し、原告がシンガポールに長期間居住することに抵抗感を示していることを相談するなどしていた(乙1)。

(5)その後、原告と被告は、被告の前夫との間の子(C)をインターナショナルスクールに入れるか、その場合の費用負担をどうするかについて意見が対立するなどし、被告は、同年10月12日頃には、原告に対し、原告と結婚する意思がないことを伝えたが、原告はこれに同意せず、被告は、自らの実家に戻った。その後も、原告と被告との間で話合いが継続されたが、同年10月31日、被告は、原告に対し、再度、結婚する意思がないことを伝えたものの、原告の同意は得られなかった。(乙4から7)

(6)被告は、同年11月には原告とCと安産祈願に一緒に行く等していたが、同年12月からシンガポールでの勤務を開始し、同月中旬に一時帰国した際に、再度、原告に対し、原告との関係を終了させる意思を伝えた(甲19の6)。

(7)平成30年1月以降も、原告と被告は連絡をとっており、同年2月21日には、被告は、胎児認知の手続を行い、同年4月には、日本に一時帰国し、Dの出産に立ち会い、その後は、毎月15万円の養育費を送金する等していた。被告は、Dが誕生したことにより、子供のために、再度、原告と結婚する余地はないかを考えるようになり、同年8月には、原告、C及びDがシンガポールを訪問する等していたが、被告は、これまでの原告との諍い等を踏まえて、最終的に、原告と結婚することはできないと考え、令和元年5月、被告は原告に対し、現時点で入籍できないことを伝えた(甲13)。

(8)原告は、同年7月、被告を相手方として、東京家庭裁判所にDの養育費の調停を申し立て、令和2年8月、同裁判所は、養育費の額を月額19万6000円とする審判をした(乙3)。

2 争点1(原告と被告が内縁関係にあったか。)について
 前記認定事実によれば、原告と被告は、婚約関係にあったことは認められるものの、内縁関係にあったとまでは認められない。
 確かに、前記認定事実によれば、原告と被告が、被告の留学からの帰国後、数か月間同居していたこと、被告が子供の養育費として一定額を原告に送金していたことや子供らの行事に参加していたことは認められるものの、送金していた額は、被告の収入を踏まえるとDの養育費の範囲内にあるものであり(前記1(8))、同居していたことについても、その期間等に鑑みると、婚約関係中の同棲の範囲にとどまるものといえ、その後、原告と被告が、日本とシンガポールで別々に居住し、今後の関係について、継続的に話し合いがされていたことをも踏まえると、上記の各事情をもって、原告と被告との関係が内縁関係にあったということはできず、その他、原告の主張を認めるに足りる証拠はない。

3 争点2(内縁ないし婚約の不当破棄の有無)について
 前記認定事実によれば、被告は、原告に対し、婚約前に、将来の希望として海外に居住することを話していたことは認められるものの、海外に居住することについて,原告からの明確な同意を得ないままに、原告と婚約した上で、その後、原告らの居住地の問題や子供らの教育方針について、双方の意見が対立し、意見の調整がつかないまま、被告が、原告に対し、入籍できないことを告知したものであり、被告としては、結婚後の居住地等の問題が、結婚の際の障害となり得ることを容易に認識し得たにもかかわらず、その点を原告との間で明確にしないまま、原告と婚約していることからすると、被告が、これらの問題を契機として、原告に対し、婚約を破棄したことについては正当な理由があるということはできず、被告の婚約破棄は、不法行為に当たると認められる。

4 争点3(損害額)について
 原告と被告は、平成26年10月当時から令和元年5月末日に、最終的に被告により婚約が破棄されるまで4年半以上にわたって婚約関係にあったこと、この間、原告と被告は一定の同棲期間もあり、被告が子供の出産に立ち会い、子供らの各種行事に参加していたこと等本件における諸般の事情に鑑みると、被告の婚約不履行により原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料としては100万円が相当であり、被告の行為と相当因果関係にある本件訴訟に要する弁護士費用としては10万円が相当である。 

第4 結論
 以上によれば、原告の請求は、主文記載の範囲で理由があり、その余は理由がないから、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第32部 裁判官 島崎邦彦

以上:4,082文字

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