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配偶者慰謝料に不貞行為者慰謝料補填を認め請求棄却した地裁判決紹介4

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令和 7年 4月25日(金):初稿
○原告が、原告の配偶者Cと被告が継続的に不貞行為に及んだことにより精神的苦痛を被ったとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権として慰謝料等400万円の支払を求めました。

○被告は、Cが勃起不全の状態にあり、被告との間に性交渉はなく、原告は、平成31年4月1日時点で被告とCの関係を認識しており、令和4年4月1日は経過したので、予備的に、平成31年4月1日以前の被告とCの不貞行為に基づく慰謝料請求権について消滅時効を援用するとして争いました。

○これに対し、Cが勃起不全の状態にあったことを的確に認めるに足りる証拠はなく、仮に性交渉に及んでいなかったとしても、被告とCの前記交際内容が、原告の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する態様のものであることは明らかであり、不法行為が成立し、慰謝料は220万円が相当としながら、原告がCから離婚慰謝料300万円の支払を受けたことにより、慰謝料支払義務は消滅しているとして原告の請求を棄却した令和5年7月19日東京地裁判決(LEX/DB)を紹介します。

○Cは、原告との離婚調停で、原告に対し、Cが被告と平成26年から令和3年に至るまで不貞関係にあったことを認め、離婚慰謝料300万円の支払義務を認めて、一部被告から借りて全額支払っています。判決は、平成31年以前の不貞行為については時効消滅を認め、それ以降の不貞行為に限定しても、被告が、原告から再三にわたって関係を断つよう求められていたにもかかわらず、これを無視してCとの不貞関係を継続していたことは相当に悪質として慰謝料220万円と認定しました。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、400万円及びこれに対する令和4年4月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は、原告が、原告の配偶者と被告が継続的に不貞行為に及んだことにより精神的苦痛を被ったとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権により、400万円(慰謝料370万円及び弁護士費用30万円)及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(争いのない事実並びに括弧内に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実
(前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。)
(1)原告は、平成30年5月30日、Cの不貞行為を疑って探偵事務所に調査を依頼し、同月31日に調査報酬86万4000円を支払った。
 原告は、同年6月7日頃、上記探偵事務所から調査結果の報告を受けた。(甲12)

(2)Cは、原告から不貞関係を追及され、平成30年7月15日、Cの両親及び原告の母親が同席する場で、被告と不貞関係にあった事実を認めて家族を傷つけたことを深く謝罪するとともに、直ちに当該関係を解消し、今後、被告とは接触しないことを約束する旨の本件誓約書に署名押印した(甲2、前記前提事実(2))。

(3)原告は、平成30年8月、当時の代理人弁護士を通じて、被告に対し、不貞行為に対する慰謝料を請求する旨の内容証明郵便を送付したが、被告はCと不貞関係にないとの回答をした。
 原告は、被告に対し、被告がCと関係を持ったため、家族の生活が経済的にも困窮していること、子ども達も両親の離婚を心配し精神的にかなり不安定になっていることなどを記載した手紙を送付したが、被告は再度、Cとの不貞関係を否定する旨の回答をした。(甲18)

(4)被告は、平成30年9月7日、Cに対し「Cさん、こんにちは。9/20、熱海のホテルを予約しました。15時からチェックインできます。」などと記載したメールを送信した(甲5)。

(5)被告は、平成30年10月2日、Cに対し「土曜日、Cさんは会社で寝ちゃったんですね。私が朝早く起こしたから・・。ごめんなさい・・。でも、あの横浜町田インターのホテルは、落ち着くし気に入りました。」などと記載したメールを送信した(甲6)。

(6)原告とCとの間で、令和2年10月7日、以下の内容を含む本件夫婦関係調整調停が成立した。
ア 当事者双方は、今後、互いに協力しあって円満な家庭を築くよう努力する。
イ Cは、原告に対し、不貞相手すべてとの関係を直ちに解消し、今後、一切会わず、連絡を取らないことを約束する。(甲3、前記前提事実(3))

(7)Cは、令和2年10月17日、被告に対し「本当に、久しぶりの箱根旅行、海賊船に、大涌谷に、ロープウェイ、Bさんと一緒の時間は、本当に楽しくて、夢のような時間の連続でした。そして、Bさんが選んでくれた佳松、Bさんと二人だけで頂いた夜と朝の素敵なお料理とお酒・・・・Bさんと一緒にするお食事は、私には最高の贅沢に思えました。」などと記載したメールを送信した(甲7の1)。

(8)被告は、令和2年11月4日、Cに対し、「ソラノホテル、私が予約しておきますから、心配しないでください・」、「広いので、普通のお部屋にしました。」などと記載したメールを送信し、同月15日、Cに対し、「昨日と今日、とっても楽しかったです。」、「Cさんと一緒にテニスをして、イタリアンでランチをして、見晴らしの良い温泉プールで夕焼けの名残を眺めて、美味しいお寿司を食べてお散歩しながらイルミネーションを見ました・」などと記載したメールを送信した(甲8の1、8の2、8の5)。

(9)Cは、令和3年1月18日、被告に対し、「今週の金曜日、湯沢の四季と言うところを予約してみました・・・。」などと記載したメールを送信し、被告は、同月24日、Cに対し、「昨日の昼過ぎまで、とっても楽しい時間を過ごせました。」、「素敵な宿で温泉三昧、美味しいお酒とお料理でお腹いっぱいになりました。Cさんとずっと一緒に起きてられれば、もっと良かったなあ・・。」などと記載したメールを送信した(甲10の1、10の6)。

(10)原告は、令和3年4月頃、Cの携帯電話に保存されていた被告とのメールを発見し、同年11月12日、原告とCとの間で、以下の内容を含む本件離婚調停が成立した。
ア 原告とCは、本日、調停離婚する。
イ 長男、長女の親権者をいずれも原告と定める。
ウ Cは、原告に対し、財産分与として240万円を分与し、これを令和3年11月から令和8年10月まで、4万円ずつに分割して支払う。
エ Cは、原告に対し、離婚に基づく慰謝料として300万円の支払義務があることを認め、これを令和3年11月から令和8年10月まで、5万円ずつに分割して支払う。
オ Cは、原告に対し、Cが被告と平成26年から令和3年に至るまで、不貞関係にあったことを認める。
カ 当事者双方は、以上をもって本件離婚に関する紛争が解決したことを確認し、今後は名義のいかんを問わず、互いに財産上の請求をしない。(甲4、18、前記前提事実(4))

(11)原告は、原告代理人に対し、令和3年7月26日に離婚事件の着手金として22万円を、同年11月25日に離婚事件の報酬金として41万1800円を支払った(甲13、14)。

(12)被告は、令和4年9月5日付で、東京地方裁判所に対し、原告及び原告代理人を被告として、同人らが、弁護士が受任しているにもかかわらず、本件に関する郵便物を被告の自宅に郵送したことがプライバシー侵害に当たるなどとして、不法行為に基づく損害賠償請求権により、50万円(慰謝料45万4546円及び弁護士費用4万5454円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求める旨の訴訟を提起した(以下「別件訴訟」という。)(甲15)。

(13)Cは、原告に対し、本件離婚調停に基づく離婚慰謝料を分割して支払っていたが、被告から100万円を借入れて、令和4年12月23日、残額230万円を支払った。
 また、Cは、本件口頭弁論終結時までに、原告に対し、本件離婚調停に基づく財産分与として72万円を支払った。
(乙3、5)

2 争点〔1〕(不法行為の成否)について
(1)前記認定事実のとおり、被告とCが令和2年10月頃から令和3年1月頃にかけて、複数回、旅行先等で同宿し、互いに好意を抱いている旨のメールをやり取りしていること、Cが被告と平成26年頃から不貞関係にあった事実を認めていることに照らせば、被告は遅くとも同年頃からCと不貞行為に及んでいたものと認められる。

(2)被告は、Cが勃起不全の状態にあり、被告との間に性交渉はなかった旨を主張するが、Cが勃起不全の状態にあったことを的確に認めるに足りる証拠はなく、仮に性交渉に及んでいなかったとしても、被告とCの前記交際内容が、原告の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する態様のものであることは明らかであり、不法行為が成立するというべきである。

(3)なお、被告は、原告作成の陳述書(甲18)について作成の真正を否認するが、弁論の全趣旨によれば、上記陳述書は、原告がその内容を確認した上で、原告の了承のもと、その面前で原告代理人が押印をしたものであり、原告により真正に作成されたものと認められる。

3 争点〔2〕(消滅時効)について
 前記認定事実によれば、原告は、探偵事務所の調査報告書及びCが作成した本件誓約書を踏まえて、平成30年8月に、当時の代理人弁護士を通じて、被告に対して不貞行為に基づく慰謝料を支払うよう求めていることから、遅くとも平成31年4月1日の時点で被告とCの不貞行為を認識していたと認められる。
 そうすると、同日から3年が経過し、被告が消滅時効を援用する旨の意思表示を行ったことにより、原告の被告に対する、同日以前の不貞行為に基づく慰謝料請求権は消滅したと認められる。

4 争点〔3〕(損害額)について
(1)前記3のとおり、平成31年4月1日以前の不貞行為に基づく慰謝料請求権は時効により消滅しているから、これらの不貞行為を原因とする精神的苦痛を慰謝料の事由として斟酌することはできないものと解される。

 他方で、それ以降の不貞行為に限定しても、被告が、原告から再三にわたって関係を断つよう求められていたにもかかわらず、これを無視してCとの不貞関係を継続していたことは相当に悪質であると評価でき、原告とCの婚姻期間が16年余りと長期にわたっていたことや、原告とCとの間に未成熟子が2人いること、不貞行為の結果、原告とCが離婚に至ったことなど、本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益は相応に侵害されたものと認められる。

 なお、原告は、被告が別件訴訟を提起した事実を慰謝料増額事由として考慮すべきであると主張するが、本件全証拠によっても、被告において、別件訴訟における主張が事実的、法律的根拠を欠くものであることを認識し、または容易に認識できたにもかかわらずあえて訴えを提起したとまでは認めることができず、被告が別件訴訟を提起したことをもって、直ちに、本件の慰謝料増額事由として考慮することはできないというべきである。

 上記事情に加えて、本件に現れた一切の事情を考慮すれば、原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は220万円とするのが相当である。

(2)本件事案の内容、上記認容額等に照らし、被告とCの不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害として22万円とするのが相当である。

5 争点〔4〕(弁済)について
(1)前記認定事実によれば、原告とCの婚姻関係が破綻した主たる原因は、被告とCの不貞行為にあるといえ、本件離婚調停に基づいてCが原告に支払った離婚慰謝料300万円には、上記不貞行為による原告の精神的苦痛を慰謝する趣旨も当然に含まれているといえる。そして、被告とCの不貞行為は原告に対する共同不法行為に当たり、それぞれの損害賠償債務はいわゆる不真正連帯債務の関係になると解されることから、被告の原告に対する損害賠償債務も、これを上回る上記弁済によって消滅したといえる。

(2)この点、原告は、本件離婚調停で合意した離婚慰謝料300万円は、原告が支出した探偵の調査費用86万4000円及び弁護士費用63万1800円を考慮したものであり、実質的な慰謝料額はそのうち150万4200円にとどまり、被告の原告に対する損害賠償債務も同額に限って弁済を認めるべきであると主張する。

 しかし、探偵の調査費用が離婚ないし不貞行為と相当因果関係のある損害であるといえるかについては疑問があることに加え、本件離婚調停において離婚慰謝料の額を決めるに当たり、原告とCの間で、原告が支出した探偵の調査費用や弁護士費用の額を考慮したことを窺わせる証拠は見当たらない。
 原告の上記主張は採用することができない。

(3)以上によれば、被告の原告に対する損害賠償債務は、原告がCから300万円の離婚慰謝料の支払を受けたことにより消滅しているというべきである。

第4 以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判官 松山美樹

以上:5,485文字

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