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別居夫に対し成長記録写真送付等の間接交流を認めた家裁審判紹介

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令和 7年 4月22日(火):初稿
○平成31年2月に婚姻し、令和2年に未成年者(審判当時2歳)をもうけた夫婦間において、夫である申立人が、令和2年9月から未成年者を連れて別居している妻である相手方に対し、申立人と未成年者が面会交流する時期、方法など直接交流を希望する審判を求めました。

○これに対し、未成年者には慣れない相手に対して不安が喚起されやすい特徴が認められるところ、申立人は、未成年者が出生してから未成年者に接触した期間が短く、未成年者の負担を減じて交流を実施するためには、未成年者が申立人に徐々に慣れるようにすることが必要であり、申立人と未成年者との面会交流は、間接交流とするのが相当であるとして、相手方に対し、
〔1〕当分の間、年に2回、未成年者の成長の過程を記録した写真及び生活の状況を記した書面を抗告人に送付すること、
〔2〕申立人が、相手方の指定する代理人を経由して、プレゼント等を送付することを妨げないこと
を命じた令和4年4月28日さいたま家庭裁判所川越支部審判(判タ1524号90頁)関連部分を紹介します。

○これに対し申立人夫が抗告し、抗告審東京高裁は、原審審判を取り消し、試行的面会交流の実施を積極的に検討し、その結果をも踏まえて直接交流の可否等を検討させるべく、さいたま家裁に差し戻しており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 相手方は,申立人に対し,当分の間,年に2回(毎年7月及び12月頃),未成年者の成長の過程を記録した写真及び生活の状況を記した書面を送付せよ。
2 相手方は,申立人が,相手方の指定する代理人を経由して,プレゼント等を送付することを妨げない。
3 手続費用は,各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての要旨

 第三者機関を利用した面会交流を希望する。

第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)申立人(昭和52年*月*日生)と相手方(昭和62年*月*日生)とは,平成28年ころ知合い,交際を続けてきた。相手方は,相手方母○○(以下「相手方の母」という。)との同居を前提に結婚の話を進めてきた。申立人は,相手方の母との同居について申立人父母も反対していると難色を示したが,最終的には申立人は同居でよいということになり,平成31年2月13日婚姻した。

(2)入籍後,別居を続けていたが,令和元年12月に相手方の妊娠がわかり,令和2年2月18日,申立人が相手方と相手方の母が暮らすマンションに転居して同居を開始した。

 相手方の目から見ると,申立人は,家事に協力的ではなかった。家事をめぐって言い争いになると,申立人は,相手方に対して怒って声を荒げることもあり,相手方は驚きと恐怖を覚えた。

     (中略)

(7)令和2年9月3日,相手方が申立人に対し,別居を申し出た。しかし,申立人から返事がなかったため,令和2年9月8日,再度,相手方は,一緒に暮らしたくないので出て行ってほしいこと,未成年者に触らせたくないので部屋に入ってこないでほしいことをメモ書きして申立人に伝えたところトラブルになり,相手方が警察に通報した。

(8)令和2年9月中旬に,相手方は自宅を出て別居することに決め,申立人が,令和2年9月27日からマンスリーマンションを契約して,一時的に別居を開始した後,相手方は,未成年者及び相手方の母とともに別居した。

(9)未成年者は,現在,相手方及び相手方の母と暮らしている。
 未成年者は,現在,主に平日に保育園に登園し,相手方が,土曜日に仕事があるときは,土曜日も登園している。
 平日は,午前5時30分から午前6時頃に,相手方が起床して家事をしていると未成年者が目を覚ます。午前6時30分から午前7時30分にかけて相手方が用意した朝食をとり,相手方や相手方の母に歯磨きや着替えなどをさせてもらい,相手方の車で登園する。午後6時30分頃,相手方が保育園に迎えに行き,帰宅する。帰宅後,相手方が用意した夕食を取り,相手方が入浴させて,午後8時頃には,布団に入り,相手方が寝かしつけている。


 休日は,相手方は,なるべく平日と同じリズムになるように心がけている。
 未成年者は,日常的に夜中に泣いて目を覚ます。一度も目を覚まさずに寝ていることのほうが少ない。相手方によれば,原因は,鼻水などの不快感や,保育園でいつもと違う公園へ行くなど,普段と違う刺激があったことなどが考えられる。未成年者のこれまでの発育及び発達は順調であり,乳幼児健診等で特段の指摘もない。予防接種も予定通り済ませている。

 相手方は,令和3年7月中旬から仕事についている。健康状態に問題はない。
 相手方の母は,無職であるが健康状態に問題はない。

 相手方は,未成年者は,順調に成長しているが,新しい刺激に反応して寝つきが悪くなったり,体調を崩して保育園を休んだりすることもある,こうした状況で,突然,申立人と会うというのは,未成年者にとって負担であり,未成年者の心身がもう少し丈夫になるまで待ってほしい,面会交流は相手方にとっても大きな負担であると考えている。

(10)別居後,申立人と未成年者の交流はない。

(11)令和4年1月14日,当庁家庭裁判所調査官(以下「家裁調査官」という。)が,相手方宅の家庭訪問調査をした。
 家裁調査官が訪問すると,玄関先で相手方の母が出迎え,相手方の母の後ろに付いてきていた未成年者が珍しそうに家裁調査官をのぞいた。家裁調査官が,視線の高さを合わせて未成年者にあいさつすると,未成年者は,その場で一瞬固まり室内に入っていった。リビングの方から相手方が出てきて,未成年者は相手方に抱っこを求め,相手方は未成年者を抱っこした。

 家裁調査官が,ダイニングテーブルを囲んで,当日の流れを説明していると,未成年者は,眠り始めた。家裁調査官が,相手方の母の面接を始めると,未成年者は,目を覚まし,隣室のドアの側に立ち,家裁調査官が「もうお目め覚めたの?」と声を掛けると,途端に相手方のほうに向き直り,座っている相手方にくっついた。「何して遊んでたの?」と声を掛けても相手方にくっついたまま動かなかった。相手方が,家裁調査官の質問に答えながら,普段の遊びの様子を話していると,未成年者も家裁調査官に視線を向けるが,家裁調査官と目が合うと再び目をそらせた。

 相手方の母からの聴取が終わり,相手方の母が,隣室の未成年者に声を掛けると,未成年者は車の図鑑を広げているところあった。家裁調査官が相手方と未成年者の側に腰を下ろすと,未成年者は表情をこわばらせ,図鑑を閉じて相手方に抱っこを求めた。相手方は,穏やかな口調で「何見たか教えてあげれば?」と未成年者に声をかけたが,未成年者は,相手方の膝の上から動かなかった。家裁調査官が図鑑に手を伸ばして身を乗り出すと,未成年者は,わっと一瞬泣き,相手方にしがみついた。

 ダイニングに戻り,相手方から補足事項を聴取している間,未成年者は固い表情をしたまま相手方に抱かれていたが,笑顔を見せるようになった。家裁調査官が未成年者が笑っているというと,相手方は未成年者の顔を覗き込んだ。未成年者は相手方に満面の笑顔を返し,相手方も笑顔になった。未成年者は,相手方の母にも笑顔を向けた。しかし,家裁調査官が笑いかけると,途端に相手方に向き直り,またしがみついた。家裁調査官が謝意を述べて辞去を伝え,未成年者は,相手方と相手方の母と玄関先まできて,家裁調査官が「驚かせてごめんね。バイバイ。」と声を掛けると,未成年者は突然泣き出した。

(12)保育園においては,健診において特段の指摘はなく,健康状態に問題はない。発育や発達は順調である。
 未成年者は,入園当初は,表情が硬く,あまり笑わなかった。しかし,徐々に表情が柔らかくなり,今ではよく笑っている。活発でよく動き回っている。
 相手方は,保育園に必要なものをきちんと用意して持ってきている。保育園への提出物も遺漏はない。欠席の際は必ず事前に相手方から連絡がきている。相手方は,とても丁寧に子育てをしている。また,保育士の話を素直に聞き入れてくれている。

(13)申立人は,単身で生活し,健康状態に問題はない。
 面会交流は,直接交流を希望する。写真の送付などの間接交流で合意できない。


(14)令和2年10月12日,相手方が,本件夫婦関係調整(離婚)調停事件を申立て,令和3年3月8日,申立人が,本件面会交流調停事件を申し立てた。令和3年8月23日,本件夫婦関係調整(離婚)調停事件及び本件面会交流調停事件は,不成立となり,審判手続に移行した。

2 前記認定事実によれば,未成年者は,保育園に入園当初は,表情が硬く,集団生活に戸惑う様子が見られ,当庁家裁調査官による家庭訪問調査においては,初対面の当庁家裁調査官に対して人見知りをして1時間半程度の滞在では十分に慣れることが難しく,母である相手方から離れられなかった様子が認められた。このことは、未成年者が慣れない相手に対して不安が喚起されやすい特徴が認められたものである。申立人は,未成年者が出生してから未成年者に接触した期間が短く,別居後,申立人と未成年者の交流は行われておらず,未成年者の上記負担を減じて交流を実施するためには,相手方の協力をえながら,未成年者が申立人に徐々に慣れるようにすることが必要である。

 他方,相手方は,申立人に対する不信感が根強く,未成年者が日常的に夜中に泣いて目を覚ます。一度も目を覚まさずに寝ていることのほうが少ない状況で,相手方は,精神的にも体力的にも余裕があるとは言えない。かかる状況において,未成年者と申立人との直接的な面会交流を実施した場合,相手方の養育状況の低下が生じる恐れがある。したがって,現状において直接交流を実施することは相当とは言えない。 


 もっとも,父親が未成年者の成長を知ることは,父親にとって重要であり,未成年者に父親が自分に関心を示してくれててることを感じ取らせることは,未成年者の健全な成長につながるものというべきである。したがって,相手方から写真や子の状況を記した手紙を定期的に申立人に送付するとともに,申立人から未成年者に対してプレゼント等を送ったりする間接交流が相当である。

 また,申立人から,未成年者に対してプレゼント等を送るについては,相手方は,現在,住所を明らかにしていないが,申立人からの贈り物を代理人を通じて受け取ることを否定していないのであるから,今後,できるだけ早い時期に代理人を指定することが望ましいというべきである。
 よって,主文のとおり審判する。
以上:4,377文字

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