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不貞行為慰謝料請求額330万円をそのまま満額認めた地裁判決紹介

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令和 6年 9月 4日(水):初稿
○原告の夫であったCと被告が不貞行為を繰り返したことにより婚姻関係が破綻するに至り、精神的苦痛を被った等主張する原告が、被告に対し、不法行為に基づき損害賠償等330万円のの支払を求め、その金額を全部認めた令和4年9月8日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○判決は原告請求額全額を認めた理由を「被告が答弁書を提出するのみで本件期日に出頭することもなく、それ以上の反論反証をしていないこと等に照らし、慰謝料を減額するに足りる事情は何ら見当たらない」としています。

○被告は本人訴訟で、不貞の事実を否認し、損害額も争う答弁をしていますが、期日に出頭せず、裁判を軽く見ていたようです。不貞行為慰謝料請求訴訟で300万円もの慰謝料が認められるのは珍しい事案です。

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主   文
1 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和2年12月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 主文第1項に同旨

第2 事案の概要
1 請求の概

 原告は、夫であったC(以下「C」という。)と被告が不貞行為を繰り返したことによって婚姻関係が破綻するに至り、精神的苦痛を被った旨主張して、被告に対し、不法行為の損害賠償請求権に基づき、慰謝料300万円に弁護士費用30万円を加えた330万円及びこれに対する令和2年12月31日から支払済みまで、平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「旧民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。

2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠(甲1)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)原告(昭和43年○月○○日生)とC(昭和44年○○月○○日生)は,平成14年7月5日に婚姻した夫婦であったが、令和3年3月12日に協議離婚をしている(甲1)。 
(2)Cと被告は、原告C夫婦が名古屋から東京へと引っ越してきた後、Cが東京で就職した先の病院で知り合った(争いがない)。
(3)原告は、令和2年8月下旬、Cから離婚してほしいと告げられ、被告のことを知った(弁論の全趣旨)。

3 争点及び争点に対する当事者の主張
(1)Cと被告の不貞行為の有無(争点1)
(原告の主張)
 Cと被告は、遅くとも令和2年2月頃から肉体関係にあり、これが同年8月に原告に発覚し、Cから離婚してほしい旨伝えられたことにより、原告も離婚を決意し、令和3年3月12日に離婚するに至ったものである。Cが被告との交際及び温泉旅行に行ったことを認めていること、Cと被告とのメールのやり取り等に照らせば、Cと被告が不貞関係にあったことは明らかである。

(被告の主張)
 被告がCと不貞行為に及んだことは否認する。原告が提出する写真(甲4)は、被告が泊まりがけで現場応援に行った際に何者かに撮られたものであって、不貞行為に及んだことの証拠には当たらない。

(2)原告の損害額(争点2)
(原告の主張)
 原告は、本件不貞行為により、約19年間にわたって築き上げてきた平穏な婚姻生活を侵害され、甚大な精神的苦痛を被った。そして、本件不貞行為の結果、原告がCと離婚するに至っていることや、被告が謝罪をすることもなく開き直った不誠実な対応に終始していること等を併せ考慮すると、原告の精神的苦痛を慰謝するに足る金額は300万円を下らない。
 また、原告が、本件訴訟を代理人弁護士に委任したことによる弁護士費用として、慰謝料額300万円の1割に相当する30万円は、本件不貞行為と相当因果関係を有する損害である。

(被告の主張)
 争う。
 そもそも、被告は不貞行為をしておらず、原告に損害はない。

第3 争点に対する判断
1 争点1(Cと被告の不貞行為の有無)について

(1)証拠(甲5)によれば、Cは、令和2年2月頃から帰宅が遅くなる日が増え、同年6月頃からは外泊も目立つようになってきたことが認められるところ、Cが同年8月に原告に対し、被告と交際しているので離婚したいと告げていること、Cが被告と温泉旅行に行っていた旨原告に述べており、被告の就寝中の寝間着姿の写真(甲4)をCが所持していたことからすれば、被告がCと一夜を伴にする親密な関係にあったことが窺われることに加え、Cと被告との親密な内容のLINEやメールのやり取り(甲2、3)をも勘案すれば、被告とCは少なくとも令和2年6月頃から継続して被告と肉体関係をもつ不貞関係にあったものと認めるのが相当である。

(2)被告は、Cと不貞行為に及んだことを否認し、原告が提出する写真(甲4)は、被告が泊まりがけで現場応援に行った際に何者かに撮られたものであるなどと主張する。
 しかしながら、前記のとおり同写真は、親密な関係にある者にしか撮り得ないものであり、これを原告が提出していることに照らし、Cが撮影し所持していたものであると認められるから、被告とCが一晩を伴にする親密な関係にあったことを窺わせるものである。したがって、C以外の何者かによって撮られたものであるとする被告の主張は採用することができない。

(3)よって、被告とCは少なくとも令和2年6月頃から継続して被告と肉体関係をもつ不貞関係にあったものと認められる。

2 争点2(原告の損害額)について
(1)前記2(争点1)のとおり、Cと被告は少なくとも令和2年6月以降、継続して不貞行為を行っていたものと認められ、原告に対する不法行為を構成するものと認められるところ、原告とCの婚姻関係は、原告が同年8月にCから被告と交際していることを告げられるまで特段その関係に問題はなかったと認められ、同年12月頃にCから被告のことが忘れられず原告と離婚したい気持ちは変わらないとの意思を伝えられたために原告が離婚を決意し、これによって、原告とCの婚姻関係は破綻するに至ったものと認められること、その間、被告とCが不貞関係にあった期間は少なくとも半年間に及んでおり、不貞行為の回数も相当数に及んでいるものと窺われる。

これらの事情に加え、被告が答弁書を提出するのみで本件期日に出頭することもなく、それ以上の反論反証をしていないこと等に照らし、慰謝料を減額するに足りる事情は何ら見当たらないことも勘案すると、被告がしたCとの不貞行為によって原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては、原告が主張するとおり300万円と認めるのが相当である。

 そして、原告が原告訴訟代理人に委任したことによる弁護士費用のうち、上記慰謝料額の1割に相当する30万円については、本件不貞行為と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である。
 遅延損害金については、不貞行為が終了したのが上記のとおり原告がCからの求めに応じて離婚を決意し、婚姻関係が破綻するに至った令和2年12月頃と認められるから、原告が求めるとおり、遅くとも不法行為終了の日以後である令和2年12月31日から、不貞行為が開始された時点において適用される旧民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求めることができるものと認められる。

(2)したがって、原告は、不法行為の損害賠償請求権に基づき、被告に対し、330万円及びこれに対する令和2年12月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

3 結論
 以上によれば、原告の本件請求には理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
裁判官 長尾崇
以上:3,141文字

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