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不貞行為期間28年の不貞慰謝料として300万円を認めた地裁判決紹介

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令和 6年 9月 5日(木):初稿
○「不貞行為慰謝料請求額330万円をそのまま満額認めた地裁判決紹介」に関連した続きで、不貞行為慰謝料として金300万円を認めた令和4年9月6日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○平成元年3月にCと婚姻し、令和元年6月に離婚した原告が、平成2年12月から平成30年10月令和元年まで28年間もCと不貞関係を継続し、その結果原告とCは離婚に至ったとして、原告はCに対し、500万円の慰謝料請求をして、判決は不貞期間28年の慰謝料として金300万円を認めました。

○だいぶ前に、不貞慰謝料のマックスは300万円と現役裁判官に聞いたことがありますが、正にマックスの金額でした。被告は訴訟では不貞行為を否認していますが、訴訟前にCが不貞行為を認める書面を作成しており、それでも被告が否認したことで却って印象が悪くなったようです。最も責任が重大なのは、妻子ある身で不貞行為を長期間継続したCと思いますが、実質はCが返済するものと思われます。

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主   文
1 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和3年12月11日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、うち2を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和3年12月11日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が、原告の配偶者であったC(以下「C」という。)と被告とが不貞関係を持ち、それにより原告とCとの婚姻関係が破壊され、離婚に至ったなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料500万円及び弁護士費用50万円並びにこれらに対する不法行為後の日(訴状送達の日の翌日)である令和3年12月11日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)原告とCは、平成元年3月27日に婚姻した。原告には、d(昭和52年○月○日生)とe(昭和54年○月○○日生)という連れ子がいたが、Cとの婚姻に伴い、平成元年3月27日、両名はCと養子縁組をした。また、原告とCの間には、平成2年○月○○日にfが生まれた。

(2)被告は、昭和60年3月に中野区職員採用選考に合格し、その後、昭和63年4月から平成3年3月までみずのとう幼稚園に勤務していた。
 被告がみずのとう幼稚園に配属された時期に、Cが中野区職員労働組合の役員で幼稚園担当を務めており、被告も組合員であったことから、組合の集まりで顔を合わせることがあった。

(3)Cは、令和元年5月頃、原告宛ての「申立書」と題する書面を作成し、この書面に、平成2年12月に被告とホテルに行ってから、今まで関係を続けてきたこと、SDカードに残っている録音は被告とのものであること、SMSのメールで記載した「b」というのは被告であることなどを記載した(甲2の1・2)。

(4)原告とCは、令和元年6月3日、離婚した。

(5)原告は、令和2年7月8日、被告に対し、通知書を送付して、Cとの不貞行為に関する慰謝料として500万円の支払を求めた(甲3の1・2)。

2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1)不貞行為の有無(争点(1))
(原告の主張)
 被告とCは、平成2年12月頃、職場の忘年会から帰宅途中に、被告が「家に帰りたくない」などと言って、ホテルへ行き、不貞行為に及んだ。被告とCは、その後も少なくとも平成30年10月頃まで約28年間もの長期間にわたり不貞関係を継続した。

(被告の主張)
 被告は、中野区職員として小学校や幼稚園の用務に従事する傍ら、3人の子の育児を担ってきた。特に長女が難病を抱えて長期の入院・通院生活を強いられ、母親としてそれを支えなければならず、仕事と家庭を維持することに時間と体力をつぎ込んできた。

 Cとは、昭和63年以降、被告が幼稚園に配属された時期には、Cが中野区職員労働組合の役員で幼稚園担当を務めており、被告も組合員であったことから、組合の集まりで顔を合わせることがあった。しかし、平成3年4月に被告の勤務先が幼稚園から小学校に変わって以降、組合活動の関係でCが被告の勤務先に赴いた際などに顔を合わせる程度であり、日常的な交流はほとんどなかった。
 いずれにせよ、被告はCと親密な交流を持ったことはなく、いわんや男女関係を結んだことは一度もない。

(2)損害の発生及び額(争点(2))
(原告の主張)
ア 被告とCの不貞期間は、原告とCの婚姻から間もない平成2年12月から平成30年10月まで約28年間と長期間にわたるものであり、原告とCが、被告との不貞を原因として離婚に至る令和元年6月3日までの婚姻期間のほとんどを占める。しかも、被告は、原告とCとの間に3人の幼少の子がいることも認識しながら不貞行為を長期間継続した。このような不貞行為により、それまで円満だった原告とCとの間の夫婦関係は破たんし、離婚に至った。

 原告は、被告に対して慰謝料を請求したが、被告から謝罪がないばかりか、これまで何らの回答もないなど、反省の態度も一切ない。
 このように、被告の不貞行為によって原告が被った精神的損害は極めて大きく、慰謝料の金額は500万円を下回らない。

イ 原告は、本件訴訟提起の前に、被告に対して慰謝料請求をしたが、被告から何ら回答がなかったため、やむを得ず本件訴訟を提起した。そのため、慰謝料額の1割に相当する50万円の弁護士費用は、被告の不貞行為と相当因果関係のある損害と認められる。

ウ よって、被告の不貞行為によって原告が被った損害は、合計550万円である。

(被告の主張)
 争う。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(不貞行為の有無)について

 被告は、Cと不貞行為を持ったことについて否認する。しかし、Cが被告との不貞を認める「申立書」と題する書面を作成しているところ(前記前提事実(3))、あえてCが虚偽の内容を述べる動機があるとはうかがわれないこと、Cが被告に対して「愛してる」などの不貞関係の存在をうかがわせる文言を含むメールを繰り返し送信していること(甲4)、Cと被告との会話及び不貞行為について、Cが録音をしており、その録音のデータが存在すること(弁論の全趣旨)といった事実が認められ、これらによれば、被告とCは、平成2年頃から平成30年頃までの間、不貞関係を持っていたと認めることができる。これに反する被告の主張は採用することができない。

2 争点(2)(損害の発生及び額)について
 上記1のとおり、被告とCは、原告とCが婚姻して2年も経過しない時期から、少なくとも約28年間という長期間にわたり不貞関係を継続していたことが認められ、また、前記前提事実(1)のとおり、原告は、二人の連れ子があり、またCとの間に子をもうけたことがいずれも認められる。そして、Cによる「申立書」作成後まもなく原告とCが離婚していること(前記前提事実(3)、(4))等に照らせば,原告の離婚の主たる原因は被告との間の本件不貞行為にあったと認められるから、本件不貞行為によって原告が強い精神的苦痛を感じたことは容易に想像できる。これらに加え、原告とCとの婚姻関係の状況や、被告とCとの不貞関係の状況、その他、本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件不貞行為に関し、原告が被った精神的苦痛に係る慰謝料は、300万円と認めるのが相当である。

 そして、本件事案の難易度、請求額、認容額、その他諸般の事情を考慮すると、被告の不法行為と因果関係のある原告の弁護士費用は30万円と認めるのが相当である。 
 したがって、被告の不貞行為により、原告が被った損害は合計330万円と認められる。

第4 結論
 以上の次第で、原告の請求は、主文第1項の限度で理由があるから認容すべきであるが、その余は理由がないから棄却すべきである。
 よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判官 益留龍也

以上:3,422文字

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