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財産分与却下審判に対し即時抗告を認めた最高裁決定紹介

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令和 3年11月16日(火):初稿
○平成25年1月1日から施行されている家事事件手続法は、まとめて勉強したことがなく、その条文構成等シッカリ頭に入っておりません。家裁の領域ですが、家裁での終局判断は審判で、不服があれば高裁に即時抗告ができ、高裁決定に不服があれば最高裁に特別抗告・許可抗告ができますが、ここまでやったことは殆どありません。関連する家事事件手続法条文は以下の通りです。

家事事件手続法
第97条(許可抗告をすることができる裁判等)

 高等裁判所の家事審判事件についての決定(次項の申立てについての決定を除く。)に対しては、第94条第1項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その決定が家庭裁判所の審判であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る。
2 前項の高等裁判所は、同項の決定について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、抗告を許可しなければならない。
3 前項の申立てにおいては、第94条第1項に規定する事由を理由とすることはできない。
4 第2項の規定による許可があった場合には、第1項の抗告(以下この条及び次条第1項において「許可抗告」という。)があったものとみなす。
5 許可抗告が係属する抗告裁判所は、第2項の規定による許可の申立書又は同項の申立てに係る理由書に記載された許可抗告の理由についてのみ調査をする。
6 許可抗告が係属する抗告裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原決定を破棄することができる。

第156条(即時抗告)
 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分の審判及びその申立てを却下する審判 夫及び妻
二 夫婦財産契約による財産の管理者の変更等の審判及びその申立てを却下する審判 夫及び妻
三 婚姻費用の分担に関する処分の審判及びその申立てを却下する審判 夫及び妻
四 子の監護に関する処分の審判及びその申立てを却下する審判 子の父母及び子の監護者
五 財産の分与に関する処分の審判及びその申立てを却下する審判 夫又は妻であった者
六 離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判及びその申立てを却下する審判 婚姻の当事者(民法第751条第2項において準用する同法第769条第2項の規定による場合にあっては、生存配偶者)その他の利害関係人

第272条(調停の不成立の場合の事件の終了)
 調停委員会は、当事者間に合意(第277条第1項第一号の合意を含む。)が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停が成立しないものとして、家事調停事件を終了させることができる。ただし、家庭裁判所が第284条第1項の規定による調停に代わる審判をしたときは、この限りでない。
2 前項の規定により家事調停事件が終了したときは、家庭裁判所は、当事者に対し、その旨を通知しなければならない。
3 当事者が前項の規定による通知を受けた日から2週間以内に家事調停の申立てがあった事件について訴えを提起したときは、家事調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
4 第1項の規定により別表第二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす。


○離婚をした相手方と抗告人が,それぞれ,財産の分与の審判を申立てをしたところ、原々審は、第1事件(相手方の申立てに係る事件)及び第2事件(抗告人の申立てに係る事件)の各申立てをいずれも却下する審判をし、原審は、本件即時抗告のうち第1事件に係る部分を却下したため、抗告人が許可抗告をしました。

○これに対し、財産分与の審判の申立てを却下する審判に対し、夫又は妻であった者である当該申立ての相手方は、即時抗告をすることができるものと判示し、本件即時抗告のうち第1事件に係る部分を却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定中、主文第1項を破棄し、更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻し、その余の抗告を棄却した令和3年10月28日最高裁決定(許可抗告審、裁判所ウェブサイト)を紹介します。

○当たり前の判断と思われますが、原審高裁・原々審家裁で、何故、即時抗告ができず却下の判断に至ったのか知りたいところです。その原審高裁・原々審家裁の判例を探していますが、現時点では見つからず、具体的事案が不明です。

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主   文
原決定中,主文第1項を破棄する。
前項の部分につき,本件を広島高等裁判所に差し戻す。
その余の本件抗告を棄却する。
前項に関する抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
1 本件は,離婚をした相手方と抗告人が,それぞれ,財産の分与に関する処分の審判(以下「財産分与の審判」という。)を申し立てた事案である(以下,相手方の申立てに係る事件を「第1事件」といい,抗告人の申立てに係る事件を「第2事件」という。)。

2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)相手方と抗告人は,平成23年に婚姻をしたが,平成29年8月9日に離婚をした。
(2)相手方は,令和元年8月7日,抗告人に対し,財産の分与に関する処分の調停の申立てをした。
(3)上記の調停事件は,令和元年11月,不成立により終了したため,上記申立ての時に第1事件の申立てがあったものとみなされた(家事事件手続法272条4項)。
(4)抗告人は、令和2年3月,相手方に対し,第2事件の申立てをした。 
(5)原々審は,第1事件及び第2事件の各申立てをいずれも却下する審判をした。
(6)抗告人は,上記審判に対する即時抗告(以下「本件即時抗告」という。)をした。

3 抗告人の抗告理由のうち第1事件に係る部分について
(1)原審は,要旨次のとおり判断して,本件即時抗告のうち第1事件に係る部分を却下した。
 第1事件の申立てを却下する審判は,第1事件において抗告人が受けられる最も有利な内容であり,抗告人は抗告の利益を有するとはいえないから,即時抗告をすることができず,本件即時抗告のうち上記部分は不適法である。

(2)しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 家事事件手続法156条5号は,財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対しては,夫又は妻であった者が即時抗告をすることができるとしている。これは,財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対しては,当該審判の内容等の具体的な事情のいかんにかかわらず,夫又は妻であった者はいずれも当然に抗告の利益を有するものとして,これらの者に即時抗告権を付与したものであると解される。
 したがって,財産分与の審判の申立てを却下する審判に対し,夫又は妻であった者である当該申立ての相手方は,即時抗告をすることができるものと解するのが相当である。


 以上と異なる見解に立って,本件即時抗告のうち第1事件に係る部分を却下した原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原決定中,主文第1項は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

4 その余の抗告理由について
 民法768条2項ただし書所定の期間の経過を理由に第2事件の申立てを却下すべきものとした原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

5 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 山口厚 裁判官 安浪亮介)

以上:3,313文字

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