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未成年者祖母を民法第766条1項監護者と認めない最高裁判決紹介

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令和 3年 4月 5日(月):初稿
○「未成年者祖母に民法第766条面会交流を認めない最高裁判決紹介」の続きで、 父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないとした同じ日付の令和3年3月29日最高裁判決を紹介します。

○原決定の令和元年11月29日大阪高裁決定は、現時点では公刊された判例集に掲載されていないようですが、「未成年者祖母を民法第766条1項監護者と指定した高裁決定紹介」に記載した令和2年1月16日大阪高裁決定(判タ1479号51頁)と同趣旨と思われます。

民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前3項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。


○最高裁は、前記民法第766条は、あくまで父母に適用され、祖父母には適用されないとしていますが、家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は「家庭裁判所では、子どもの養育に関わっている祖父母などの第三者を『監護者』と認めたり、『面会交流』を認めたりした判断がこれまでいくつも出ている。最高裁は、民法の条文の文言だけの解釈で切り捨ててしまっていて、社会の実情を理解していない判断だ」と批判し、そのうえで「父母が子どもの面倒を十分にみられないために祖父母や親族が、親代わりになるケースは多くあると考えられる。子どもの福祉や権利を最優先に考えるべきで、第三者も監護者となれるよう、法改正などを議論すべきだ」と話しています。

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主   文
原決定を破棄し,原々審判を取り消す。
相手方の本件申立てを却下する。
手続の総費用は相手方の負担とする。

理   由
抗告代理人○○○○,同○○○○の抗告理由について
1 本件は,A(以下「本件子」という。)の祖母である相手方が,本件子の実母である抗告人Y1及び養親である抗告人Y2を相手方として,家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てた事案である。

2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1) 抗告人Y1と前夫は,平成21年12月,本件子をもうけたが,平成22年2月,本件子の親権者を抗告人Y1と定めて離婚した。

(2) 抗告人Y1及び本件子は,平成21年12月,抗告人Y1の母である相手方と相手方宅で同居するようになり,以後,抗告人Y1と相手方が本件子を監護していた。

(3) 抗告人Y1は,平成29年8月頃,本件子を相手方宅に残したまま,相手方宅を出て抗告人Y2と同居するようになり,以後,相手方が単独で本件子を監護している。

(4) 抗告人Y1と抗告人Y2は,平成30年3月に婚姻し,その際,抗告人Y2は,本件子と養子縁組をした。

3 原審は,要旨次のとおり判断して,本件子の監護をすべき者を相手方と指定すべきものとした。
子の福祉を全うするためには,民法766条1項の法意に照らし,事実上の監護者である祖父母等も,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることができると解すべきである。相手方は,事実上本件子を監護してきた祖母として,本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることができる。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 民法766条1項前段は,父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者その他の子の監護について必要な事項は,父母が協議をして定めるものとしている。そして,これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。」と規定していることからすれば,同条2項は,同条1項の協議の主体である父母の申立てにより,家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。

他方,民法その他の法令において,事実上子を監護してきた第三者が,家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく,上記の申立てについて,監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。なお,子の利益は,子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照),このことは,上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

以上によれば,民法766条の適用又は類推適用により,上記第三者が上記の申立てをすることができると解することはできず,他にそのように解すべき法令上の根拠も存しない。

したがって,父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。


(2) これを本件についてみると,相手方は,事実上本件子を監護してきた者であるが,本件子の父母ではないから,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできない。したがって,相手方の本件申立ては,不適法というべきである。

5 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,その余の抗告理由につき判断するまでもなく,原決定は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,原々審判を取り消し,相手方の本件申立てを却下すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚 裁判官 深山卓也)


以上:2,613文字

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