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未成年者祖母に民法第766条面会交流を認めない最高裁判決紹介

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令和 3年 4月 4日(日):初稿
○「未成年者祖母を民法第766条1項監護者と指定した高裁決定紹介」の続きで、社会の実情を無視した形式判断である極めて残念な、 父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないとした令和3年3月29日最高裁判決(裁判所HP裁判例結果詳細)を紹介します。

○家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は「家庭裁判所では、子どもの養育に関わっている祖父母などの第三者を『監護者』と認めたり、『面会交流』を認めたりした判断がこれまでいくつも出ている。最高裁は、民法の条文の文言だけの解釈で切り捨ててしまっていて、社会の実情を理解していない判断だ」と批判し、そのうえで「父母が子どもの面倒を十分にみられないために祖父母や親族が、親代わりになるケースは多くあると考えられる。子どもの福祉や権利を最優先に考えるべきで、第三者も監護者となれるよう、法改正などを議論すべきだ」と話していますが、全く同感です。

民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前3項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。


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主   文
原決定を破棄し,原々審判に対する相手方らの抗告を却下する。
抗告手続の総費用は相手方らの負担とする。

理   由
抗告代理人○○○○,同○○○○の抗告理由について
1 本件は,A(以下「本件子」という。)の祖父母である相手方らが,本件子の父である抗告人を相手方として,家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として相手方らと本件子との面会及びその他の交流(以下「面会交流」という。)について定める審判を申し立てた事案である。

2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1) 抗告人は,平成24年11月,相手方らの子であるBと婚姻し,平成28年8月,Bとの間に本件子をもうけた。

(2) 抗告人は,B,本件子及び相手方らと相手方ら宅で同居していたが,平成29年1月頃,相手方ら宅を出て別居するようになった。

(3) 抗告人とBは,平成29年3月以降,1週間又は2週間ごとに交替で本件子を監護し,相手方らは,Bによる本件子の監護を補助していた。

(4) Bは,平成30年6月に死亡し,以後,抗告人が本件子を監護している。

3 原審は,要旨次のとおり判断して,相手方らの本件申立てを不適法として却下した原々審判を取り消し,本件を原々審に差し戻した。
父母以外の事実上子を監護してきた第三者が,子との間に父母と同視し得るような親密な関係を有し,上記第三者と子との面会交流を認めることが子の利益にかなうと考えられる場合には,民法766条1項及び2項の類推適用により,子の監護に関する処分として上記の面会交流を認める余地がある。相手方らは,本件子の祖父母であり,Bを補助して事実上本件子を監護してきた者であるから,相手方らと本件子との面会交流を認めることが本件子の利益にかなうか否かなどを審理することなく,本件申立てを不適法として却下することはできない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 民法766条1項前段は,父母が協議上の離婚をするときは,父又は母と子との面会交流その他の子の監護について必要な事項は,父母が協議をして定めるものとしている。そして,これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。」と規定していることからすれば,同条2項は,同条1項の協議の主体である父母の申立てにより,家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。

他方,民法その他の法令において,事実上子を監護してきた第三者が,家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく,上記の申立てについて,監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。なお,子の利益は,子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照),このことは,上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

以上によれば,民法766条の適用又は類推適用により,上記第三者が上記の申立てをすることができると解することはできず,他にそのように解すべき法令上の根拠も存しない。

したがって,父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。


(2) これを本件についてみると,相手方らは,Bによる本件子の監護を補助してきた者であるが,本件子の父母ではないから,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として相手方らと本件子との面会交流について定める審判を申し立てることはできない。したがって,相手方らの本件申立ては,不適法というべきである。

5 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れない。
そして,子の監護に関する処分の申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができるのは「子の父母及び子の監護者」(家事事件手続法156条4号)であるところ,前記2の事実関係によれば,相手方らが本件子の「父母」又は「監護者」のいずれにも当たらないことは明らかである。
したがって,原々審判に対する相手方らの抗告は不適法であるから,これを却下することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚 裁判官 深山卓也)
以上:2,688文字

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