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婚姻費用請求権は離婚によって消滅するとした高裁決定紹介

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令和 2年10月25日(日):初稿
○「婚姻費用請求権は離婚後も消滅消滅しないとした最高裁決定紹介」の続きで、その原審である平成30年11月13日札幌高裁決定(家庭の法と裁判27号40頁)を紹介します。

○被抗告人が、婚姻費用分担を申し立て、原審平成30年9月20日釧路家裁北見支部が、抗告人に対して未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命ずる審判をしたのに対し、抗告人が即時抗告を申し立てました。

○これに対し札幌高裁決定は、被抗告人と抗告人との間では、既に調停離婚が成立し、同調停においては、財産分与については合意されず、また、いわゆる清算条項も定められなかったことが認められるから、上記調停離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅し、被抗告人が抗告人に対して未払の過去の婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法として許されないとしました。

○そして、未払の過去の婚姻費用の清算については、財産分与の裁判において、未払の過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるので(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決(民集32巻8号1529頁)参照)、本件において、被抗告人は抗告人に対して、財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付を求めることが可能としました。

○この決定は、令和2年1月23日最高裁決定で破棄され、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないとされました。当然と言えば当然の決定です。財産分与で未払い婚姻費用の清算をするとの理屈だと婚姻費用請求権が曖昧に処理される可能性が高いからです。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 被抗告人の本件申立てを却下する。
3 手続の総費用は各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由等
 抗告人は,釧路家庭裁判所北見支部平成30年(家)第316号婚姻費用分担申立事件について,平成30年9月20日に同裁判所がした審判(抗告人に対して未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命じたもの)に対し,即時抗告を申し立てた。
 抗告の趣旨及び理由は,別紙「抗告状」(写し)に記載のとおりであり,被抗告人の反論及び当審における主張は,別紙「主張書面」(写し)に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 以下のとおり補正するほか、原審判書「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」の1(1)ないし(3)に記載のとおりであるから,これを引用する。 
(1)原審判書1頁23行目及び2頁1行目の各「当庁」をいずれも「釧路家庭裁判所北見支部」と改める。

(2)原審判書1頁23行目の末尾を改行して,以下のとおり加える。
「上記調停においては,被抗告人と抗告人が調停離婚すること,長男及び二男の親権者をいずれも被抗告人と定めること,被抗告人と抗告人との間の年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めること,が合意されたが,財産分与については合意されず,また,いわゆる清算条項も定められなかった。」

(3)原審判書1頁24行目から25行目までを削る。

(4)原審判書2頁2行目の「上記調停」を「同調停」と改める。

2 検討
(1)婚姻費用分担審判は,「夫婦の一方が婚姻から生ずる費用を負担すべき義務があることを前提として,その分担額を形成決定するものである」(最高裁判所昭和40年6月30日大法廷決定(民集19巻4号1114頁)参照)ところ,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容及び方法等が形成されないうちに夫婦が離婚したときは,婚姻の存続を前提とする婚姻費用分担請求権は消滅し,将来に向かって婚姻費用分担の内容及び方法等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等を婚姻費用の分担としてその内容及び方法等を形成することもできないものというべきである。

(2)上記1のとおり,被抗告人と抗告人との間では,平成30年7月11日に調停離婚が成立し,同調停においては,財産分与については合意されず,また,いわゆる清算条項も定められなかったことが認められる。そうすると,上記調停離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅し,被抗告人が抗告人に対して未払の過去の婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法として許されないというべきである。

 未払の過去の婚姻費用の清算については,財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるのであり(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決(民集32巻8号1529頁)参照),本件において,被抗告人は抗告人に対して,財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付を求めることが可能であって,相当であるというべきである。

3 よって,被抗告人の本件申立ては不適法であり却下すべきところ,本件申立てが適法であることを前提に抗告人に対し未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命じた原審判は相当ではないから,原審判を取消し,被抗告人の本件申立てを却下することとして,主文のとおり決定する。札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 草野真人 裁判官 飯淵健司 裁判官 下澤良太
以上:2,284文字

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