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不貞行為を認める書面作成を理由に不貞行為を認定した地裁判決紹介

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令和 2年10月15日(木):初稿
○不貞行為が発覚すると、不貞行為者に対し、不貞行為をしていた時期・回数等具体的内容を記載させて署名押印させて保管する事案が良くあります。そのような書面を作成しても後に損害賠償請求された場合に不貞行為を否認する事案も良くあります。その場合、不貞行為をしたことを認めた書面を証拠として提出することになりますが、この書面から不貞行為を認定した平成31年3月22日東京地裁判決(LEX/DB)を紹介します。

○認定した不貞行為は、17日間に3回ですが、3回の不貞行為で500万円の慰謝料請求に対し、不貞配偶者と不貞行為第三者に連帯して金150万円の支払を命じています。期間と回数のわりには、相当慰謝料金額は高すぎる感がしますが、この不貞行為が原因で離婚に至ったことを考慮して高くなったと思われます。

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主   文
1 被告らは,原告に対し,連帯して,165万円及びこれに対する平成29年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告らは,原告に対し,連帯して,586万4000円及びこれに対する平成29年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,原告の妻であった被告C(以下「被告C」という。)と被告B(以下「被告B」という。)が不貞行為をしたとして,原告が,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権として,586万4000円(慰謝料500万円,弁護士費用86万4000円)及びこれに対する不法行為の後である平成29年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いがない)
(1)原告と被告Cは,平成20年7月1日に婚姻した。
(2)原告は、同日,被告Cの子(長男)を養子縁組した。
(3)その後,原告と被告Cとの間には,平成20年○月に長女,平成23年○月に次男が誕生した。また,平成22年○月には次女が誕生したが,同年2月に死亡した。 
(4)原告と被告Cは,平成29年12月22日に,協議離婚をした。

2 争点及び当事者の主張
(1)被告Cと被告Bが不貞関係にあったか
(原告の主張)
 被告Cと被告Bは,遅くとも平成29年11月20日から交際を開始し,複数回不貞行為を行った。

(被告Cの主張)
 被告Cと被告Bは,相談相手以上の関係はない。被告Cは,平成29年12月7日の早朝に,原告に対して,被告Bと不貞関係にあったことを認めたことはあるが,これは,原告が,被告Bとの不貞を決めつけて原告を責め立て,これを否定しても余計に被告Cを貶めるような状況であったため,やむなく認めたにすぎない。
 また,被告Cは,被告Bと不貞行為を行ったことを認める旨の文書を作成しているが,これは,原告と別居した後に,被告Cが自宅に帰宅すると原告が待機しており,携帯電話をよこせ,離婚前から浮気をしていたことを認める文書を書け,口ついてんだからでけえ声でしゃべれよ,書いたら慰謝料半額にしてやるぞ等を言いながら1時間以上居座ったため,家から出てもらうためにやむなく作成したものであり,被告Cの真意によるものでない。

(被告Bの主張)
 被告Cと被告Bは不貞関係にない。

(2)損害
(原告の主張)
 被告Cと被告Bとの不貞行為により,原告は,被告Cと離婚に至るとともに,わが子として愛情をもって育ててきた長男と離縁するに至り,著しい精神的苦痛を受けた。
 また,被告Cは,別居にあたっての話合いの際に長女を傷つける言動をしたり,原告と別居した後にも,長男と被告Cが暮らす自宅にて被告Bと性行為を行っていることが発覚するなど,原告の精神的苦痛は増大した。
 したがって,原告が被った精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。
 また,被告らに対する慰謝料請求のために,弁護士費用として86万4000円を支払う必要が生じた。
 以上より,586万4000円が損害として生じている。

(被告らの主張)
 争う。

(3)原告が慰謝料支払債務を免除したか
(被告Cの主張)
 原告は,被告Cとの会話において,被告らの不貞について慰謝料請求の準備はしているが,これは,被告Cが原告の会社や友人を巻き込んだ嫌がらせをしたり,原告の提示する離婚の条件を不服として裁判を起こすなどしてきた場合に,慰謝料請求で対抗するためである,そういうことがなければ,もめるのは嫌だから,離婚条件に関する話はこれで終わりにしたいという趣旨の話をしている。

 これは,被告Cが原告の会社や友人を巻き込んだり,裁判所を利用して離婚の条件に関して争うことをしないのであれば,慰謝料債務を免除する,との解除条件付き債務免除の意思表示である。そして,被告Cは,解除条件に該当することをしていないのであるから,原告の債務免除の意思表示は現在も有効である。

(原告の主張)
 否認ないし争う。慰謝料支払債務を免除したことはない。

第3 当裁判所の判断
1 前提事実に加え,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(1)原告は,平成29年12月7日(以下,日付はいずれも平成29年のものであるため,年の記載を省略する。),午前5時45分頃に帰宅したところ,子どもたちのみが自宅におり,被告Cが自宅にいなかったため,被告Cに連絡をとった。原告は,午前6時30分頃に被告Cに会い,何をしていたかを尋ねた際,被告Cは,被告Bとホテルにいた旨を述べた。原告は,被告Cから被告Bの電話番号を聞き,被告Bに電話をし,妻と何回くらい浮気をしたのかと問うと,被告Bは3回くらいである旨答えた(甲5,原告本人,被告C本人)

(2)原告は,12月12日,被告Cと話合いをした。その際,被告Cは,4回くらい浮気をしていたことを認めた。また,原告が慰謝料請求の準備を進めている旨を述べると,被告Cは,「お金はいいとかさ,全部うそだったってことか」と返答した。これに対して原告は,「あれは初日の話でしょ。頭がてんぱってた。」,「今の段階だったら慰謝料請求するつもりはないです,準備はしていますでも。理由はあなたがこれ以上D,まあDさん使って引っかき回したり,私の会社行ったり私の親族友人,その他まあ,私が嫌だと思うことをした時点で私もう徹底的に争うと決めたんで」と述べ,被告は,「Dさん使ってって,別になにもしてないけど」と述べた。(甲6の1・2)

(3)原告は,同日,長女と次男を連れて自宅を出て,以後,原告と長女及び次男は原告の実家で生活し,被告Cと長男は自宅で生活をすることとなった。(甲9,乙4)

(4)原告は,12月27日に,被告Cの居住する自宅に赴き,被告Cに対して,不貞を認める旨の書面を作成するよう求めた。被告Cはこれに応じ,11月20日,12月2日,12月7日に,被告Bと複数回にわたり,ラブホテルに行き,不貞行為をしたことを認める旨の書面(以下「本件文書」という。)を作成した。(甲1,原告本人,被告C本人)

2 争点(1)(被告Cと被告Bが不貞関係にあったか)について
 上記認定事実のとおり,被告Cは,12月7日の早朝に,子どもを自宅に残して外出していた理由を問われ,被告Bと不貞行為をしていたことを述べており,その後も,12月12日の話合いにおいて,4回くらい不貞行為をしていたことを認め,同月28日には,被告Bと11月20日,12月2日,12月7日に不貞行為をしていたことを認める旨の本件文書を作成している。

 不貞行為をしていないのに,あえて被告Bと不貞行為をしていたと認めることは考えにくいこと,本件文書においては,具体的な日付も含めて不貞行為を行ったことを認めていることからして,被告Cは,少なくとも,11月20日,12月2日,12月7日に,被告Bと不貞行為を行っていたことが認められる。

 これに対し,被告Cは,いずれの日も,被告Bと会ってはいたものの,原告との離婚等について相談をしていただけで不貞行為は行っていない,12月7日に被告Bと不貞をしていたと認めたのは,原告が不貞行為していたと決めつけて責め立てたため,やむなく認めたにすぎず,本件文書を作成したのも原告が激高していたためやむなく作成したものであって,いずれも真意ではない旨主張し,被告C本人は同旨の供述をする。

 しかし,12月12日にされた原告と被告Cとの話合いの状況(甲6の1・2)をみても,被告Cが一方的に原告の述べる内容を認めるようなものではなく,たとえば,上記1(2)で認定したように,原告が慰謝料請求の準備をしている旨述べた際に,被告Cは,「お金はいいとかさ,全部うそだったってことか」と述べたり,原告が,これ以上Dさんを使って引っかき回すなどしたら慰謝料請求をする旨述べると「Dさん使ってって,別になにもしてないけど」と述べるなど,原告の言うことを否定できないような状況や関係性であったとは考えられず,このような状況において,あえて被告Bと不貞関係にあったと虚偽を述べたとは考えられない。

 本件文書も,上記のとおり,被告Cが,被告Bと不貞関係にあったことを一貫して認めていた中で作成されたものであり,また,原告本人及び被告C本人によれば,原告は,本件文書作成時点で12月2日の不貞行為は疑っておらず,被告Cは,原告から追及されていない同日の不貞を認める旨記載したと認められ,原告への恐怖から真意に基づかない内容を記載したとは考えられない

 以上より,被告Cは,少なくとも,11月20日,12月2日,12月7日に,被告Bと不貞行為を行っていたと認められ,その他これを覆すに足りる証拠はない。

3 争点(2)(損害)について
 原告と被告Cは平成20年7月1日に婚姻し,3人の子がいたところ,被告Cと被告Bの不貞により,原告は,被告Cと離婚に至り,長男とも離縁するに至ったこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料として150万円を相当と認める。

 また,認容額その他の事情から,弁護士費用として15万円を損害と認める。

4 争点(3)(原告が慰謝料支払債務を免除したか)について
 被告Cは,原告が,被告Cとの会話において,原告の会社や友人を巻き込んだり,裁判所を利用して離婚の条件に関して争うことをしないのであれば,被告Bとの不貞行為について慰謝料債務を免除する,との解除条件付き債務免除の意思表示をしたと主張する。
 しかし,被告Cが指摘する会話部分は,上記1(2)に認定した会話部分であると解されるところ,原告は,現段階では慰謝料請求を実際にすることまでは考えていないが,慰謝料請求の準備はしていること,原告が嫌だと思うことをされたら慰謝料請求をする旨述べているものにすぎず,具体的な条件を示したものでない上,そもそも夫婦間の会話であって確定的な意思表示をする趣旨とは解されないことからして,(解除条件付きであれ)債務を免除するとの意思表示をしたとは解されない。
 したがって,原告が解除条件付き債務免除の意思表示をしたとは認められない。

第4 結論
 よって,原告の被告らに対する請求は,165万円及びこれに対する不法行為の後である平成29年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第17部 裁判官 寺内康介
以上:4,839文字

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