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家事事件手続法で財産分与当事者に明渡命令可能とした最高裁判決紹介

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令和 2年10月 1日(木):初稿
○「元夫財産分与取得不動産から居住者元妻に退去を否認した高裁決定紹介」の続きで、その許可抗告審の令和2年8月6日最高裁決定(裁判所時報1749号1頁)を紹介します。

○抗告人元夫が、相手方元妻に対し、財産の分与に関する処分の審判を申し立てました。第一審平成31年3月28日横浜家裁審判(LEX/DB)は、抗告人夫に209万円の支払を命じ、相手方元妻に審判確定の日から3ヶ月以内に本件建物を明け渡せと命じました。

○これに対し、元妻が抗告しましたが、抗告審令和元年6月28日東京高裁決定(LEX/DB)は、本件不動産は相手方の名義で、相手方に分与される財産であること、その場合、自己の所有建物について、占有者に対して明渡しを求める請求は民事訴訟ですべきものであって、これを家事審判手続で行うことはできないとして、原審判を変更し、相手方に対し、抗告人への209万9341円支払のみを命じました。

○これに対し元夫が、許可抗告をして、令和2年8月6日最高裁決定(裁判所時報1749号1頁)は、家庭裁判所は、財産分与の審判において、当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき、当該他方当事者に分与しないものと判断した場合、その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは、家事事件手続法154条2項4号に基づき、当該他方当事者に対し、当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当であり、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すとしました。

○関係家事事件手続法の規定は以下の通りです。家事事件手続法は、従前の家事審判法が廃止されて、平成25年1月1日から施行されていますが、その内容・解釈等シッカリ勉強しておく必要があります。最高裁は、原審が明渡しを求める請求は民事訴訟ですべきとした点について、家事事件手続法154条2項4号は,このような迂遠な手続を避け,財産分与の審判を実効的なものとする趣旨から,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者に対し,上記権利関係を実現するために必要な給付を命ずることができるとしました。

家事事件手続法154条(給付命令等)
 家庭裁判所は、夫婦間の協力扶助に関する処分の審判において、扶助の程度若しくは方法を定め、又はこれを変更することができる。
2 家庭裁判所は、次に掲げる審判において、当事者(第二号の審判にあっては、夫又は妻)に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分の審判
二 夫婦財産契約による財産の管理者の変更等の審判
三 婚姻費用の分担に関する処分の審判
四 財産の分与に関する処分の審判
3 家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判において、子の監護をすべき者の指定又は変更、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項の定めをする場合には、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。
4 家庭裁判所は、離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判において、当事者に対し、系譜、祭具及び墳墓の引渡しを命ずることができる。


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主   文
原決定を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理   由
抗告代理人○○○○,同○○○の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)抗告人と相手方は,平成12年に婚姻したが,平成29年に離婚した。

(2)抗告人と相手方が,婚姻中にその協力によって得た財産として,抗告人名義の原々審判別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)等があり,本件建物は現在相手方が占有している。

2 本件は,抗告人が,相手方に対し,財産の分与に関する処分の審判(以下「財産分与の審判」という。)を申し立てた事案である。家庭裁判所が,家事事件手続法154条2項4号に基づき,相手方に対し,抗告人に本件建物を明け渡すよう命ずることができるか否かが争われている。

3 原審は,抗告人名義の本件建物等の財産を相手方に分与しないものと判断した上で,抗告人に対し相手方への209万9341円の支払を命じたが,要旨次のとおり判断して,家事事件手続法154条2項4号に基づき相手方に対し抗告人への本件建物の明渡しを命ずることはしなかった。

 財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産を他方当事者が占有する場合に当該不動産を当該他方当事者に分与しないものとされたときは,当該一方当事者が当該他方当事者に対し当該不動産の明渡しを求める請求は,所有権に基づくものとして民事訴訟の手続において審理判断されるべきものであり,家庭裁判所は,家事審判の手続において上記明渡しを命ずることはできない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 財産分与の審判において,家庭裁判所は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めることとされている(民法768条3項)。もっとも,財産分与の審判がこれらの事項を定めるものにとどまるとすると,当事者は,財産分与の審判の内容に沿った権利関係を実現するため,審判後に改めて給付を求める訴えを提起する等の手続をとらなければならないこととなる。

そこで,家事事件手続法154条2項4号は,このような迂遠な手続を避け,財産分与の審判を実効的なものとする趣旨から,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者に対し,上記権利関係を実現するために必要な給付を命ずることができることとしたものと解される。

そして,同号は,財産分与の審判の内容と当該審判において命ずることができる給付との関係について特段の限定をしていないところ、家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の財産につき,他方当事者に分与する場合はもとより,分与しないものと判断した場合であっても,その判断に沿った権利関係を実現するため,必要な給付を命ずることができると解することが上記の趣旨にかなうというべきである。

 そうすると,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき,当該他方当事者に分与しないものと判断した場合,その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは,家事事件手続法154条2項4号に基づき,当該他方当事者に対し,当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当である。 

5 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 木澤克之 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕 裁判官 山口厚 裁判官 深山卓也)

以上:3,073文字

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