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養女と妻への婚姻費用として月額26万円支払を命じた高裁決定紹介

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令和 1年 7月30日(火):初稿
○「養女と妻への婚姻費用として月額28万円支払を命じた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審の平成30年10月11日大阪高裁決定(判タ1460号119頁)全文を紹介します。

○抗告人夫(原審相手方)と別居中の相手方妻(原審申立人)が、抗告人に対し、婚姻費用分担金の支払を申し立てたところ、原審大阪家裁は、相手方妻がその前夫から支払を受けた養育費は相手方妻の収入ではないととして、抗告人に対し、相手方に344万3446円を支払い、また婚姻費用の分担金として、当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで、平成30年7月から平成32年3月までは月額28万円、平成32年4月以降は月額21万円を、毎月末日限り相手方に支払うよう命じていました。

○そこで、抗告人が抗告しましたが、大阪高裁は、抗告人の前夫が相手方に支払った養育費を240万円の限度で過去の未払婚姻費用から控除すべきであるとの限度で理由があるとして、原審判を変更し、抗告人に対し、相手方に140万3446円を支払い、また婚姻費用の分担金として、平成30年10月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで、平成32年3月までは26万円を、平成32年4月以降は16万円を、毎月末日限り相手方に支払うよう命じました。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 抗告人は,相手方に対し,140万3446円を支払え。
3 抗告人は,相手方に対し,平成30年10月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,次の金額を,毎月末日限り支払え。
(1) 平成32年3月まで 26万円
(2) 平成32年4月以降 16万円
4 手続費用は原審及び抗告審とも各自の負担とする

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙即時抗告申立書及び抗告理由書(各写し)のとおり

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判を上記のとおり変更することが相当であると判断する。
その理由は,次のとおり補正し,次項に抗告理由に対する判断を補足するほかは,原審判の理由説示のとおりである。
(1) 原審判2頁1行目の末尾に「当事者双方とも4年制大学を卒業している。」を,8行目の「私立高校」の次に「2校(平成28年4月以降は1校。)」をそれぞれ加え,18行目の「現在も」から19行目までを「平成29年12月18日付けで,座位や立位での仕事が長くなるとリンパ浮腫の症状が強くなり,健常者と同じようには就労できないと考えるとの診断(甲19)を受けている。」と改める。

(2) 同4頁10行目の「大学受験費用」の次に「(入学しなかったL大学の入学金を含む。)」を加え,11行目の「Dの休学費用や」を削除する。

(3) 同5頁3行目の「別紙1」を「別紙」と改め,20行目から6頁8行目までを次のとおり改める。
「前記認定のとおり,相手方は,平成28年10月,転居に伴い勤務先を退職し,再就職の見込みは立っていないものの,教員免許を有しており,平成28年3月までは2校の英語科非常勤講師として勤務していたのであるから,上記稼働能力を考慮し,その潜在的稼働能力は,平成27年当時の年収である約250万円と認めるのが相当である。

 相手方は,前記のとおり,○○,○○および○○を含む手術を受けたとして,就労に制約を受ける旨の診断を受けているが,手術(平成23年9月)後の平成25年4月からは二つの高校で非常勤講師として勤務していたのであり,その退職理由も手術後の就労制限を理由とするものとは認められない。これによれば,上記のとおり,相手方の潜在的稼働能力を考えるに当たっては,手術後に実際に得ていた収入を基礎とするのが相当である。」

(4) 同6頁25行目の「いないものの,」の次に「,当初,私立大学であるM大学への進学に賛成しており,」を,末行の「ことや,」の次に「当事者双方の学歴,」をそれぞれ加える。

(5) 同7頁5行目の「教育費」の次に「(公立高校生の子がいる世帯の年間平均収入864万4154円に対する公立高校の学校教育費相当額33万3844円)」を,6行目の「学費については,」の次に「抗告人と相手方の収入合計額は抗告人の減収後においても上記年間平均収入の2倍強に上るから,標準的算定方式によって婚姻費用分担金を試算すれば,結果として上記学校教育費相当額を超える額がその中で考慮されている上,」をそれぞれ加え,7行目から8行目にかけての「基づき」から9行目の「鑑み」までを「基づく月額14万円の養育費とは別に平成27年12月頃には受験費用等として合計120万円の支払を受けていることに鑑み」と改める。

(6) 同7頁11行目の「60万円」を「250万円」と,13行目の「34~36万円の枠の中間付近」を「32~34万円の枠の範囲内」と,16行目の「34万円」を「32万円」と,19行目の「60万円」を「250万円」と,21行目の「28~30万円の枠の下方」を「26~28万円の枠の範囲内」と,23行目の「28万円」を「26万円」と,25行目の「60万円」を「250万円」と,8頁1行目の「20~22万円の枠の中間」を「16~18万円の枠の範囲内」と,3行目の「21万円」を「16万円」とそれぞれ改める。

(7) 同8頁24行目から9頁8行目までを次のとおり改める。
「 (8) 以上に説示したとおり,本件婚姻費用分担金は,平成28年10月から平成30年1月までは月額32万円,平成30年2月から平成32年3月までは月額26万円,平成32年4月以降は16万円とするのが相当である。そうすると,平成28年10月から平成30年9月までの未払婚姻費用分担金の額は一応720万円(32万円×16か月+26万円×8か月)と試算できる。

 もっとも,相手方は,前記説示のとおり,平成28年10月から平成30年12月分までの養育費として,前夫から378万円(14万円×27か月)を受領している。そうすると,前記試算に係る未払婚姻費用分担金720万円(長女の生活費を含むもの)から,長女の生活費を含まない未払婚姻費用分担金480万円(以下に説示のとおり。)の差額である240万円の限度においては,前夫の上記養育費支払によって要扶養状態が解消されたものとして,未払婚姻費用分担金720万円から控除するのが相当である。その結果,平成28年10月から平成30年9月までの未払婚姻費用分担金の額は480万円となる。

 すなわち,前記認定の当事者双方の収入を前提として,標準的算定方式の表10(婚姻費用・夫婦のみの表)によって,長女が相手方と同居していない場合の婚姻費用について検討すると,平成28年10月から平成30年1月までの婚姻費用分担金については月額22万(22~24万円の範囲内),平成30年2月以降の婚姻費用分担金については前記説示(原審判の第3,3(5)を補正)のとおり月額16万円と試算できる。したがって,長女の生活費を含めずに,平成28年10月から平成30年9月までの未払婚姻費用分担金の額を算定すれば480万円となる(22万円×16か月+16万円×8か月)。

4 以上によれば,抗告人は,相手方に対し,平成28年10月から平成30年9月までの婚姻費用分担金合計480万円から既払金339万6554円を控除した140万3446円については即時に,当事者の別居解消又は離婚に至るまでの間,平成30年10月から平成32年3月までは月額26万円,平成32年4月以降は月額16万円を,毎月末日限り支払う義務がある
。」

(8) 同10頁(別紙)の「支払月 H28.10」に係る資料欄に「乙8」を加える。

2 抗告理由につき補足する。
(1) 抗告人は,相手方が虚偽の暴力事件を捏造し,別居を決行したことを婚姻費用分担金の算定において考慮すべきであると主張するが,上記主張に理由のないことは原審判を引用して説示したとおりである。抗告人の上記主張は採用できない。

(2) 抗告人は,相手方には,年額253万0895円に相当する潜在的労働能力があるとして,これを収入額として婚姻費用分担金を算定すべきであると主張する。上記主張は,相手方の潜在的労働能力を年額250万円程度とみるべきであるとの限度で理由のあることは,原審判を補正の上引用して説示したとおりである。

(3) 抗告人は,前夫の支払った養育費を婚姻費用の既払とみなすべきであると主張する。上記主張は,前夫の支払った養育費を240万円の限度で過去の未払婚姻費用から控除すべきであるとの限度で理由があることは原審判を補正の上引用して説示したとおりである。

(4) 抗告人は,その他にも縷々主張するが,上記判断を動かすに足りるものではない。

3 よって,上記判断と抵触する限度において原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。
 大阪高等裁判所第9民事部 (裁判長裁判官 松田亨 裁判官 上田日出子 裁判官 檜皮高弘)
以上:3,688文字

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