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氏の変更許可申立要件「やむを得ない事由」解釈適用説明判例紹介

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平成30年 6月22日(金):初稿
○「戸籍法第107条1項の氏の変更が認められる場合-祖父母の氏への変更は?」の続きです。
ここで廃絶家の氏を復活したり、祖先の氏に復することのみを目的とする氏の変更は認められないとの昭和59年7月12日大阪高裁決定(判タ537号222頁)全文を紹介していました。戸籍法107条第1項「やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」との規定の「やむを得ない事由」の解釈・適用についての一般論を説明した昭和34年1月12日東京高裁決定(東高民時報10巻1号1頁)全文を紹介します。

○事案は、離縁により、民法第816条「養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。」との規定により、旧姓に服さなければならなくなった申立人が旧養親の姓をそのまま使用するための氏の変更申立のようです。これに対し、現在の氏を称することが心理的、主観的に好ましいとか、そのほか現在の氏を称することにより多少の不便、不都合があるとかいうにすぎない場合は、「やむを得ない事由」には該当しないとして、申立を却下しています。

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抗告人 本間富男 外1名

 氏は名とともに人の同一性を識別するための標識であり、社会生活上きわめて重大な意義をもつものであるから、みだりにその変更を許すときは国家、社会の利益、秩序に悪影響を及ぼす虞があるというところから、わが現行法のもとでは、個人の意思のみによつてその変更を認めず、しかも名の場合よりも一層重要性を認めてその変更を厳重に制限し、「やむを得ない事由」がある場合に限つて家庭裁判所の許可を得て変更することができることになつている(戸籍法第107条第1項)。

 そしてここにいわゆる「やむを得ない事由」というのは、現在の氏の継続を強制することが社会観念上甚しく不当と認められる場合をいい、単に氏を変更する方が有利であるとか、現在の氏を称することが心理的、主観的に好ましいとか、そのほか現在の氏を称することにより多少の不便、不都合があるとかいうにすぎない場合はこれに含まれないものと解するを相当とする。


 ところが、本件の変更の許可申立の理由は「旧養家の氏『山崎』を称えてすでに相当の年月を経ており、社会経済的利益の維持及び今後の社会生活にとつても『山崎』として活動することが有利であり」、申立人(抗告人)富男が公務員として「今後の勤務関係において……私生活上の好ましくない家庭内の出来事を公然発表する結果となることは主観的に堪え難いことであり」、就学中の「3人の子供にとつても『本間』に復することは子供達の社会なりに好ましくなく」童心を傷けることを避けたいと希望し,また「個人的標識としても同一性認識上も従来の『山崎』の氏をもつて社会生活を営むことが必要であり」「個人の表示手段たる氏の変更により、申立人(抗告人)の社会生活上にも、その所掌する公務関係においても、多少なりとも同一性を惑わす結果により混乱は避け難いと思われる」というのにすぎないのであるから、このような事由は、氏を変更する「やむを得ない事由」に該当するということができないものといわなければならない。のみならず、本件のような場合に氏の変更を許すことは結局強行法規である民法第816条の趣旨にも反する結果を招来することとなるものと考えられる。そうだとすると本件氏の変更許可の申立は許すべきではなく、これを却下した原決定は相当である。
(川喜多・小沢・位野木)

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