平成30年 4月30日(月):初稿 |
○「ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80a全文紹介-和訳文例紹介3」を続けます。 ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80a全文の和訳例の復習です。 The rights of action to recover sums of money as damages for alienation of affections, criminal conversation, seduction, or breach of contract to marry are abolished. 第三者による夫婦関係の干渉、婚姻関係を意図的かつ不当に妨げる婚外性交、婚姻外関係に向けた誘惑、および婚約不履行に基づく金銭賠償請求権は、これをもって廃止する。 No act done within this state shall operate to give rise, either within or without this state, to any such right of action. 今後、ニューヨーク州内外を問わず、上記請求原因に該当する行為が生じても、ニューヨーク州においては、金銭賠償請求の対象とはならない。 No contract to marry made or entered into in this state shall operate to give rise, either within or without this state, to any cause or right of action for its breach. ニューヨーク州内で作成または締結された婚姻契約については、ニューヨーク州内外で、婚姻不履行の請求原因が発生するとしても、今後婚約不履行を求める請求原因とはならない。 ○上記の通り、米国ニューヨーク州では、不貞行為第三者に対する慰謝料請求権は廃止されています。その理由は、「不貞行為損害賠償請求-先進諸国法令ではむしろ例外的との解説発見2」記載の通り、「アメリカでは『浮気をしていた本人が一番悪いので、離婚になった全責任を負うべきである』という考えが一般的」、「アメリカ人らが考える浮気とは『浮気をした時点ですでに夫婦関係は破たんしている』と考えられており、夫婦関係がすでに破綻しているのだから、浮気相手に慰謝料を請求するべきではないというのが一般論」と言うことです。 ○「不貞行為損害賠償請求-先進諸国法令ではむしろ例外的との解説発見」記載の通り、英国でも50年近く前昭和45年の著名な法改正(Law Reform (Miscellaneous Provisions) Act 1970 (c.33))で不貞の相手方への損害賠償請求は明文で禁止されています。 ○上記ニューヨーク州N.Y.Civil Rights ACT80aでは、婚姻不履行の請求原因が生じても今後損害賠償請求はできないと読めます。ドイツでも、慰謝料請求は旧西ドイツの時代から一貫して認められておらず、「失われた愛の慰謝料は存在せず」という格言まであるとのことです。いずれにしても不貞行為第三者だけでなく、夫婦間においても愛情の喪失についての損害賠償請求は認められないと思われます。 ○日本の現状を振り返ると「不貞行為 制裁」とのキーワードでネット検索すると、「不倫の慰謝料請求でお困りの方 | 弁護士が最後まで徹底交渉します」、「その慰謝料1人で回収できますか | 着手金無料で不倫慰謝料を請求」なんて弁護士広告の他に「妻と不倫相手を徹底的に制裁してやりました! | 妻の不倫に ...」なんていう探偵事務所のHPがいっぱい出てきます。 ○不貞行為慰謝料請求権の存在を当然の前提にして仕事のタネにしていますが、その原因は、多くの裁判官もこの考えを当然の前提として、英米・ドイツの「失われた愛の慰謝料は存在せず」との考え方には思いもつかず、短期間の不貞行為でも100万円、200万円の高額慰謝料支払を認める判決を出し続けているからです。裁判官から言わせれば、日本にはニューヨーク州N.Y.Civil Rights ACT80aのような法律がないから仕方がないと言われそうですが、愛情の喪失に慰謝料を支払わせるとの考えは、愛情をお金で縛ることと同じです。この考えに思いもつかない裁判官が多いのが困ったことです。 以上:1,823文字
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