平成29年 7月 3日(月):初稿 |
○「ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80a全文紹介-和訳文例紹介3」で、ニューヨーク州のCivil Rights ACT80aでは、「第三者による夫婦関係の干渉(Alienation of affections)、慣習刑法上違法とされてきた配偶者ある者に対する会話(Criminal conversation)、婚姻外関係に向けた誘惑(Seduction)、および婚約不履行(breach of contract to marry)に基づく金銭賠償請求権は、これをもって廃止する」と規定されていること紹介していました。 ○不貞行為第三者への損害賠償請求に限らず婚約不履行についての損害賠償請求も禁止されており、要するに男女間の約束についての「心変わり」、「裏切り」等について金銭賠償請求は禁止されたと理解しております。このニューヨーク州のCivil Rights ACT80aに相当する規定は、アメリカ第1の人口があるカリフォルニア州もあるそうで、アメリカでは大半の州にあるのかと思っておりました。 ○ところが、「いいねを押したい弁護士ブログ」の武知俊輔弁護士記述「不貞慰謝料請求と諸外国の状況」によると「米国では州によって賠償請求訴訟の可否が分かれていますし(州法でAlienation of Affectionの制度を援用している州は、2009年度時点でUtahやIllinoiなど7つにとどまります)」とのことです。 ○この武知弁護士、若いのによく勉強しており、「英国では、著名な法改正(Law Reform (Miscellaneous Provisions) Act 1970 (c.33))により、不貞の相手方への損害賠償請求は明文で禁止され(s.4; “no person shall be titled to petition any court for, or include in a petition a claim for, damages from any other person on the ground for adultery..”)、現在まで引き継がれています(Matrimorical Causes Act 1973 (c.18), s54(1), Sch.3, instead Statue Law (Repeals) Act 1977 (c.18), Sch. Pt. VII etc.)。」と紹介しています。 ○この英国の著名な法改正、私は全く知りませんでした(^^;)。どうやらニューヨーク州のCivil Rights ACT80aのルーツは、英国の著名な法改正(Law Reform (Miscellaneous Provisions) Act 1970 (c.33))にあったようです。おそらく1970年の改正と思われ、元号では昭和45年ですから、平成29(2017=昭和92)年からは47年も前に不貞行為第三者への慰謝料請求は禁止されたようです。 ○「Law Reform (Miscellaneous Provisions) Act 1970」によると[29th May 1970]に制定された「1970 CHAPTER 33」の前文は以下の通りです。 An Act to abolish actions for breach of promise of marriage and make provision with respect to the property of, and gifts between, persons who have been engaged to marry; to abolish the right of a husband to claim damages for adultery with his wife; to abolish actions for the enticement or harbouring of a spouse, or for the enticement, seduction or harbouring of a child; to make provision with respect to the maintenance of survivors of void marriages; and for purposes connected with the matters aforesaid. ○英語能力不足の私には、正確な日本語訳は出来ませんが、どうやら不貞行為第三者への慰謝料請求だけでなく、婚約不履行についても慰謝料請求は認められないと記述しているようにも読めます。離婚後の扶養料については定めがあるようにも読めますが、正確な意味は不明です(^^;)。「Legal consequences of termination of contract to marry」以下に詳細な規定が置かれており、これから時間を見て勉強していこうと思っております。 ○武知弁護士、「不貞行為があったときに、これを行った配偶者と相手方とが共同不法行為者として損害賠償責任を負うというのは我が国では確定的な判例ですが、諸外国の法令に照らすと、これはむしろ例外的です。」、「不貞行為があったとしても、それについて第一次的に責任を負うべきなのは配偶者である」、「相手方当事者に対する不貞慰謝料請求は、相手方への威迫・脅迫的行為であり、また夫婦間の恥部を晒すものである」という考え方と説明していますが、私は、40年近い弁護士経験を経て、この考え方が進歩的と同感しております。 以上:2,341文字
|