平成27年 8月 3日(月):初稿 |
○「”判例による不貞慰謝料請求の実務”紹介1」を続けます。 平成27年6月30日初版第1刷発行の表記「判例による不貞慰謝料請求の実務」(弁護士会館ブックセンター出版部LABO発行)の出版社コメントは、「不貞慰謝料請求にかかわる判例を整理した実務書は本書が初めてだと思います。 最高裁判例を含む593の裁判例を分析整理し、体系化した本書は、法律相談、訴訟実務に役立ちます。」となっていますが、ホントに役立ちます。以下、役立っている一例を紹介します。 ○私は、間男・間女?の味方を標榜して、当HPで、間男・間女?無責任論を強調して展開し、また、当事務所では、名古屋市守山区にある守山法律事務所岩月浩二弁護士の名論文「不貞行為の第三者の責任に関する考察 その成否と、慰謝料額の妥当性の検証」を紹介するなどしている関係で、間男・間女?側からの相談・依頼が多く、常にこの種事件を抱えています。 ○多くのケースは、和解で解決していますが、私が代理人として提案する金額は原則マックス100万円程度です。不貞期間2ヶ月、不貞回数数回程度の事案は、殆ど100万円以内で和解するのですが、100万円を提案しても頑として応じて頂けず、判決に至る事案があります。そこで、不貞期間・回数と慰謝料額についての判例を、「判例による不貞慰謝料請求の実務」で調べたところ、175頁に「不貞行為の期間・回数・内容等」の表題で解説があり、「(ⅰ)不貞期間が短いと判断された裁判例」が紹介されています。ここで紹介された判例は、200~500万円の請求に対し、認容額が20~150万円です。 ○私の取扱ケースでは、100万円以下の認定で十分と言うことを裁判官に訴えるために、以下の、判例を利用させて頂くことにしました。「判例による不貞慰謝料請求の実務」262頁から428頁まで、裁判例一覧1(分析編)123判例・同2(事案・判旨編)470判例が、簡潔に紹介されており、これは大変な労作で、実務家にとっては貴重なものです。 ********************************************* 平成19年 9月28日東京地裁判決 第1 請求の趣旨 被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成7年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え 判決要旨 ◆原告と訴外Aとの婚姻期間中に、被告がAと肉体関係を持ったことから、原告が、妻としての権利の侵害による不法行為に基づく慰謝料請求として損害賠償を求めたのに対し、被告が、本件損害賠償請求権は消滅時効にかかっている等と主張して争った事案において、原告が離婚事件においてAの不貞行為を争点としていたにもかかわらず、被告に離婚後すぐに不法行為による損害賠償請求の訴えを提起しなかったのは、Aの不倫相手が不明であったからであり、不法行為による損害賠償請求権につき消滅時効は完成していないとして、被告の主張を排斥し、原告とAは既に離婚し、被告とAが婚姻していること等を考慮して、慰謝料20万円を認定した事例 平成19年 9月28日東京地裁判決 第1 請求 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成18年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 判決要旨 ◆原告が、妻であるAと被告が性交渉を伴う交際をしたと主張し、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案において、被告は、Aの妊娠及びその中絶手術に当たり、手術同意書に署名押印し、胎児に名前を付ける等、通常胎児の父親でなければ取らない行動をしていたものと認められることから、被告とAが性交渉を伴う交際を行い、これによりAが妊娠したとのAの供述は信用性が高いというべきであり、Aが妊娠し中絶した胎児は被告との性交渉によってできた子であると考えるのが合理的であるとした上で、被告とAとの交際は、両者の合意のうえの交際であること、原告とAとの婚姻生活は未だ破綻していないこと等から、慰謝料120万円を認定した事例 平成22年 2月 1日東京地裁判決 第1 請求 被告は,原告に対し,金440万円及びこれに対する平成20年8月24日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 判決要旨 ◆原告が、原告の夫Aと不貞に及んだ被告に対し、不法行為に基づき、不貞慰謝料等の支払を求めた事案において、被告が、Aとの交際を開始した時点、あるいは、Aに妻がいることを知った時点で、原告とAとの婚姻関係が破綻していたと主張したが、被告がAとの交際を開始した時点で、原告とAとの婚姻関係が破綻していたと認めるに足りる証拠はないとした上で、原告とAとの婚姻期間はそれほど長くないこと、原告とAとの婚姻関係が完全に円満であったとまではいえないこと等も考慮して、慰謝料70万円、弁護士費用7万円を認定した事例 平成23年 1月25日東京地裁判決 第1 請求 被告は,原告に対し,440万円及びこれに対する平成18年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 判決要旨 ◆原告が、夫であったAと被告が不貞行為を行ったとして、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めたところ、被告が、Aに配偶者がいることを知らずに交際を始めたものである等と主張して争った事案において、被告とAの交際は、Aと婚姻関係にあった原告の利益を侵害する行為であるというべきであるとする一方、被告は、Aから配偶者の存在を打ち明けられた頃より前から、Aの配偶者の存在について認識があったとは認められない上、被告がその認識を持つようになってから認められるAと被告との交際期間は1か月余りにとどまり、上記期間の交際を取り上げて、被告の行為に違法性を認めることはできないとして、原告の請求を棄却した事例 平成24年 7月24日東京地裁判決 第1 請求 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成22年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 判決要旨 ◆被告が原告の夫である被告補助参加人と不貞行為をし、原告夫婦の婚姻関係を破綻させたとして、原告が、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案において、原告と補助参加人の婚姻関係は、被告らの不貞行為の時点で、破綻していたとは認められない上、被告には、夫婦の一方当事者である補助参加人の発言のみに依拠し、原告と補助参加人の婚姻関係が破綻していると認識したことについて、少なくとも過失があるとする一方、原告と補助参加人の婚姻関係は、かねてから円満さを欠いており、補助参加人は、短期間の家出を繰り返し、被告との不貞行為の直前には、原告と別居し、離婚調停を申し立て、被告が、そのような事実を聞かされた上で、補助参加人との不貞関係に入ったこと、不貞行為の期間も、わずか2か月足らずと短期間であること等から、慰謝料150万円の限度で原告の請求を認容した事例 以上:2,830文字
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