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スウェーデン新婚姻法の財産分与に関する規定を紹介1

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平成27年 3月11日(水):初稿
○スウェーデン新婚姻法の財産分与に関する規定を紹介します。
専修大学名誉教授でウプサラ大学(スウェーデンのウプサラにある、1477年に創設された北欧最古の大学)名誉教授でもある菱木昭八朗氏の菱木スウェーデン法研究所と言うサイトからの転載です。

日本民法の財産分与に関する規定は以下の通り、僅か1条だけですが、スウェーデン新婚姻法では、詳細な規定が置かれています。スウェーデン新婚姻法での財産分与規定の概要は別コンテンツで説明します。

民法第768条(財産分与)
 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める


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第9章 財産分与に関する一般規定
(9 Kap. Allmänna bestämmelser om bodelning)


第1条
 婚姻が解消されたとき、その夫婦の財産は財産分与(bodelning)(註4)の手続きにしたがって清算される。但し、夫婦の財産が特有財産だけで、且つ配偶者の一方から、他の一方に対して住居または家財道具の引渡し請求が行なわれなかった場合、財産分与を行うことを要しない。
 夫婦間に合意が調ったとき、夫婦は、婚姻中、離婚に関係なく書面をもって裁判所に届け出た後、財産分与の手続きにしたがって、財産関係を清算することができる。地方裁判所は、婚姻中の財産分与の届出を受理したとき、その旨を記録に留めておかなければならない。

第2条
 財産分与は離婚の訴えによって開始する。配偶者の死亡によって婚姻が解消された場合、離婚訴訟が裁判所に係属している場合を除いて、財産分与は配偶者の死亡と同時に開始する。
 離婚に関係なく財産分与が行われる場合、財産分与は第1条第2項の規定によって財産分与の届出が行なわれた日をもって開始する。

第3条
 財産分与が行われるまでに夫婦は、自己の財産と他人の財産の別を明確にしなければならない。夫婦は財産分与に必要な資料を提供しなければならない。

第4条
 離婚によって財産分与が行なわれる場合、財産分与は婚姻が解消されたときに行われる。但し、離婚訴訟係属中に離婚当事者の一方から財産分与の請求があった場合、直ちに財産分与を行なわなければならない。
第5条
 財産分与は夫婦共同してこれを行わなければならない。財産分与が行われたとき、夫婦はそれぞれの署名のある財産分与証書を作成しなければならない。配偶者の一方が死亡している場合、財産分与は生存配偶者と死亡した配偶者の相続人及び包括的受遺者との間で行われる。相続人及び包括的受遺者については、特に別段の定めがない限り、配偶者に関する規定が準用される。

第6条
 共同相続人の一人から反対の意思表示があった場合、死亡配偶者の知れたる債務の弁済が行なわれるまで、または弁済に充当される財産が特別の管理に置かれるか、もしくは共同相続人の間でその債務について責任を負わない旨の協議が調うまでは、生存配偶者と相続人及び包括的受遺者との間で財産分与を行うことができない。
 但し、死亡配偶者の財産が破産宣告を受けた場合、共同相続人からの反対の意思表示に関係なく、財産分与を行うことができる。

第7条
 離婚の訴えが提起された場合、必要な範囲内において夫婦の所有する財産に関して財産目録を作成しなければならない。必要ある場合、財産目録の作成に際して、財産分与人を選任することができる。

第8条
 離婚の訴えが提起された場合、離婚当事者の一方の利益を保護する必要があると認められるとき、裁判所は、その者からの請求に基づいて、他の一方の財産の全部またはその一部を特別の管理に置くことができる。但し、他の一方が相当の担保を供して、反対の意思表示を行った場合にはその限りでない。
 特別管理決定は、財産分与が完成されるまでは、または離婚問題が第5章第3条の規定によって却下もしくは取り下げられるまでは、その効力を有する。

第9条
 財産分与が行われる場合でも、債権者は債務配偶者の財産を差押えることができる。債務配偶者の財産が特別の管理に置かれている場合であっても、他の一方の配偶者がその債務に対して責任を負っている場合、または差押え債権が当該財産に対して優先的に弁済を受ける権利を内容としている場合、債権者はその財産を差押えることができる。

第10条
 財産分与が完成される前に配偶者の一方が破産宣告を受けた場合、または配偶者の破産を理由として財産分与が行なわれた場合、破産配偶者の婚姻財産は、財産分与によってその者に帰属すべき財産が確定されるまで破産財団によって管理される。破産財団は、必要に応じてその財産を処分することができる。
 本章第8条に定める特別の管理に関する決定は、破産によってその効力を失う。

第11条
 離婚訴訟中、離婚当事者の一方が死亡した場合、離婚による財産分与に関する規定が準用される。

第12条
 本法において離婚訴訟中とは、離婚の訴えが提起されてから離婚判決が確定するまでの期間のことを、そして裁判所が離婚の訴えを却下または抹消する場合には、その却下決定が確定するまでのことを、更にまた第5章第3条の規定によって離婚問題が消滅するまでのことをいう。

第13条
 離婚が目前に迫っている場合、夫婦は、将来の財産分与または将来の財産分与に関連する契約を締結することができる。上記契約は、夫婦の署名ある書面によってこれを締結しなければならない。
 上記の場合以外に締結された契約は、夫婦財産契約の場合を除いて、すべて無効とする。

第10章 財産分与の対象となるべき財産
(10 Kap. Vad som skall ingå i bodelning)


第1条
 財産分与の対象となる財産は、夫婦の婚姻財産とする。

第2条
 財産分与に際して相当な範囲内で、各配偶者は、衣類もしくは専ら個人的な用に供されている品物を財産分与の対象から除外しておくことができる。個人的に贈与された品物についてもまた同じ。但し、配偶者の一方が死亡している場合、その権利は生存配偶者だけに帰属する。

第3条
 譲渡することのできない権利または一身専属的な権利は、その権利の性質に反しない限り、財産分与の対象となる。
 前項の規定にかかわらず、夫婦の一方がもっている保険に基づく年金権で、その保険金が所得とみなされ、且つ、
  1.老齢年金または身体障害者年金にもとづく年金権、および
  2.財産分与の際に、既に、受給権が生じている遺族年金保険に基づく年金権は財産分与の対象にならない。
 個人年金信託法(lagen (1993:931) om individuellt pensionssparande)の規定に基づく年金信託契約(pensionssaparavtal)によって、夫婦の一方が取得した年金権(rätt till pension)は、財産分与の対象にならない。
 但し、第2項、第3項に規定されている年金権は、婚姻期間の長さ、夫婦の財産状態またはその他の状況からみて、年金権を財産分与の対象から除外することが不当とみなされる場合、年金権の全部またはその一部を財産分与の対象とすることができる。(1993年法律第933号により改正)。

第4条
 夫婦財産契約を通じて、配偶者の一方の特有財産とされている財産は、財産分与に際して、夫婦間に合意が調った場合、財産分与の対象とすることができる。特有財産から生じた果実または特有財産に代わるべき財産の場合もまた同様である。第3条第2項、第3項に定められている保険、または年金信託契約(pensionssparavtal)に基づく年金権の場合もまた同様である。
 夫婦間の合意によって財産分与の対象とされた特有財産は、財産分与に際して婚姻財産とみなされる。(1993:933)

第5条
 被保険者が死亡した場合、保険または保険金の受取人は、保険契約法(lagen (1927:77) om forsakringsavtal)の定めるところによる。
 個人年金信託契約による年金受取人の権利(förmåntagares rätt enligt pensionssparavtal)は、個人年金信託法(lagen (1933:931) om indivijuellt pensionssparnade)によって定める。(1993:933)

第11章 財産分与分と具体的取り分
(Andelar och lotter)


財産分与分(Makarnas andelar i boet)
第1条

 財産分与(bodelning)に際して、まず、最初に、夫婦の財産における夫婦の財産分与分(makarnas andel i boet)が計算される。

第2条
 夫婦の財産分与分の計算に際して、それぞれの婚姻財産の中から、離婚の訴えが提起されたとき、または第9章第1条第2項の規定によって婚姻中における財産分与の届出がなされたとき、もしくは配偶者が死亡したときに、夫婦のそれぞれが負担している債務が控除される。
 配偶者の一方が、自己の特有財産をもって債務の優先弁済の対象としている場合で、且つその特有財産をもって債務を完済することができない場合、その不足分は婚姻財産から控除される。債務配偶者が、自己の特有財産の保全または改善のために負担した債務、もしくはその他の方法によって特有財産のために負担したる債務についてもまた同じ。
 前項に定められている特有財産に関する規定は、第10章第3条の規定によって財産分与の対象とならない権利についても適用される。

第3条
 債務控除が行なわれた後、夫婦の残存婚姻財産が合算され、合算された財産の価格が夫婦間で平等に配分される。

第4条
 配偶者の一方が、他の一方の同意を得ないで、自己の婚姻財産を贈与によって減少させた場合、または配偶者の一方が自己の特有財産を殖やすために婚姻財産を費消した場合、離婚を理由として財産分与が行なわれるとき、贈与または婚姻財産の増殖のために費消した分は、離婚の訴えが提起された時から、3年前に遡って、常に、贈与配偶者または費消配偶者の婚姻財産の中に含まれていたものとして計算される。そしてその分は、贈与配偶者または費消配偶者に帰属すべき婚姻財産の中から控除される。
 前項の規定において、特有財産(enskild egendom)に関して規定されていることは、第10章3条に定める財産分与の対象とならない権利についても適用される。その場合、そのような権利の価値の増加は、権利の取得と同様に取り扱われる。更に、配偶者の一方が婚姻財産を利用することによって、自己の年金保険(pensionsförsäkring)または年金預金(pensionssparkonto)の価値を増加させた場合、もしくは配偶者がそのような保険または年金預金契約(pensionssparavtal)によって利益を受ける場合、他の一方がそのことに同意している場合であっても、前項の規定が適用される。(1993:933)

第5条
 配偶者の死亡によって財産分与が行なわれるとき、配偶者のいずれか一方の婚姻財産からなされている相続分の先渡し分が死亡した配偶者の遺産(arvet efter den döde)から控除されるべき場合、その先渡し分は、財産分与に際して、死亡した配偶者の相続人に帰すべき財産分与分の上で清算される。但し、遺産の中から相続の先渡し分の全部を控除することができなかった場合、その不足分は、相続の先渡し分によって清算される。
 債務控除が行なわれた後、被相続人の婚姻財産は、生存配偶者の婚姻財産と合算される前に、財産分与に際して控除されるべき額と同じ額をもって増額される。

第6条
 配偶者の一方が自己の債務に充当するために取得した婚姻財産及び残存婚姻財産の配分に際して取得した婚姻財産の総額がその配偶者の財産分与分となる。但し、支払い期日の到来している扶養料で、且つ第6章第8条の規定によって一括して他の一方の配偶者に支払うべき扶養料は、財産分与に際して、扶養料を支払うべき配偶者が債務の支払いに当てている財産以外の財産から控除される。扶養料の控除分は、扶養義務を負担している配偶者の財産分与分において減額され、他の一方の配偶者がもっている財産分与分において増額される。

 具体的取り分による財産の配分(Egendomens fördelning på lotter)
第7条

 夫婦のために計算された財産分与分にしたがって、婚姻財産がそれぞれの具体的取り分に応じて配分される。夫婦は、それぞれの取り分に応じて、自己の財産または自分の欲する財産を優先的に取得することができる。

第8条
 夫婦の共用住宅または共用家財を最も必要とする者は、自己の財産分与分との相殺において、その額が僅少な場合には相殺なしに、その財産を引き取ることができる。但し、その財産が第7章第2条第1項乃至第4項の規定によって、配偶者の一方の特有財産となっている場合にはその限りでない。配偶者の一方が引き取ろうとする財産が、他の一方の財産である場合、周囲の状況からみて、その財産を引き取るに足る相当な事由がなければならない。
 配偶者の一方が引き取ろうとする財産が、優先弁済権の付着している債務の対象となっている場合、債務配偶者が、債務免除を受けるか、相当の担保を供しない限り、その財産を引き取ることができない。
 配偶者の一方が死亡した場合、第1項の規定は生存配偶者のためにのみ適用される。

第9条
 配偶者の一方が自己の財産分与分を超えて婚姻財産を有する場合、財産分与分を越える部分については、相手方に対して自己の財産を提供する代わりに、相当な金銭を支払うことによって超過分財産を取得することができる。金銭によってその支払いを行う場合、相当の担保を提供して、その支払いの期日の延期を求めることができる。支払いが行われなかった場合、他の一方は、可能な限りにおいて、その者にとって相当とみなされる財産を取得することができる。
 配偶者の死亡によって財産分与が行なわれる場合、第1項の規定は、生存配偶者のみに適用されるものとする。

第10条
 配偶者の一方が、自己の財産分与分との相殺において、夫婦の共用住宅、共用家財を引き取り、且つ自己の婚姻財産からその相殺分を補填することができない場合、共用財産を引き取った配偶者は、金銭をもってその不足分を支払わなければならない。但し、相当の担保を提供することによって、その支払いの延期を求めることができる。

第11条
 財産分与に際して、配偶者の一方が自己の財産分与分の全部を取得することができなかった場合、その不足分は他の一方の債務として請求することができる

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