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平成27年 3月11日(水):初稿 |
○「スウェーデン新婚姻法の財産分与に関する規定を紹介1」を続けます。 ******************************************* 第12章 財産分与の修正 (12 Kap. Jämkning vid bodelning) 第1条 財産分与に際して、婚姻期間の長さ、夫婦の財産状態、その他の事情からみて、第11章に定められている分与分によって、配偶者の一方から他の一方に対して、財産の移転を行うことが不適当とみなされる場合、財産の移転を行う配偶者は、自己の婚姻財産の中から相当分の財産を優先的に取得することができる。財産分与が行なわれるとき、配偶者の一方が破産宣告を受けている場合、またはその他、それぞれの婚姻財産を分割することのできない相当の理由がある場合、夫婦はそれぞれ自己の財産分与分としてそれぞれの婚姻財産を確保することができる。 但し、前項の規定は配偶者の死亡によって財産分与が行われる場合には適用されない。 第2条 配偶者の死亡によって財産分与が行われ、且つ生存配偶者が、自己の婚姻財産を自己の財産分与分として取得することを要求した場合、財産分与の相手方は死亡した配偶者の婚姻財産を自己の財産分与分として確保することができる。生存配偶者が自己の婚姻財産の一部を取得することを要求した場合、財産分与当事者の他の一方が死亡した配偶者の婚姻財産の中から、その取得分に相当する財産を確保した後、残存財産は第11章の規定によって分割される。 相続法第15章第1条、第3条に定められている相続権喪失に関する規定は、財産分与に際して、生存配偶者の死亡した配偶者の婚姻財産に対する権利についても適用される。生存配偶者が婚姻財産を確保する場合についてもまた同じ。 第3条 夫婦財産契約に定められている契約の条件が夫婦財産契約の内容、夫婦財産契約を締結した時の事情、夫婦財産契約後に発生した事由、その他の事情によって不当とみなされる場合、財産分与に際して、夫婦財産契約の条件を変更または無効とすることができる。 夫婦財産契約に関する前項の規定は財産分与の予約についても適用される。(1993:933) 第13章 財産分割の効果 (Verkan av bodelning) 第1条 財産分割に際し、債権者の利益を害する目的をもって特有財産を婚姻財産に変更または本法に定められている以外の方法をもって、財産分割の対象となる財産に対する権利を放棄することができない。 財産分割に際し、債権者の利益を害する目的をもって差押え可能な財産を差し押えのできない財産に変更してはならない。但し、本項の規定は、放棄されるべき財産または取得さるべき財産が、夫婦の共用住居または共用家財であるとき、もしくは第11章第8条の規定に基づいて取得することのできる財産の場合には適用されない。 第1項または第2項の規定に定められている行為によって、配偶者の一方が財産分与の行われる以前に発生した債務を弁済することができなくなった場合、またはその他の事由によって債務を弁済することができなくなった場合、他の一方の配偶者はその行為によって減少された差押え可能な財産の限度額において、その責任を負担しなければならない。但し、債務配偶者が財産分割後、明らかにその債務を弁済するに足る差押え可能な財産を有していた場合にはその限りでない。 破産法または和議法により財産分与の取り消し訴訟が提起された場合、配偶者は本条の規定によりその責任を主張することができない。(1987:678) 第2条 死亡した配偶者の債務については、第1条の規定に代って相続法の規定が適用される。 生存配偶者と死亡した配偶者の相続人または包括的受遺者との間で財産分与が行われ、且つ生存配偶者が第1条に定められている行為を行った場合、相続人及び包括的受遺者は連帯して第1条に定められている責任を負わなければならない。 第3条 第11章第4条第1項の規定により、贈与財産が資産の中に含まれているものとして配偶者の財産分与分の計算が行われ、且つ財産分与に際して、配偶者がその分与分を取得することができなかった場合には、次の規定が適用される。財産を譲り受けた者が、その贈与によって、他の一方の利益が侵害されることを知り、もしくは知りうべかりし場合、財産の贈与を受けた者は、贈与財産の中から損害額に相当する金銭を被害配偶者に返還しなければならない。但し、その返還請求は贈与が行なわれてから5年以内に訴えをもってこれを行わなければならない。 財産分与が行われた時点において、未だその贈与契約が完成されていない場合、財産を譲り受けた者は受益配偶者の財産分与分を害する限り、その履行を請求することができない。 第4条 第11章第4条第2項によって、年金保険が資産の中に含まれているものとして配偶者の財産分与分の計算が行われた場合、財産分与に際して、配偶者の一方が自己の財産分与分を取得することができなかったとき、保険会社は保険契約者の保険金の中からその不足分を支払わなければならない。支払いは、直接、保険契約者の配偶者に対してこれを行わなければならない。年金預金口座の場合もまた同様である。(1994:933) 第5条 財産分割証書に分筆の条件を示されず、夫婦の持ち分だけが記載されている場合、その不動産は夫婦の共有財産とみなされる。 不動産の一部が第三者の所有に帰属することを内容とした財産分与はその限りにおいて無効とする。 第6条 財産分与が完了したとき、夫婦またはそのいずれか一方は、登録のため裁判所に財産分割証書を提出しなけはれならない。 第4部 訴訟規定 (Fjärde avdelningen Rättegångsbestämmelser) 第14章 婚姻訴訟と扶養訴訟 (14 Kap. Äktenskapsmål och mål om underhåll) 婚姻訴訟((Äktenskapsmål) 第1条 婚姻訴訟とは、離婚及び婚姻関係存否確認訴訟のことをいう。 第2条 婚姻関係存否確認の訴えは、男女の間においてのみ提起することができる。婚姻関係存否の問題は、婚姻関係の存否に訴訟当事者の権利がかかわっている場合にも審理することができる。 第3条 婚姻訴訟は、男また女が住所を有する地区を管轄する地方裁判所において受理される。訴訟当事者がスウェーデン国内に住所を有しない場合、ストックホルム地方裁判所が管轄裁判所となる。 第4条 夫婦の双方が、共に離婚を欲している場合、夫婦は共同して離婚の申立てを行うことができる。それ以外の場合、離婚は訴えの方法をもってこれを行わなければならない。 第5条 裁判所は、離婚訴訟において、財産分与が行われるまで、扶養、子の監護、子の居所及び面接交渉権、夫婦の共同住居に残留する者及び相互訪問の禁止に関する問題を審理することができる。それらの問題に関する請求は、離婚の申立ての中でこれを行わなければならない。既に、訴えが提起されている場合、その請求は、特別の訴えによらず、口頭または書面で裁判所に対してこれを行わなければならない。 裁判所は、離婚訴訟の中で財産分与人の選任問題を審理することができる。 第6条 離婚訴訟が提起されたとき、裁判所は、直ちに離婚判決の言渡しを行うべきか否かを決定しなければならない。考慮期間を必要とする場合、裁判所は、考慮期間の期限と、それ以後の訴訟の進め方について助言を与えなければならない。(1989年法律第1076号により改正) 第7条 裁判所は、離婚訴訟中、夫婦いずれか一方からの請求によって、問題が解決されるまでの間、確定判決によって次の各号に規定する事項を決定することができる。 1.夫婦の共同住居に残留する者。但し、その期間は、財産分与が完了するまでの期間とする。 2.夫婦の一方に対して扶養料の支払いを命ずること。 離婚訴訟中、裁判所は、離婚当事者の一方からの請求によって、確定判決によって問題が解決されるまでの間、当事者の相互訪問を禁止することができる。 第1項による決定は、確定判決と同様の方法をもって執行することができる。第2項による決定は、確定判決と同様の効力を有する。但し、第1項及び第2項による決定は、裁判所において何時でも、これを変更または取り消すことができる。 夫婦の一方が、第2項に規定されている訪問禁止決定に反した場合、「訪問禁止に関する法律」[lagen (1988:688) om besöksförbud]第24条の規定が適用される。 裁判所は、その他に、離婚訴訟においてその問題が確定判決によって確定されるまでまたは両親の間でそのような問題に関して契約が締結されている場合には、その契約が社会福祉委員会によって承認を受けるまで、親子法の規定によって、子に対する監護、面接及び扶養の問題に関し、相当の措置を講ずることができる。(1998:320) 第8条 残留者決定によって夫婦の共同住居に居住する権利を獲得した者は、別段の定めがない限り、その住居内にある他の一方に帰属する家財道具を自由に利用することができる。残留者決定が行なわれた後、非残留配偶者が第三者との契約によって残留配偶者の権利を制限しても、その契約は残留配偶者に対して効力を及ぼさない。 残留決定が行われた場合、非残留配偶者は、直ちに夫婦の共同住居から立ち退かなければならない。 第9条 本章第7条の規定に基づいて行われた決定は、口頭弁論をまたずに、その言い渡しを行うことができる。但し、裁判所は、その言い渡しを行う前に、非残留配偶者に対して、意見を陳述する機会を与えなければならない。残留者決定に際して、残留を欲する配偶者が残留者決定に関する審理に出頭しなかった場合、残留請求が撤回されたものとして取り扱われる。またその相手方が残留決定審理に出頭しなかった場合、被請求者不在のまま残留決定に関する審理を行うことができる。 第10条 考慮期間経過後の離婚判決に対する特別の主張は、口頭または書面によってこれを行わなければならない。主張が一方の配偶者のみによって行われる場合、他の一方の配偶者に対しても意見を述べる機会を与えなければならない。 第11条 夫婦が共同で離婚の申立てを行った後、または配偶者の一方からの離婚の申立てが他の一方の配偶者に通知された後、離婚の申立てを行った者がその申立てを取り下げた場合であっても、他の一方から離婚訴訟の審理が求められたとき、離婚事件を審理しなければならない。離婚訴訟の取り下げ通知が他の一方の配偶者に送達されるとき、その旨を付け加えなければならない。 離婚の申立てを行った配偶者が、離婚交渉から除外された場合、その事件は、交渉に際して、他の一方の配偶者がそのことを主張した場合、離婚事件は審理の対象となる。離婚の申立てを行った者は、配偶者の喚問が行われるとき通知される。 第12条 夫婦の双方またはそのいずれか一方から離婚の申立てが行われている場合、その事件は口頭弁論(huvudförhandling)を経ないで行なわれる。また離婚当事者の間で合意が調っている離婚事件に関する他の問題についてもまた同じ。 第13条 離婚判決を行う場合、裁判所は第7条第1項1号、第2項の規定によって、既に離婚当事者に与えられている決定を改めて審理し直さなければならない。扶養判決を行う場合、裁判所は第7条第1項2号の規定に基づいて、前に行った決定を改めて審理しなければならない。 第14条 離婚問題が第5章第3条の規定によって消滅したとき、その訴訟は、取り下げられたものとみなされる。その場合、当事者は訴訟に要した費用を、各自、自分で負担しなければならない。 扶養訴訟(mål om nuderhåll) 第15条 次の各号に掲げる場合、確定判決によって扶養問題が決定されるまで、扶養料については第7条、第9条及び第13条の規定が適用される。 1.離婚訴訟に関係なく配偶者の一方から他の一方に対して第6章第5条または第6条第1項の規定によって扶養料の支払い請求が行われた場合 2.離婚判決の言渡しが行われた後、第6章第7条の規定によって扶養問題が審理の対象として取り上げられた場合 3.扶養判決または扶養契約の変更に関する訴えが第6章第11条の規定によって提起された場合 第16条 配偶者の一方から、第6章第6条第2項に定められている事件に関する請求が行われた場合、裁判所は、確定判決によってその問題が決定されるまでの間、利用権に関する決定を行うことができる。その決定の言渡しは、第9条に定める方法をもって行われる。その決定の執行は確定判決と同様の方法をもって行われる。但し、裁判所は、何時でもその決定を変更または取り消すことができる。 裁判所の構成等(Domstols sammansättning m.m.) 第17条 婚姻事件及び扶養事件に関する審理に際して、地方裁判所(tingsrätt)は、訴訟法第1章第3a条第2項、第3項の規定に反しない限り、1名の専門裁判官と3名の参審員(nämndeman)によって構成される。この規定は同一訴訟において取り扱われる別の事件についても適用される。 本審開始後、参審員の出席が不能となった場合、裁判所は、一名の専門裁判官と2名の参審員をもって裁判を行うことができる。 事件の規模、その他の事情からみて、その必要性があると認められた場合、裁判所は、専門の裁判官を一名増加することができる。参審員の場合についてもまた同じ。 参審員が地方裁判所の事件に参加する場合、裁判長は参審員に対して事件の概要及び適用法令を説明しなければならない。評決に際しては、先ず、最初に、裁判長が、次いで参審員がそれぞれ自己の意見を述べなければならない。その他の事項については訴訟法の審判会議ならびに投票(omröstning)に関する規定が適用される。(1989年法律第657号により改正) 第18条 婚姻事件、扶養事件の場合、高等裁判所は、3名の裁判官と2名の参審員によって構成される。4名以上の裁判官と3名以上の参審員を参加させることはできない。口頭弁論に際して取り扱われなった事件の審理に際して、地方裁判所において事件が決定されたとき、参審員の参加なしに事件の決定が行なわれた場合と同様、高等裁判所は、訴訟法第2章第4条の定められているところにより、裁判官のみでも審理を行うことができる。それ以外の場合においては、高等裁判所は訴訟法第2章第4条第3項及び第4項に述べられているところにより審理を行うことができる。 事件の審理に参審員が参加している場合、審理に際して、裁判長は、事件が別の裁判官によって準備された場合には、その裁判官をして、当該事件の概要及び適用関連法令の説明を行わせなければならない。その他、事件の評決に関しては訴訟法の規定が適用される。(1989年法律第657号により改正) 以上:6,154文字
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