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平成25年 6月28日(金):初稿 |
○「婚約中の女性を口説いて婚約破棄させた場合の責任」で、婚約が成立した後の婚約当事者の守操義務について、婚約は将来婚姻をしようとする当事者の合意で、婚約当事者は互いに誠意をもつて交際し、婚姻を成立させるよう努力すべき義務があり、この意味では、貞操を守る義務をも負つているとの考え(昭和53年10月5日 大阪高裁判決、判タ378号107頁)と、婚約当事者が互に相手方に対し婚姻当事者(夫婦)と同様の貞操義務を負つているとは解されない(そのような行為が、他方当事者による婚約の一方的解消のための正当事由になる場合があることは別個の問題)との考え(原審神戸地尼崎支昭52・8・31判決)があることを説明していました。 ○判例時報2182号に平成25年2月14日佐賀地裁判決が掲載され、3年以上の交際期間を経て結婚したところ、相手方男性が婚約成立後も別の女性と性的関係を持ち,結婚後もその女性を誘い続ける重大な背信行為を知って驚愕し、裏切られたことの屈辱と絶望のどん底に陥り、精神的ストレスにより全身蕁麻疹、不眠状態で医師の診察を受けるまでになった精神的苦痛に対し金200万円の慰謝料を認めています。 ○この女性の請求金額は金500万円で、認定された金200万円の慰謝料は高いか低いか評価の分かれるところですが、近時この種の精神的苦痛に対する認定慰謝料金額は低額化しているところ、私の感覚としては比較的高いと感じました。判例時報の解説欄には、この判例について、「本判決は、婚約当事者間に守操義務を認めたものであって相当と判断されるが、類似先例の見当たらないケースの判断事例として、損害の点も含め、実務上参考になろう。」と記載されています。 ○婚約当事者間の守操義務については、「婚約中の女性を口説いて婚約破棄させた場合の責任」に記載したとおり、婚姻後の守操義務の程度には至らずとも、ある程度の守操義務を認めるのが一般と認識していました。 ○例えば昭和55年12月23日甲府地裁判決(判時1023号107頁)では、「婚姻予約(婚約)をした当事者は、互に最終的な婚姻意思形成に向って誠実に交際し、全とうな婚姻関係を成立させるために努力する義務を負っていると考えられる。 まず、互に貞操を守る義務を負いその違反が離婚原因ともなる婚姻関係の成立を目指す当事者間であるから、婚姻関係における場合程強い内容のものではないにしても、両当事者の互に貞操を維持する義務いわゆる守操義務も右義務の一内容となろう。」と述べています。 ○この点について、平成25年2月14日佐賀地裁判決は、「原告と被告は、婚約が成立したのであるから、正当な理由がない限り、将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負っているから、それぞれ婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務を負っていたというべき」と述べています。 ○この事案では、7月7日入籍、同月24日結婚式、同月26日~29日と新婚旅行に行くも、翌8月22日に夫の携帯電話メール記録から他の女性との関係を知り、問い詰めると夫は、事実関係を認めながら反省の態度も示さなかったことから、妻が直ちに別居して婚姻破綻に至り、慰謝料500万円の他に結婚式費用・ドレス代・弁護士費用等460万円の合計960万円を請求しています。判決は慰謝料200万円の他には157万円を損害と認定しています。 以上:1,392文字
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