平成25年 6月19日(水):初稿 |
○財産分与について、以下の不動産の処理方法を考えます。 ・平成10年6月、お互い30歳の時に結婚したAB夫婦は、平成15年6月、諸費用合わせて4000万円の土地建物を購入し夫A単独名義で登記していた ・4000万円の捻出は、妻Bが頭金500万円を自己の特有財産の預貯金から出し、夫が3500万円年利5%で35年住宅ローンを組んだ ・住宅ローン返済方法は毎月10万6000円、ボーナス月53万円で夫の給料から返済、妻は結婚と同時に退職し専業主婦であった ・10年後、25年6月、AB間に離婚の合意成立 ・この時点での住宅ローン残高約3020万円、不動産時価2800万円程度に下落し、オーバーローンである ・この時点での夫婦共有財産は、夫名義預貯金800万円のみであった ○財産分与においては、住宅ローン残高が不動産価値を上回るいわゆるオーバーローンの不動産や、不動産の価値と住宅ローン残高がほぼ同程度であるとして残余価値がないと評価された不動産は、積極財産として金銭評価されることがないため、夫婦間の離婚訴訟の財産分与の手続においては、清算の対象とはならないとするのが原則です。とすると夫名義預貯金800万円だけが財産分与対象となり、夫Aが妻Bに800万円の半分の400万円を分与するだけで足りるでしょうか。 ○先ず購入時点で妻Bが代金総額4000万円の内500万円を自己特有財産から支出していますので、AB間では不動産の8分の1は実質Bの共有持分権があると評価出来ます。このような場合普通はBの持分を8分の1として共有登記にします。こうしないと500万円がBからAに贈与されたことになり贈与税が発生するからです。おそらく税務署からの不動産取得対価捻出方法照会に対しては全部Aが捻出したことにして贈与税を免れていたものと思われます。 ○次に不動産購入後、離婚合意成立するまでの10年間の同居生活中にAの給料の中から支払った住宅ローンの内Bの主婦としての家事労働対価分が問題になります。ごく大雑把な計算ですが、毎月10万6000円ずつ10ヶ月で106万円、ボーナス月53万円2回の106万円合計212万円ずつ10年間支払ったとすると2120万円になります。しかし10年後の借入金残金は約3020万円ですので、支払金2120万円の内元本に充当された部分は480万円だけで1640万円は利息部分に充当されています。 ○家事労働部分は、原則として夫の収入の半分と評価されていますので、夫の給料から支払われた10年分住宅ローン2120万円の内半分1060万円は妻の家事労働から支払われたと評価することも可能です。最も妻Bに有利な考え方をすると、4000万円の不動産購入について妻は頭金500万円に加えて住宅ローン家事労働分として1060万円の合計1560万円を支払っているので4000万円の不動産について4000分の1560即ち0.39の持分を有するとの考え方も成り立ちます。 ○「オーバーローンで剰余価値のない不動産共有判断判例全文紹介3」で紹介した平成24年12月27日東京地裁判決(判時2179号78頁)は、この妻に最も有利な考え方を採用しているようにも見えます。この判例では更に別居後婚姻費用として妻に支払うべき金額も、実際は妻に支払われず住宅ローン支払に充当されたので、この部分は妻が支払ったと評価すべきとしていますから、妻に相当有利な考え方になっています。 ○疑問は、3500万円の住宅ローンの内元本返済に充当されたのは480万円だけなので、妻の支払としてはその半分の240万円になるのではないか、と言うこと、更に妻に持分が認められるとして、将来売却された際、その売却代金の内妻持分権相当部分を夫に求償請求できるのか、と言うことがあり、今後も,検討を続けます。 以上:1,561文字
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