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夫が妻の間男に対し損害賠償請求することと恐喝罪の関係1

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平成24年 2月 9日(木):初稿
○よくある質問に、夫Aが妻Bの間男Cに対し、300万円支払え、支払わなければ、間男の妻、上司、知人等に不貞行為をばらすと脅して、この脅しに畏怖した間男に300万円を交付させた場合、恐喝罪は成立するかという例があります。
 恐喝罪とは、刑法第249条に「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定されている犯罪で、恐喝とは、脅迫を手段として、その反抗を抑圧しない程度に相手方を畏怖させ、財物の交付を要求する行為であり、脅迫とは、相手方に恐怖心を生じさせるような害悪の告知であると説明されます。

○実際、よくあるのは、間男が社長、支店長等ある程度地位がある場合、社長の場合重要な取引先、支店長の場合その上の社長に知らされたくなかったら、金300万円支払えというものです。要するに間男にとって、知らされては最も困る相手に知らせることを伝えて、伝えられたくなかったら300万円支払えと要求する行為は、はたして、恐喝行為と言えるかとの問題です。

○恐喝とは、相手に恐怖心を生じさせるような害悪の告知である脅迫を手段として、相手の反抗を抑圧しない程度に畏怖させてお金を取ろうとする行為です。相手の反抗を抑圧しない程度というのは、反抗を抑圧すなわち反抗が全く出来ない状況まで強い恐怖心を抱かせた場合は、恐喝ではなく強盗と評価されるために、その区別のために用いられる表現です。

○具体例として、例えば夫Aが、ある上場企業に勤務する妻Bと男女関係を持ったその上場企業で妻Bの上司に当たる支店長Cに対し、その所属するD社を含めて損害賠償の訴えを提起されたくなかったら金300万円支払って下さいと非常に丁寧な言葉で要求された場合、果たして恐喝罪と言えるかというと難しいところです。

○訴えを提起することを告げること自体は、害悪の告知とは評価されませんので、脅迫とは評価されません。ただし、BとCの個人的な問題について、個人問題とは無関係な会社Dまで訴えると告げる行為は害悪の告知と言えるかというと、これも難しいところです。D社の就業規則に、社員間で会社風紀を乱すような不貞行為は懲戒対象になると規定していた場合、C支店長の部下Bとの男女関係は、会社Dとの関係で懲戒対象となる違法行為になります。

○Aの妻BとC支店長の男女関係は、伝統的考え方によれば、B・Cは共同でAのB夫たる地位を侵害する不法行為をしたと評価されます。D社は就業規則で社員同士でそのような男女関係を持つことを禁じていたとすれば、D社は支店長である社員Cの行為について、民法第715条の「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」との使用者責任が追及できると理屈を並べることもあります。

○私自身は、支店長Cがその地位を笠に着て、部下のBに関係を迫って男女関係を結んだとすれば正に「事業の執行について」に該当し、D社は使用者責任があると思いますが、CとBが会社の職務には全く関係なくお互いの自由な合意で関係を結んだ場合は、到底、「事業の執行について」には該当せず、D社の使用者責任は発生しないと考えています。

○しかしBの夫Aにしてみれば、規律正しい職場であるはずのD社で、よりによって現場トップである支店長が部下の妻Bと男女関係になったとすれば、D社にも請求したいと思うのも人情としてやむを得ないかとも考え、D社を訴えられたくなかったら300万円支払えと請求する行為を刑法上の恐喝罪に該当するとの評価はなかなか難しいなと思っています。
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