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婚約破棄の慰謝料-本当の誠意とは

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平成17年 1月21日(金):初稿
<事案>
A男とB女は同じ21歳ですが、18歳の高校時代から付き合って既に4年になります。
AとBは、高卒後互いに別な大学に入り、共に現在4年生で来春卒業です。Aは卒業後の就職先は決まっていますが、Bは女子就職難のため就職先が決まっていません。

AとBは付き合って3ヶ月目に肉体関係を持ち、一時はデートのたびに肉体関係を持ち、Bが妊娠中絶したことが2度あります。Aは避妊具を使うことを嫌がり、避妊しないまま性行為に及ぶことが多かったからです。

AとBは付き合って2年目位から一寸したことで口げんかをすることが多くなり、お互いに別れようと決意しとことが数回ありましたが、結局、腐れ縁というかどちらからともなく付き合いが復活して丸4年が経過しました。その間A、Bは何度もAが大学を卒業したら結婚しようと約束し、お互いの親にもそのことを話し、両親にもお互いを紹介していました。

ところがAは大学卒業間際になって両親の猛反対もあり、一寸したことで口げんかが絶えないBとの結婚が不安になり、Bに対し別れを告げたところ、Bは3回目の妊娠が判明し、絶対に別れないし子供も産むと言って聞きません。

Aは、他に好きな女性が出来た訳ではありませんが、妊娠を聞かされてもAのBに対する気持ちは中途半端なままです。しかし、ここまで来た以上AはBと結婚すべきでしょうか。

結婚しない場合、AがBに支払うべき慰謝料はどのくらいになるでしょうか。


<回答例>
これは、実際にあったケースをアレンジしたものですが、実際、良くあるケースです。
BはAに対し、絶対に別れたくないし、折角授かった子供も産みたい、約束通り結婚して欲しいとAに泣いて懇請します。AはBの涙を見てやはり約束したことなのだからBと約束通り結婚するのがBに対する誠意かなとも考えます。しかし、Bに対し、愛おしいとか、好きだと言う感情も殆ど無くなっており、どうしたらよいか判らなくなったと言う相談です。

このケースは婚約が成立していると認められる事案であり、正当な理由のなく破棄した者は相手に慰謝料を支払わなければなりません。

私はこのような相談の時、例に挙げるのは、貴乃花の宮沢りえとの婚約破棄記者会見です。
貴乃花は大勢の記者の前で宮沢りえとの婚約破棄の理由を「りえさんに愛情がなくなったからです」と端的に答えました。この婚約破棄の理由について何と無慈悲な言い方だ、これではりえが可哀想だ、もっと別な言い方がなかったのかと非難したマスコミの論調がありました。

しかし、私は貴乃花の答えは正しい態度だと思っています。
相手の立場を考慮したつもりで、別に愛情がなくなったわけではないが、諸般の事情があって別れざるを得なくなりましたなどという中途半端な答えをすることが良くありますが、私はこのような態度は却って相手に対する不誠実と思っております。
その理由は第1に事実に反することを言うことであり、第2にそれによって相手に誤解を与え無駄な未練を持たせ、再出発の意欲をそぐ結果になりかねないからです。

男と女が一緒に居たいという気持ちは自然自発的に発生するものでなければ本物ではなく、単に妊娠したからとか、長く付き合った責任があるからと、自分の気持ちを偽って、単にBに対する同情だけでBとの結婚を決めるのは、Bに対するホントの誠意とは言えません。
ホントに誠意は、貴乃花のように愛情がなくなったら、なくなったと明言することです。

私はAさんに対し、次のように言います。
私は貴方の心の底までは判りません。貴方のホントの気持ちを知っているのは貴方しか居ません。貴方が心の底からBさんとこれから一生一緒に暮らしていきたいと思う気持ちがあるなら、誰がなんと言おうとBさんの求めに応じて結婚すべきでしょうし、もう愛情がなくなったのならそれをハッキリBさんに伝えて相当の慰謝料を支払って償いをすべきです。
慰謝料を支払うのが大変だから仕方なくBさんの求めに応じるなんて態度は一番Bさんに対する不誠実な態度です。
貴方の気持ちは貴方しか判りませんので、自分でじっくり考えて結論を出すべきでしょう。

このケースでは、Aは最終的にBに対し、愛情がなくなり、結婚して一緒に暮らしていく自信が全くないので、妊娠中絶して欲しいとハッキリ伝え、Bは妊娠中絶してAに対し1000万円の婚約破棄による精神的苦痛に対する慰謝料を支払うよう請求して訴えを提起し、最終的にAはBに対し、450万円を支払って和解しました。

AとBの原告被告本人質問を実施した後、裁判官は、完全破局に至るまでAが中途半端な態度をとり続けたこと、又避妊具を付けることを嫌がり結局3度も妊娠中絶をしたことなどから、Aの責任が大きい旨伝えてきたからです。

慰謝料450万円が高いか安いか意見の分かれるところと思います。
良く慰謝料金額の基準を聞かれますが、正にケースバイケースで、基準はありません。
実際回収可能な慰謝料金額の基準は相手の支払能力に尽きます。本件ではAは学生で支払能力が全くないところ、両親がある程度の資産家で支払能力があり、全額両親が出してくれました。

もしAが両親からも見放され、定職にも就かず、不定のアルバイトをしながらブラブラしているような人間だったら、仮にBが裁判の結果、1000万円を支払えとの判決を取っても、実際回収は不可能です。

私としては、BとしてもAのような中途半端な考えの人間と結婚して一生苦労するより貰うものを貰って別れた方がずっとBのためになったと思っております。

以上:2,259文字

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