平成20年 5月 1日(木):初稿 |
○妻原告Aから夫被告Bに対する未成年の子供Cが居る場合の離婚の訴えは通常以下のような請求の趣旨になります。 1.原告と被告とを離婚する。 2.原告と被告間の長男C(平成19年6月1日生)の親権者を原告とする。 3.被告は原告に対し長男Cの養育費として長男Aが満20歳に達する月まで毎月金5万円を支払え。 4.被告は原告に対し金○○万円及び訴状送達の日の翌日より支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5.訴訟費用は被告の負担とする。 ○ところが妻Aと夫Bは長男Cが生まれた平成19年6月1日から別居し、BがAに対し長男Cの監護費用を支払っていない場合、平成20年6月1日、AからBへの離婚訴訟提起に際し、離婚訴訟に付帯して長男Cの監護費用1年分(仮に月額5万円の12ヶ月分60万円とする)を請求できるかという問題があります。 ○「別居中の婚姻費用分担義務」に記載したとおり、夫婦が別居に至り婚姻破綻状態になった場合でも戸籍上の夫婦である限り婚姻費用分担義務は残り、その金額は婚姻破綻の程度と責任割合に応じて調整されますので、妻Aは夫Bに対し、別居中の婚姻費用の請求も可能です。 ○しかし実務ではこの夫婦間の婚姻費用については、離婚の訴えに附帯して請求することは出来ないとされています。その理由としては婚姻費用は婚姻の継続を前提とするところ離婚は婚姻の解消を目指すもので両者の整合性がとれず、裁判の基礎資料も異なり、両者一緒に審理すると婚姻費用分担の解決が長引くからと説明されています。 ○実際、私の取扱例では子供の監護費用も含む婚姻費用については、離婚の訴え前に本人申立で家裁から毎月○万円支払えとの審判を得ている例が多く離婚前の夫婦間の婚姻費用、子供の養育料が問題になることは余りなく、子供の養育料請求は離婚時からの請求が殆どです。 ○しかし時に別居後離婚時までの子供の監護費用を離婚請求に付帯して請求する例があり、最高裁平成19年3月30日判決(判時1972号86頁)では、離婚前の子供の監護費用については、人事訴訟法32条1項の「この監護に関する処分を求める申立」として適法であり、裁判所は離婚請求を認容する際には、この当否に関して審理判断をしなければならないとしました(同旨最高裁平成9年4月14日判決判時1620号78頁)。 人事訴訟法第32条(附帯処分についての裁判等) 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分又は標準報酬等の按分割合に関する処分(厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第78条の2第2項、国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第93条の5第2項(私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)第25条において準用する場合を含む。)又は地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)第105条第2項の規定による処分をいう。)(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしなければならない。 以上:1,277文字
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