平成18年 1月25日(水):初稿 |
○H17年2月19日更新情報で、夫に逃げられた妻も、戸籍上の夫婦である限り、原則として扶助義務即ち婚姻費用分担義務は残り、夫が会社勤め等で支払能力がある限り、連れ戻すことは出来なくても、生活費を負担させることが出来るので、妻としては戸籍上の妻で居ることに価値があり、離婚に頑として応じないこともあると記載しました。 ○婚姻費用とは、子供の養育費まで含めた夫婦共同生活に必要な一切の費用を言います。民法760条で婚姻費用分担義務、どう752条で扶養義務が定められ、夫婦は相互に婚姻費用分担義務を負いますが、専業主婦の場合は原則として夫が一方的に妻に対し婚姻費用支払義務を負います。 ○夫婦が別居に至り婚姻破綻状態になった場合でも戸籍上の夫婦である限り婚姻費用分担義務は残りますが、その金額は婚姻破綻の程度に応じて軽減される場合もあります。 ○妻が夫の意思に反して別居を強行して夫の同居要請を頑として拒み且つ夫の暴力等別居がやむを得ないとする事情もない場合、婚姻費用としては妻自身の生活費部分は請求が認められず、妻と同居する子供が居る場合その養育費部分しか認められません。 ○これに対し夫が例えば他に女性と同棲するため別居した場合は、これによって婚姻関係が完全に破綻していても夫は妻に対し夫の収入に応じた程度の生活を保障する義務があり、婚姻費用分担義務の程度は同居中と同様に残ります。 ○別居に至った原因について夫婦双方に責任がある場合は、同居中の生活程度を保持しうるに足る金額を基準として、これに双方の責任の度合いに応じて増減修正した金額が負担額になります(大阪家審昭和54.11.5家裁月報32-6-38)。この責任の度合いを決めるのは大変難しいところですが、別居に至った原因として妻にも半分責任があれば同居中の金額の半分しか請求できないことになります。 ○夫婦双方が離婚することで合意して別居したとしても子供の親権者、慰謝料・財産分与等の問題で協議が整わない場合は、離婚に至るまで婚姻費用分担義務は残りますが、前記の通り、別居に至る責任度合いで軽減されます。 ○婚姻費用分担の始期については、最高裁は過去の婚姻費用も請求できるとするも何処まで遡及するかについては明確にせず、審判例も一定していません。私としては婚姻費用分担義務発生時まで遡って然るべきと思っております。尚、婚姻費用分担義務の終期は原則として婚姻関係が解消するときです。 以上:1,003文字
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