平成20年 3月20日(木):初稿 |
○「セクハラを受けたと上司を退職に追い込んだ重~いツケ2」の話しを続けます。裁判所が認定した前提となる事実概要は後記のとおりです。 ○判示前提事実には肝心のセクハラ行為が記載されていませんが、問題のセクハラ行為は、h10.8.1に発生し、AB間に性行為があったことに争いはないところ、BはAからの強姦と、Aは合意の上の行為だと、それぞれ主張してたようで、問題はh10.8.14にB自宅でAと性的関係を持ち更に8.29以降2ヶ月間AB間に性関係を含む私的交際があったことです。 ○Bは問題のh10.8.1の行為があった後の8.29以降Aと性的関係を持った交際を2ヶ月間継続しながら、その後、Aのh10.8.1の行為を執拗に追及し始め、以下の前提となる事実記載の通り、和解成立後もA自身に対する裁判所への提訴のみならず所属自治体への国家賠償請求、労災不認定取消行政訴訟を提起し、更に米国EEOC(雇用機会均等委員会)にまで提訴しています。 ○ABいずれも某自治体の職員でしたが、これだけ提訴が繰り返され、また懲戒処分申立がなされていますのでその自治体では有名な話しになり、Aは最終的には退職せざるを得なくなったものと思われますが、正に「女は怖い」を地でいくものです。しかしそれを独力で覆したAの意地も凄い物だと感服しました。但し、これは地裁レベルの判決でその後の展開は不明です。 ****************記********************* 一 前提となる事実(実際の判決文を簡略化しています) 1 Aは,a自治体幹部職員で,h9.7からh11.6まで海外D事務所長を務め、娘と2人でD市に赴任しており,Aの妻は,h10.3から1年間だけD市で原告と同居した。Bも結婚(事実婚)していたがa幹部候補職員としてh10.5からh12.3までD事務所に単身赴任しAの部下として勤務し、D事務所は,Bが帰国した後のh12.6閉鎖された。 2 AとBは、h11.6.30,AがBに対し、h11.9.30限り治療費200万円,和解金700万円の合計900万円を支払うことを内容とする和解協定書(以下「本件和解」という。)を作成し、Aはh11.6.30、和解金の一部として500万円を支払い、Bの訴訟提起により、h11.12.27、遅延損害金を含めた請求額全額506万2500円を支払った。 3 Aは、h11.6,D事務所からa本庁に戻り,○部長に異動していたが,Bとの紛争を理由に,h12.4.1,▽部長に左遷され,4.19,a知事から地方公務員法上の懲戒処分である10日間の停職処分を受け、h16.2.18、上司の要請でa庁を依願退職した。 4 Bは,h12.3に帰国後,4.1からa庁外郭団体○係長に異動したが,4.20,課長補佐選考に不合格となり,気分変調性障害,外傷後ストレス障害(PTSD)という診断で,5.17から病気休暇を取得し,h13.2.9以降病気休職し,その後a庁を退職した。 5 Bは,本件のほかに次の訴訟の当事者となっている。 (一)和解金等請求事件 BはAを被告として,h11.11.21,本件和解契約和解金残金400万円及び本件和解後AがBに対してa庁に報告しないよう圧力をかけたことに基づく治療費及び慰謝料100万円を支払うよう請求する訴訟を提訴し、AはBの請求額全額をの506万2500円を支払い、h12.5.12、請求棄却判決が言い渡され,確定した。 (二)損害賠償請求事件 Aの妻が原告となり,Bに対し、Aとの不貞行為に及びその後強姦未遂と言い立てていることに基づく慰謝料1000万円の支払を求める訴訟を提起し、AとBの性的関係がBの意思に反するものであった可能性が相当程度あり、その後の言動も正常な精神状態でなかったことによる可能性を否定できない等の理由で、h13.110.11、請求棄却判決が言い渡された。 (三)損害賠償請求控訴事件-(二)の控訴審 Aの妻は,上記(二)の判決に対して控訴し,控訴審は,Aの行為は性的暴行であると認められ,外形的には強姦行為と見られてもやむを得ないとしてBが強姦未遂であると言い立てたことは違法ではないと判断したが,Bの不貞行為による慰謝料支払義務があることを認めて,h15.1.28、Bに対し100万円を支払うように命じた。 (四)国家賠償請求事件 Bは、a庁を被告として,Aから受けた性的暴行が職務行為と密接に関連してなされたこと,セクシャルハラスメントを防止すべき一般的な義務を起こったこと,セクシャルハラスメントを受けた後適切な対処を取らなかったことを理由として,国家賠償法1条,民法1条に基づき5000万円の支払を求める訴訟を提訴し、性的暴行は職務を行うについてなされたものではなく,セクシャルハラスメント防止義務違反はなく,セクシャルハラスメントに適切な対応すべき義務違反もなかったとして,h17.5.23、請求棄却判決が言い渡された。 (五)公務外災害認定処分取消請求事件 Bは、Aから受けた性的暴行とその後のAの下で公務継続で外傷後ストレス障害(PTSD)について地方公務員災害補償基金は公務外災害であると認定したので,Bが原告となり,地方公務員災害補償基金a支部長を被告として,当該処分の取消を求める行政訴訟を提起し、性的暴行がなされたのは,公務終了後1時間30分以上後で、Bの自宅で発生したこと等を理由に公務遂行性がないとしてh16.12.6請求棄却判決。 (六)米国EEOC(雇用機会均等委員会)提訴 Bはh13.2米国EEOCに、h13.7,米国の裁判所、それぞれaを相手方として企業者責任を追及して提訴し、いずれも却下。 以上:2,345文字
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