平成19年 8月21日(火):初稿 |
○民法第768条は財産分与について、次の通り規定します。 「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。 2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。 3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」 ○この財産分与とは、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同財産を清算分配することです(昭和46年7月23日最高裁民集25巻5号805頁)。この清算が認められる根拠は、婚姻中に形成・維持された財産はたとえ名義上は夫婦の一方の所有となっていても、その形成・維持に他方の直接・間接の協力があったもので、実質的には夫婦の共有と見るべきなので、婚姻が解消される場合は、その清算をするのが正義・公平に適うからと説明されています。 ○この財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻後に形成・維持された共同財産です。元々夫婦の一方の特有財産であっても他方の協力によって維持された場合(喪失・減額を免れた場合)には、その維持についての主張・立証が出来れば、清算の対象になります。 ○民法第762条(夫婦間における財産の帰属)で 「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。 2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」と規定され、「婚姻中自己の名で得た財産」も特有財産とされていますが、これはあくまで対外的な第3者との間の効果であり、夫婦間では「婚姻中自己の名で得た財産」も特有財産ではなく実質共有財産として財産分与の対象となると解されています。 ○夫婦協力して形成した夫名義の預金が夫の債権者に差押された場合、これが離婚時の財産分与の対象であったとしても、離婚前に夫の債権者に対し、財産分与対象だから半分は妻のもので、妻の分については差押は無効だと主張することは出来ません(神戸地判昭和53年3月16日判タ369号271頁)。 以上:964文字
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