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婚姻予約成立要件の誠心誠意の約束とは

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平成17年12月26日(月):初稿
H17年12月25日更新情報で、婚姻予約(婚約)の成立には、結納などの形式は必要なく当事者間に誠心誠意結婚の約束があれば足りると述べましたが、今日はこの誠心誠意の中身について検討します。

○婚約とは、将来に適法な婚姻をすることを目的とする契約と定義されています。契約とは、売買が典型ですが、売りたい買いたいと言う様な対立する意思表示が合致して成立する法律行為です。意思表示の合致で成立する以上は、お互いに将来結婚しようという意思が合致すれば婚約が成立するはずです。

○しかし実際には誠心誠意の約束即ち意思を要求されるのは単に意思の合致だけでは婚約は認められないということです。何故単なる意思の合致だけでは認められないかというと、例えば12月24日のクリスマスイブ等は全国各地のホテルで熱戦が繰り広げられ、「死ぬまで君を離さない」等と膨大な数の独身カップルが生涯の愛を誓い合います。

○この一夜の愛を誓った膨大な数のカップルに婚約成立が認められると、後日心変わりして別れ話が起きる度に婚約不当破棄として裁判所に訴えられたのでは、裁判所がいくつあっても足りません。そこで単に一夜の愛の誓いだけでは婚約は成立しないので裁判を出しても無駄ですよと縛りが必要になります。

○ちと長くなりますが、一夜の愛の誓いだけでは婚約は成立しないと明言した判例を紹介します。
先ず合意の抽象的な要件ですが、「たしかに婚姻予約の成立には形式は必要ではない。さりとて結婚しようと口で言つて肉体関係を結んだからと言つてそれで婚姻予約が成立したというものではない。婚姻予約とは互に真意をもつてこれを為し、その決意をまた極めて慎重を期したものであることを要し、男女が誠心誠意をもつて将来夫婦となることを予期して契約し、全くこのような契約をしていない自由な男女とは一種の身分上の差異を生ずるに至る程度の合意でなければならない。」と言います。

次に婚約が認められる合意の具体的な要件ですが、「一時の情熱に浮かれた行為、恋愛関係にある男女の睦言、閨房の単なる睦言ではいけない。婚姻予約が成立したとなると、性的享楽を旨としたかりそめの結合たる私通関係とは誰が見ても区別してこれを怪しまない程度の事実が現われて来なければならない筈である。婚姻予約者として拘束される地位が社会的に公認される程度に至つて初めて婚姻予約者たる地位は法によつて保護される。」としています。

公然性については次のような判例もあります。
すくなくとも当事者たる男女が誠心誠意将来夫婦として共同生活を営む意思表示の明確を期しもつて何人も単なる私通野合の関係等と区別してこれを怪しまない程度の公然性あることを要件とする」。

○これらの判例を見ると婚約の成立には結納等の形式は不要ですが、それがあったと同視出来る程度の社会的公認或いは公然性が必要とされています。具体的に言えば先ず両親への報告が必要であり、更に友人、同僚等にも公表し、当事者の周囲の人間の殆どからあの2人は婚約者同士であると認められていることが必要です。

○2人の結婚に対する意思がどれほど堅固でありいくら熱戦を繰り広げても、結婚の約束が2人の間に留まっている限りは婚約成立は認められませんので注意が必要です。
以上:1,334文字

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