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会社役員報酬減額なしでの休業損害・逸失利益についての参考判例紹介4

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平成28年 9月14日:初稿
○「会社役員報酬減額なしでの休業損害・逸失利益についての参考判例紹介3」の続きで、裁判所の判断部分です。
原告会社の損害につき、原告会社が原告の休業期間中に支払った役員報酬は本来原告が被告らに対し直接請求できる損害を肩代わりしたものであるとして、役員報酬のうちの労務対価部分を基礎に、休業期間を79日として損害を算定しことが注目すべき点です。

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第三 当裁判所の判断
一 前提となる事実及び各項末尾記載の証拠等によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告会社は、昭和59年6月に設立された飲食業等を目的とする会社である。原告X1は、イタリアンレストランで約5年間修行をした後、平成10年4月に原告会社に入社し、平成19年7月から原告会社の取締役となった。原告会社の取締役は原告X1のみである。〔甲11、原告X1本人、弁論の全趣旨〕

(2) 原告会社が経営している飲食店は、c店のみである。c店は、店舗の面積約10坪、座席数二〇席余りのショットバーであり、原告X1は、c店の店長兼バーテンダーとして働いている。原告X1は、接客及び酒食の提供を担当しているが、店で出す料理も原告X1自身が作っている。原告会社の従業員としては、パートで経理を担当している原告X1の妻のほか、c店で原告X1の補助をし、バーテンダーの見習いをしている従業員が一名、主としてホール係を担当するアルバイトが三名いる。〔甲7、11、原告X1本人〕

(3) c店の営業時間は午後5時から午前零時30分までであり、原告X1は、開店前の準備及び閉店後の後片付けの時間を入れると、1日8時間程度は立ち続けで仕事をしなければならない。また、食器棚など、低いところから物を取ったりするためにしゃがむ動作が必要になることや、生ビールの樽など重い物を運んだりしなければならないことがある。〔甲7、11、原告X1本人〕

(4) 平成19年5月1日から平成20年4月30日まで(①)、平成20年5月1日から平成21年4月30日まで(②)、平成21年5月1日から平成22年4月30日まで(③)、平成22年5月1日から平成23年4月30日まで(④)の各期間の、原告会社の売上高、原告X1の役員報酬額及び原告X1以外の従業員(アルバイトを含む)の給与合計額は、それぞれ以下のとおりである。〔数字の冒頭に「約」と記載しているものは甲四から年額を換算、その余については甲八ないし10〕
(原告会社売上高) (役員報酬額) (従業員給与合計額)
① 約3207万6000円 約620万円 約637万2000円
② 約3079万2000円 860万円 496万5100円
③ 約2814万円 900万円 547万6950円
④ (不明) 900万円 429万0205円

(5) 原告X1は、本件事故による左膝蓋骨骨折のため、本件事故の日である平成21年10月10日から同年12月31日までの間と、平成22年5月6日から同月16日までの間、合計79日休業した。また、c店は、後記(6)のとおり原告X1の代替人員を雇用するまでの2日間、臨時休業した。原告会社は、原告X1の上記休業期間についても、原告X1に対し、従前どおり年収900万円を前提とする役員報酬を支払った。〔甲五の一ないし三、甲7、11、原告X1本人〕

(6) 原告会社は、平成21年10月から平成22年1月までの間、原告X1の代替として、四名の従業員を臨時で雇用し、合計87万7010円の給与を支払った。上記4名の従業員の日当額のうち、最も高額なものは1万3000円である。〔甲六の一ないし10、甲7、11〕

二 争点一(原告X1の損害額)について
(1) 治療費 328万6815円

 原告X1の本件事故による傷害の治療費が328万6815円であることは、当事者問に争いがない。

(2) 入院雑費 4万0500円
 前提となる事実のとおり、原告X1は、本件事故による傷害の治療のため、合計27日間入院している。弁論の全趣旨によれば、その間、少なくとも1日当たり1500円、27日間の合計で4万0500円の入院雑費を必要としたことが認められる。

(3) 後遺障害逸失利益 1571万7542円
ア 前記一認定のとおり、原告X1は、本件事故後も原告会社から役員報酬を受領しており、本件事故による減収の事実は認められず、原告会社の売上高も概ね維持されている。しかし、前記一認定の事実及び証拠(甲7、11、12、原告X1本人)を総合すると、原告X1の仕事(店長兼バーテンダー)は、大半が立ち仕事であり、左膝への負担が大きいこと、また、仕事上、しゃがんだり重い物を持ったりする動作が必要とされ、その際には多大な苦痛あるいは不自由を感じていること、原告X1は、疼痛と疲労の緩和のため、毎日ストレッチとリハビリを行っていることが認められる。これらの事実を総合すると、原告X1は、収入の維持のために相当の努力を払っていることが認められ、また、原告X1の後遺障害が将来の収入の維持に影響を与える蓋然性も高いといわざるを得ない。したがって、原告X1については、後遺障害による逸失利益が生じていると認められる。

イ 基礎収入について
 前記一認定にかかる原告会社の規模、組織、利益状況、原告X1が担当している業務の内容、役員報酬額、他の従業員(原告X1の休業期間中に臨時で雇用されていた従業員を含む)の給与額等を総合考慮すると、原告X1の役員報酬は、全額がその労務に対する対価であるとまではいえず、その中には企業経営者として受領する利益配当部分が含まれていると認められる。したがって、本件事故による原告X1の後遺障害逸失利益を算定するに当たっては、原告X1の役員報酬中の利益配当部分を除外した、労務対価部分のみを基礎収入とすべきである。そして、上記諸般の事情を考慮すると、原告X1の役員報酬のうち、労務対価に相当する金額は役員報酬額の8割に相当する720万円と認めるのが相当である。

ウ 労働能力喪失率及び労働能力喪失期間について
 原告の後遺障害の内容及び程度(12級13号)に前記アにおいて認定した事情を総合考慮すると、原告X1の労働能力喪失率は14パーセント、労働能力喪失期間は、症状固定日(平成22年9月16日、当時原告X1は36歳)から67歳までの31年間(ライプニッツ係数は15・5928)と認められる。

エ 以上によれば、原告X1の後遺障害逸失利益は、以下のとおり1571万7542円となる。
 720万円×0.14×15.5928=1571万7542円

(4) 入通院慰謝料 175万円
 前提となる事実のとおり、原告X1は、本件事故による傷害の治療のため、症状固定日(平成22年9月16日)までの間に、約1か月入院し、約10か月通院しているから、原告X1の入通院慰謝料としては、175万円が相当である。

(5) 後遺障害慰謝料 290万円
 原告X1の後遺障害の部位・程度(12級13号)等に照らすと、原告X1の後遺障害慰謝料は、290万円が相当である。

(6) 損益相殺
 前記(1)ないし(5)の合計額から既払金550万0914円を控除した残額は、1819万3943円となる。

(7) 弁護士費用 180万円
 本件事案の内容、原告X1の請求額及び認容額等に照らすと、本件事故と相当因果関係を有する弁護士費用の額としては、損益相殺後の損害額の約1割に相当する180万円が相当と認められる。

(8) 合計額 1999万3943円
 以上によれば、本件事故による原告X1の損害額は、合計1999万3943円となる。

三 争点二(原告会社の損害額)について
(1) 原告X1に対する役員報酬の支払について

 前記一認定のとおり、原告X1は、本件事故による傷害のため79日間休業したが、原告会社は、上記休業期間についても、従前どおり年収900万円を前提とする役員報酬を支払っている。これは、本来であれば、原告X1が被告らに対し直接請求できる損害を原告会社が肩代わりして支払ったものであり、本件事故との間に相当因果関係が認められる。

 原告X1の本件事故による傷害の程度及び治療の経過等を考慮すると、上記休業期間は必要かつ相当であると認められるが、前記二認定のとおり、原告X1の役員報酬額のうちの労務対価部分は720万円に限られるから、本件事故との間に相当因果関係が認められる原告会社の損害額は、以下のとおり155万8356円となる。
 720万円÷365×79日=155万8356円


(2) 代替人員の人件費について
 前記一認定のとおり、原告会社は、原告X1の休業期間中、原告X1の代わりにc店で働く従業員4名を雇い入れ、これらの者に対し、合計87万7010円を支払っている。
 しかし、一般に、第三者が交通事故により会社の代表者を負傷させた場合において、会社が受けた損害について第三者に対し賠償を求めるためには、代表者に会社の機関としての代替性がなく、代表者と会社とが経済的に一体の関係があることが必要であると解される。

 確かに、原告会社は、ショットバー一店舗を経営する小規模の有限会社であり、その代表者であり店長兼バーテンダーである原告X1の果たす役割は非常に大きいということができる。しかし、前記一認定のとおり、原告会社は、昭和59年6月に設立された会社であるところ、原告X1は、平成19年7月から原告会社の取締役を務めていること、原告会社においては、アルバイトも含めて数名の従業員を雇用しており、これらの従業員に対しては、原告会社の売上高に比し相当額の給与が支払われていることなどの事情を考慮すると、原告X1と原告会社との間に経済的一体性があるとまでは認められない。

 したがって、原告会社が原告X1に代わる従業員の人件費の負担を余儀なくされたとしても、原告会社の負担と本件事故との間に相当因果関係があるとは認められない。

(3) 代替人員を雇い入れるまでの逸失利益について
 前記(2)認定のとおり、原告X1と原告会社との間に経済的一体性があるとまでは認められないから、仮に原告会社がc店の休業によって営業利益を喪失したとしても、そのことと本件事故との間に相当因果関係があるとは認められない。

(4) 弁護士費用
 本件事案の内容、原告会社の請求額及び認容額等を考慮すると、本件事故との間に相当因果関係を有する弁護士費用の額としては、前記(1)の損害額の約1割に相当する15万円が相当である。

(5) 合計額
 以上によれば、本件事故による原告会社の損害額は、170万8356円となる。

四 結論
 原告X1の請求は、被告らに対し、1999万3943円及びこれに対する本件事故の日である平成21年10月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
 原告会社の請求は、被告らに対し、170万8356円及び上記と同様の遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
 よって、主文のとおり判決する。
 (裁判官 吉田彩)

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