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H29- 9-26(火):15年分以上の過去の扶養料請求を認めた審判例紹介1
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○「過去5年間扶養料求償を認めた昭和61年9月10日東京高裁決定全文紹介」を読んだ方から、「扶養期間が重要だとする5年間超えの判例をご存知でないでしょうか?」との質問を受けました。色々審判例を探していたら、なんと15年分以上遡って過去の扶養料請求が認められた 昭和52年3月22日大阪家裁審判(家庭裁判月報29巻9号93頁)が見つかり、全文を2回に分けて紹介します。

○事案は、精神病にかかつた事件本人(実姉)をその夫(相手方)の要請により引取り長期間にわたり扶養してきた申立人(事件本人の弟)が、過去の扶養料約289万円を請求し、配偶者である相手方は弟である申立人に先んじて扶養義務を尽すべきものではあるが、その負担額は資産収入等から考えられる最大限度の額にとどまり、それを超える部分はその他の親族による扶養あるいは公的扶養に待つほかはないものとして、いわゆる労研方式により算出した約161万円を相手方の負担能力の範囲内で請求を認容したものです。

********************************************

主   文
相手方は申立人に対し、申立人が相手方のために立替えて支払つた事件本人の昭和34年6月から昭和50年1月までの間の扶養料計金150万7915円を支払え。

理   由
第1 申立の趣旨と事件の実情

 申立人は、申立の趣旨として「相手方は申立人に対し、申立人が立替えた事件本人の扶養料金等289万0409円を支払え」との審判を求め、事件の実情として、次のとおり主張した。

1 相手方は昭和31年1月12日事件本人と婚姻し、両者の間に三男二女が出生した。申立人は事件本人の弟である。

2 事件本人は昭和34年3月精神病に罹り、堺市000病院に入院したが、同年6月退院した。その直後申立人は相手方の要請に基づいて、事件本人を沖縄に住んでいた申立人の許に連れ帰り、医療に努めた結果、回復したので、同年12月相手方の許に帰らせた。

3 相手方は昭和37年7月事件本人の病気がまた悪くなつたからと云つて、事件本人を何の前ぶれもなく乳児の二女栄子とともに申立人の許に送り帰した。申立人は事件本人を一週間程、△△病院に入院させ、その後は申立人宅において療養させた。

4 相手方は昭和38年7月事件本人の帰宅を求めて来たので、旅費等をすべて、申立人が立替えて帰宅させたが、昭和39年8月申立人に対し「政子××丸に乗つた。迎え頼む」との電報を打ち、一方的に政子を申立人の許に送り帰した。申立人はやむなく昭和44年7月事件本人を相手方の許に帰らすまで、××病院に入院させたり、通院治療させたりした。

5 相手方は昭和44年7月以降事件本人に必要な医療を加えないばかりでなく衣食も満足に与えず虐待し、生命に危険が生じたので、申立人は相手方と協議のうえ、事件本人を昭和46年7月24日神戸市00区×××通0丁目0の0所在の△△サナトリウムに入院させた。

6 相手方は、上記病院に一度も面会に来ず、仕送りもしないので、申立人は昭和49年12月19日事件本人を退院させて申立人の郷里である沖縄に連れて帰り、爾来今日まで申立人において医療及び扶養を続けている。

7 上記△△サナトリウムに入院中の昭和47年9月16日から昭和49年12月19日までの間は医療保護を受けていたので申立人は金銭上の立替えをしなかつた。

8 事件本人の前記△△サナトリウムにおける入院治療費、沖縄における医療費・生活費は上記7を除いて、すべて相手方が夫として当然負担すべきものを、相手方の要請に基づいて、申立人が立替えて支払つたものである。相手方は十分支払能力を有するのに、全期間を通じて昭和42年6月申立人に対し事件本人の扶養料として1万円を支払つただけである。

9 申立人が事件本人の生活費として立替えた額は次のとおりである。
 労働科学研究所の昭和27年の軽作業壮年男子の最低生活費は月額7、000円であるから、これに主婦の消費単位である80%を乗じて算出された5、600円が昭和27年における主婦の最低生活費である。これを各年度の消費者物価指数によつて計算すると、
昭和34年   6、389円
〃 37年   7、451円
〃 38年   8、013円
〃 39年   八,316円
〃 40年   8、958円
〃 41年   9、414円
〃 42年   9、878円
〃 43年 1万0、302円
〃 44年 1万0、850円
〃 46年 1万2、392円
〃 47年 1万2、953円
〃 49年 1万8、010円
である。これを申立人が事件本人を扶養した期間によつて計算すると
昭和34年3月~同年12月     (九か月)  5万7、501円
〃 37年7月~昭和38年7月  (13か月) 10万0、797円
〃 39年8月~〃44年7月   (60か月) 58万0、154円
〃 46年7月~〃47年9月   (14か月) 17万8、537円
〃 49年12月~〃50年12月 (12か月) 21万6、120円
計 113万3、109円
となるが、これは最低生活費であつて、妥当な額はこの二倍と思われるので、これに2倍すると226万6、218円となり、これが、申立人が立替えた事件本人の生活費である。

10 申立人が立替えた事件本人の医療費等は次のとおりである。
イ 沖縄における入院治療費等 18万0、000円
ロ △△サナトリウム入院費 25万4、191円
ハ その他 20万0、000円
計 63万4、191円

11 そこで、相手方は申立人に対し、上記9及び10の立替金合計金290万0、409円から、相手方が支払つた1万円を差引いた残金289万0、409円の支払義務がある。

第2 適用法令
 申立人の本籍地である沖縄県は、平和条約発効の昭和27年4月28日以来、日本復帰の昭和47年5月15日の前日までの間においては、アメリカ合衆国の施政権に服していたものであるから、昭和32年1月1日以降においては、本件に関係のある日本民法等がそのまま同じ文言をもつて施行されていたとはいえ、事件本人や相手方の本籍地である大阪府とは法域を異にしていたものということができる。扶養の義務は法例21条によつて、扶養義務者の本国法によつて定められるのである。本件において問題とされているのは、昭和34年以降の扶養料の立替金についてであるから、上記施政権がアメリカ合衆国にあつた期待も含まれている。施政権が返還された以降の分については、日本の法によることはいうまでもないところであるが、それ以前の分については、同文とはいえ、観念的には、申立人については沖縄県の法が、相手方については日本の法が、それぞれ適用されるものといわなければならない。(然し、文言を同じくするものであるから以下に説示する法条は日本のそれによるものとする。)

第3 本件の性格
 本件は上記申立の趣旨及び事件の実情その他調査の結果からして、申立人が民法878条及び同879条に基づいて、事件本人の過去の扶養料についてではあるが扶養義務者である申立人と相手方との間において扶養の順序並びに程度についても当裁判所の判断を求め、(若し申立人が相手方に対し、契約に基づいて、申立人が支出した事件本人の扶養料を請求するのであれば、それは訴訟事項であつて、家庭裁判所の権限外の事項である)。家事審判規則98条49条に則つて、相手方に対し、立替扶養料の支払を命ずる申立をしたものと解する。

第4 事件の経緯
 申立人は昭和50年12月25日当裁判所に対し、上記申立をした。当裁判所は、昭和51年2月2日これを当裁判所の調停に付し調停が終了するまで審判手続を中止する旨の審判をした。当裁判所調停委員会は昭和51年3月3日から同年5月10日までの間四回に亘つて調停を試みたが、当事者間に合意が成立する見込みがなかつたので、不成立として調停事件を終了させた。そこで本件審判手続が再開されたものである。

第5 調査の結果によれば、親族関係について次の事実を認めることができる。
1 申立人は事件本人の弟である。事件本人の父は昭和18年9月6日死亡したが、母光(明治41年7月30日生)は生存しており、事件本人の兄弟姉妹は、申立人の外に、姉幸子(大正15年3月14日生)、妹良子(昭和9年12月24日生)、弟正利(昭和13年4月12日生)がいる。

2 相手方と事件本人とは昭和29年相手方の肩書住所である大阪市00区××△丁目△番△△号で同棲を始め昭和三一年一月一二日大阪市〇〇区長に対し婚姻の届出をして夫婦となつた。当時は相手方の父信彦、母ナツも同居していた。相手方と事件本人との間に、昭和30年8月1日長男信茂が、昭和31年9月2日二男信武(昭和32年3月14日死亡)が、昭和32年12月24日三男信宗が、昭和35年3月19日長女ノブ子が、昭和36年11月9日二女栄子が各出生した。
 父信彦は昭和35年に、母ナツは昭和46年7月4日に死亡した。

第6 上記親族関係によれば、申立人は事件本人の弟であるから、民法877条によつて、事件本人を扶養する義務があるものということができる。相手方は事件本人の配偶者であるから、民法760条によつて事件本人を扶養しなければならないものである。事件本人に対する申立人と相手方との扶養義務の順序は、相手方が事件本人の配偶者であるとの身分関係から申立人に先んじて扶養義務を尽さなければならないものと解する。然しながら、相手方がその負担能力に拘らず、事件本人が必要とする経費のすべてを負担しなければならないものではなく、相手方の負担額は、その資産収入等から考えられる最大限度の額に止まり、それを超える部分は申立人等の扶養或は公的扶養に待つほかはないものと解する。

第7 調査の結果によれば、次の事実が認められる。
1 事件本人と相手方とは、共に沖縄県××郡000村の出身で、事件本人の祖母と相手方の母ナツとは姉妹の関係にあつたので、事件本人と相手方とは昭和29年見合の上、結婚することとし、前記のように大阪市00区××△丁目△番△△号の相手方の住居で同棲を始め、昭和31年1月12日婚姻の届出をした。事件本人は三男信宗の出生後、精神病にかかり、昭和34年3月から同年6月まで堺市の000病院に入院した。

2 事件本人は昭和34年6月から同年12月までの約6か月間那覇市××で、申立人やその家族と同居し、申立人の扶養を受けまた申立人の負担で精神病の医療を受けた。
 事件本人は同年12月相手方の許に帰つた。

3 事件本人は二女栄子が出生した後、再び精神病が悪化したので、昭和37年7月栄子を連れて、沖縄県の申立人の許に赴いて昭和38年7月まで約12か月間申立人方に滞在して、その扶養を受けた。事件本人はその間一週間程、精神病治療のために、那覇市△△所在の△△病院に入院し、同入院前及び退院後も通院して治療を受けた。その費用はすべて申立人が負担した。

4 事件本人は昭和38年7月相手方の許に帰つたが、昭和39年8月再び那覇市00×××番地上所在の当時の申立人方に来て、昭和42年8月まで同所で申立人の妻子と同居し、その後昭和44年7月、相手方の許に帰るまで、同市××の近くに事件本人の母光が間借したので、同所で光と共に暮した。その間通じて約60か月間申立人の扶養を受けた。また、その間事件本人の精神病が重くなつたので、事件本人は、申立人の負担で、昭和41年4月から約6か月間、××病院に入院し、その入院前及び退院後も通院して治療を受けた。

5 事件本人は昭和46年7月24日から昭和49年12月19日までの間、精神病治療のため、神戸市所在の△△サナトリウムに入院した。申立人はその入院当初から昭和47年9月末日までの入院費用を負担した。昭和47年10月1日以降は医療扶助を受けたので、申立人の立替費用はない。(申立人は昭和47年9月16日から医療扶助を受けた旨主張するが、△△サナトリウムからの回答によれば、事件本人が医療扶助を受けたのは昭和47年10月1日からであるから、申立人は昭和47年9月末日までの入院費用等を負担したものと認めるを相当とする)。

6 事件本人は昭和49年12月19日△△サナトリウムを退院後、直ちに、申立人肩書住所所在の申立人方に赴いて、同所に約3か月間滞在していたが、その後、事件本人の肩書住所の近くで間借して、同所に移転し、昭和50年5月以降は申立人が買受けた事件本人肩書住所々在の家屋に移り、同所で、母光と共に暮している。この間事件本人が申立人から扶養を受け、また医療費の支出を受けたのは、昭和49年12月から、昭和50年1月にかけての約1か月間で、それ以降は医療扶助を含む生活保護を受けるようになつた。

7 事件本人は何らの資産なく、また病身のため、昭和34年以降労働能力がなく、従つて収入能力もない。


以上:5,297文字
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H29- 9-25(月):ホテルへ行ったが一線は越えていないとの言い訳が通用した判例紹介
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○某政治家の「一線は越えていない」と言う表現が流行語になりそうな気配もありますが、実際の裁判例で、ラブホテルに入った事実は認めながら、「いわゆる一線を越えたという意味では,そういったものもありません」と述べて、不貞行為の存在が否認された裁判例がありました。色々な裁判例があるものです。

○事案の概要は、原告の元妻Cと不貞関係にあったと一度は認めた被告が、原告と元妻Cとの離婚裁判ではそれを否定する等不実な証言等をしたことにより、原告が精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を請求しましたが、不貞行為事実を否認して請求を棄却した平成25年1月30日東京地裁判決(TKC)全文を紹介します。

○被告の「一線は越えていません」との弁明に対し、原告は、「元妻Cと被告との間で『当直室のドアを閉めないでください。後で乱入します。』、『11月2日夜一人です。待ってます。』という内容のメールをやり取りしていたこと,原告の自宅から被告用のMサイズの赤いブリーフが発見されたこと,Cは原告に対し慰謝料として150万円を支払う意思があったこと(甲7)などからすると,被告とCとの間には不貞行為があったことは明らかである。」と反論しました。

○しかし、裁判所は、「被告とCとの間に単なる職場の部下と上司の関係を越えた男女関係があったことが疑われ,ホテルに入った経緯については,陳述内容に変遷が認められるものの,不貞行為そのものについて,本件証拠上も認定するには至ら」ないとしてその事実を否認しました。控訴されたかどうかは不明です。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する本判決確定の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,原告が,原告の元妻と不貞関係にあったと一度は認めた被告が,原告と元妻との離婚裁判ではそれを否定するなど不実な証言等をしたことにより,精神的苦痛を受けたと主張し,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料300万円及び本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 争いのない事実等(証拠上容易に認定できる事実を含む。)
(1)当事者等

 原告とC(以下「C」という。)は,平成23年9月7日に和解離婚した元夫婦である。
 被告とCは,職場である病院において,上司と部下の関係にあった。

(2)被告の原告に対する慰謝料の支払
 原告は,被告とCが平成20年9月20日にいわゆるラブホテルに入ったことに関し,平成21年3月20日,被告の妻も立会の下,被告と話合いの機会(以下「本件話合い」という。)を持った。
 原告と被告は,同日,被告が原告に対し,慰謝料として100万円を支払う旨合意し,原告と被告との間には合意書に定める以外に債権債務がないことを確認した上,被告は,原告に対し100万円を支払った(甲1,2)。

(3)離婚訴訟における被告の証言等
 Cは,原告を相手方として,離婚訴訟(さいたま家庭裁判所平成22年(家ホ)第5号離婚等請求事件。以下「本件離婚裁判」という。)を提起した。
 Cは,本件離婚裁判において,証拠として,被告とCとの間に不貞関係はないこと,平成20年9月にCの試験合格及び被告の資格取得の慰労会を二人でし,その後,酔いを醒ますために,午後11時ころホテルに入ったが,Cはホテルで吐いており,自分は眠ってしまったので性的行為は一切していない,翌日2時ころホテルを出た旨記載した被告作成の陳述書(以下「本件陳述書」という。甲3)を提出した。

 また,被告は,平成23年7月7日,原告とCとの本件離婚裁判に証人として出頭し,偽証罪の告知を受けて宣誓した上,平成20年1月にCの子どもは在宅していたが,原告の不在中に,Cの試験の合格祝いのために原告とCの自宅(以下「原告の自宅」という。)に入った,同年9月20日,はっきりとは覚えていないが,飲んだ流れでホテルに入ったが,同女は気持ちが悪くてトイレに籠もっている状態であり,性的な行為はなかった,本件話合いの内容は,携帯電話で録音したなどと証言した(以下,「本件証言」という。甲4)。

(4)原告とCの離婚
 原告とCは,平成23年9月7日,Cが原告に対し,離婚慰謝料として100万円を支払うなどの合意をし,裁判上の和解によって離婚した(甲8)。

2 争点
 被告は,本件離婚裁判において,不実な証言等をして,原告に精神的苦痛を与えたか。

3 当事者の主張
(原告の主張)
 Cは,原告に対し,被告との不貞行為を白状し,被告も,本件話合いにおいて,恋愛感情はないから不倫ではないと弁明したものの,Cとの不貞行為を認めていた。また,被告は,本件話合いの後,被告が原告に対し支払うべき慰謝料とCが被告の妻に支払うべき慰謝料の差額である100万円を原告に支払ったこと,ホテルに入った経緯についての被告の弁解は不合理に変遷していること,平成20年1月に原告の自宅に来た理由についての被告の弁解も不合理に変遷していること,Cと被告との間で「当直室のドアを閉めないでください。後で乱入します。」、「11月2日夜一人です。待ってます。」という内容のメールをやり取りしていたこと,原告の自宅から被告用のMサイズの赤いブリーフが発見されたこと,Cは原告に対し慰謝料として150万円を支払う意思があったこと(甲7)などからすると,被告とCとの間には不貞行為があったことは明らかである。

 しかし,被告は,本件離婚裁判においては,Cとの不貞行為を否定し,原告に不利な内容の本件陳述書を提出し,本件証言をした。本件陳述書や本件証言の内容は,Cとホテルに入った経緯について,本件陳述書ではCが酔った状態で帰宅すると原告が怒るので酔いを醒ますためなどとし,本件証言では酔っぱらっていたのでよく覚えていないがCが吐きそうだったためなどとしており,不合理に変遷している。また,被告は,本件話合いの会話を録音していたが,Cは,本件離婚裁判において,原告に不利に編集されたものを証拠として提出した。
 以上のとおりの被告の不実な証言等により裁判は混乱し,原告は,多大な精神的苦痛を受けた。

(被告の主張)
 被告は,本件離婚裁判において,不実な証言等をしていない。被告は,一貫して,Cとの不貞行為を否定していたが,同女とホテルに入った事実はあったことから,早期解決のため,原告に対し,100万円を支払った。
 また,被告は,Cから,原告が本件離婚裁判において,Cを含めた4人で本件話合いをし,その場で被告がCとの不貞行為を認めたと主張しているからそれを否定する証拠となる本件話合いの録音媒体を渡してほしいと強く頼まれ,渡したに過ぎず,編集などはしていない。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 証拠(甲1から20,乙1から4,被告本人尋問の結果,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。

(1)本件話合いの内容(甲1から3,被告の陳述)
 被告は,平成20年9月にCとホテルに行ったことについて,原告と話合いをすることになり,平成21年3月20日,慰謝料の相場や示談の方法等について弁護士に相談した後,原告が勤める病院に被告の妻子とともに赴いた。

 被告は,本件話合いの冒頭で,原告に対し,大変反省し,原告に多大な精神的苦痛を与えたとして謝罪した。原告は,被告に対し,被告の妻もCに対し慰謝料を請求できるが,Cと被告の給料や立場の違い等から,原告が被告に請求できる慰謝料額の方が100万円から200万円くらい多い,原告が被告を訴えて,被告の妻もCを訴えて,二人を職場である病院から追い出すことができるなどと話した。原告は,被告に対し,慰謝料として150万円を支払うよう求めたが,被告は,借金もあり子の養育に費用がかかることから100万円にしてほしいと頼み,最終的に,原告はこれに応じた。原告は,本件話合いにおいて,被告とCとの間に不貞行為があったことを前提に話をしていたが,被告は,平成20年9月に酒を飲んでCとホテルに入ったことは認めたが,セックスはしていないと述べた。
 被告は,本件話合いの会話内容を録音していた。

(2)Cの言動(甲7,弁論の全趣旨)
 原告とCは,Cが原告に対し,平成20年9月の件で和解金の差額として,150万円を支払った旨の平成21年4月11日付け合意書(甲7)を作成した。
 原告とCの関係は修復せず,Cが子を連れて家を出て,別居に至った。

(3)本件離婚裁判の経緯(甲2から4,被告の陳述)
 Cは,被告に対し,本件話合いの内容を録音した媒体を渡すよう依頼し,被告からそれを受け取ると,反訳して,本件離婚裁判において証拠として提出した。
 また、被告は,Cから頼まれて,本件陳述書を作成し,平成23年7月7日,本件離婚裁判において,証人として出頭し,本件証言をした。同日,被告の妻も証人として呼び出され,本件離婚裁判において証言した。 

(4)別訴訟(乙1から3)
 平成23年6月30日,東京簡易裁判所において,原告とCとの間の子の法定代理人親権者父である原告は,原告の子を原告として,被告に対し,Cとの不貞行為によって原告の家庭を崩壊させたこと,被告が本件離婚裁判において不貞行為を否定し離婚を幇助したことなどを理由として,100万円の慰謝料の支払を求めて提訴した。

2 争点に対する判断
 上記1によれば,被告は,平成20年9月20日,Cと二人で飲んだ後,午後11時ころいわゆるラブホテルに入り,翌午前2時ころまで滞在したこと,被告は,平成21年3月20日,原告に対し,謝罪し,慰謝料として100万円を支払ったことが認められ,これらの事実は,被告とCとの間に不貞行為があったことを疑わせるものである。

 しかしながら,被告は,本件話合いにおいても,Cとの性行為の存在については明確に否定しており,本件陳述書及び本件証言の内容と矛盾するものではない。また,被告は,本件話合いにおいて,「あれ1回こっきりですし。」とは述べているものの,続いて「ホテルに入ったという既成事実は」,「何も申し開きはしませんけれども」,「いわゆる一線を越えたという意味では,そういったものもありませんし」と述べていることからすれば,被告が不貞行為を認めたとまでは認められない。また,本件話合いにおいて,原告は原告の被告に対する慰謝料額と被告の妻のCに対する慰謝料額の差額を問題にしているが,被告及び被告の妻は,原告との問題がすべて終了することを前提に被告が原告にいくら支払えばよいかを尋ねており,慰謝料額の算定方法について,被告が原告と同様の認識を有していたとまでは認められない。

 また,原告の陳述書(甲19)によっても,Cは平成20年9月20日に被告が飲み過ぎたせいで本番をやっていないと弁明したと述べるにとどまり,性行為をしたと明確に自認したとまでは認められない。
 また,原告は,被告が本件話合いの録音を原告に不利に編集したと主張し,本件証拠上も,記録媒体に残された録音終了時刻である平成21年3月20日午後4時1分が本件話合いの終了時刻より後の可能性が高いと考えられるものの,被告にとっては同日に原告に100万円を支払い,清算条項の入った合意書を作成したことによって終了したはずのCとの関係について,本件話合いの当日はもちろん,その後においても,録音内容を編集してまでCに加担する理由は見当たらず,本件証拠及び調査嘱託の結果(平成21年3月20日当時,被告が使用していた携帯電話の機種についての回答結果)をみても,被告が本件話合いの録音内容を原告に不利な内容に故意に編集したなどの事実を認めることはできない。

 そうすると,被告とCとの間に単なる職場の部下と上司の関係を越えた男女関係があったことが疑われ,ホテルに入った経緯については,陳述内容に変遷が認められるものの,不貞行為そのものについて,本件証拠上も認定するには至らず,被告が自己の認識に反していることを知りながら,本件離婚裁判において偽証したり,虚偽の内容の陳述書を提出したりしたとまで認めることはできず,被告に不法行為を認めることはできない。

3 結論
 以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用は,民事訴訟法61条により,原告の負担とする。
東京地方裁判所民事第42部 裁判官 樋口真貴子

以上:5,187文字
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H29- 9-24(日):男はみんな一生生きる間に浮気する-男と決めつけるのは差別では?
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○以下の、鳥越俊太郎氏 妻に浮気がバレ「体は裏切ったかもしれないけど心は裏切ってない!」とのデイリーニュースの感想です。
鳥越氏によると「男ね、一生生きる間に浮気一度もしないなんてことはさ、あり得ないですよ。誰だって」と断言されています。しかし、間男・間女?の味方を標榜して、間男・間女として損害賠償請求をされている方々の相談を受けていると、最近は、浮気するのは「男」よりも「女」の方が多いのではと実感します。

○当然と言えば当然ですが、鳥越氏のお考えは、あくまでご自分を基準に考えて、自分がこうだから、他人も男もこうだろうとの推測であり、人間とは所詮自分を中心にしか思考できないものだと実感します。性的欲求は、男が強く、女は男より弱いとの前提でお考えのようですが、この点も、男女問題相談を数多くこなしているとそうとは限らないと実感します。

○畏敬する谷沢永一先生の名著「人間通」の「個人差」に「誰も否定できない事実として、第一に、人並み外れて性行為の回数を重ねなければ身体が持たない絶倫型がある。第二に、数多くの異性を相手に性行為の遍歴を重ねなければ気が済まない好色型がある。これらの人々が法を侵さぬ範囲で思いを遂げるのが罪であろうか。持って生まれた容貌が変更できない宿命である如く、絶倫と好色も恐らく遺伝子の所産であろう。」との記述があります。

○谷沢先生は、男を前提に記述されたのかも知れませんが、この遺伝子の所産である「絶倫型」、「好色型」人間も、男女いずれにもあるのではと実感しています。前回の都知事選で週刊誌等で色々騒がれた鳥越氏は「絶倫型」で「好色型」に所属するのではと見ていました。このような方を基準として「男はみんな(浮気)する。」は普遍的原理とは、到底、言えません(^^;)。男女問題相談をしていると、性欲求は、個人差が極めて著しい分野であり、男はこうだ、女はこうだとの決め付けは、到底、できないと実感しています。

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鳥越俊太郎氏 妻に浮気がバレ「体は裏切ったかもしれないけど心は裏切ってない!」
デイリーニュース9/22(金) 20:21配信


ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(77)が22日放送のカンテレ「怪傑えみちゃんねる」に出演し、妻に浮気がバレた時に「体は裏切ったかもしれないけど、心は裏切ってない!」と言い訳して切り抜けたことを打ち明けた。

【写真】鳥越俊太郎氏 憧れ番組で「落選」イジられる

司会のタレント・上沼恵美子(62)に「浮気してきてますわ」と指摘された鳥越氏は「男ね、一生生きる間に浮気一度もしないなんてことはさ、あり得ないですよ。誰だって」ときっぱり。

周囲の出演者からは「えーっ!」「人によるでしょ」と非難の声が上がったが、鳥越氏は動じず「男はみんなする。するんだよ」とほほ笑みながら断言した。

上沼が「奥さん泣かせてるんですよ。離婚までいってるんです」とたたみかけると、鳥越氏は「いや、いってません」と否定。

「バレた時に、女房は怒りましたよね。僕は言いました。『確かに体は裏切ったかもしれないけど、心は裏切ってない!』」と、強引な言い訳で切り抜けたことを明かした。

「今でも時々チクチクと言われる」という鳥越氏は、そのたびに「必ずということを言い続ける。もう呪文と一緒、お経と一緒」と、同じ言い訳を続けているという

以上:1,408文字
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H29- 9-23(土):”希望の光2107尾形和優with仙台フィルメンバーコンサート”を鑑賞して
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○平成29年9月20日(水)は、「日立システムズホール仙台」で、「希望の光2107尾形和優with仙台フィルメンバーコンサート」を鑑賞してきました。日立システムズホール仙台は、仙台市青年文化センターと呼ばれていましたが、平成25年7月1日より施設命名権(ネーミングライツ)を導入し、日立システムズホール仙台との名称での運用を行なっているとのことです。

「日立システムズホール仙台」は、「村治佳織ギター・リサイタルを聴いて」記載のとおり、平成19年11月以来、およそ10年ぶりでした。このとき村治佳織氏は、802席をほぼ満席にしていましたが、尾形和優氏も同様に802席ほぼ満席にしてのコンサートでした。

尾形和優氏は、そのHPでのプロフィールによると「1988年京本政樹作詞、尾形和優作曲「BLUE EYE'S MEMORY」(BMGビクター)を発売。天性のリズム感と伸びやかなヴォーカルはバラードの真骨頂と評されるも、経営難に陥った気仙沼での家業を継ぐことを決意し、事業の多角化を図りながらその立て直しをおこなう。」とされています。

○実は、私は、尾形和優氏には、そのお父様の尾形和一氏の時代から、お世話になっています。大学入学時、当時、気仙沼市育英会会長をされていた尾形和一氏の面接を受け、特別奨学生に採用して頂きました。大学4年間、当時としては大きな額の奨学金を貸与され、大変、助けられました。

○弁護士になってからは、尾形和優社長の株式会社丸和から仕事を頂くなど大変お世話になっております。尾形和優氏は気仙沼小学・中学・高校と1年先輩で、昔から知っておりましたが、100名以上の従業員を要する企業の社長業だけでも大変なところ、プロ歌手としてもご活躍なされており、ホントに凄い方だと尊敬しておりました。

○尾形氏のコンサートは以前にも2,3度聴いたことがありますが、802席ものホールで聴くのは今回が初めてでした。いつものことですが、伸びやかなお声で音域が大変広くファルセットになっても音の厚みが変わらないのが凄いところです。コンサートの曲目は、演歌党の私には殆ど判らないものばかりですが、心地よく心に響く曲ばかりで、また、特別ゲストのサーカスも、殆ど知らなかったところ(^^;)、そのハーモニーの素晴らしさを堪能できました。

○60代後半であれだけの声を出せるのは羨ましい限りですが、70代、80代と益々活躍されて、熟年世代の励みの存在として輝いて欲しいと思った次第です。以下、当日、プログラムです。

 

 
以上:1,044文字
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H29- 9-22(金):メールデータを違法収集証拠として請求を棄却した裁判例紹介2
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○「メールデータを違法収集証拠として請求を棄却した裁判例紹介1」の続きで、平成21年12月16日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)の裁判所の判断部分全文を紹介します。
重要な指摘は以下の通りです。

・携帯電話機により個人間で受送信されたメール文は,信書(特定人がその意思を他の特定人に伝達する文書)と同様の実質を有するものであり,信書と同様に正当な理由なく第三者に開示されるべきものではない
・このようなメール文及びそのデータも,正当な理由なく第三者がこれを入手したり,利用したりすることは許されない
・他方配偶者が一方配偶者に不貞行為があるとの疑いを抱いた場合に,他方配偶者の信書や携帯電話機等のメールを見たり,その内容を自ら保存すること等が一般的に許されるとはいえない
・本件メールのデータには重大な違法性があるところ,このようにして得られた証拠は排除されるべきであり,著しい反社会的手段が用いられた場合に限って排除されるとすべき根拠はない




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第3 当裁判所の判断
1 本件メールの証拠能力等

(1) 被告は,本件メールは,原告がそのデータをAの意思に反していわば窃取して作成したものであり,違法収集証拠として排除されるべきである(証拠能力がない。)と主張する。

 これに対し,原告は,平成19年3月18日(日曜日),原告の実家に面接交渉で来ていた長男がおもちゃ代わりに持っていた本件電話機を原告が操作したところ,たまたまただならぬ内容の本件メールの一部が出てきたので,本件電話機のチップを外し原告のパソコンに差し込んでそのデータ全部をコピーしたもので,このようなデータの入手方法等に違法はない(著しい反社会的手段による入手ではなく,それが書証として採用されても人格権の侵害に匹敵すべき重大な法益の被害を惹起するものでもない。)などと主張する(なお,データ入手日に関する原告の主張は変遷している。)。

(2) ところで,刑法133条の信書開封罪,235条の窃盗罪及び254条の遺失物横領罪は,封をしてある信書の開封,他人の財物の窃取及び占有を離れた他人の財物を横領する行為を犯罪としているが,本件電話機においてAと被告との間で受送信されたメール文及びそのデータは,信書あるいは財物ということはできず,刑法上の上記犯罪行為を構成しない。

 しかし,携帯電話機により個人間で受送信されたメール文は,信書(特定人がその意思を他の特定人に伝達する文書)と同様の実質を有するものであり,信書と同様に正当な理由なく第三者に開示されるべきものではない。また,そうであれば,このようなメール文及びそのデータも,正当な理由なく第三者がこれを入手したり,利用したりすることは許されないというべきである。

(3) Aは,原告との別居後まもなく離婚を求めて調停を申し立て,原告主張の本件メールのデータ入手時には2度目の調停事件が係属中であった(前提事実)。
 また,原告の主張によれば,原告は,たまたま本件電話機の操作中に本件メールの一部を見たため,そのデータを自分のパソコンにコピーし,これを入手するまで知らなかった被告の存在及びAと被告との交際の一部を知り,探偵社に依頼してAの行動を調査した上,Aに対し,平成19年4月29日の被告宅訪問の件についての調査報告書及び本件メール(甲2の1及び2の分)を見せて説明を求めたところ,Aの態度が一変し,結局,2度目の調停も不成立で終了したというのであって,このような本件メール及びそのデータの入手や利用がAあるいは被告の承諾その他これを正当とする理由に基づくものでないことは明らかであり,その入手や利用は違法であるというべきであり,その入手方法の違法性は刑事上罰すべき行為と実質的に同等に重大なものであるといえる。

 このことは,Aが長男に本件電話機をおもちゃ代わりに使わせていたこと,原告が本件電話機を操作したのはメールを探索するためではなく,メールはたまたま発見されたにすぎないこと,その際,メールはパスワード等によって保護されていなかったこと(原告はかつてはパスワードがあったと主張している。),原告がチップをデータのコピー後速やかに本件電話機に戻したことなどによって正当化されるものではない。

(4) 一般に,一方配偶者の不貞行為の相手方となることが他方配偶者に対する不法行為を構成し得ること,不貞行為の多くは一方配偶者が他方配偶者に秘密裏に密室等で行い,他方配偶者が不貞行為の存在を立証する証拠を入手するには困難があることなどは,直ちに上記判断を左右するものではない。すなわち,他方配偶者が一方配偶者に不貞行為があるとの疑いを抱いた場合に,他方配偶者の信書や携帯電話機等のメールを見たり,その内容を自ら保存すること等が一般的に許されるとはいえない(疑いを抱くことに客観的で合理的な根拠があるときは,それに基づいて不貞行為を立証すれば足りるであろうし,それがないときは,不貞行為の疑いを抱くこと自体が他方当事者の単なる主観ないし思い込みにすぎないことも多く,その証拠を一方当事者のメール等から得ようとすること自体が相当ではない。)。
 したがって,本件メールは,原告の主張によっても,違法に入手されたデータに基づくものといわざるを得ず,本件訴訟においてはいわゆる違法収集証拠として証拠能力を否定し,証拠から排除するべきである。


(5) 以上に関し,原告は,著しい反社会的手段による入手ではなく,本件メールが書証として採用されても人格権の侵害に匹敵すべき重大な法益の被害を惹起するものでもないと主張する。
 しかし,上記のとおり,原告が主張するような手段による本件メールのデータには重大な違法性があるところ,このようにして得られた証拠は排除されるべきであり,著しい反社会的手段が用いられた場合に限って排除されるとすべき根拠はなく,上記主張は採用することはできない(原告の主張は必ずしも明らかではないが,それが強取や喝取等の凶暴な手段をいうのであれば,窃取や詐取等は容認されることになるが,違法行為を助長することになり,不当である。)

 なお,原告は,チップのデータをパソコンに移す際,本件メールのデータだけではなくチップに保存されていたデータを全部コピーし,その結果,原告のパソコンには本件メール以外のAと第三者とのメール文に関するデータも現に保存されている(原告の供述)。このようなデータのコピーは,法的保護に値するAと被告及び第三者のプライバシーをも侵害する行為というべきである。また,本件メールが甲2,5及び6に分けて順次提出されていることからすれば,原告は,Aと被告との間で受送信された他のメール文のデータをも保有している可能性があり,その一部のみを恣意的に選んで本件メールとして提出することがあれば,それは真実の発見を阻害することになる(原告は,提出されていないメールは被告において提出すれば足りる旨の主張もするが,被告に本件不貞行為の不存在の立証責任はないし,被告が他のメールのデータを保存しているかも不明である。)。

2 本件不貞行為の存否について
(1) 映画の件からAの別居,調停の申立て,別件訴訟及びその和解に至る経緯等は,前提事実のとおりであり,証拠(甲4の1及び2,甲8ないし10,乙3,4の1及び2,原告,被告)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
 しかし,これらの事実から,Aと被告との間で本件不貞行為があったと認め又は推認することは困難である。
ア 映画の件に関し,Aは,平成18年1月14日の午前中に出かけたが,原告に約束した時間よりも2時間半以上遅れた午後8時過ぎまで帰宅しなかったこと,Aは被告と2人だけで映画を観たが,それは参加予定であった他の女性が来れなくなったためであること,帰宅時間が遅れたのは予約できた映画の上映時間が午後になったためであること

イ Aの別居は,映画の件のあった当日及び翌日,原告が当時1歳2か月の三男がいるのにAが約束に反して遅く帰宅したことに強く文句を言ったことが直接のきっかけであること

ウ 調停及び訴訟等については,Aは,原告とは性格の不一致があり,原告が怒りっぽい性格で,Aが言葉の暴力を受けていたので婚姻継続の意思を失っていき,民法770条1項5号所定の離婚事由があると認識していたこと,これに対し,原告は,Aが主張するような同号所定の事由に当たる事実は存在せず,平成19年3月18日以降に判明したところでは,Aに愛人である被告がおり,被告との本件不貞行為が原告とAとの婚姻関係を破綻させたと認識していたこと

エ Aが本件不貞行為の存在を認めたことはなく,Aは原告に和解金として200万円を支払ったが,これを住宅ローンの清算金の支払(財産分与)であると認識しており,原告に対する慰謝料とは認識していないこと

(2) 被告宅訪問の件につき,Aは,平成19年4月29日午前10時11分ころに被告宅を訪ね,午後1時ころ被告とともに被告宅を出て電車に乗り,午後2時30分ころに別れたが,被告宅を出た後に二人が手をつないでいることがあった(前提事実)。なお,調査報告書には,Aが被告宅のあるマンションに裏口から入ったことからAが同マンションの鍵を持っていたと考えられるとする記載があるが,同マンションの施錠や解錠がどのようなものであるかは不明であり,単に裏口から入ったことのみをもってAが鍵を持っていたと判断することはできない。

 そして,被告宅内でAと被告が2人だけで約2時間半を過ごし,被告宅を出てから被告と手をつないで歩いていた事実をもって,原告の主張するように被告宅で被告とAが肉体関係を結んだこと及びその余韻を表しているなどと即断することはできない(上記事実は原告主張のような疑念を抱かせるものではあるが,被告が被告宅でAの資格取得のための質問に答え,愚痴を聞いていたなどとする原告の主張及び供述が虚偽であると判断するに足りる証拠等はない。)。

 のみならず,原告の主張によっても,被告宅訪問の件があった当時,既に原告とAは離婚をいったん合意していたというのであって,仮に被告宅訪問の際に肉体関係があっても,それを不貞行為であると評価することはできない。

(3) 本件メールは証拠から排除されるべきであるが,仮に,その件数やその内容が原告主張のようなものであり,そこにAと被告との親密な交際ぶりや愛情ないし恋情等が繰り返し記載されていたとしても,そのことから直ちにAと被告とがただならぬ関係,すなわち本件不貞行為のある関係にあったとすることはできない。
 以上を要するに,被告は,Aが原告と婚姻していることを知りながら交際をしていたが,その交際において不法行為を構成する本件不貞行為が存在したと認めるべき証拠はなく,これが存在したとする原告の主張は理由がない。

3 よって,原告の請求は,その余の点を論ずるまでもなく理由がないから,主文のとおり判決する。
 (裁判官 笠井勝彦)
以上:4,558文字
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H29- 9-21(木):メールデータを違法収集証拠として請求を棄却した裁判例紹介1
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○不貞行為を理由として間男・間女?に対する損害賠償請求事件は後を絶たず益々増える傾向にありますが、この不貞行為が発覚するきっかけで一番多いのが携帯電話やスマホでのメールの遣り取りです。配偶者の一方が、怪しいと思って相手方の携帯電話・スマホを見て、怪しいメールを発見して追求することから不貞行為が発覚します。

○間男・間女?側から依頼されることが多い当事務所では、不貞行為の証拠として数百頁に渡る大量のメールの遣り取り記録が提出された事件もありました。この種事件では、メールの遣り取りが証拠として出されことが多いのですが、第三者に知られるおそれがあるメールに、よくぞここまで書けるものだと、ポルノ小説を遙かに上回る生々しく迫力のある記述に感服したこともあります(^^)。

○その不貞行為を立証するためのメールですが、夫が、妻Aの不貞行為の相手方に対し、妻Aとの婚姻関係を破綻させ、精神的苦痛を被らせた等として、間男に対し、慰謝料を請求した事案において、Aの携帯電話機おいてAと間男との間で受送信されたメール文の写しとして夫が提出した文書は、そのデータの入手や利用がAあるいは間男の承諾、その他これを正当とする理由に基づくものでないことは明らかであり、その入手や利用は違法であるとして、本件メールは、本件訴訟においては、いわゆる違法収集証拠として証拠能力を否定し、証拠から排除すべきであるとした上で、間男とAとの交際において不法行為を構成する本件不貞行為が存在したと認めるべき証拠はないとして、夫の間男への請求を棄却した平成21年12月16日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)を2回に分けて紹介します。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成20年7月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,被告が原告の妻A(以下「A」という。)の不貞行為(以下「本件不貞行為」という。)の相手方となり,原告とAとの婚姻関係を破綻させ,原告に精神的苦痛を被らせたなどとして,原告が被告に対し,慰謝料を請求する事案である。
 本件の主要な争点は本件不貞行為の存否であるが,被告は,A使用の携帯電話機(以下「本件電話機」という。)においてAと被告との間で受送信されたメール文の写しとして原告が提出した文書(甲2の1及び2,甲5の1ないし15,甲6の1ないし161。以下併せて「本件メール」という。)が違法収集証拠であるなどとしてその排除を求めている(この点の判断は後記第3の1のとおりである。)。

1 前提事実
 争いのない事実並びに証拠(甲1,3,4の1及び2,甲8ないし10,乙3,原告,被告。後記認定に反する部分を除く。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。

(1) 当事者等
ア 原告は,昭和○年生の男性であり,会社に勤務している。
 Aは,昭和○年生の女性であり,平成2年から東京都港区赤坂見附所在の建設会社に勤務し,平成18年ころ当時,同社東京支店建築工事管理部に事務職として勤務していた。
 原告とAは,小学校及び中学校の同級生で,平成5年ころから交際を始め,平成9年3月2日に婚姻し,平成○年○月に長男,平成○年○月に二男,平成○年○月に三男の3人の子をもうけた。
 原告とA及び子らは,平成17年6月から千葉県習志野市津田沼のマンション(原告の現住所。以下「自宅」という。)に居住していた。なお,Aの父母が住む実家は同市谷津にある。

イ 被告は,昭和○年生の男性で,1級建築士及び1級建築施工管理技士等の資格を有しており,平成10年から上記建設会社に勤務し,平成18年1月ころ当時,上記支店建設工事管理部において工事管理の職にあった。
 被告は,平成18年1月5日に前妻との協議離婚届出をし,横浜市中区石川町所在のマンション(以下「被告宅」という。)に居住していた。

(2) 映画の件及び被告宅訪問の件
ア Aと被告は,休日の平成18年1月14日,被告宅に近い横浜市中区桜木町所在の映画館において2人で映画を観た(以下これを「映画の件」という。)。

イ Aは,平成19年4月29日午前10時11分ころに被告宅を訪ね,午後1時ころ被告とともに被告宅を出て電車に乗り,午後2時30分ころに別れたが,被告宅を出た後に2人は手をつなぐことがあった(以下これを「被告宅訪問の件」という。)。

(3) Aと原告との別居,調停,訴訟及び和解等
ア Aは,映画の件があった翌日の平成18年1月15日に子らを連れて実家に戻り,以後原告と別居した。なお,Aは,平成17年12月18日,原告と言い争いになり,実家に戻ろうとしていったん子らとともに家を出たが,結局,自宅に戻ったことがある。

イ Aは,原告との離婚を求めて平成18年2月及び同年10月の2度にわたって調停を申し立てたが,1度目は同年7月26日に取下げで終了し,2度目は平成20年1月ころに不成立で終了した。
 原告は,子らとの面接交渉をしていたが,2度目の調停事件係属中で被告宅訪問の件があった平成19年4月29日より前にAの行動調査をACグループ株式会社(総合調査機関)に依頼した(被告宅訪問の件は同会社作成の調査報告書(甲3)に記載されている。)。

ウ Aは,平成20年3月4日,原告との離婚等を請求する訴訟(千葉家庭裁判所平成20年(家ホ)第35号。甲4の1)を提起した。
 原告は,同年6月24日,Aに対して不貞行為等を理由に慰謝料500万円の支払を求める反訴(同第104号。甲10)を提起し,かつ,被告に対して本件訴訟を提起した。

 Aと原告との訴訟は,平成21年4月21日,①Aと原告が同日和解離婚する,②子らの親権者をいずれもAとする,③原告は子らが満20歳に達する日の属する月まで養育費を支払う,④Aは財産分与として自宅の共有持分10分の1を分与する,⑤Aは原告に対し離婚に伴う和解金200万円の支払義務があることを認め,これを和解の席上授受した,⑥Aは原告に対し所定の条件下で月2回子らとの面接交渉を認める等の内容の和解によって終局した。なお,和解期日には,Aとその代理人及び原告代理人が出頭した(甲9)。

2 争点及び主張
 本件の争点は,(1)本件不貞行為の存否,(2)本件不貞行為による婚姻関係の破綻の有無及び原告の損害であり,当事者の主張は次のとおりである。

(1) 本件不貞行為の存否
 (原告の主張)
 被告は,Aが原告と別居した平成18年1月15日以前から,本件不貞行為を行っていた。このことは,以下の点から明らかである。
ア Aと被告との間では,平成17年12月30日から本件メール(違法収集証拠ではない。)が受送信されていた。
 本件メールには,Aの別居前にも,被告とAの2人だけの温泉旅行の提案,2人での飲食のこと,映画の件やデートが楽しかったこと等が記載され,別居直後から,2人の朝から夜までの親密な会話,飲食やデート,互いの相手を思う気持ちや会いたい気持ち,Aの調停申立てやその手続進行の報告等が記載されている。

 本件メールの数のおびただしさ,親密な件名及び本文の内容は,Aの別居よりはるか以前から被告とAとの交際が始まっていたこと,両者は単なる職場の先輩後輩の関係をはるかに超えるただならぬ関係にあったことを示している(被告がAの資格取得のために勉強を教えていただけの関係でないことは明らかである。)。

 原告は,本件メールを見てAと被告の交際の一部を知り,探偵社に依頼してAの行動を調査した。

イ 映画の件につき,Aは,夕飯前に帰宅すると言って午前中から外出し,被告とデートを楽しみ,1歳2か月で母の乳房をくわえながら寝る習慣の三男がいるのに午後8時過ぎまで帰宅しなかった。
 Aは,原告が子どもがかわいそうではないかと注意しても,映画のタイミングが悪かった,自分も働いているのだからたまにはよいのではないかと返答するだけで,翌日,原告が改めて注意をすると実家に戻り,その後別居を続けた。

ウ Aは,別居の約1か月後には離婚を求める1度目の調停を申し立てたが,原告がよりを戻して子らと一緒に暮らしたいとの態度であったため,申立てを取り下げた。

エ Aは,上記取下げの3か月後の平成18年10月に2度目の調停を申し立て,原告が子らを引き取って離婚することを原告といったん合意し,原告は,自宅を原告の父母も同居できるようにリフォームした。
 しかし,Aは,原告が被告宅訪問の件についての調査報告書及び本件メール(甲2の1及び2の分)を見せて説明を求めたところ,態度を一変させ,子らは渡せないと主張し,2度目の調停も平成20年1月に不成立で終了した。

オ Aは,マンションの裏口から合鍵で入り,被告宅内で2人だけで約2時間半を過ごし,被告宅を出てから被告と手をつないで歩いている(被告宅で2人が肉体関係を結んだ余韻を表している。)。

カ Aは,別件訴訟において,原告に対し,和解金の名目で実質的には婚姻破綻の責任を認めた慰謝料200万円を支払った。

(被告の主張)
 本件不貞行為は存在せず,原告の主張は邪推によるものである。
ア 被告は,2年以上も前の本件メール(違法収集証拠として証拠排除されるべきである。)に記憶がないが,被告がこれを送受信していたとすれば,夫婦仲が悪いことにつき愚痴をこぼし暗い雰囲気であったAを励まそうと思って少しふざけた内容のメールになったものと推測される。

 原告の供述は,本件メールにAと被告の濃厚な関係が表れているとしながらそのメールを指摘することができず,本件不貞行為を疑う端緒となったメールも指摘できず,本件不貞行為を推測した根拠が本件メールの件数だけであることを認めており,本件メールは会社の同僚としての関係より深い関係や本件不貞行為の存在を示すものではない(多数のメールの交換があれば不貞行為となるものではない。)。

イ 映画の件は,当日,予定していたもう1名の女性が来られなくなったため,被告とAが2人で映画を観たにすぎない。

ウ 被告は,Aが平成18年春ころから2級建築施工管理技士の資格を取得したいとして教えを請われ,そのころから平成19年4月までの間,月2回,1回当たり2時間程度,Aの質問に被告が答える形の勉強会を喫茶店や建築関係のテキストがそろっている被告宅において行っていた。

 被告宅訪問の件は,被告がシンガポール旅行に出発する平成19年4月29日午前中にAが参考書の借用と質問のために被告宅を訪ね,旅行の荷造り中の被告に質問をし,そのうち原告に対する愚痴をこぼして被告を困らせたため,荷造りも質問もはかどらずに約2時間半が過ぎ,また,原告との離婚問題に疲れたAから手をつないでほしいと言われてこれに応じただけで,被告とAとの間に肉体関係などはない。

エ Aは,原告に対し,自宅のローンの清算金として和解金200万円を支払ったのであり,慰謝料を支払う意思などはなかった。

(2) 本件不貞行為による婚姻関係の破綻の有無及び原告の損害
 (原告の主張)
ア 被告は,本件不貞行為を行い,平和な家庭を崩壊させ,婚姻関係を破綻させ,子煩悩であった原告から子らが奪われるに等しい状況を作出するという不法行為を行った。Aは,一方的に原告と別居し,その後もAの両親が心配するほど頻繁に被告との交際を重ね,虚構の事実を主張してしゃにむに原告との離婚を求め,その結果,原告も離婚を観念せざるを得なくなり,原告とAの婚姻関係は完全に破綻した。

イ 原告は,上記不法行為により,深く大きな精神的苦痛を被っており,これに対する慰謝料は500万円を下らない。

(被告の主張)
 原告の主張は,否認し争う。

以上:4,885文字
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H29- 9-20(水):妻から不貞行為第三者ではなく夫への損害賠償請額を増額した高裁判例紹介
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○「妻から不貞行為第三者ではなく夫への損害賠償請求を認めた地裁判例紹介」の続きで、その控訴審の平成29年8月10日仙台高裁判決(LEX/DB)の判断部分全文を紹介します。
夫の妻への夫経営会社への出社拒否等妻が主張する不法行為について全部を一審地裁判断同様に不法行為に該当しないとしながら、妻が,自殺未遂,パニック障害,神経性不眠症と診断され、これらの精神的苦痛の程度,その他本件に顕れた諸般の事情を考慮し、妻が被った精神的苦痛を慰謝するには,200万円の支払をもってするのが相当としました。妻としては、僅かの金額である50万円の増額です。

○婚姻中に妻が夫の不貞行為を理由に夫の不貞行為相手方である女性に請求する裁判例は相当数ありますが、不貞行為第三者への請求はせず、夫だけに損害賠償請求をする裁判例は、余り見つけられません。この例は夫が憎たらしくて堪らず、形式的には婚姻中に夫に請求したようです。いっそ離婚請求も合わせてした方が、婚姻破綻に到ったとの理由が加わり、損害賠償認容額は増額される可能性があるのですが、離婚は求めていません。

○夫から妻へ離婚請求は、有責配偶者として棄却される可能性が高いためしておらず、妻としては、妻の地位にある限り、相続権と婚姻費用請求権があるため離婚請求はせず、損害賠償のみの請求になったと思われます。


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第3 当裁判所の判断
 当裁判所は,控訴人の請求のうち200万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分は理由があり,その余の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

1 不貞行為及びその後の被控訴人の控訴人に対する対応について
(1)被控訴人が,平成22年8月頃以降,Cと性交渉を持つようになり,平成23年1月1日,控訴人と生活していた自宅を出て,その後,Cのマンションで同人と同棲するようになり,同人との間に3人の子供をもうけた事実は当事者間に争いがない。

(2)被控訴人は,平成20年頃には控訴人との間の婚姻関係は破綻していた旨主張する。
 しかしながら,被控訴人の供述によっても遅くとも平成22年初め頃まで,控訴人の供述によれば平成23年1月まで,両者の間には性交渉があったというのであるし,平成22年10月には,被控訴人の両親や妹らが出席する食事会に控訴人及び被控訴人がともに出席しており,平成23年1月にも花巻温泉に二人で出かけていたこと,また,花巻温泉に旅行に行った際,控訴人は被控訴人との婚姻関係を維持する意思を有していたこと(甲26,控訴人本人,被控訴人本人)などに照らせば,被控訴人が主張する平成20年頃はもとより,被控訴人とCが性交渉を持つようになった平成22年8月頃においても,控訴人と被控訴人の間の婚姻関係が破綻していたとは認められない。

(3)なお,控訴人は,〔1〕不貞行為(前記第2の3(控訴人の主張)(1)ア)と,〔2〕その後控訴人が,平成22年9月,被控訴人に対して問い質したところ,被控訴人は,不貞行為に及んでいることを認め,控訴人に対し,他の女性と不貞行為に及ばない旨を約束したにもかかわらず,被控訴人はCとの不貞行為を継続し,控訴人が,同年12月,Cの経営する飲食店に行き,同人に対して被控訴人との不貞行為の有無を問い質した際,同人は被控訴人と共謀して不貞行為があることを否定し,また,被控訴人は,このことに関し,Cの飲食店に損害を与えたとして,100万円を賠償するように要求した上,平成23年1月頃には自宅を出てCのマンションで同人と同棲し始めた行為(同(2)ア)とは,それぞれ別個の不法行為である旨主張する。

 しかしながら,上記〔1〕において控訴人が主張する不貞行為が上記〔2〕の平成22年9月以降も継続された不貞行為及び控訴人と生活を共にした自宅を出てCと同棲するようになったことを含んでいることは,その主張事実自体から明らかであって,これを別個の不法行為とみることは相当ではない。
 そして,上記〔2〕の主張事実のうち,被控訴人とCが共謀の上,控訴人に対して不貞行為の継続を否認したことについては,被控訴人が控訴人に対して不貞行為の継続を自白すべき不法行為上の注意義務があったとはいえない以上,不法行為の成立を認めることはできない。また,上記〔2〕の主張事実のうち,被控訴人が,控訴人に対し,Cの飲食店に損害を与えたとして100万円の賠償を要求したことについては,それが被控訴人の控訴人に対する法律関係に関する意見表明の域を超えて,社会的に不相当な手段又は方法によってされたものと認めるに足りる証拠がない以上,これも不法行為の成立を認めることはできない。

2 訴外会社への出社拒絶等について
 控訴人は,平成23年3月まで訴外会社に出社して主に経理事務等を行っていたが,被控訴人が,〔1〕控訴人が取締役として保管していた訴外会社の代表印及び銀行預金通帳を控訴人の承諾なく奪い取った上,〔2〕訴外会社が新事務所に移転した際,控訴人に対し,「おまえなんか,必要ない。会社に来なくていい。」などと罵詈雑言を浴びせて訴外会社への出社を拒絶し,〔3〕控訴人の印鑑を冒用して控訴人名義の辞任届を偽造し,控訴人の取締役辞任登記という内容虚偽の役員変更登記をして,控訴人を訴外会社から追い出そうとしたことが不法行為に当たる旨主張する。

 しかしながら,上記〔1〕の主張事実については,被控訴人は訴外会社の代表者である以上,訴外会社の代表印及び銀行預金通帳の保持権限を有しているというべきであり,しかも上記代表印及び銀行預金通帳を現実に保持するに当たって社会的に相当でない手段又は方法を用いたと認めるに足りる証拠がないから,この点につき不法行為の成立を認めることはできない。

 上記〔2〕の主張事実については,控訴人の主張を前提としても,被控訴人が脅迫的な言辞を用いるなどしていたものといえないから,被控訴人の上記発言をもって不法行為の成立を認めることはできない。
 上記〔3〕の主張事実については,被控訴人が控訴人名義の辞任届を偽造したことや控訴人の取締役辞任登記が内容虚偽のものであることを認めるに足りる客観的証拠はない。
 したがって,被控訴人が違法な目的を有していたか否かを検討するまでもなく,この点に関する控訴人の主張は理由がない。

3 生活費の減額について
 控訴人は,被控訴人との間に,控訴人の生活費として被控訴人が控訴人に月額40万円を支払う旨の合意があったにもかかわらず,平成23年7月以降は上記支払額を減額し,平成24年1月以降は月額20万円しか支払わなかったことが控訴人に対する不法行為に当たる旨主張する。また,控訴人は,上記合意の存在を裏付ける証拠として授受金額一覧表(甲19,25の7)を提出しているほか,少なくとも平成23年1月及び同年2月に関しては,被控訴人が控訴人に対して生活費として各40万円を支払ったことが認められる。

 しかしながら,上記認定事実及び書証を踏まえた上でも,控訴人と被控訴人の間に,被控訴人が控訴人の生活費として月額40万円を将来にわたっても継続的に支払う旨の合意が成立していたことを認めるには足りないし,他に上記合意を認めるに足りる証拠はない。
 また,仮に,被控訴人が控訴人に対して生活費として一定額を支払うべき義務を負っていたとしても,その支払をしない旨の控訴人の主張は,結局のところ,被控訴人の金銭債務の不履行を述べるものに過ぎないのであって,約定又は法定の利率以上の損害賠償を求めることはできないというべきである(最高裁昭和48年10月11日第一小法廷判決・裁判集民事110号231頁参照)し,その不払自体が債務不履行を超えて不法行為に当たるとまで認めるに足りる証拠はない。
 したがって,この点に関する控訴人の主張は理由がない。

4 自宅を補修せず放置したことについて
 控訴人は,その居住する自宅が東日本大震災により損壊したところ,被控訴人は,控訴人に対し,上記自宅を補修すると約束をし,また補修のための補助金等の交付を受けたにもかかわらず,その補修工事をせず,放置したものであり,これは,控訴人を傾いた自宅に居住させ続けるとともに,Cとの不貞行為を維持したいという違法な目的によるものである旨主張する。そして,控訴人の上記主張に沿う証拠(甲25の7,32,33,控訴人本人)もある。

 しかしながら,被控訴人が控訴人に対して自宅の補修を約束したという事実については,被控訴人はこれを否認している上,上記証拠によっても,上記主張に係る約束をした日時や約束に係る具体的な文言も明らかでないことに照らせば,上記事実を認めることはできない。その他,被控訴人が自宅の補修をすべき不法行為上の注意義務を負っていたと評価するに足りる事実はない。
 そうすると,被控訴人に違法な目的があったか否かを検討するまでもなく,自宅を修理せず放置したことについて被控訴人の不法行為が成立すると解すべき余地はない。

5 慰謝料額について
 上記1から4までの検討によれば,控訴人が主張するもののうち,被控訴人がCと不貞行為をしたことは不法行為と認められる。そして,控訴人が平成23年1月に自宅を出て控訴人と一方的に別居し,その後,Cと同棲し,その間に3人の子をもうけたという不貞行為の態様,その結果,控訴人が,平成28年5月に自殺未遂に及び,パニック障害,神経性不眠症と診断されたこと(甲5の1,21,22,25の2,32,控訴人本人,弁論の全趣旨)から窺われる控訴人の精神的苦痛の程度,その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記不法行為により控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するには,200万円の支払をもってするのが相当というべきである。

6 まとめ
 以上によれば,控訴人の請求は,200万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであるから,これと異なる原判決を上記のとおり変更して,主文のとおり判決する。
仙台高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 古久保正人 裁判官 杉浦正典 裁判官 坂本浩志
以上:4,253文字
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H29- 9-19(火):妻から不貞行為第三者ではなく夫への損害賠償請求を認めた地裁判例紹介
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○婚姻中の一方配偶者が不貞行為をした場合、配偶者ではなく不貞行為相手方に対する請求が多いのですが、妻である原告が、夫の不貞行為相手方には請求せず、夫に対してのみ、不貞行為をしたことなどが不法行為に当たるとして、2000万円の慰謝料の支払等を求めた事案において、被告がCと不貞行為を行ったことは、原告に対する不法行為に当たるものと認め、被告夫に対し、慰謝料150万円の支払を命じた平成29年3月13日仙台地方裁判所判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○この判決は、妻側が認容金額が150万円では足りないとして控訴し、平成29年8月10日仙台高裁判決(LEX/DB)で200万円に増額されています。「うつ病にり患し,また,不貞行為の有無を問い質した際にも頭ごなしに怒鳴られたため,病状が悪化し,平成23年5月20日,未遂に終わったものの,原告は自殺を図るに至った」等の妻の主張を見る限り、おそらく少なくとも慰謝料は500万円程度認められるのではと踏んで2000万円もの請求をしたと思われます。

○ですから妻としては200万円でも不満と思われますが、確かに20年位前であれば、このような事案で結構な金額の慰謝料が認められた例もあります。しかし、殆どが多くても500万円止まりであり、不貞行為に関する慰謝料金額の低額化傾向が見られ近時は、200万円の認容は多い方と思われます。

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主   文
1 被告は,原告に対し,150万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを40分し,その37を原告の負担,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は,妻である原告が,夫である被告に対し,被告が不貞行為をしたことなどが不法行為に当たるとして,慰謝料2000万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 争いのない事実等
(1)原告と被告は,平成3年11月13日に婚姻した夫婦であり,その間に平成4年○月○○日生の長女,平成5年○○月○○日生の二女及び平成7年○月○○日生の三女をもうけている(甲1の1,1の2)。
(2)原告と被告は,原告住所地において同居して生活していたが,平成23年1月1日,被告は,同所を出て,それ以降,別居している。
(3)平成27年12月18日,原告と被告は,仙台家庭裁判所において,婚姻費用の分担に関する調停を成立させた(甲18)。
(4)被告は,株式会社○○○○(以下「訴外会社」という。)の代表取締役を務めており,平成26年3月まで,原告も訴外会社の取締役として登記されていた(甲6の1,6の2)。

3 争点
 原告の被告に対する慰謝料請求の当否
〔原告の主張〕

(1)被告は,原告に対し,下記のとおりの不法行為を行ったものであり,これによる原告の精神的損害は2000万円と評価するのが相当である。
ア 平成22年8月頃以降,被告は,訴外C(以下「C」という。)と性交渉を続け,平成23年1月頃にはCのマンションで同棲するようになり,同人との間に,平成23年○○月○○日生,平成25年○月○○日生,平成28年○月○○日生の3人の子供をもうけた。
 上記の結果,原告は,うつ病にり患し,また,不貞行為の有無を問い質した際にも頭ごなしに怒鳴られたため,病状が悪化し,平成23年5月20日,未遂に終わったものの,原告は自殺を図るに至っている。

イ 平成22年12月,原告がCの経営する飲食店に行き,同人に対して被告との不貞行為の有無を問い質した際,同人は被告と共謀して不貞行為があることを否定し,また,被告は,そのことに関し,Cの飲食店に損害を与えたとして,100万円を賠償するように要求した。

ウ 原告は,平成23年3月に東日本大震災が発生するまで,被告が代表取締役を務める訴外会社で経理等の事務に従事していたが,同社が新事務所に移転した際,「おまえなんか,必要ない。会社に来なくていい。」などと罵詈雑言を浴びせ,出社を拒否した。

エ 被告は,原告に対し,平成23年6月まで生活費として月額40万円を支払っていたが,原告に無断で,同年7月から同年12月までは月額30万円,平成24年1月から平成27年4月までは月額20万円しか支払わなかった。

オ 東日本大震災により,原告の居住する自宅建物は損傷したが,その補修のために国からの補助金400万円及び保険金900万円の合計1300万円が被告に支給された。
 しかし,被告は,原告に対し,自宅を補修すると約束したにもかかわらず,補修工事をせず,放置した。

(2)被告は,平成20年頃には,原告と被告の婚姻関係は破綻していたと主張するが,平成23年1月1日に被告が自宅を出ていくまで,原告と被告は一つの布団で寝ていて,性交渉をもっていたこと,就寝前には,毎日,原告が被告の腰をマッサージするなどしていたこと,原告と被告は,沖縄や花巻温泉に旅行したり,家族の食事会に出席していたことなどからすれば,その間の婚姻関係が破綻していたとはいえない。

〔被告の主張〕
(1)
ア 原告主張の頃から被告がCと性交渉をもち,平成23年1月1日から原告と別居し,その後,Cと同棲し,その間に3人の子をもうけた事実は認める。
 しかし,平成20年頃には,原告と被告の婚姻関係は回復不能な程度に破綻していた。

イ 平成22年12月,原告がCの経営する飲食店に行き,同人に対して被告との不貞行為の有無を問い質した事実は認めるが,その余の事実は否認する。

ウ 平成23年3月まで,原告が訴外会社に出社していた事実は認めるが,その後,被告が原告の出社を拒否したり,罵詈雑言を浴びせるなどした事実は否認する。
 被告が原告に対し,出社しないでほしいと述べたことはあるが,これは,原告が,新たに採用した事務員に対し,「あんた誰に雇われてんだ。」,「なんでここにいるんだ。」などと言うようになったため,被告が原告に対し,そのようなことを言うなら,出社しないでほしいと言っただけである。また,原告は,被告とCの関係を知った後,訴外会社の役員を辞めたいと言うようになっていた。

エ 被告が原告に交付していた生活費の内容は,原告が主張するとおりであるが,婚姻費用については調停も成立しており,本訴の訴訟物とは無関係である。

オ 原告が主張する自宅の補修のための補助金等についても,本訴の訴訟物とは無関係である。

(2)原告は,不貞行為による慰謝料を請求するが,平成20年頃には,原告と被告の婚姻関係は修復不能なほどに破綻していた。

第3 争点に対する判断
1 不貞行為について

(1)原告は,被告の不法行為を基礎づける事由として種々の主張をするので,まず,このうちの不貞行為による慰謝料請求について判断するに,平成22年8月頃以降,被告がCと性交渉をもつようになったこと,平成23年1月1日,被告は自宅を出ていき,その後,Cのマンションで同棲するようになり,同人との間に,3人の子供をもうけた事実は,いずれも当事者間に争いがない。

 なお,上記の結果,原告は,うつ病にり患し,また,不貞行為の有無を問い質した際にも頭ごなしに怒鳴られたため,病状が悪化し,平成23年5月20日,未遂に終わったものの,原告は自殺を図るに至った旨主張するが,これは,被告の不貞行為と別個の不法行為ということはできず,不貞行為による慰謝料を算定する際の事情として考慮すべきものというべきである。


(2)上記のとおり,被告は,平成22年8月頃からCと性交渉をもつようになった事実を認める一方で,平成20年頃には,原告と被告の婚姻関係は破綻していたと主張するが,被告の供述によっても,遅くとも,平成22年初め頃までは,両者の間で性交渉があったということや,帰宅後に被告から腰をマッサージしてもらっていたということなどからすれば,平成20年頃に原告と被告の婚姻関係が破綻していたなどということはできない。

 また,被告がCと性交渉をもつようになった平成22年8月頃についても,被告は婚姻関係は破綻していた旨の供述をするものの,原告は平成23年1月まで被告と性交渉をもっていたと供述していること,原告及び被告ともに,平成23年1月1日に被告が家を出ていくまで,両者は一つの布団で寝ていたと供述していること,平成22年10月には,原告,被告ともに,被告の両親や妹らが出席する食事会に出ており,平成23年1月にも花巻温泉に二人で出掛けていたこと,また,花巻温泉に旅行に行った際,原告は被告との婚姻関係を維持する意思を有していたこと(甲26,原告,被告),などからすれば,少なくとも,被告がCと性交渉をもつようになった平成22年8月の時点において,原告と被告の婚姻関係が破綻していたものと認めることはできない。

(3)上記によれば,被告がCと不貞行為を行ったことは,原告に対する不法行為に当たるものと認められる。

2 Cに対する損害賠償の要求について
 原告は,平成22年12月に原告がCの経営する飲食店に行き,同人に対して被告との不貞行為の有無を問い質した際,同人は被告と共謀して不貞行為があることを否定し,また,そのことに関し,被告が原告に対し,Cの飲食店に損害を与えたとして,100万円を賠償するように要求したことが不法行為に当たると主張する。

 しかし,Cが被告との不貞行為を否定する発言をしたとしても,そのことのみで原告に対する不法行為に当たるということはできず,また,そのことに関し,被告が原告に対し,Cの飲食店の損害を賠償するように求める発言をしたことがあったとしても,原告が実際に上記支払をしたわけではなく,また,被告がそれ以上に支払を強要するなどした事実も窺われないことからすると,被告が上記発言をしたことがあったとしても,そのことのみをもって,原告に対する不法行為に当たるものということはできない。

3 訴外会社への出社拒否について
 原告は,東日本大震災で被災した訴外会社が新事務所に移転した後,被告が原告の出社を拒否するなどしたことが不法行為に当たると主張するところ,東日本大震災により訴外会社が被災するまで,原告が同会社に出社して事務を行っていたことは原告,被告ともに供述するところであるが,他方において,原告自身,訴外会社を辞める旨の発言をしたことがあることを認める供述をしていることや,原告の主張を前提としても,被告が強迫的な言辞を用いるなどしていたものとはいえないことからすれば,仮に原告が主張する発言を被告がしていたとしても,そのことだけで,原告に対する不法行為に当たるとまでいうことはできない。

4 生活費の不払について
 原告は,被告が支払ってきた生活費を減額したことが不法行為に当たると主張するが,被告が減額した生活費を原告に交付していた時点において,被告が原告に対して支払うべき生活費(婚姻費用)の額に関する合意等が当事者間に成立していたものと認めるに足りる証拠はない。
 また,前記のとおり,被告が支払うべき婚姻費用については,平成27年12月18日に調停が成立しており,その時点での解決が図られている上,そもそも,金銭債権である婚姻費用の支払債務の履行遅滞があったとしても,法律に別段の定めがある場合を除き,約定または法定の利率以上の損害の賠償を求めることはできないのであるから(最高裁昭和48年10月11日第一小法廷判決・裁判集民事110号231頁)、いずれにせよ,原告の上記主張には理由がない。

5 自宅の補修にかかる補助金について
 原告は,自宅の補修に関する補助金及び保険金が支払われたにもかかわらず,被告が同工事をしなかったことが不法行為に当たると主張するところ,仮に,これらの事情が認められたとしても,被告の原告に対する不法行為に当たるものということはできない。原告の主張は,独自の不法行為を主張するものとしては失当というほかない。 

6 上記によれば,原告が主張するもののうち,被告がCと不貞行為を行ったことは原告に対する不法行為と認められるが,当該事実に加え,平成23年1月1日には被告は家を出て一方的に別居し,その後,Cと同居するようになり,その間に3人の子供をもうけたこと,上記不貞行為と原告がうつ病にり患し,自殺未遂に至ったこととの間の相当な因果関係を認めるに足りる証拠はないものの,原告が相当な精神的な苦痛を受けたことは容易に認められることなどの事情を考慮すると,上記不貞行為によって原告が被った精神的苦痛は150万円と評価するのが相当である。

7 以上によれば,原告の請求は,慰謝料150万円及びこれに対する不法行為後の平成27年4月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
 よって,主文のとおり判決する。なお,被告は,仮執行免脱宣言の申立てをするが,相当ではないので,付さないこととする。
仙台地方裁判所第1民事部 裁判官 高宮健二
以上:5,468文字
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H29- 9-18(月):映画”キング・コング”平成17年・平成29年版二作鑑賞比べ
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○平成29年9月17日(日)は、午前から夕方にかけて、平成17(2005)年12月公開「キング・コング」(188分、以下、05キング・コングと言います)、平成29(2017)年3月公開「キング・コング髑髏島の巨神」(118分、以下、17キング・コング)の二本立いずれもBlu-ray特別版4KUltraHD版を自宅マイルームのサムスン有機ELテレビOLED55C6Pで鑑賞しました。

○05キング・コングから鑑賞し始めましたが、11年8ヶ月前の平成18年1月にMOVIX仙台で鑑賞したことを「映画『キングコング』を観て」に記載していました。しかし、冒頭場面から殆ど記憶に残っていません(^^;)。12年近く時間がたつと相当記憶から消えるものですが、俳優達の顔だけは覚えていました。

○今回は、ナオミ・ワッツ扮するヒロインとキングコングの交流シーンが、胸にジンと響き、特に最後のエンパイヤステートビル頂上で、山のような銃弾を浴びて力尽きたキング・コングが静かに落下していく直前のシーンには涙がボロボロ出てきて止まりませんでした。12年前映画館で観たときは涙ぐみそうになったことはありましたが、ボロボロこぼれ落ちることはなく、どうやら、人間歳を取ると涙もろくなるようです。

○感じ入ったのは1933年当時米国では、地上102階建て高さ443mもの巨大ビルをニューヨークに有していたことでした。05キング・コングは1930年代のニューヨークが舞台ですが、その他にも巨大ビルが林立しています。日本の真珠湾攻撃の10年前にあれだけの巨大ビルを有し、日本とは圧倒的に経済力の差があった米国に、よくぞ日本が戦争を仕掛けたものだと改めて驚き、まだ行ったことのないニューヨークを訪れたいと思いました。

○3時間以上の長丁場で、昼食休憩を挟んで鑑賞しましたが、12年前の作品のため流石に映像には少々難点があり、続けて鑑賞した17キング・コングの滑らかな映像に12年経過によるカメラ性能の向上を実感しました。17キング・コングは、半年前の平成29年3月に観たばかりで「映画”キングコング髑髏島の巨神”を観て」を記載しており、こちらは、ほぼ覚えており、ホッとしました(^^;)。

○それども失念していたシーンもあり、特にエンドクレジット終了後に続編を予想させる帰国後のシーンは、出てきて思い出しました。キング・コングと言えば最後にエンパイヤステートビル頂上から落下するものとばかり思っていましたが、元祖1933年版がそうだったからです。その他76年版、86年版はどうなっているのでしょうか。33年版のBDが発売されており、早速、注文しました。

○視聴者評価は05キング・コングより17キング・コングの方が僅かに高いようですが、今回二作連続で観ると、私としては、ヒロインとキング・コングの交流の厚みを尊重して僅差で05版に軍配を上げます。
以上:1,193文字
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H29- 9-17(日):映画”ダンケルク”を観て-戦場恐怖感を味わえます
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○平成29年9月16日(土)、「TOHOシネマズ仙台」「IMAX®デジタルシアター」で映画「ダンケルク」を観てきました。たまたま「TOHOシネマズ仙台」HPでその2分24秒間の比較的長い予告編を観て、これは面白そうだと思ったからです。説明冒頭は、「1940年、フランス北端のダンケルク港に追い詰められた英仏連合軍の兵士40万人。祖国への生還を誓った若者たちのドラマが描かれる。」となっています。

○大学受験で世界史を選択しましたが、中身は殆ど忘却の彼方で、「ダンケルクの戦い」の習ったはずのところ、全く覚えていませんでした(^^;)。ウィキペディアでは、「第二次世界大戦の西部戦線における戦闘の一つで、ドイツ軍のフランス侵攻の1940年5月24日から6月4日の間に起こった戦闘である。追い詰められた英仏軍は、この戦闘でドイツ軍の攻勢を防ぎながら、輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船などすべてを動員して、イギリス本国(グレートブリテン島)に向けて40万人の将兵を脱出させる作戦(ダイナモ作戦)を実行した」と解説されています。

○イギリス国内から軍艦の他に民間の漁船やヨット、はしけを含む、あらゆる船舶を総動員して、最終的に40万人の将兵の内36万人が救出され、この時のイギリス国民団結の精神についてダンケルク・スピリッツなる言葉も生まれたそうです。しかし、私はこのような予備知識もなく、且つ、映画解説等も読まず鑑賞しました。これが却って良かったようで、結末不明のまま、これからどうなる、どうなると、正にハラハラ・ドキドキ・ワクワクで映画に浸ることが出来ました。

○この映画は、是非とも、巨大スクリーンの「IMAX®デジタルシアター」で観るべき映画です。冒頭若い兵士がドイツ軍の弾丸から逃げるシーンから始まりますが、ドイツ軍は、降り注ぐ弾丸・砲弾・魚雷・飛行機武器弾薬のみで、人間は一人も出てきません。登場人物間のセリフも極端に切り詰められ、戦場の轟音が強い振動を伴って響き渡ります。これが、戦場の恐怖感をより盛り上げます。巨大スクリーンに囲まれると、まるで自分も戦場のなかに放り込まれたような気分になり、正に手に汗を握る状況となります。

○戦争映画というと、砲弾で人間が吹き飛ばされ、手足が分断される残酷シーンがつきものですが、この映画では、そのような残酷シーンは殆どありません。流血場面が全くありません。しかし、押し寄せるドイツ軍の恐怖は十二分に伝わります。パンフレット解説第1頁に「クリストファー・ノーラン監督が実話に挑んだ106分 究極の映像体験」、「ハリウッドの天才が戦争映画の常識を覆す」と銘打ってますが、正にその通りで、一見の価値ある映画です。
以上:1,119文字
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H29- 9-16(土):2017年09月16日発行第205号”ガラスの家の弁護士”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成29年9月16日発行第205号「ガラスの家の弁護士」をお届けします。

○弁護士の仕事は「他人に石を投げる」こと即ち「他人のアラ探し」と大山先生は、仰いますが、言われてみるとその通りの面があります。離婚訴訟なんかは、正に、夫婦のアラ探しの典型です。これでもか、これでもかと、相手のアラ探しに徹します。ですから私は、特に奥様に逃げられ、納得できないと頑として離婚を拒否する旦那様には、裁判になると、公の場で、お互いのアラ探しとなり、恥かき合戦になりますよ言って、穏便に別れることを提案します。

○離婚紛争の一般的傾向として、旦那様は私のアドバイスに従う方が多いのですが、旦那様に逃げられた奥様側は、私のアドバイスを聞く耳を持たない方が多いと感じています。奥様は、納得できない・離婚しないと決めたら、訴訟になろうと頑として離婚に応じない方が多くいらっしゃいます。

○私は、頑として離婚に応じないと言う方の弁護をして訴訟までを担当することは、これまで38年の弁護士稼業で、勤務弁護士時代を除いて、殆どありません。離婚は認めても財産分与・慰謝料・親権争いで離婚を拒否する場合は別ですが、離婚そのものを拒否する側の代理人になったことはありません。離婚訴訟では、いつも逃げる側専門です(^^;)。「逃げられたらお終い」という考えが強いからです。

○逃げる側になった場合は、「他人に石を投げる」、「他人のアラ探し」に徹せざるを得ず辛い面もありますが、これが弁護士の仕事だと割り切ってやるしかありません(^^;)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

ガラスの家の弁護士


英語のことわざには、面白いものが沢山あります。読んでると、ドキッとしたり、思わず笑ってしまいます。「今日考えて、明日話せ。Think today and speak tomorrow.」なんて耳が痛いです。弁護士稼業は、まず話して、後から考えるのが普通ですから。ううう。

この親にしてこの子あり。Like father, like son.」は、自分の子供のことを考えると頭が痛い。これって事務所のボスと、勤務弁護士の関係でも真実です。ボスの弁護士がダメな事務所は、まともな勤務弁護士は辞めていき、残るのはボスと同じ問題弁護士だということはよくあります。う、うちは大丈夫です。。。

亀の甲より年の功。The older, the wiser.」なんていいですね。若手より自分の方が優れているのだと、根拠のない自信を持てます。

と、いろいろとことわざはありますが、私が一番好きな英語のことわざはこれですね。「ガラスの家に住む者は、石を投げてはいけない。People who live in glass houses should not throw stones.」他人に石を投げると、相手も投げ返してきますよね。自分の家がガラスで出来ていれば、相手の投げた石によって壊れてしまいます。だから、スネに傷持つものは、他人を攻撃しちゃいけないという、とても有難いアドバイスです。

でも、これって守れない人が多いんですね。政治家の場合なんか、本当にたくさんあります。自分が野党のときは与党の「強行採決」を強く非難しておきながら、自分が与党になると、同じことして批判されるんですね。政治家の不倫問題なんて、凄く世間を騒がせます。別に私生活のことなんだから、政治家としての能力とは関係ないじゃんと、私なんか思います。

しかし、他の政治家の不倫問題のときには、鬼の首をとったかのように攻撃していた人が、自分も不倫していたなんてことになれば、やはり非難されてもやむを得ないと思います。なんだってガラスの家に住んでたのに、他人に平気で石を投げてたんだろうと、呆れかえるのです。

しかし考えてみますと、弁護士なんてまさに、他人に石を投げることばかりしている商売なんです。例えば刑事事件の場合、多くの弁護士が被告人の人権を守るために、様々な主張をしますよね。場合によっては、被害者側に問題があったくらいのことを言います。被告人を罰しようとする検察官を、非難さえします。

ところが最近、被害者側に弁護士を付ける制度ができたんです。そうすると、被害者側の弁護士は、被告人を厳しく攻撃しはじめました。私の実感ですと、被害者についた弁護士は、検察官の1.7倍くらい、被告人に厳しい主張をします。や、止めてください。

私だって他人のことは言えません。労働裁判などで、うちの事務所では企業側を代理することが多いんですが、そういうときには会社の立場で労働者側の不当性を攻撃します。ところが、労働者側をもって裁判するときには、似たような問題でも、会社に問題があるって主張しちゃいます。(おいおい!)

まあ、こういうことは、依頼者のためにベストを尽くす弁護士としての職業上の問題ですから、ある意味やむを得ないのかもしれません。その一方、弁護士として本当に恥ずかしい話もあるんです。

不倫した政治家や財界人を強く非難していた弁護士が、自分もしていたなんてことはよくあります。大企業や業界の既得権益に反対し、我こそは正義の味方みたいな主張している弁護士も沢山います。ところが、弁護士の既得権益が剥奪されるそうになると、そういう人ほど目を三角にして反対します。わ、私は大丈夫ですよ!

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◇ 弁護士より一言

寄宿舎生活をしている高校1年の娘が、週末家に戻ってきたときに言いました。「政治家の不倫の話、ニュースになってたでしょう。相手が弁護士だって聞いて、パパじゃないかって、心配になっちゃった!」
し、失礼な。「なんで弁護士というだけで疑うんだよ?」と、娘を非難したんです。
「ただの弁護士じゃなくて、『イケメンのヤリ手弁護士』ってテレビで言ってたからだよ!!」
ほ、ホントかよ。うーん。ゆ、許す!
以上:2,524文字
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H29- 9-15(金):”自由と正義”H29年08月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介3
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○「”自由と正義”H28年09月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介2」の続きです。
今回は、夫の不貞行為相手方女性に対する損害賠償請求訴訟事件で、被告女性の父親にこの損害賠償請求訴訟を提起した事実を通知したことが懲戒理由となっています。処分理由全文は、以下の通りです。
3 処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は2015年7月2日、Aの代理人として懲戒請求者を被告とする損害賠償請求訴訟を提起したところ、同日、通知をする必要性、相当性が認められないにもかかわらず、懲戒請求者の父親宛てに、懲戒請求者がAの夫と交際していること、懲戒請求者を被告とする不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したこと等を記載した通知書を送付した。

(2)被懲戒者はAの代理人として提起した上記訴訟において、事実に反するとの認識を有しながら、訴状に「弁護士費用」の請求の理由として「被告が任意の賠償に応じなかったため、本件訴訟を余儀なくされた」との事実と異なる記載をした。

(3)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士法第23条項、上記(2)の行為は弁護士職務基本規程第5条に違反し、いずれも、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
○私自身は、繰り返し記載していますが、不貞行為第三者への請求事件は原則として受任しません。相談は、多数受けていますが、不貞行為第三者への請求についての、現在時点での学説、欧米諸国の立法例等を説明し、且つ、裁判所での現時点での認容金額例等を説明して、受任はやんわりとお断りして、他の弁護士を紹介しています。

○この種事件の相談過程では、不貞行為相手方への憎しみの余り、相手の親にも請求できないか、またはせめて通知くらいできないかとの相談も日常茶飯事にあります。不貞行為をされた方は、不貞行為をした人間を、極悪人と確信していますので、そんな人間に育てた親にも責任があるのではないか、せめて、その事実を親に知らせて当然だと考えています。

○この懲戒例での弁護士さんも、おそらく、依頼者の女性から相手の親に請求して欲しい、せめて通知くらいはして欲しいと強く迫られたものと思われます。そこで、「懲戒請求者の父親宛てに、懲戒請求者がAの夫と交際していること、懲戒請求者を被告とする不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したこと等を記載した通知書を送付」した思われます。

○また、普通は文書による請求から始まるのですが、相手方憎しのあまり、いきなり裁判を出して欲しいと要請される場合もあります。この懲戒例では、その任意請求の段階を踏まず、訴えを提起し、弁護士費用請求型どおりの文言である「被告が任意の賠償に応じなかったため、本件訴訟を余儀なくされた」をそのまま記載してしまったようです。

○最近、不貞行為第三者への請求事件は、相当増えており、若い弁護士さんも、請求する側として、相当受任されています。依頼者から本件のように相手の親、相手方の上司、相手方の会社等への通知を強く要請される例も多いと思われますので、注意が必要です。
以上:1,259文字
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