サイト内全検索
 

[全 8674頁] 本日 昨日累計
ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
         

R 8- 1-30(金):名の変更許可申立を認容した家裁審判紹介1
ホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > 「名の変更許可申立を認…」←リンクはこちらでお願いします
○「名の変更申立を却下した家裁審判紹介-名の変更許可要件は厳しい」の続きで、名の変更許可申立が認容された昭和57年11月29日山形家裁鶴岡支部審判(家庭裁判月報36巻3号161頁)全文を紹介します。

○名の変更許可申立審判は結構あるようですが、認容要件は厳しく、認容された例は余り見当たりません。認容例として、出生届に際し、母が、心ならずも父が決めていた名前とは違う名前を命名して届け出た名を、3ヶ月後には父母間で協議し合意のできた名前にして、その使用を継続して、家裁に名の変更することの許可を求めた事案を紹介します。

○山形家裁審判は、従前の名の届出の効力自体は否定できないが、従前の名が社会生活上いまだ定着していないと認あられる特段の事情がある限り戸籍法107条2項の「正当な事由」があると解すべきであるとした上、子の年齢(審判時1年4月)、現在の生育状況等から右の特段の事情が認められるとして、名の変更を許可しました。

********************************************

主   文
申立人の名「高也」を「吉政」に変更することを許可する。

理   由
一 本件申立の理由の要旨は、申立人の名「高也」は、申立人の母土井真佐江が申立人の父土井修の意思に反して命名し届出をしたものであるから,父母協議により、これを「吉政」に変更することの許可を求める、というにある。

二 当裁判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。 
 申立人の父母は昭和53年9月26日婚姻の届出をした夫婦で、婚姻後暫く東京都内に居住していたが、昭和55年ころ父の出身地である山形県鶴岡市に転居した。ところが、母は昭和56年2月5日都内の自分の実家にかつてに戻り、鶴岡市内に留まつた父との別居生活を始め、右別居中の同年7月29日、都内で申立人を出産した。申立人の出産前から父は男子ならば「吉政」の名がよいと考え、母にこのことを手紙で連絡し、母も右「吉政」が気に入つていた。

しかるに、申立人の出産後、母の兄が「高也」の名がよいと主張したため、母は、兄に出産費用を負担して貰うなど世話になつていた手前、同年8月7日、心ならずも「高也」の名で自ら申立人の出生届を出した。父は「吉政」の名が届け出られたものと思つていたが、同年10月ころ、「高也」の名で届出がされていることを知つた。同年11月ころ、父母は話合いの末同居して遣り直すことに決め、その結果同年12月5日母は申立人を伴い鶴岡市に移つて再び父と同居するようになつた。

その後、父母は申立人を専ら「吉政」と呼び、申立人は「高也」と呼ばれても反応せず、「吉政」と呼ばれた場合のみ反応するようになつており、近所に対しても「吉政」で通しているもので、今般、父母において、申立人の名を「高也」から「吉政」に変更する旨協議・合意の上本件申立がなされた。
以上の事実が認められる。

三 そこで検討するに、一般に、出生した子の名の命名は父母の共同親権事項と解すべきであるが、出生届の届出義務者について戸籍法52条1項が「父又は母」と定め、双方届出主義を採つていない関係上、父母の一方による他方の意思に反しての命名に基づく子の出生届がなされることも事実上起こり得ないではなく、そうした場合でも、ひとたび右届出が行われ戸籍への記載がなされた以上、これを前提として種々の法律関係が順次形成されていくものであることから見て、かかる届出の効力自体を否定するのは、もとより相当ではない。

しかしながら、この場合、父母の協議により双方の合意に基づく名への変更の申立がなされたときは、従前の名が社会生活上未だ定着していないと認められる特段の事情がある限り、同法107条2項の「正当な事由」があるものとしてこれを許すことができるというべきである。けだし、そうすることにより、法的安定を期しながらも、親権行使上の瑕疵を実質的に除去することができるからである。

 そこで、本件を見ると、本件は申立人の母が父の意思に反して申立人の名を命名しこれが届出をしたものであり、本件申立は、申立人の父母の協議により双方の合意に基づく名への変更を求めるものであることが明らかで、しかも、申立人の年齢、現在の生育状況等に照らすと、申立人の従前の名が社会生活上未だ定着していないと認められる特段の事情があるものといえる。そうすると、本件申立は、同法107条二項の「正当な事由」があると考えられる。

四 よつて、本件申立は正当であるからこれを認容することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 福岡右武)
以上:1,889文字
ホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > 「名の変更許可申立を認…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-29(木):高市首相突然解散の令和8年1月29日時点結果予想記事紹介
ホーム > 弁護士等 > 政治・社会・司法等 > 「高市首相突然解散の令…」←リンクはこちらでお願いします
○令和8年1月23日衆議院解散となり、2月8日が投票日と決まりましたが、この突然の解散劇について令和8年1月29日時点での予想記事2つ紹介します。宮城県は5区ありますが、自民勝利確実なのは5区の小野寺五典候補だけで、1・3区は自民中道横一線、2・4区は中道やや先行と河北新報が報じています。前回は、1~4区全て立憲でしたので、自民が健闘しているようです。私は高市政権は支持していませんが、かといって、与党過半数割れで高市首相退陣となると政局混乱と株価暴落が予想され、何とか現状維持を望んでいます。

○以下の二ツの記事は、一方は自民苦戦、他方は自民単独過半数・中道伸び悩みの予想ですが、どちら予想が当たるか気になるところです。宮城1・3区は自民中道横一線との予想は、高市人気の影響なのでしょうか。高市政権を積極的には支持できませんが、かといって野党側には政権担当能力があるとは思えず、当面、高市政権が継続して貰いたいところです。

**********************************************

自民大勝はない、創価学会の動きは侮れない 「選挙の神様」久米晃さんの衆院選予想
Jcastニュース1/28(水) 17:00配信

 衆議院総選挙が2026年1月27日に公示され、12日間の選挙戦に突入した。与党は勝敗ラインとされる233議席をクリアできるのか、選挙後の政局はどうなるのか、「選挙の神様」とも言われる久米晃・元自民党事務局長(選挙・政治アドバイザー)に聞いた。久米さんは、自民の大勝はないと見る。

(略)

岸田内閣解散時の261議席を基本にすると、「30小選挙区は敗北確実」
―― 公示直後の現状で、「自民対中道」の議席数は、どこまで読めますか?
「前回(24年10月の石破内閣選挙)の自民党の獲得議席191をベースにすると、裏金問題での逆風があっての結果だから、岸田内閣時の総選挙(21年10月)の261議席を基準にした方がわかりやすい。この時の自民党候補者で、次点の候補に1万票差で勝ってきた人たちが30人くらいいるんです。ここは、確実に厳しいと思います。仮に、ここですべて敗北するとすれば、今の自民党の現状は、261-30の約230が中心軸になると思います。この当時は参政党はなく、これと国民民主党とは比例区の取り合いですから、自民党の比例議席も当然減ることになります。維新も減るでしょう。立憲民主党は今回、公明党の底上げはあるけれど、逆に、参政党や国民党が奪われる議席もある。この両党は今回、参議院選の時よりも勢いは収まっていると思いますが、参政党は前回3議席しかとってないから、2ケタには上げてくるでしょう。国民民主は前回を若干上回るのではないか

(略)

自民・中道の議席予想は微妙だが、総選挙後の政局展開はどうなる?
―― 与党が過半数を維持しても、自民党内には、高市首相への不満が残る?

「選挙が終わった後にひと波乱あるでしょう。麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長は、今回の解散には何の相談にもあずかっていない、『高市自己中解散』と言われています。不信、不満が渦巻いています。高市さんが、麻生さんも鈴木さんも信用していない。それは、逆も言えますよね。圧勝すれば別ですけど。石破茂前首相に限らず、高市氏の保守的な考え方とは距離がある人たちも少なくありませんから。例えば、党の執行部の残留を望んでもお断わりする、とか。高市さんは、内輪の人間だけで政権運営せざるを得なくなる」

―― 「中道改革連合」は負けたら分裂ですか?
「立憲の左の部分は切れるでしょう、たぶん。でも、多くの人間は後がない公明出身者と一体となって、この先を目指して残ることになると思います。この塊がひとつになって、自民に向かってくれば、脅威になります。とくに小選挙区では」

―― しかし、次の参議院選挙は、2年余り先ですね。
「来年は統一地方選挙がある。44道府県で地方議員選挙がある。地方議会では、公明党が組織として残っており、自民党との協力関係を結んでいる地域が少なくありません。県議会では一人区が多い。自公協力が残っているんです。
 一方で、自民党の場合、選挙に負けなければ総裁を追い出せない。ただ、参議院選挙で負けてやめた総裁は多いです。宇野宗佑さん、橋本龍太郎さん、安倍晋三さんや森喜朗さんもそれに近い。安倍さんと高市さんが決定的に違うのは、高市さんの周りには人がいない。安倍さんは人が自ずと集まってきていた。高市さんは苦境に陥った時に、あっという間に倒れるかもしれません」

(後略)


*******************************************

【速報】自民“単独過半数上回る勢い” 中道“伸び悩み” 序盤情勢分析
日テレNEWS NNN によるストーリー

NNNは、読売新聞と衆議院選挙の世論調査を行い独自の取材も加えて序盤の情勢を分析しました。その結果、自民党が単独で過半数を上回る勢いであることがわかりました。一方、中道改革連合は伸び悩んでいます。

衆議院選挙は小選挙区289、比例代表176の465議席をめぐって争われます。

NNNが、読売新聞と27日から28日にかけて世論調査を行い、独自の情勢取材も加えて分析したところ、自民党が過半数の233議席を単独で上回る勢いであることがわかりました。

日本維新の会は公示前の34議席の確保は見通せない情勢ですが、自民と維新を合わせた与党では法案や予算を審議する上で安定的な国会運営が可能な絶対安定多数261議席を上回る勢いです。

一方、野党側です。

新党の中道改革連合は公示前の167議席から議席を減らす見通しです。

短期決戦の中、中道は有権者に十分に浸透しておらず伸び悩んでいます。

国民民主党は公示前の27議席の現有議席確保に止まる情勢です。

去年の参院選で躍進した参政党は公示前の2議席から比例代表で議席を伸ばす見通しで2ケタ議席を獲得する勢いです。

チームみらいは公示前は議席はありませんでしたが、小選挙区での議席獲得は難しいものの比例代表の複数ブロックで議席を獲得する情勢です。

共産党は公示前の8議席の確保は厳しい見通しです。

減税日本・ゆうこく連合は小選挙区で議席を獲得するかギリギリの情勢です。

れいわ新選組、日本保守党、社会民主党は議席獲得が難しい情勢です。

しかし、一定数の回答者が小選挙区や比例代表で投票する候補者や政党をあげておらず今後、情勢が変化する可能性もあります。

調査は電話とインターネットで実施し、あわせて29万6268人から回答を得ました。

【NNN・読売新聞 衆院選情勢調査】

1月27日~28日に全国で実施

固定電話   7万1430人が回答

携帯電話   4万6103人が回答

ネット調査 17万8735人が回答

合計    29万6268人が回答
以上:2,800文字
ホーム > 弁護士等 > 政治・社会・司法等 > 「高市首相突然解散の令…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-28(水):名の変更申立を却下した家裁審判紹介-名の変更許可要件は厳しい
ホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > 「名の変更申立を却下し…」←リンクはこちらでお願いします
○40年近く前に以下の戸籍法107条の2に基づく名の変更許可申立をして認められたことがあります。幼児時代に養子縁組した子について、養子縁組後、実親が名付けた名前Aを使わず、Bという名前で通し、5年以上経過し小学3年生になった時に、名前の長年使用等を理由に名の変更許可申立をして、認められました。氏の変更は比較的認められやすいのですが、名の変更はなかなか認められません。
戸籍法第107条の2
 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、名及び名の振り仮名を変更することについて家庭裁判所の許可を得て、その許可を得た名及び名の振り仮名を届け出なければならない。


○この「正当な事由」とは、名の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうものと解され、認定要件は大変厳しいものです。

○申立人は、重篤なPTSD及びうつ病により複数の自殺未遂をしてきたところ、戸籍上の名である「a」の名を使用し続ければ、申立人の精神的健康、治療からの回復、生命に対する重大かつ継続的な脅威となり、申立人の治療を妨げ、その社会生活に重大な支障を生じさせるのであり、単なる不便や主観的な不快感の問題にとどまらないとして、名の変更許可を申し立てました。

○これに対し、申立人が、うつ病と診断されたこと、申立人が両親の言動に苦痛や不満を長年抱いていたことを医師に伝えていることは認められるものの、それらは主観的なものにとどまり、戸籍名を使用することで社会生活において著しい支障を来すことを裏付ける的確な資料は提出されていないから、戸籍法上の名を変更すべき事情としての客観的合理性・妥当性は認め難く、また、申立人は、b(▽▽▽)という通称名を使用していると主張し、これを裏付ける資料も提出するが、その資料によっても、いまだ相当期間にわたって「b」(▽▽▽)という通称名が広く社会一般に通用しているとまでは認められないから、申立人の名を「a」(▽▽▽)から、「b」(▽▽▽)に変更することについては、戸籍法107条の2に定める正当な事由があるとは認められないとして、本件申立てを却下した令和7年10月20日東京家裁立川支部審判(LEX/DB)全文を紹介します。

**********************************************

主   文
1 本件申立てを却下する。
2 手続費用は申立人の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨及び理由の要旨
1 申立ての趣旨

 申立人の名「a」(▽▽▽)を「b」(▽▽▽)と変更することの許可を求める。

2 申立ての理由の要旨
 申立人は、重篤なPTSD及びうつ病により複数の自殺未遂をしてきたところ、戸籍上の名である「a」の名を使用し続ければ、申立人の精神的健康、治療からの回復、生命に対する重大かつ継続的な脅威となり、申立人の治療を妨げ、その社会生活に重大な支障を生じさせるのであり、単なる不便や主観的な不快感の問題にとどまらない。
 よって、名の変更許可を申し立てる。

第2 当裁判所の判断
1 本件記録によれば、以下の事実が認められる。
(1)申立人は、平成11年△△月△△日にcとd(以下、それぞれ「父」、「母」という。)との間の長男として出生し、名を「a」【名の振り仮名】▽▽▽)と届け出られた。

(2)申立人は、令和6年2月10日、医師の診察を受け、問診票には、主訴を「何事にもやる気が起きなく、ご飯をたべること・入浴・歯磨きなどが億劫になっている。」、発症時期を「6か月くらい前から」、思い当たる原因を「幼少期からの両親からの精神的虐待」と記入した(甲3の1)。申立人は、同月14日、「気分の落ち込み、意欲低下、思考制止症状、自殺企図、さらには幼少期からの精神的ハラスメントによりそういった症状が生じている」として、PTSD、二次性うつ病を傷病名と医師に診断され(甲1の1)、同年8月5日には、うつ病であると医師に診断された(甲1の2)。

(3)e医療センター精神神経科担当医師fによる令和6年8月13日作成の診療情報提供書には、申立人の現病歴として、「幼少期より2歳下の妹と比べられることが多く、「優秀な妹」は好きな物を何でも買い与えられたが、本人はおこづかい制で欲しいものはお金を貯めて買うしか無かった。(中略)学校で作った美術の作品を持って帰ってきても、両親から「うわ、ゴミ持ってきたよ」と言われ、ゴミ箱に捨てられたり、学校での問題があると両親いずれからも激しく罵られ、物を投げられたりしたことがあった。」、「法学部入学を目指して予備校に通ったが、(中略)その過程で両親から「勉強もしないで引きこもっていて、お前には生きている価値なんかない」と言われることもあった。」、「2023年の夏に法科大学院の受験ラッシュがあり、複数校受験したものの全て落ちてしまい、両親から「お前なんかが弁護士になれるわけない。予備校時代も全然勉強しなかったのに、受かるわけないだろ」と否定的な言葉を言われたことで、法科大学院受験の意欲を一気に失ってしまった。好きだった料理も段々と出来なくなり自炊をしなくなり、昼夜逆転、抑うつ気分、意欲低下、食欲低下、情動不安定(突然泣き出す)、全身倦怠感等が出現するようになり、趣味の好きだったアイドルの音楽や料理もする気にならなくなった。」との記載がある。

 外来経過には、「背景に、法科大学院を失敗した事による反応性の抑うつの要素もあると考え、御本人には少しずつ行動を増やしていくことが抑うつの改善に重要であることを外来で説明しております。」と記載されている。また、【まとめ】の○家庭の項目には、「(今までは)親からのハラスメントに悩まされてきたが、これからは、一人の人間として強く生きたい。(もし母が)改心して、精神的ハラスメントをしないと宣言してくれるなら1度くらい会ってみても良いと思う。(もし私の父が)私の意見に耳を傾けてくれていたら、今でも信用関係が続いていたことだろう。」との記載がある。

(4)申立人は、令和6年8月6日、申立人の名aをbと変更することを求める旨の名の変更許可の申立てをしたが(当支部令和6年(家)第2061号)、同年9月27日、申立ては却下され、これに対する申立人の抗告(東京高等裁判所令和6年(ラ)第2506号)も、同年12月3日に棄却され(甲2の3)、これに対する申立人の特別抗告(最高裁判所令和7年(ク)第97号)も、令和7年3月12日に棄却された(甲2の4)。

(5)株式会社g作成の「電気ご使用量のお知らせ」と題する書面の宛先として,令和6年9月30日締切分から「b様」と印刷されている(甲6の2)ほか、令和6年9月20日以降の領収書の宛名が「b様」と記載されている(甲6の7)。

(6)父及び母は、令和6年12月12日頃、申立人に対し、これまでの4年8か月の間、アパートの賃料、生活費、大学の授業料等を仕送りしてきたこと、予備校、運転免許取得及びロースクール受験の費用等の要望に対しても、少しでも自立に向かえばと思い、認める形で支援してきたことを述べるともに、「今月の12月20日を最後に以降の貴方への仕送りを停止することを通告します。」などと記載した「仕送りの停止通告」と題する書面を送付した(甲4の2)。申立人は、父及び母に対し、支払督促の申立て(木更津簡易裁判所令和6年(ロ)第451号)をし、同人らは、令和6年12月23日、督促異議の申立てをした(甲4の3)。 

2 戸籍法107条の2は、名の変更につき「正当な事由」を必要としているところ、その趣旨は、名は、氏とともに人の同一性を表す呼称であることから、みだりに変更することを許さず、客観的に合理性・妥当性があると認められる場合に限って許可することとしたものであると解され、「正当な事由」とは、名の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうものと解される。

 申立人は、その心的外傷後ストレス障害及びうつ病の症状が、申立人の両親、特に父による長年にわたる精神的虐待の直接的な結果として発症したものであり、申立人の現在の戸籍名「a」は、心的外傷後ストレス障害及びうつ病の症状を誘発・悪化させる直接的かつ持続的な原因となっているとして、「a」を使用することの不都合を主張する。

しかし、前記認定事実によれば、申立人が、うつ病と診断されたこと、申立人が両親の言動に苦痛や不満を長年抱いていたことを医師に伝えていることは認められるものの、それらは主観的なものにとどまり、戸籍名を使用することで社会生活において著しい支障を来すことを裏付ける的確な資料は提出されていないから、戸籍法上の名を変更すべき事情としての客観的合理性・妥当性は認め難い。また、申立人は、b(▽▽▽)という通称名を使用していると主張し、これを裏付ける資料も提出するが、その資料によっても、いまだ相当期間にわたって「b」(▽▽▽)という通称名が広く社会一般に通用しているとまでは認められない。

 以上によれば、申立人の名を「a」(▽▽▽)から、「b」(▽▽▽)に変更することについては、戸籍法107条の2に定める正当な事由があるとは認められない。

3 よって、本件申立ては理由がないから、主文のとおり審判する。
令和7年10月20日
東京家庭裁判所立川支部
裁判官 小林愛子
以上:3,840文字
ホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > 「名の変更申立を却下し…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-27(火):賃貸物件以外の物件不法占拠理由に解除を認めた最高裁判決紹介
ホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 > 「賃貸物件以外の物件不…」←リンクはこちらでお願いします
○古い判例ですが、賃借人の賃借物件以外の賃貸人所有物件不法占拠を理由に信頼関係破壊による解除を認めた昭和40年8月2日最高裁判決(判時424号34頁、判タ181号114頁)全文を紹介します。

○本件家屋賃貸借は、約定期限の経過とともに借家法による法定更新により期間の定めのない賃貸借となてしましたが、賃借人の上告人が賃借した部分は本件建物中A、B、C、Dの範囲のみであり、E、F、Gの部分については占有権原がなく、不法占有でした。

○賃貸人の被上告人は被告の不信行為(E、F、G部分の不法占拠)を原因として解約の申し入れをしており、この不信行為は信頼関係を著しく阻害するもので、無断転貸等に準ずるものであるから、直ちに、又は解約告知の方法により、賃貸借関係を終了させることができ、本件家屋中上告人が賃借していた部分については解約告知から6か月の経過または解除により賃貸借が終了していると認定して請求を全部認容した原判決を支持し、上告を棄却しました。

********************************************

主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由第一点について。

 記録によれば、
(い)被上告人が本件訴状において、上告人が本件建物中のEFG部分を不法に占拠したことを責めており、その後の口頭弁論においても、常に不信行為の責任を追求している旨および
(ろ)被上告人が判示解約の申入をした真意は、上告人の不信行為を重要な原因としたものである旨の原審の認定は、いずれも是認でき、右認定の経路に審理不尽、理由不備の違法はない。
所論は、ひつきよう、原審が適法にした事実の認定ならびにこれに基づく当事者の主張の解釈を非難するものであつて、採用できない。

 同第二点について。
一 原審の証拠関係に徴すれば、
(い)上告人において本件建物中のG部分を不法占拠した時期は訴外甲のEF部分退去後である旨の認定、
(ろ)本件建物は上告人がその全部を被上告人から賃借し、訴外甲に対しては、上告人が右建物の一部を転貸したものであるとの上告人の主張に添う証人らの供述は措信し難く、他に右主張を肯認するに足る証拠はない旨の事実上の判断、
(は)上告人が本件建物中のE部分を被上告人に無断で使用した旨の認定、
(に)上告人が甲から被上告人に支払うべく託された賃料の一部を自ら領得した旨の原審の認定は、いずれも首肯できないものではなく、右認定判断の経路に採証法則違背、審理不尽の違法はない。
原審の事実認定に関し論旨の主張するところは、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実の認定を非難するにすぎないものである。

二 しかして、原審が適法に認定したところによれば、上告人は、被上告人からその所有の本件建物の一部であるACE部分を賃貸し、また、D部分の使用をも黙認され、これらを店舗兼居宅として使用してきたが、昭和28年10月頃本件建物中のEF部分の賃借人である訴外甲が該部分から立ち退くや、被上告人に無断で該部分を占拠するの挙に出、あまつさえ、階上のG部分も同様に不法に占拠し、右EFG部分を前記賃借物件使用の便宜に宛てているというのであり、その他原審が確定した一切の事実関係を斟酌すれば、上告人の右行為は、本件建物の賃貸借契約の基礎にある当事者相互の信頼関係を裏切つて、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめる不信行為であるといわざるをえない。

かかる場合に、被上告人が右不信行為を理由に、賃貸借を解除できるとした原審の判断は正当である。右判断を云為する論旨は、原審の認定と相容れない事実を前提とし、独自の見地に立つて原判決を攻撃するものでしかない。
 論旨はすべて採用できない。
 よつて、民訴法401条、95条、89条に従い裁判官の全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)
以上:1,654文字
ホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 > 「賃貸物件以外の物件不…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-26(月):不貞期間2年に慰謝料130万円の支払を認めた地裁判決紹介
ホーム > 男女問題 > 不倫問題 > 「不貞期間2年に慰謝料…」←リンクはこちらでお願いします
○原告夫が、その妻であるCと平成31年3月から令和3年6月頃までの間、継続的に不貞行為を行った被告男性に対し、不法行為に基づき、慰謝料1000万円と弁護士費用100万円の合計1100万円の損害賠償を求めました。1000万円もの慰謝料を請求したのは、不貞行為発覚後不眠、精神不安に伴う動悸などの症状が生じていると診断されていることなどによると思われます。

○被告男性は、不貞行為の事実は認めるも、不貞行為時点で原告・C夫婦間婚姻関係は破綻しており、また慰謝料金額が高すぎると争いました。

○これに対し、不貞行為時点で原告・C夫婦間婚姻関係は破綻していないとして、2年間の不貞行為期間、Cには被告以外にも不貞行為があったこと、不貞行為発覚後の原告の精神的打撃等を考慮して、慰謝料130万円の支払を認めた令和6年11月27日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

*********************************************

主   文
1 被告は、原告に対し、143万円及びこれに対する令和5年5月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを6分し、その5を原告の、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する令和5年5月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言

第2 事案の要旨
 本件は、原告が、その妻であるC氏(以下「C氏」という。)の不貞相手である被告に対し、不法行為による損害賠償を請求する事案である。
1 前提事実
(1)原告は、平成22年12月31日、C氏と婚姻し、平成24年○月に長女が出生した。
(2)C氏と被告は、平成31年3月から令和3年6月頃までの間、継続的に不貞行為を行った。
(3)原告は、令和5年3月頃、C氏と被告の不貞行為を知るに至り、同年5月10日に被告に到達した内容証明郵便により、被告に対し損害賠償として1000万円の支払を請求した。(甲2の1、2)
(4)原告は、令和6年3月頃、長女とともに転居してC氏と別居した。(甲7)

2 争点(原告の損害の額)の及びこれに対する当事者の主張
(1)原告の主張
 C氏と被告の不貞行為による原告の精神的苦痛を慰謝するためには、少なくとも1000万円の慰謝料の支払が相当である。
(2)被告の主張
 被告がC氏と不貞行為を行ったことは認め、慰謝料の金額は争う。

第3 当裁判所の判断
1 被告の不貞行為は、原告の平穏な婚姻関係を破壊するものであり、不法行為を構成する。なお、被告は、不貞行為の時点で原告とC氏との婚姻関係は破綻していたとも主張するが、このことを認めるに足りる証拠はない。

2 そこで原告の損害の額について検討すると,原告とC氏との婚姻期間が現時点で約14年間に及ぶこと、C氏と被告との不貞行為の期間は2年以上にわたっており、被告の主張を前提としても10回から15回程度の性交渉があったと認められること(被告本人17頁)、原告は被告の不貞行為によってC氏と別居に至っていると認められること、原告が不貞行為を把握して以降、不眠、精神不安に伴う動悸などの症状が生じていると診断されていること(甲4)などの事情に加え、原告とC氏は離婚には至っていないこと、C氏には被告以外にも不貞相手が存在した点に争いはなく、原告とC氏が別居に至ったことの原因が被告のみにあるとは解されないことなど、本件にあらわれた一切の事情を考慮すれば、本件における慰謝料の額としては130万円をもって相当と判断する。これに弁護士費用相当額13万円を加算した14
3万円が、本件不貞行為と相当因果関係のある損害額と認める。 

第4 結論
 よって、原告の請求は主文第1項の範囲で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
裁判官 秋山沙織
以上:1,689文字
ホーム > 男女問題 > 不倫問題 > 「不貞期間2年に慰謝料…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-25(日):幅員2mの範囲での民法213通行権を認めた高裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「幅員2mの範囲での民…」←リンクはこちらでお願いします
○判例時報最新の令和8年1月号2336号118頁掲載の通行権に関する令和7年3月27日大阪高裁判決を紹介します。現時点ではウエストロージャパンにもLEX/DBにも掲載されていませんが、次回判例勉強会で私がレポート担当なので、以下、判例時報を読んでのレポート概略を紹介します。

○先ず要旨は以下の通りです。
1 原告の所有する土地につき公道に通ずる通路はあるがその幅が狭いために土地の効用を全うできないとして、より広い幅の通路の確保のために、被告の所有する土地につき民法213条に基づく通行権を認めた事例
2 民法213条に基づく通行権の範囲を定める際の一事情として、建築基準法43条1項所定の接道要件を満たすべき必要性を考慮した事例
(大阪高判令7・3・27〈参考原審:大阪地判令6・9・27〉)
論点は、民法213条通行権の有無及びその範囲で、参照条文は民法第213・210条と建築基準法第43条1項です。

○事案は以下の通りです。
s30年代2964番土地所有者Rが、添付参考図のとおり、2964番1~6に分筆
土地1~6として販売、
土地4と6の間に通路(本件道路)設置し、土地3・5所有者が道路利用(参考図参照)
r2に2886番1所有者Qが5を取得し、5と本件道路の間に塀を設置し本件道路使用をしなくなった
土地6所有者Y2は土地3所有者Xに本件道路の土地6部分使用を許さないと主張

主な争点
①本件道路の土地6部分にXは民213通行権が認められるか
②Xに認められる民213通行権の範囲
Xは、建築基準法43Ⅰに基づき約2.5mの幅を認めるべきと主張

r6.9.27大阪地裁判決
①を肯定
②は幅2mの範囲で通行権認める

Y2のみ控訴

○東京高裁判示概略は以下の通りです。
判示
Y2の控訴棄却
理由
(1)昭和30年代の本件各土地分筆の経緯からは
添付参考図での土地3・5の所有者は、本件道路につき、土地3の所有者は4部分のみ、土地5の所有者は6部分のみ通行するものではなく、それぞれ設けられた通路全体を通行する213条通行権を取得

(2)213条通行権の範囲
昭和56年承諾書においては、土地4・6の元所有者は、本件道路4部分を土地5所有者のために、本件道路6部分を土地3所有者のためにそれぞれ通行権の負担を承諾していたことを示す
建築基準法上接道要件を事情として考慮する必要がないとするのは相当でない
通行権の範囲は、土地3・5所有者のために幅2mを認めるべき

以上:1,006文字
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「幅員2mの範囲での民…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-24(土):映画”バトルランナー”を観て-残念ながらつまらないの一言
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”バトルランナー…」←リンクはこちらでお願いします
○令和8年1月23日(金)は、ツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でしたが、練習後夕食を取りながら恒例の映画館紹介は、最近息子が購入した4KUHDソフトで1987(昭和62)年製作映画「バトルランナー」を鑑賞しました。シュワルツェネッガー氏主演映画で、封切り当時映画館で鑑賞していたような記憶がありますが、内容は忘却の彼方でした。映画を観ているうちにところどころどこかで観たことがあるようなシーンが登場しました。

○1947年生まれのシュワルツェネッガー氏40歳の時の作品で、同氏はその当時映画「ターミネーター」、映画「プレデター」等大ヒットした有名作品で大スターになっており、私も大ファンになっていました。そこで映画館で鑑賞したと思われますが、内容は忘却の彼方だったのは、内容がつまらなくて記憶に残らなかったためと思われます。今回ほぼ40年ぶりの鑑賞で、ところどころ思い出しましたが、今回も感想はつまらないの一言でした。

○映画コムでは「21世紀を舞台にTV中継の殺人ゲームの標的になる男たちの反乱を描いたアクション映画。」と解説されていますが、シュワルツェネッガー氏のアクション映画としては、迫力に乏しくてハラハラ・ドキドキ感が殆ど感じられません。敵役として登場する人物もみな中途半端で、シュワルツェネッガー氏演ずる主人公に簡単に滅ぼされてゆきます。ストーリー展開が余りに安易すぎて、殆ど感情移入できないまま終わってしまいました。よくぞ、この映画が4KUHDソフト化されたものです。

『バトルランナー』日本版劇場予告編


以上:656文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”バトルランナー…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-23(金):LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を棄却した最高裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給契約解除…」←リンクはこちらでお願いします
○「LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を認容した高裁判決紹介」の続きで、その上告審令和7年12月23日最高裁判決(裁判所ウェブサイト)全文を紹介します。

○LPガス供給事業者が、約定供給期間10年間の経過前に契約解除したLPガス供給契約相手方に対し、違約金約17万円の請求をして、一審地裁判決はこれを棄却したところ、原審高裁判決は違約金支払合意が存在し、それが消費者契約法にも違反せず、また、錯誤も認められないとして、LPガス供給事業者の請求を認め、これを不服とした相手方が上告しました。


○最高裁判決は、消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の設置費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に該当し、消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の設置費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号により無効となるとして、原審高裁判決を取り消し、LPガス供給事業者の請求を棄却しました。

○LPガス供給事業者は、LPガス供給契約相手方に対し約定供給期間経過前に契約解除した場合、違約金或いは売買代金名下に配管設備代金の一定金額返還を求めて、契約解除しないように縛りをかけるのが一般です。しかし、「LPガス供給のための戸建住宅設置配管設備の住宅付合を認めた最高裁判決紹介」で紹介した同じ日の最高裁判決も含めてこのような縛りは認められないことが確定しました。

*************************************************

主   文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 
 
理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由(ただし、排除されたものを除く。)について
1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1)被上告人は、液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給等を業とする株式会社である。
(2)被上告人は、令和元年頃、株式会社Aが販売する戸建て住宅(以下「本件住宅」という。)にLPガスの消費設備に係る配管及びガス栓(以下、併せて「本件消費設備」という。)を設置したが、本件消費設備の部品代金や設置費用、給湯器やそのリモコンの設置費用等(以下、本件消費設備と給湯器等を併せて「本件消費設備等」といい、本件消費設備等の設置費用等を「本件設置費用」という。)をAに請求しなかった。

(3)上告人は、令和元年6月、Aから本件住宅を購入した。その際、Aは、上告人に対し、Aが指定するLPガス販売事業者である被上告人からLPガスの供給を受ける必要があるなどと説明した。
(4)上告人は、令和元年7月、被上告人との間でLPガスの供給等に関する契約(以下「本件供給契約」という。)を締結し、本件住宅へのLPガスの供給を受けるようになった。

(5)本件供給契約に係る契約書には、次のような条項がある。
ア 被上告人が本件住宅にLPガスを供給する期間は、供給開始日から10年以上とする。
イ 被上告人が負担した本件設置費用は21万円(消費税込み)であり、上告人が被上告人から本件住宅へのLPガスの供給を受けている間、被上告人はこれを請求しない。
ウ 上告人は、供給開始日から10年経過前に本件住宅へのLPガスの供給を終了させる場合、本件設置費用に関し、被上告人に対し、次の算定式で得られた金額(以下、当該算定式で得られる金額を「本件算定額」という。)を、供給終了後、直ちに支払う(以下、この条項を「本件条項」という。)。
 (算定式)
 21万円-{21万円×0.9×(供給開始日から供給終了日までの経過月数/120)}

(6)本件消費設備は、本件住宅に付合しており、本件供給契約が締結される前から上告人がこれを所有している。

(7)上告人は、令和3年6月、被上告人に代わって日本瓦斯株式会社から本件住宅へのLPガスの供給を受けることとし、被上告人からの供給は終了した。

2 本件は、被上告人が、本件条項は、本件設置費用に関し、上告人に本件算定額の支払義務があることを定めた合意である旨主張し、上告人に対し、本件算定額である17万3775円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
 上告人は、本件条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの。以下同じ。)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(以下「違約金等条項」という。)に当たり、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴って被上告人に生ずべき平均的な損害は存せず、その全部が無効になるなどと主張して争っている。

3 原審は、前記事実関係等の下、本件条項は、10年間にわたって上告人から被上告人に対して支払われるガス料金の中から回収することが予定されていた本件設置費用について、その未回収分を上告人において支払う旨の合意であって、違約金等条項に当たらないと判断し、被上告人の請求を認容した。

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
(1)被上告人は、本件住宅に本件消費設備等を設置しながら、Aに対して本件設置費用を請求しておらず、上告人は、本件住宅の購入に当たってAより被上告人からLPガスの供給を受ける必要がある旨説明を受けていた。このことからすると、被上告人は、Aの協力の下に、本件住宅を購入した者との間で優先的にLPガスの供給契約の締結について交渉することができる事実上の地位を確保するため、自らの判断で本件設置費用をAに請求しなかったということができる。

また、被上告人は、上告人と本件供給契約を締結するに当たり、上告人が被上告人からLPガスの供給を受けている間は上告人に本件設置費用を請求しないこととするとともに、本件条項により、上告人が供給開始日から10年経過前に本件供給契約を終了させる場合は、経過期間に応じて本件設置費用に関して支払われるべき本件算定額を逓減させることとしていたが、これらは、本件供給契約を締結するように上告人を誘引し、併せて本件供給契約が短期間で解約されることを防止し、本件供給契約を長期間維持するためのものであったといえる。このような本件供給契約の締結に至るまでの経緯及び本件供給契約の内容からすると、本件設置費用は、本件供給契約を獲得し、これを長期間維持するために先行投資された費用ということができる。

 また、本件条項は、一見すると、本件消費設備等の設置の対価として本件算定額の支払義務を定め、上告人が10年間にわたって被上告人に支払うガス料金から本件設置費用を回収することを予定するものであったようにもみえる。しかしながら、本件供給契約上、本件算定額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上告人が被上告人に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、本件設置費用とガス料金との関係は明確にされておらず、本件設置費用がガス料金から回収されることになっていたのかも明らかではない。

このような本件供給契約の内容に加え、被上告人が、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約を多数締結しているLPガス販売事業者であることからすると、被上告人においては、既に消費設備の設置費用の回収が終わっている契約者に対し、従前と同様のガス料金を設定するなどし、他の契約者の消費設備の設置費用を負担させることができるような料金体系となっていて、実際には、上告人のみならず、契約者全体から得られるガス料金から本件設置費用を回収する仕組みとなっていたことがうかがわれる。これらのことからすると、本件算定額が本件消費設備等の設置の対価といえるものかどうかは明らかではないといわざるを得ない。

 以上からすると、本件条項は、本件消費設備等の設置の対価を定めたものではなく、本件供給契約が供給開始日から10年経過前に解約されるなどして被上告人がその後のガス料金を得られなくなった場合に本件算定額の支払義務を負わせることで、短期間の解約が生ずることを防止し、本件供給契約を長期間維持することを図るとともに、併せて先行投資された本件設置費用に関して被上告人が被る可能性のある損失を補てんすることも目的の一つとするものというべきであり、実質的にみると、解除に伴う損害賠償の額の予定又は違約金の定めとして機能するものということができる。したがって、本件条項は、違約金等条項に当たるというべきである。

 以上と異なる見解の下に、本件条項が違約金等条項に当たらないとした原審の上記判断には法令の解釈適用を誤った違法がある。


(2)本件条項が違約金等条項に当たることからすると、本件算定額の全部又は一部が、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害、すなわち、一人の消費者と被上告人との間で、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約が解除されることによって被上告人に一般的、客観的に生ずると認められる損害の額を超えるものである場合、本件条項は当該超える部分について消費者契約法9条1号により無効となる。そして、この点について、本件条項の目的の一つが、先行投資された本件設置費用に関して被上告人が被る可能性のある損失を補てんすることにあることからすると、LPガスの供給契約が解除されてそれ以降のガス料金を得られなくなると、被上告人において先行投資費用として負担した消費設備に係る設置費用の未回収分の損害が生じたようにみえなくもない。

 しかしながら、上記のとおり、供給開始日から10年が経過しても上告人が被上告人に支払うべきガス料金が減額されることになっておらず、本件設置費用とガス料金との関係が不明確なものとされていたという本件供給契約の内容等からすると、被上告人において、ある契約者に係る消費設備の設置費用は、契約者全体から得られるガス料金から回収する仕組みとなっていたものというべきである。

このことに加え、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約においてLPガスの価格に法令上の規制がなく、LPガス販売事業者は自由にガス料金を設定することができることも併せて考慮すると、被上告人としては、解除時点では消費設備に係る設置費用の全部を回収できていない契約者が一定数生ずるという事態が起きることを見越し、利益が確保できるように契約者全体のガス料金を適宜設定し、設置費用が未回収となったことの負担を他の契約者に転嫁することが可能になっていたといわざるを得ない。そうすると、上記事態が起きたとしても、被上告人に上記未回収分の損害が生じたとはいえないというべきである。

 そして、他に、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害に当たり得るものは見当たらない。
 以上からすると、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害は存しないというべきである。
 したがって、本件条項は、その全部について消費者契約法9条1号により無効となるというべきである。


5 以上によれば、原審の上記違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は是認することができるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官林道晴の補足意見がある。
 裁判官林道晴の補足意見は、次のとおりである。
(省略)
以上:4,919文字
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給契約解除…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-22(木):LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を認容した高裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給契約解除…」←リンクはこちらでお願いします
○「LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和5年10月26日東京高裁判決(Westlaw Japan)関連部分を紹介します。

○LPガス供給事業者の控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が約定供給期間経過前の令和3年6月15日にLPガス供給契約を終了したので同契約での控訴人設置LPガスの供給設備の設置費用を被控訴人が負担する旨の合意の存在を理由に、所定の算定方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めがあるとして、算出された金額17万3775円と所定の遅延損害金の支払を求めたところ、原審は、そのような合意はないとして、控訴人の請求を棄却しました。

○控訴人がこれを不服として控訴したところ東京高裁判決は、原判決を取り消し、被控訴人に17万3775円の支払を命じました。その理由概要は
・本件取決めは、本件消費設備等の設置費用について、被控訴人が、控訴人からのLPガスの供給期間である10年間を経過する前に控訴人からその供給を受けないこととなった場合には、控訴人に対し、本件契約に定める算定式により算出される金額を支払うことを約したもの
・本件消費設備等の設置費用は、本件契約所定の算定式によって算出される金額21万円(税込)は、合理的なものであり、不相当に高額とはいえず、消費者契約法に違反しない
・被控訴人は、一定の場合、本件消費設備等の費用を支払うことを認識して本件契約を締結したので本件取決めに係る意思表示について被控訴人に何らかの錯誤があったものとは認められない
というものです。

○この控訴審判決は、上告審最高裁判所で破棄されており、別コンテンツで紹介します。

************************************************

主    文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、17万3775円及びこれに対する令和3年6月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
4 この判決は、2項に限り、仮に執行することができる。
 
事実及び理由
第1 控訴の趣旨

 主文と同旨。

第2 事案の概要
1 本件は、LPガスの供給事業者である控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が約定の供給期間の経過前である令和3年6月15日に控訴人との間のLPガス供給契約を終了したところ、同契約においては、控訴人が設置したLPガスの供給設備の設置費用を被控訴人が負担する旨の合意があり、同契約を10年以内に終了させた場合には、同費用を基礎に所定の算定方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めがあるとして、これに基づき算出された金額である17万3775円及びこれに対する弁済期日(上記LPガス供給契約の終了日)の翌日である令和3年6月16日以降の民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2 原審が控訴人の請求を棄却したところ、控訴人が、これを不服として控訴した。

3 前提事実は、次のとおり補正するほかは、原判決「第2 事案の概要」の1(原判決2頁12行目から3頁13行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、原審とは異なり、控訴人の請求は理由があるものと判断する。
 その理由は、以下のとおりである。

2 控訴人・被控訴人間で本件契約書記載のとおりの本件契約が締結されたかについて
 原判決6頁1行目から5行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

3 本件取決めは、本件消費設備等の設置費用を被控訴人が負担し支払う旨の合意といえるか(損害賠償の予定等の性質を有するものではないか)について
(1) 認定事実
 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 控訴人は、令和元年5月31日までに、Aの承諾の下、代金24万7000円で、本物件にLPガスの供給設備及び消費設備を設置したが、その設置費用についてはAに請求しなかった(甲14)。

イ 被控訴人は、令和元年6月10日、Aから本物件を、売買代金2770万円(土地代金1513万円、建物代金1257万円)(全て税込)で購入した(乙1)。

ウ 被控訴人は、令和元年6月10日、上記イの本物件の売買契約にあたり、宅地建物取引業法35条、35条の2に基づき、Aの業務に従事する宅地建物取引士から、重要事項の説明を受けた。その説明の際に交付された重要事項説明書の「飲用水・電気・ガスの供給及び排水施設の整備の状況」欄には、本物件にはガス設備が設けられ、その整備時期は令和元年5月頃であること、ガス配管設備(供給設備及び消費設備)の所有権はプロパンガス供給業者にあること、被控訴人がプロパンガス供給業者を変更する場合には、償却残存期間に応じて費用が発生する場合があることなどの記載がされている。上記重要事項説明書には、被控訴人の署名押印がされている。(乙2)

エ また、被控訴人は、上記イの本物件の売買契約にあたり、LPガス供給について、Aから、次のとおり説明を受け、その内容を承認して、確認書に署名押印した(甲13)。
①供給設備及び消費設備(その定義は、前提事実(2)②(本判決第2の3(5))と同旨である。)については、建物代金に含まれていない。
②消費設備(屋内ガス配管)の所有権は被控訴人に帰属しているが、費用については指定供給会社が負担しているため、費用償却期間である契約後10年間は貸与とする。
③指定供給会社は控訴人である。
④本物件の供給設備及び消費設備は、被控訴人が10年以上の期間、LPガス受給を継続することを条件に、控訴人が設備費用を負担して設置しているので、控訴人よりLPガスを供給する。
⑤LPガス供給にあたっては、控訴人と「LPガスの供給及びLPガス設備に関する契約」(本件契約)を締結する。
⑥被控訴人と控訴人との間で本件契約を締結した日から10年を経過する前に、被控訴人がLPガス供給会社を変更する場合又は競合燃料(都市ガス・電力など)に変更する場合は、消費設備については、被控訴人が本件契約書記載の算定式により算出された「残存金額」で買い上げる。

オ 本件契約書には、「LPガス設備の管理区分」が記載されており、消費設備については、供給設備であるマイコンガスメータの出口から本物件内のガスコンロ及び給湯器に接続する器具が図示され、「供給設備は供給会社の管理責任 消費設備は消費者の管理責任」と記載されている(甲1)。

カ 本件契約書記載の本件消費設備等の設置費用21万円(税込)の内訳は、次のとおりである。
 基本工事費3万9000円、ガス栓ライン工事費2万5000円、フレキコック接続2320円、付帯工事費7820円、給湯器取付工事費2万円、追い焚き配管工事費4万円、リモコン取付工事費2万8000円、試運転費等2万円、諸経費1万8214円の計20万0354円から端数処理で5909円を差し引いた19万4445円に消費税1万5555円を加えた合計が21万円となる。

キ 被控訴人は、LPガスの供給者を控訴人からニチガスに変更することにし、令和3年6月2日、ニチガスに対し、LPガス供給の切替作業を委任した(甲2、3)。

ク 控訴人は、被控訴人がLPガスの供給者を控訴人からニチガスに変更したことに伴い、令和3年6月16日付けで、被控訴人に対し、ガス供給解約に伴う残存簿価費用との件名で、17万3775円の支払を請求した(甲4)。

ケ 本件契約に基づく控訴人から被控訴人に対するLPガスの供給期間は、令和元年7月10日から令和3年6月15日までの23か月であった(甲1、3)。

(2) 検討
ア 本件契約書には、本物件のLPガスの供給設備及び消費設備(本件消費設備等)の所有権が控訴人にあり(第7条1項)、本件消費設備等を利用する被控訴人が設置費用を負担するところ、控訴人からLPガスの供給を受けている間、控訴人は被控訴人に対し本件消費設備等の費用の請求をしないこととする(第7条3項)が、10年間の供給期間(第4条)の経過前に控訴人からのLPガス供給を終了させた場合には、被控訴人において、所定の算定式によって算出される本件消費設備等の費用を支払うこと(第8条1項)が記載されている(前提事実(2))。

 証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人により本物件に設置された本件消費設備等については、その一部が本物件(建物)に付合し、その所有権は本物件を購入した被控訴人に帰属し、控訴人には帰属していないものと認められるから、本件契約書の上記文言を字義どおりに解釈することは、本件契約の解釈として相当ではない

イ この点、控訴人は、控訴人と被控訴人との間で、本件契約において、被控訴人が本来負担すべき本件消費設備等の設置費用を支払う場合があること、控訴人から被控訴人に対するLPガス供給が供給期間10年の経過前に終了したことを停止条件として支払期限が到来することを内容とする本件取決めがされたと主張する。

 前提事実及び認定事実によれば、控訴人は、Aの承諾の下、本物件に本件消費設備等を設置し(認定事実ア)、本物件を購入した被控訴人は、本物件の売買契約にあたり重要事項として被控訴人がガス供給業者を変更する場合には償却残存期間に応じて費用が発生する場合があることなどを説明され(認定事実ウ)、本物件の売主であるAから、本件消費設備等の費用が代金に含まれておらず、LPガス供給会社である控訴人と本件契約を締結し、本件契約締結後10年経過前にLPガス供給会社を変更した場合には本件契約書記載の算定式により算出された金額で本件消費設備等を買い上げることを承認し(認定事実エ)、その後、控訴人との間で本件契約を締結し、控訴人からLPガスの供給を受けることになった(前提事実(2)及び(3)・補正の上引用する原判決2頁17行目から3頁13行目まで)ことが認められる。

 このように、被控訴人は、本件消費設備等の設置費用が本物件の売買代金には含まれておらず、被控訴人が10年経過前にLPガス供給会社を変更し控訴人からLPガスの供給を受けないこととなった場合には、被控訴人が本件消費設備等の設置費用を一定限度で負担することとなることを十分認識していたものと認められるから、本件取決めは、控訴人が負担した本件消費設備等の設置費用について、被控訴人が、控訴人からのLPガスの供給期間である10年間を経過する前に控訴人からその供給を受けないこととなった場合には、控訴人に対し、本件契約に定める算定式により算出される金額を支払うことを約したものと解するのが相当である。

ウ 被控訴人は、本件取決めは本件契約を解約したときに当然かつ一方的に被控訴人に金銭の支払義務を発生させるものであり、解約に伴う損害賠償額の予定ないし違約金の定めというべきものであり、何ら損害も発生しない控訴人について契約解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められたものとして、消費者契約法9条1号により無効であると主張する。

 しかしながら、上記イに説示したところに照らせば、本件取決めは、控訴人が負担した本件消費設備等の設置費用について、控訴人が本件契約に基づくLPガスの継続な供給(期間10年)によって得る利益をもってその回収に充てることとし、本件契約が所定の供給期間の経過前に解約された場合には、その未回収相当分を、本来設置費用を負担すべき被控訴人において支払うことを定めたものと解され、また、本件取決めにより被控訴人が支払うこととなる本件消費設備等の設置費用は、本件契約所定の算定式によって算出される金額(前提事実(2)④、本件契約第8条1項)における基準となる費用の額が21万円(税込)(前提事実(2)③、本件契約第7条2項)であり、内訳は認定事実カのとおりであることに照らすと、合理的なものであり、不相当に高額とはいえない。

また、被控訴人は、本件取決めにより本件契約を継続すべき義務を負うものではなく、本来負担すべき本件消費設備等の設置費用の一切を負担して10年以内に本件契約を終了させるかどうかは、被控訴人の自由な選択に委ねられているから、本件取決めが損害賠償額の予定又は違約金の定めを合意したものと解することはできず、被控訴人の上記主張は採用することができない。

4 本件取決めは錯誤(ただし、平成29年法律第44号による改正前民法95条によるもの)により無効となるものか。
 被控訴人は、本件取決めが本件消費設備等の設置費用を被控訴人が負担するとの合意であったとしても、被控訴人は控訴人が本件消費設備等を所有しているとは思わず、その費用が本物件の売買代金に含まれ、また、付合により被控訴人が所有権を取得したと認識しており、被控訴人がその費用を負担する義務を負っていないのに、これがあるものと誤信して合意したから、本件取決めは錯誤により無効であると主張する。

 しかしながら、本物件の売買代金に含まれていない本件消費設備等の設置費用の負担をどのようにするかは、本件売買に伴う重要事項の説明(認定事実ウ)及び売主であるAの説明(認定事実エ)からも、控訴人と被控訴人との間で自由に定めることができる事項であり、本件消費設備等が付合しているとしても、このことによって当然に本物件の所有者である被控訴人が控訴人に対して本件消費設備等の設置費用を負担しないこととなるものではない(民法248条、242条参照)。被控訴人の上記主張は、その前提を欠くものであり、理由がない。

 そして、本件取決めについての上記3(2)イに説示したとおり、被控訴人は、一定の場合、本件消費設備等の費用を支払うことを認識して、控訴人との間で、本件取決めを内容とする本件契約を締結したのであるから、本件取決めに係る意思表示について、被控訴人に何らかの錯誤があったものとは認められない。
 よって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

5 以上から、控訴人は、被控訴人に対し、本件取決めに基づき、本件契約8条1項に定める算定式により算出される17万3775円(【計算式】210,000-{210,000×0.9×(23/120)})及びこれに対する本件契約によるLPガス供給終了日の翌日である令和3年6月16日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。

第4 結論
 以上の次第で、控訴人の請求は理由があり、これを棄却した原判決は相当ではなく、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、控訴人の請求を認容することとして、主文のとおり判決する
 東京高等裁判所第19民事部
 (裁判長裁判官 脇博人 裁判官 山城司 裁判官 天川博義)
以上:6,096文字
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給契約解除…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-21(水):LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を棄却した地裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給契約解除…」←リンクはこちらでお願いします
○LPガス供給事業者の原告が被告に対し、被告が約定の供給期間の経過前に原告との間のLPガス供給契約を終了し、同供給契約においては、原告が設置したLPガスの供給設備の費用相当額を被告が負担する旨の合意があったとして、同費用相当額を基礎に所定の方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めに基づく算出金額17万3775円を請求しました。

○これに対し、被告は、建売業者Aから本物件を購入する際、本件消費設備等の費用に関する説明を受けておらず、本件消費設備等である本物件のガス配管の費用は本物件の購入代金に含まれているという認識で、本件消費設備等は、本物件に付合しており、被告は本件消費設備等を、本物件の一部としてその所有権を取得したので本件消費設備等の取得につき、被告が原告にその費用を支払う義務はなく、本件取決めは損害賠償ないし違約金の予定の定めである本件取決めは、原告とのLPガス供給契約を解約したときに、当然かつ一方的に被告に金銭の支払義務を発生させるものであり、解約に伴う損害賠償の予定あるいは違約金の定めというべきものであり、契約解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められたものとして消費者契約法9条1号により無効となると主張しました。

消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 (略)
2 事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(第12条の4において「算定根拠」という。)の概要を説明するよう努めなければならない。


○判決は、本件取決めは、原告の主張するような本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意ではなく、本件消費設備等の費用を算定の基礎として算出した中途解約に対する違約金を定める合意というべきものであり、その余の点については検討するまでもなく、本件消費設備等の費用を被告が負担する旨の合意に基づく原告の被告に対する本件請求には理由がないとして請求を棄却しました。

○この棄却理由があいまいであったこともあり、原告が控訴し、控訴審は、原告の請求を認めており、別コンテンツで紹介します。

*********************************************

主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、17万3775円及びこれに対する令和3年6月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、LPガスの供給事業者である原告が、被告が約定の供給期間の経過前である令和3年6月15日に原告との間のLPガス供給契約を終了したところ、同供給契約においては、原告が設置したLPガスの供給設備の費用相当額を被告が負担する旨の合意があり、同供給契約が終了した場合には、同費用相当額を基礎に所定の方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めがあるとして、これに基づき同算出に係る金額である17万3775円とこれに対する弁済期(上記LPガス供給契約の終了日)の翌日である令和3年6月16日以降の民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 原告は、原告と被告の間の上記取決めは、被告がLPガスの供給設備の費用相当額を負担する合意であり、本件請求は、この費用相当額の負担合意に基づくものである、上記取決めは中途解約による損害賠償の予定や違約金の定めではなく、本件請求は、これに基づく損害賠償ないし違約金の支払を求めるものではない旨本件の請求を釈明している。
 したがって、本件の中心的争点は、上記取決めが、損害賠償の予定や違約金の定めではない、LPガスの供給設備の費用相当額を被告が負担する合意だったかどうかである。

1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない)

     (中略)

2 争点及び当事者の主張
(1) 原告・被告間に本件契約書記載のとおりのLPガス供給契約が締結されたか。
 (原告の主張)
 原告と被告は、本件契約書を作成して、その記載のとおりのLPガス供給契約を締結した。

 (被告の主張)
 被告は本件契約書に署名・押印をしたが、これが契約であるとの認識はなかった。

(2) 本件契約書記載の本件消費設備等費用相当額の請求に関する取決め(前提事実(2)②及び③。以下「本件取決め」という。)は、本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意といえるか(損害賠償の予定等の性質を有するものではないか)。

 (原告の主張)
ア 本件契約書では本件消費設備等の所有者は原告と記載されているが、本件消費設備等は本物件に付合しており、その所有者は被告である。したがって、本件契約書の記載は矛盾しており、その文言どおりに本件取決めを解釈することはできない。
 被告は、令和元年頃、株式会社A(以下「A」という。)から、本物件を購入するに際し、本物件の購入代金に本件消費設備等の費用は含まれておらず、同費用を被告が負担する可能性がある旨の説明を受けていた。

 これらに加え、本来、被告が負担すべき本件消費設備等の費用を原告が支払ったものであることを踏まえると、本件取決めは、当該費用を被告が原告に支払うことを合意したものであり、原告から被告に対するLPガス供給が10年経過前に終了したことを停止条件として支払期限が到来するものと解するのが相当である。

イ 本件取決めは損害賠償や違約金の予定の定めではない。
 本件取決めは、原告から被告に対するLPガス供給契約の解除を要件としておらず、被告がLPガスの供給事業者を原告から他社に変更することは原告に対する債務不履行ではないから、損害賠償や違約金に関する定めには当たらない。

 (被告の主張)
ア 被告は、令和元年頃、Aから本物件を購入したが、その際に、本件消費設備等の費用に関する説明を受けたことはなかった。被告としては、本件消費設備等である本物件のガス配管が原告の所有物とは思わず、その費用は本物件の購入代金に含まれているという認識であった。
 本件消費設備等は原告も認めているように、本物件に付合しており、被告は本件消費設備等を、本物件の一部としてその所有権を取得したのであり、原告から取得したのではない。したがって、本件消費設備等の取得につき、被告が原告にその費用を支払う義務はない。

 原告は、建売住宅である本物件の建築に際し、Aから本件消費設備等の設置工事を請け負い、同工事を行ったのであるが、原告はこの工事費用の支払を注文者であるAに求めていない。すなわち、原告は本件消費設備等の設置工事を無償で請け負ったのであり、その費用を同契約外の被告が負担しなければならないものではない。

イ 本件取決めは損害賠償ないし違約金の予定の定めである(本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意であるとの原告の主張する合意に対する積極否認)。
 本件取決めは、原告とのLPガス供給契約を解約したときに、当然かつ一方的に被告に金銭の支払義務を発生させるものであり、解約に伴う損害賠償の予定あるいは違約金の定めというべきものである。なお、その場合には、上記解約により原告には何らの損失・損害も発生しないから、本件取決めは、契約解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められたものとして消費者契約法9条1号により無効となるものである。

(3) 本件取決めは錯誤(ただし、平成29年法律第44号による改正前民法95条によるもの)により無効となるものか。
 (被告の主張)
 仮に、本件取決めが本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意であったとしても、上記(2)(被告の主張)記載のとおり、被告は本件消費設備等に係る費用を負担する義務を負っていないのに、これがあるものと誤信して本件取決めを行ったのであるから、本件取決めは錯誤により無効である。

 (原告の主張)
 否認する。

第3 当裁判所の判断
1 原告・被告間に本件契約書記載のとおりのLPガス供給契約が締結されたかについて

 原告と被告は、令和元年7月10日付けで、本件契約書に署名(記名)・押印しており、その後、被告は、その記載どおりに同日より、原告から本物件に係るLPガスの供給を受けていること(前提事実)からすれば、原告と被告の間には、本件契約書の記載どおりのLPガス供給契約が締結されたものと認められる。

2 本件取決めは、本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意といえるか(損害賠償の予定等の性質を有するものではないか)について
(1) 掲記の証拠等によれば次の事実が認定できる。
ア 原告は、令和元年頃までに、Aの承諾の下、本物件にLPガスの供給設備及び消費設備を設置したが、その設置費用についてはAに請求しなかった(甲1、弁論の全趣旨)。

イ 被告は、令和元年6月10日、Aから本物件を、売買代金2770万円(ただし、土地代金が1513万円、建物代金が1257万円。税込)で買った(乙1)。
 被告は、この売買に当たり、宅地建物取引士から、重要事項として、本物件にはガス設備が設けられており、その整備時期は令和元年5月頃であること、ガス配管設備(供給設備及び消費設備)の所有権はプロパンガス供給業者にあること、被告がプロパンガス供給業者を変更する場合には、償却残存期間に応じて費用が発生する場合があることといった説明を受けた(乙2、弁論の全趣旨)。

ウ 原告は、被告がLPガスの供給者を原告から日本瓦斯株式会社に変更したことに伴い、令和3年6月16日付けで、被告に対し、ガス供給解約に伴う残存簿価費用との件名で、17万3775円の支払を請求した(前提事実、甲4)。

(2) 検討
ア 本件取決めは、原告の本物件に対するLPガスの供給期間を10年以上と定めた上で、当該ガスの供給を受ける立場にある被告に、本件消費設備等の費用負担義務があるとしつつ、原告は、同供給期間中は、被告に対する同費用の支払請求をしないとする一方で、被告が上記供給期間経過前に原告からのLPガス供給を終了させる場合には、上記費用のうち所定の算定式で一定額を控除した額(以下「本件請求額」という。)を請求するというものである(前提事実、認定事実イ)。

イ しかし、前提事実、上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、本件消費設備等は、被告が本物件を取得する前に、Aの承諾の下、原告が本物件に設置し、これにより本物件に付合したものであるところ、原告は、その際に、その設置費用をAに請求することなく、原告が負担することとしたものといえる。結局、Aと原告の間では、原告が無償で本件消費設備等を本物件に設置したものであり、これによれば、当該設置費用は原告の判断により、これを原告が負担することとしたものといえる。また、被告は本件消費設備等が付合した本物件を、Aから売買により取得したのであるから、被告が本件消費設備等を取得したことに法律上の原因がないともいえない。

 そうすると、本件消費設備等の設置費用は、本物件をAから購入した者(被告)が当然に負担すべき性質のものではなく、また、その費用を原告が負担したのは原告自身の判断によるものなのであるから、本件取決めが、その文言に即して、単に本件消費設備等の費用を被告が負担するという合意であり、それに尽きるとするのは不合理である。

ウ 本件取決めの内容は、被告に本件消費設備等の費用負担義務があるとするものの、被告によるLPガス供給契約の中途解約(10年以内の解約)があった場合に限り、その具体的な支払義務が発生するというものになっており、その支払が実際に問題となる場面は、被告による中途解約の場合に限られている。

 また、原告は、本件消費設備等をAとの関係では無償で設置し、本物件をAから購入した被告との関係では、原告が被告とLPガスの供給契約を締結し、かつ、その期間を10年以上と定めるとともに、本件取決めを設けている。

 これらによれば、原告としては、被告との間でLPガスの供給を相当期間にわたり行うことで、本件消費設備等の設置に係る投下資本を回収しようとしたものと考えられ、中途解約の場合には、LPガスの供給に対する対価の支払を受けられなくなることから、本件消費設備等の費用に基づき算出された本件請求額の支払を被告に求めることとしたものといえる。

 すなわち、原告は、本件取決めをもって、本件消費設備等の費用そのものの支払を被告から受けようとしていたというよりも、中途解約の場合に同費用から算出された本件請求額の支払義務が被告に発生するとの仕組みを用いることで上記のLPガスの供給による対価の支払いを維持しようとしたものというべきであり、この場合に被告が負担する本件請求額の支払義務は、まさに中途解約に対する違約金というべきものであって、本件消費設備等の費用は、かかる違約金の算定方法として用いられたにすぎないものと見るのが合理的である。

 なお、原告は、被告が原告とのLPガス供給契約を中途解約することは債務不履行にならないとして、本件取決めは、損害賠償や違約金の定めではないと主張するが、上記のように本件取決めは、LPガスの供給契約を維持するための仕組みといえ、中途解約の場合には被告に一定の金銭負担を生じさせるものである。したがって、本件取決めは、10年間という期間設定のあるLPガスの供給契約を、上記金銭負担を背景に当該期間は維持させることを被告に約させるものといえるのであり、上記のとおり違約金として認定できるものである。

エ 以上のとおり、本件取決めは、原告の主張するような本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意ではなく、本件消費設備等の費用を算定の基礎として算出した中途解約に対する違約金を定める合意というべきものである。

 したがって、その余の点については検討するまでもなく、本件消費設備等の費用を被告が負担する旨の合意に基づく原告の被告に対する本件請求には理由がない(本件では、原告は中途解約に対する違約金の支払請求をしない旨の整理がされていることは事案の概要欄記載のとおりである。)。


3 結論
 よって、原告の請求には理由がないから棄却することとして主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第31部  (裁判官 増子由一)
以上:6,106文字
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給契約解除…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-20(火):LPガス供給のための戸建住宅設置配管設備の住宅付合を認めた最高裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給のための…」←リンクはこちらでお願いします
○ 液化石油ガス(LPガス)供給のために戸建て住宅に設置された消費設備に係る配管等につき当該住宅に付合しており民法242条ただし書の適用もないとした令和7年12月23日最高裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。関連条文は以下の通りです。
民法第242条(不動産の付合)
 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。


○事案概要は以下の通りです。
・上告人XはLPガス供給業者で、A株式会社販売戸建て住宅にLPガス配管設備を設置
・h29.7被上告人YはAから戸建て住宅を購入し、h29.8に引渡受ける
・h29.9Y・X間にLPガス供給契約締結、その際、LPガス供給設備はX所有を確認し、配管設備売買予約契約締結、Yが供給契約解除の場合、予約完結権行使の特約
・r2.9Yは供給契約解除、Xは予約完結権を行使し、配管設備代金支払をYに求め、予備的に売買無効の場合、配管設備の引渡を求めた
・Yは、配管設備は民法第242条による建物に付合し、元々所有権はYにあるとして、Xの請求棄却を求める
・原審はYの主張を認めXの請求棄却し、Xが上告


○最高裁判決は、本件配管について、本件建物に付合し、民法242条ただし書の適用もなく、本件契約が締結される以前から被上告人Yがその所有権を有していたので、上告人から被上告人Yへの本件配管の売買予約について定めた本件契約書をその文言どおりに理解することは相当ではなく、本件契約を売買予約契約と解することはできないとしてXの上告を棄却しました。

*******************************************

主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告受理申立て理由について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1)上告人は、液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給等を業とする株式会社である。

(2)上告人は、A株式会社が販売する戸建て住宅(以下「本件建物」という。)にLPガスの消費設備に係る配管及びガス栓等(以下、併せて「本件配管」という。)を設置した。

(3)本件建物へのLPガスの供給は、本件建物の外部に設置されている貯蔵設備からガスメーターまでの供給設備及び本件配管によって行われている。本件配管は、ガスメーターに接続され、本件建物の外壁を貫通して本件建物の内部に引き込まれていて外壁に固定されており、1階の床下において、システムキッチンのガスコンロに向かうものと本件建物の外部に設置されている給湯器に向かうものとに分岐している。前者は、本件建物の1階の床下断熱材及び床材を貫通し、システムキッチンの収納ボックスに開けられた穴から引き込まれてガスコンロに接続されており、後者は、本件建物の外壁を貫通して外部へと引き出され、コーキング材で外壁に固定された上で給湯器に接続されている。本件配管を本件建物から撤去するためには上記の断熱材や収納ボックス等を取り壊す必要がある。

(4)被上告人Yは、平成29年7月、Aから本件建物を購入し、同年8月にその引渡しを受けた。

(5)被上告人Yは、平成29年9月、上告人との間で、本件建物に係るLPガスの供給契約(以下「本件供給契約」という。)を締結するとともに、「液化石油ガス供給・消費設備の売買予約と貸与契約書」と題する契約書(以下「本件契約書」という。)を用いて、次のような内容の契約(以下「本件契約」という。)を締結し、本件建物へのLPガスの供給を受けるようになった。
ア 被上告人Yと上告人は、本件配管の所有権が上告人にあることを確認した上、本件配管について売買予約契約を締結する。
イ 上告人は、被上告人Yが本件供給契約を解除したときは、上記売買予約契約の予約完結権(以下「本件予約完結権」という。)を行使することができる。

ウ 本件予約完結権は、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律14条1項所定の書面が被上告人Yに交付された日の翌日から15年間存続する。
エ 本件予約完結権の行使により成立する売買契約(以下「本件売買契約」という。)における本件配管の代金額は、以下の算定式により得られる本件配管の残存価値相当額とする(以下、この合意を「本件条項」という。)。
(算定式)
21万円-(21万円×0.9×0.066×上記書面の交付日の翌日から本件予約完結権の行使により本件売買契約が成立した日までの経過月数÷12)

(6)被上告人Yは、令和2年9月、上告人に対し、本件供給契約を解除する旨の意思表示をした。上告人は、その後、被上告人Yに対し、本件予約完結権を行使する旨の意思表示をした。

2 本件は、上告人が、
〔1〕主位的請求として、被上告人Yは、上告人に対して本件売買契約に基づく売買代金債務を負っており、被上告人日本瓦斯株式会社は、被上告人Yの上告人に対する上記債務を併存的に引受けたなどと主張し、被上告人らに対し、売買代金等の支払を求めるとともに、
〔2〕予備的請求として、消費者契約法9条1号(令和4年法律第59号による改正前のもの。以下同じ。)により本件条項が無効となる場合には、本件売買契約は成立しないなどと主張し、被上告人Yに対し、本件配管の所有権に基づく本件配管の引渡し等
を求める事案である。

 被上告人らは、本件配管は、本件建物に付合したものであって、民法242条ただし書の適用はなく、被上告人Yがその所有権を有していたものであるから、本件契約の法的性質を売買予約契約と解することはできず、本件売買契約は成立しない上、本件条項は、消費者契約法9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(以下「違約金等条項」という。)に当たり、同号により無効になるなどと主張してこれを争っている。

3 所論は、本件契約を売買予約契約と解して本件売買契約の成立を肯定しながら、本件配管の代金額を定めた本件条項が、違約金等条項に当たり、その全部が無効となるとした原審の判断について、法令の解釈適用を誤った違法があるというものである。

4 本件契約が売買予約契約であるとすると、所論のとおり、本件条項は、本件配管の所有権を上告人から被上告人Yに移転することの対価である代金額について定めたもので、違約金等条項に当たらないと解する余地がある。
 しかしながら、原審は、本件配管は本件建物に付合したものではないとして、本件契約を売買予約契約であると解したものであるが、本件配管について、本件建物に付合したものであり、民法242条ただし書の適用もないのであれば、本件契約が締結される以前から被上告人Yがその所有権を有していたこととなる。このような場合、上告人から被上告人Yへの本件配管の売買予約について定めた本件契約書をその文言どおりに理解することは相当ではなく、本件契約を売買予約契約と解することはできないというべきである。

 前記事実関係からすると、本件配管を撤去するためには本件建物及びその住宅設備を相当程度毀損する必要があり、その撤去や本件建物等の復旧には相応の手間や費用を要することが見込まれる。また、本件配管は、本件建物の構造に合わせて設置されているもので、本件建物と一体となって利用されることではじめてその経済的効用を発揮するものである上、撤去後の本件配管の経済的価値が乏しいものであるとうかがわれることからすると、相応の費用等をかけて本件配管を撤去する意義は見いだし難い。これに加え、戸建て住宅に設置されている状態のLPガスの消費設備に係る配管が、当該住宅と別個独立に公の市場において取引されるものであるとはうかがわれないことも考え併せると、本件配管について、本件建物とは別個に所有権の客体となるものと解すべき必然性は乏しいといわざるを得ない。

 以上の事情に照らせば、本件配管については、本件建物に付合したものと解される。また、民法242条ただし書は、不動産に付合した物が、なお当該不動産とは別個の存在を有する場合にのみ適用されるものであるが(最高裁昭和38年(オ)第489号同39年9月8日第三小法廷判決・集民75号181頁参照),上記事情からすると、本件配管が本件建物と別個の存在を有するとはいえない。よって、本件配管について、民法242条ただし書の適用はないというべきである。

 以上からすると、被上告人Yは、本件契約締結以前から本件配管の所有権を有していたのであり、本件契約を本件契約書の文言どおりに売買予約契約と解することはできない。したがって、本件契約が売買予約契約であって本件売買契約が成立すること又は上告人が本件配管の所有権を有していることを前提とする上告人の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないこととなる。 

5 以上によれば、上告人の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 林道晴 裁判官 渡辺惠理子 裁判官 石兼公博 裁判官 平木正洋 裁判官 沖野眞已)

以上:3,810文字
ホーム > 法律その他 > 民法 > 「LPガス供給のための…」←リンクはこちらでお願いします
R 8- 1-19(月):映画”ラウンド・ミッドナイト”を観て-徐々に心地よく聴けました
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ラウンド・ミッ…」←リンクはこちらでお願いします
○令和8年1月18日(日)は、午後、AmazonのPrimeVideoで、1986(昭和61)年製作映画「ラウンド・ミッドナイト」を鑑賞しました。RU(異業種交流会ライジングアップ)の今年の企画も半分は映画鑑賞で、ジャズメンの友人が是非鑑賞したいとのことで、4KUHDとBDを探したのですが見つからず、AmazonPrimeVideoでBD版を1500円で購入していました。いつのまにかPrimeVideo会員になっており、初めて有償版を購入しました。映画「ラウンド・ミッドナイト」のDVDは販売されているのは3600円もするので、PrimeVideoの方が安く購入できました。

○映画コムでは「1940年代、50年代の代表的ジャズプレイヤーと、彼を神のように尊敬する若者の交流を描く。」と解説されています。この若者を演じた役者さんがどこかで観た顔であり、ダスティ・ホフマンによく似ており、ひょっとして本人かと思ったらフランソワ・クリュゼと言うフランス人で、フランスで名実ともにトップクラスの俳優とのことでした。

○アメリカのテナー・サックス奏者デイル・ターナー(デクスター・ゴードン)がパリ市内のクラブブルーノートに出演し、その演奏をクラブの中に入って聴くお金がなくて雨に打たれながらクラブの外にもれる音を聴いていた若者貧しいグラフィック・デザイナーのフランシス・ボリエ(フランンワ・クリューゼ)が、デイルと意気投合して、別れた妻から借金までして、アル中で挙動不安定なデイルを引っ越したアパートに同居させて面倒を見ると言う、私からは、あり得ないストーリーでした。しかし、映画レビューを見ると実話との説もありました。

○全編テナー・サックス奏者デイルのサックス音楽が流れますが、デイルを演じたデクスター・ゴードン氏は、アメリカの超一流テナーサックス奏者とのことで、映画での演奏も彼の実演のようです。専らパコ・デ・ルシア氏のフラメンコギター演奏しか聴かない私にはジャズの良さがよく判りません。しかし、当初退屈に感じた演奏が、時間の経過で心地よく聴けるようになってきたのは不思議でした。ストーリーは、私にとっては何か不自然と感じて感情移入ができませんでしたが、ジャズマンにとってはたまらない映画と思われます。

【和訳MV】ROUND MIDNIGHT (lyrics) Ella fitzgerald/映画 ラウンド・ミッドナイト


Round Midnight - Theatrical Trailer


以上:1,040文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ラウンド・ミッ…」←リンクはこちらでお願いします