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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
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R 8- 1-24(土):映画”バトルランナー”を観て-残念ながらつまらないの一言
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○令和8年1月23日(金)は、ツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でしたが、練習後夕食を取りながら恒例の映画館紹介は、最近息子が購入した4KUHDソフトで1987(昭和62)年製作映画「バトルランナー」を鑑賞しました。シュワルツェネッガー氏主演映画で、封切り当時映画館で鑑賞していたような記憶がありますが、内容は忘却の彼方でした。映画を観ているうちにところどころどこかで観たことがあるようなシーンが登場しました。

○1947年生まれのシュワルツェネッガー氏40歳の時の作品で、同氏はその当時映画「ターミネーター」、映画「プレデター」等大ヒットした有名作品で大スターになっており、私も大ファンになっていました。そこで映画館で鑑賞したと思われますが、内容は忘却の彼方だったのは、内容がつまらなくて記憶に残らなかったためと思われます。今回ほぼ40年ぶりの鑑賞で、ところどころ思い出しましたが、今回も感想はつまらないの一言でした。

○映画コムでは「21世紀を舞台にTV中継の殺人ゲームの標的になる男たちの反乱を描いたアクション映画。」と解説されていますが、シュワルツェネッガー氏のアクション映画としては、迫力に乏しくてハラハラ・ドキドキ感が殆ど感じられません。敵役として登場する人物もみな中途半端で、シュワルツェネッガー氏演ずる主人公に簡単に滅ぼされてゆきます。ストーリー展開が余りに安易すぎて、殆ど感情移入できないまま終わってしまいました。よくぞ、この映画が4KUHDソフト化されたものです。

『バトルランナー』日本版劇場予告編


以上:656文字
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R 8- 1-23(金):LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を棄却した最高裁判決紹介
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○「LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を認容した高裁判決紹介」の続きで、その上告審令和7年12月23日最高裁判決(裁判所ウェブサイト)全文を紹介します。

○LPガス供給事業者が、約定供給期間10年間の経過前に契約解除したLPガス供給契約相手方に対し、違約金約17万円の請求をして、一審地裁判決はこれを棄却したところ、原審高裁判決は違約金支払合意が存在し、それが消費者契約法にも違反せず、また、錯誤も認められないとして、LPガス供給事業者の請求を認め、これを不服とした相手方が上告しました。


○最高裁判決は、消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の設置費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に該当し、消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の設置費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号により無効となるとして、原審高裁判決を取り消し、LPガス供給事業者の請求を棄却しました。

○LPガス供給事業者は、LPガス供給契約相手方に対し約定供給期間経過前に契約解除した場合、違約金或いは売買代金名下に配管設備代金の一定金額返還を求めて、契約解除しないように縛りをかけるのが一般です。しかし、「LPガス供給のための戸建住宅設置配管設備の住宅付合を認めた最高裁判決紹介」で紹介した同じ日の最高裁判決も含めてこのような縛りは認められないことが確定しました。

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主   文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 
 
理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由(ただし、排除されたものを除く。)について
1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1)被上告人は、液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給等を業とする株式会社である。
(2)被上告人は、令和元年頃、株式会社Aが販売する戸建て住宅(以下「本件住宅」という。)にLPガスの消費設備に係る配管及びガス栓(以下、併せて「本件消費設備」という。)を設置したが、本件消費設備の部品代金や設置費用、給湯器やそのリモコンの設置費用等(以下、本件消費設備と給湯器等を併せて「本件消費設備等」といい、本件消費設備等の設置費用等を「本件設置費用」という。)をAに請求しなかった。

(3)上告人は、令和元年6月、Aから本件住宅を購入した。その際、Aは、上告人に対し、Aが指定するLPガス販売事業者である被上告人からLPガスの供給を受ける必要があるなどと説明した。
(4)上告人は、令和元年7月、被上告人との間でLPガスの供給等に関する契約(以下「本件供給契約」という。)を締結し、本件住宅へのLPガスの供給を受けるようになった。

(5)本件供給契約に係る契約書には、次のような条項がある。
ア 被上告人が本件住宅にLPガスを供給する期間は、供給開始日から10年以上とする。
イ 被上告人が負担した本件設置費用は21万円(消費税込み)であり、上告人が被上告人から本件住宅へのLPガスの供給を受けている間、被上告人はこれを請求しない。
ウ 上告人は、供給開始日から10年経過前に本件住宅へのLPガスの供給を終了させる場合、本件設置費用に関し、被上告人に対し、次の算定式で得られた金額(以下、当該算定式で得られる金額を「本件算定額」という。)を、供給終了後、直ちに支払う(以下、この条項を「本件条項」という。)。
 (算定式)
 21万円-{21万円×0.9×(供給開始日から供給終了日までの経過月数/120)}

(6)本件消費設備は、本件住宅に付合しており、本件供給契約が締結される前から上告人がこれを所有している。

(7)上告人は、令和3年6月、被上告人に代わって日本瓦斯株式会社から本件住宅へのLPガスの供給を受けることとし、被上告人からの供給は終了した。

2 本件は、被上告人が、本件条項は、本件設置費用に関し、上告人に本件算定額の支払義務があることを定めた合意である旨主張し、上告人に対し、本件算定額である17万3775円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
 上告人は、本件条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの。以下同じ。)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(以下「違約金等条項」という。)に当たり、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴って被上告人に生ずべき平均的な損害は存せず、その全部が無効になるなどと主張して争っている。

3 原審は、前記事実関係等の下、本件条項は、10年間にわたって上告人から被上告人に対して支払われるガス料金の中から回収することが予定されていた本件設置費用について、その未回収分を上告人において支払う旨の合意であって、違約金等条項に当たらないと判断し、被上告人の請求を認容した。

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
(1)被上告人は、本件住宅に本件消費設備等を設置しながら、Aに対して本件設置費用を請求しておらず、上告人は、本件住宅の購入に当たってAより被上告人からLPガスの供給を受ける必要がある旨説明を受けていた。このことからすると、被上告人は、Aの協力の下に、本件住宅を購入した者との間で優先的にLPガスの供給契約の締結について交渉することができる事実上の地位を確保するため、自らの判断で本件設置費用をAに請求しなかったということができる。

また、被上告人は、上告人と本件供給契約を締結するに当たり、上告人が被上告人からLPガスの供給を受けている間は上告人に本件設置費用を請求しないこととするとともに、本件条項により、上告人が供給開始日から10年経過前に本件供給契約を終了させる場合は、経過期間に応じて本件設置費用に関して支払われるべき本件算定額を逓減させることとしていたが、これらは、本件供給契約を締結するように上告人を誘引し、併せて本件供給契約が短期間で解約されることを防止し、本件供給契約を長期間維持するためのものであったといえる。このような本件供給契約の締結に至るまでの経緯及び本件供給契約の内容からすると、本件設置費用は、本件供給契約を獲得し、これを長期間維持するために先行投資された費用ということができる。

 また、本件条項は、一見すると、本件消費設備等の設置の対価として本件算定額の支払義務を定め、上告人が10年間にわたって被上告人に支払うガス料金から本件設置費用を回収することを予定するものであったようにもみえる。しかしながら、本件供給契約上、本件算定額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上告人が被上告人に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、本件設置費用とガス料金との関係は明確にされておらず、本件設置費用がガス料金から回収されることになっていたのかも明らかではない。

このような本件供給契約の内容に加え、被上告人が、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約を多数締結しているLPガス販売事業者であることからすると、被上告人においては、既に消費設備の設置費用の回収が終わっている契約者に対し、従前と同様のガス料金を設定するなどし、他の契約者の消費設備の設置費用を負担させることができるような料金体系となっていて、実際には、上告人のみならず、契約者全体から得られるガス料金から本件設置費用を回収する仕組みとなっていたことがうかがわれる。これらのことからすると、本件算定額が本件消費設備等の設置の対価といえるものかどうかは明らかではないといわざるを得ない。

 以上からすると、本件条項は、本件消費設備等の設置の対価を定めたものではなく、本件供給契約が供給開始日から10年経過前に解約されるなどして被上告人がその後のガス料金を得られなくなった場合に本件算定額の支払義務を負わせることで、短期間の解約が生ずることを防止し、本件供給契約を長期間維持することを図るとともに、併せて先行投資された本件設置費用に関して被上告人が被る可能性のある損失を補てんすることも目的の一つとするものというべきであり、実質的にみると、解除に伴う損害賠償の額の予定又は違約金の定めとして機能するものということができる。したがって、本件条項は、違約金等条項に当たるというべきである。

 以上と異なる見解の下に、本件条項が違約金等条項に当たらないとした原審の上記判断には法令の解釈適用を誤った違法がある。


(2)本件条項が違約金等条項に当たることからすると、本件算定額の全部又は一部が、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害、すなわち、一人の消費者と被上告人との間で、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約が解除されることによって被上告人に一般的、客観的に生ずると認められる損害の額を超えるものである場合、本件条項は当該超える部分について消費者契約法9条1号により無効となる。そして、この点について、本件条項の目的の一つが、先行投資された本件設置費用に関して被上告人が被る可能性のある損失を補てんすることにあることからすると、LPガスの供給契約が解除されてそれ以降のガス料金を得られなくなると、被上告人において先行投資費用として負担した消費設備に係る設置費用の未回収分の損害が生じたようにみえなくもない。

 しかしながら、上記のとおり、供給開始日から10年が経過しても上告人が被上告人に支払うべきガス料金が減額されることになっておらず、本件設置費用とガス料金との関係が不明確なものとされていたという本件供給契約の内容等からすると、被上告人において、ある契約者に係る消費設備の設置費用は、契約者全体から得られるガス料金から回収する仕組みとなっていたものというべきである。

このことに加え、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約においてLPガスの価格に法令上の規制がなく、LPガス販売事業者は自由にガス料金を設定することができることも併せて考慮すると、被上告人としては、解除時点では消費設備に係る設置費用の全部を回収できていない契約者が一定数生ずるという事態が起きることを見越し、利益が確保できるように契約者全体のガス料金を適宜設定し、設置費用が未回収となったことの負担を他の契約者に転嫁することが可能になっていたといわざるを得ない。そうすると、上記事態が起きたとしても、被上告人に上記未回収分の損害が生じたとはいえないというべきである。

 そして、他に、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害に当たり得るものは見当たらない。
 以上からすると、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害は存しないというべきである。
 したがって、本件条項は、その全部について消費者契約法9条1号により無効となるというべきである。


5 以上によれば、原審の上記違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は是認することができるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官林道晴の補足意見がある。
 裁判官林道晴の補足意見は、次のとおりである。
(省略)
以上:4,919文字
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R 8- 1-22(木):LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を認容した高裁判決紹介
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○「LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和5年10月26日東京高裁判決(Westlaw Japan)関連部分を紹介します。

○LPガス供給事業者の控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が約定供給期間経過前の令和3年6月15日にLPガス供給契約を終了したので同契約での控訴人設置LPガスの供給設備の設置費用を被控訴人が負担する旨の合意の存在を理由に、所定の算定方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めがあるとして、算出された金額17万3775円と所定の遅延損害金の支払を求めたところ、原審は、そのような合意はないとして、控訴人の請求を棄却しました。

○控訴人がこれを不服として控訴したところ東京高裁判決は、原判決を取り消し、被控訴人に17万3775円の支払を命じました。その理由概要は
・本件取決めは、本件消費設備等の設置費用について、被控訴人が、控訴人からのLPガスの供給期間である10年間を経過する前に控訴人からその供給を受けないこととなった場合には、控訴人に対し、本件契約に定める算定式により算出される金額を支払うことを約したもの
・本件消費設備等の設置費用は、本件契約所定の算定式によって算出される金額21万円(税込)は、合理的なものであり、不相当に高額とはいえず、消費者契約法に違反しない
・被控訴人は、一定の場合、本件消費設備等の費用を支払うことを認識して本件契約を締結したので本件取決めに係る意思表示について被控訴人に何らかの錯誤があったものとは認められない
というものです。

○この控訴審判決は、上告審最高裁判所で破棄されており、別コンテンツで紹介します。

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主    文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、17万3775円及びこれに対する令和3年6月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
4 この判決は、2項に限り、仮に執行することができる。
 
事実及び理由
第1 控訴の趣旨

 主文と同旨。

第2 事案の概要
1 本件は、LPガスの供給事業者である控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が約定の供給期間の経過前である令和3年6月15日に控訴人との間のLPガス供給契約を終了したところ、同契約においては、控訴人が設置したLPガスの供給設備の設置費用を被控訴人が負担する旨の合意があり、同契約を10年以内に終了させた場合には、同費用を基礎に所定の算定方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めがあるとして、これに基づき算出された金額である17万3775円及びこれに対する弁済期日(上記LPガス供給契約の終了日)の翌日である令和3年6月16日以降の民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2 原審が控訴人の請求を棄却したところ、控訴人が、これを不服として控訴した。

3 前提事実は、次のとおり補正するほかは、原判決「第2 事案の概要」の1(原判決2頁12行目から3頁13行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、原審とは異なり、控訴人の請求は理由があるものと判断する。
 その理由は、以下のとおりである。

2 控訴人・被控訴人間で本件契約書記載のとおりの本件契約が締結されたかについて
 原判決6頁1行目から5行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

3 本件取決めは、本件消費設備等の設置費用を被控訴人が負担し支払う旨の合意といえるか(損害賠償の予定等の性質を有するものではないか)について
(1) 認定事実
 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 控訴人は、令和元年5月31日までに、Aの承諾の下、代金24万7000円で、本物件にLPガスの供給設備及び消費設備を設置したが、その設置費用についてはAに請求しなかった(甲14)。

イ 被控訴人は、令和元年6月10日、Aから本物件を、売買代金2770万円(土地代金1513万円、建物代金1257万円)(全て税込)で購入した(乙1)。

ウ 被控訴人は、令和元年6月10日、上記イの本物件の売買契約にあたり、宅地建物取引業法35条、35条の2に基づき、Aの業務に従事する宅地建物取引士から、重要事項の説明を受けた。その説明の際に交付された重要事項説明書の「飲用水・電気・ガスの供給及び排水施設の整備の状況」欄には、本物件にはガス設備が設けられ、その整備時期は令和元年5月頃であること、ガス配管設備(供給設備及び消費設備)の所有権はプロパンガス供給業者にあること、被控訴人がプロパンガス供給業者を変更する場合には、償却残存期間に応じて費用が発生する場合があることなどの記載がされている。上記重要事項説明書には、被控訴人の署名押印がされている。(乙2)

エ また、被控訴人は、上記イの本物件の売買契約にあたり、LPガス供給について、Aから、次のとおり説明を受け、その内容を承認して、確認書に署名押印した(甲13)。
①供給設備及び消費設備(その定義は、前提事実(2)②(本判決第2の3(5))と同旨である。)については、建物代金に含まれていない。
②消費設備(屋内ガス配管)の所有権は被控訴人に帰属しているが、費用については指定供給会社が負担しているため、費用償却期間である契約後10年間は貸与とする。
③指定供給会社は控訴人である。
④本物件の供給設備及び消費設備は、被控訴人が10年以上の期間、LPガス受給を継続することを条件に、控訴人が設備費用を負担して設置しているので、控訴人よりLPガスを供給する。
⑤LPガス供給にあたっては、控訴人と「LPガスの供給及びLPガス設備に関する契約」(本件契約)を締結する。
⑥被控訴人と控訴人との間で本件契約を締結した日から10年を経過する前に、被控訴人がLPガス供給会社を変更する場合又は競合燃料(都市ガス・電力など)に変更する場合は、消費設備については、被控訴人が本件契約書記載の算定式により算出された「残存金額」で買い上げる。

オ 本件契約書には、「LPガス設備の管理区分」が記載されており、消費設備については、供給設備であるマイコンガスメータの出口から本物件内のガスコンロ及び給湯器に接続する器具が図示され、「供給設備は供給会社の管理責任 消費設備は消費者の管理責任」と記載されている(甲1)。

カ 本件契約書記載の本件消費設備等の設置費用21万円(税込)の内訳は、次のとおりである。
 基本工事費3万9000円、ガス栓ライン工事費2万5000円、フレキコック接続2320円、付帯工事費7820円、給湯器取付工事費2万円、追い焚き配管工事費4万円、リモコン取付工事費2万8000円、試運転費等2万円、諸経費1万8214円の計20万0354円から端数処理で5909円を差し引いた19万4445円に消費税1万5555円を加えた合計が21万円となる。

キ 被控訴人は、LPガスの供給者を控訴人からニチガスに変更することにし、令和3年6月2日、ニチガスに対し、LPガス供給の切替作業を委任した(甲2、3)。

ク 控訴人は、被控訴人がLPガスの供給者を控訴人からニチガスに変更したことに伴い、令和3年6月16日付けで、被控訴人に対し、ガス供給解約に伴う残存簿価費用との件名で、17万3775円の支払を請求した(甲4)。

ケ 本件契約に基づく控訴人から被控訴人に対するLPガスの供給期間は、令和元年7月10日から令和3年6月15日までの23か月であった(甲1、3)。

(2) 検討
ア 本件契約書には、本物件のLPガスの供給設備及び消費設備(本件消費設備等)の所有権が控訴人にあり(第7条1項)、本件消費設備等を利用する被控訴人が設置費用を負担するところ、控訴人からLPガスの供給を受けている間、控訴人は被控訴人に対し本件消費設備等の費用の請求をしないこととする(第7条3項)が、10年間の供給期間(第4条)の経過前に控訴人からのLPガス供給を終了させた場合には、被控訴人において、所定の算定式によって算出される本件消費設備等の費用を支払うこと(第8条1項)が記載されている(前提事実(2))。

 証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人により本物件に設置された本件消費設備等については、その一部が本物件(建物)に付合し、その所有権は本物件を購入した被控訴人に帰属し、控訴人には帰属していないものと認められるから、本件契約書の上記文言を字義どおりに解釈することは、本件契約の解釈として相当ではない

イ この点、控訴人は、控訴人と被控訴人との間で、本件契約において、被控訴人が本来負担すべき本件消費設備等の設置費用を支払う場合があること、控訴人から被控訴人に対するLPガス供給が供給期間10年の経過前に終了したことを停止条件として支払期限が到来することを内容とする本件取決めがされたと主張する。

 前提事実及び認定事実によれば、控訴人は、Aの承諾の下、本物件に本件消費設備等を設置し(認定事実ア)、本物件を購入した被控訴人は、本物件の売買契約にあたり重要事項として被控訴人がガス供給業者を変更する場合には償却残存期間に応じて費用が発生する場合があることなどを説明され(認定事実ウ)、本物件の売主であるAから、本件消費設備等の費用が代金に含まれておらず、LPガス供給会社である控訴人と本件契約を締結し、本件契約締結後10年経過前にLPガス供給会社を変更した場合には本件契約書記載の算定式により算出された金額で本件消費設備等を買い上げることを承認し(認定事実エ)、その後、控訴人との間で本件契約を締結し、控訴人からLPガスの供給を受けることになった(前提事実(2)及び(3)・補正の上引用する原判決2頁17行目から3頁13行目まで)ことが認められる。

 このように、被控訴人は、本件消費設備等の設置費用が本物件の売買代金には含まれておらず、被控訴人が10年経過前にLPガス供給会社を変更し控訴人からLPガスの供給を受けないこととなった場合には、被控訴人が本件消費設備等の設置費用を一定限度で負担することとなることを十分認識していたものと認められるから、本件取決めは、控訴人が負担した本件消費設備等の設置費用について、被控訴人が、控訴人からのLPガスの供給期間である10年間を経過する前に控訴人からその供給を受けないこととなった場合には、控訴人に対し、本件契約に定める算定式により算出される金額を支払うことを約したものと解するのが相当である。

ウ 被控訴人は、本件取決めは本件契約を解約したときに当然かつ一方的に被控訴人に金銭の支払義務を発生させるものであり、解約に伴う損害賠償額の予定ないし違約金の定めというべきものであり、何ら損害も発生しない控訴人について契約解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められたものとして、消費者契約法9条1号により無効であると主張する。

 しかしながら、上記イに説示したところに照らせば、本件取決めは、控訴人が負担した本件消費設備等の設置費用について、控訴人が本件契約に基づくLPガスの継続な供給(期間10年)によって得る利益をもってその回収に充てることとし、本件契約が所定の供給期間の経過前に解約された場合には、その未回収相当分を、本来設置費用を負担すべき被控訴人において支払うことを定めたものと解され、また、本件取決めにより被控訴人が支払うこととなる本件消費設備等の設置費用は、本件契約所定の算定式によって算出される金額(前提事実(2)④、本件契約第8条1項)における基準となる費用の額が21万円(税込)(前提事実(2)③、本件契約第7条2項)であり、内訳は認定事実カのとおりであることに照らすと、合理的なものであり、不相当に高額とはいえない。

また、被控訴人は、本件取決めにより本件契約を継続すべき義務を負うものではなく、本来負担すべき本件消費設備等の設置費用の一切を負担して10年以内に本件契約を終了させるかどうかは、被控訴人の自由な選択に委ねられているから、本件取決めが損害賠償額の予定又は違約金の定めを合意したものと解することはできず、被控訴人の上記主張は採用することができない。

4 本件取決めは錯誤(ただし、平成29年法律第44号による改正前民法95条によるもの)により無効となるものか。
 被控訴人は、本件取決めが本件消費設備等の設置費用を被控訴人が負担するとの合意であったとしても、被控訴人は控訴人が本件消費設備等を所有しているとは思わず、その費用が本物件の売買代金に含まれ、また、付合により被控訴人が所有権を取得したと認識しており、被控訴人がその費用を負担する義務を負っていないのに、これがあるものと誤信して合意したから、本件取決めは錯誤により無効であると主張する。

 しかしながら、本物件の売買代金に含まれていない本件消費設備等の設置費用の負担をどのようにするかは、本件売買に伴う重要事項の説明(認定事実ウ)及び売主であるAの説明(認定事実エ)からも、控訴人と被控訴人との間で自由に定めることができる事項であり、本件消費設備等が付合しているとしても、このことによって当然に本物件の所有者である被控訴人が控訴人に対して本件消費設備等の設置費用を負担しないこととなるものではない(民法248条、242条参照)。被控訴人の上記主張は、その前提を欠くものであり、理由がない。

 そして、本件取決めについての上記3(2)イに説示したとおり、被控訴人は、一定の場合、本件消費設備等の費用を支払うことを認識して、控訴人との間で、本件取決めを内容とする本件契約を締結したのであるから、本件取決めに係る意思表示について、被控訴人に何らかの錯誤があったものとは認められない。
 よって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

5 以上から、控訴人は、被控訴人に対し、本件取決めに基づき、本件契約8条1項に定める算定式により算出される17万3775円(【計算式】210,000-{210,000×0.9×(23/120)})及びこれに対する本件契約によるLPガス供給終了日の翌日である令和3年6月16日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。

第4 結論
 以上の次第で、控訴人の請求は理由があり、これを棄却した原判決は相当ではなく、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、控訴人の請求を認容することとして、主文のとおり判決する
 東京高等裁判所第19民事部
 (裁判長裁判官 脇博人 裁判官 山城司 裁判官 天川博義)
以上:6,096文字
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R 8- 1-21(水):LPガス供給契約解除に伴う違約金請求を棄却した地裁判決紹介
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○LPガス供給事業者の原告が被告に対し、被告が約定の供給期間の経過前に原告との間のLPガス供給契約を終了し、同供給契約においては、原告が設置したLPガスの供給設備の費用相当額を被告が負担する旨の合意があったとして、同費用相当額を基礎に所定の方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めに基づく算出金額17万3775円を請求しました。

○これに対し、被告は、建売業者Aから本物件を購入する際、本件消費設備等の費用に関する説明を受けておらず、本件消費設備等である本物件のガス配管の費用は本物件の購入代金に含まれているという認識で、本件消費設備等は、本物件に付合しており、被告は本件消費設備等を、本物件の一部としてその所有権を取得したので本件消費設備等の取得につき、被告が原告にその費用を支払う義務はなく、本件取決めは損害賠償ないし違約金の予定の定めである本件取決めは、原告とのLPガス供給契約を解約したときに、当然かつ一方的に被告に金銭の支払義務を発生させるものであり、解約に伴う損害賠償の予定あるいは違約金の定めというべきものであり、契約解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められたものとして消費者契約法9条1号により無効となると主張しました。

消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 (略)
2 事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(第12条の4において「算定根拠」という。)の概要を説明するよう努めなければならない。


○判決は、本件取決めは、原告の主張するような本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意ではなく、本件消費設備等の費用を算定の基礎として算出した中途解約に対する違約金を定める合意というべきものであり、その余の点については検討するまでもなく、本件消費設備等の費用を被告が負担する旨の合意に基づく原告の被告に対する本件請求には理由がないとして請求を棄却しました。

○この棄却理由があいまいであったこともあり、原告が控訴し、控訴審は、原告の請求を認めており、別コンテンツで紹介します。

*********************************************

主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、17万3775円及びこれに対する令和3年6月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、LPガスの供給事業者である原告が、被告が約定の供給期間の経過前である令和3年6月15日に原告との間のLPガス供給契約を終了したところ、同供給契約においては、原告が設置したLPガスの供給設備の費用相当額を被告が負担する旨の合意があり、同供給契約が終了した場合には、同費用相当額を基礎に所定の方式により算出した金額の支払請求ができる旨の取決めがあるとして、これに基づき同算出に係る金額である17万3775円とこれに対する弁済期(上記LPガス供給契約の終了日)の翌日である令和3年6月16日以降の民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 原告は、原告と被告の間の上記取決めは、被告がLPガスの供給設備の費用相当額を負担する合意であり、本件請求は、この費用相当額の負担合意に基づくものである、上記取決めは中途解約による損害賠償の予定や違約金の定めではなく、本件請求は、これに基づく損害賠償ないし違約金の支払を求めるものではない旨本件の請求を釈明している。
 したがって、本件の中心的争点は、上記取決めが、損害賠償の予定や違約金の定めではない、LPガスの供給設備の費用相当額を被告が負担する合意だったかどうかである。

1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない)

     (中略)

2 争点及び当事者の主張
(1) 原告・被告間に本件契約書記載のとおりのLPガス供給契約が締結されたか。
 (原告の主張)
 原告と被告は、本件契約書を作成して、その記載のとおりのLPガス供給契約を締結した。

 (被告の主張)
 被告は本件契約書に署名・押印をしたが、これが契約であるとの認識はなかった。

(2) 本件契約書記載の本件消費設備等費用相当額の請求に関する取決め(前提事実(2)②及び③。以下「本件取決め」という。)は、本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意といえるか(損害賠償の予定等の性質を有するものではないか)。

 (原告の主張)
ア 本件契約書では本件消費設備等の所有者は原告と記載されているが、本件消費設備等は本物件に付合しており、その所有者は被告である。したがって、本件契約書の記載は矛盾しており、その文言どおりに本件取決めを解釈することはできない。
 被告は、令和元年頃、株式会社A(以下「A」という。)から、本物件を購入するに際し、本物件の購入代金に本件消費設備等の費用は含まれておらず、同費用を被告が負担する可能性がある旨の説明を受けていた。

 これらに加え、本来、被告が負担すべき本件消費設備等の費用を原告が支払ったものであることを踏まえると、本件取決めは、当該費用を被告が原告に支払うことを合意したものであり、原告から被告に対するLPガス供給が10年経過前に終了したことを停止条件として支払期限が到来するものと解するのが相当である。

イ 本件取決めは損害賠償や違約金の予定の定めではない。
 本件取決めは、原告から被告に対するLPガス供給契約の解除を要件としておらず、被告がLPガスの供給事業者を原告から他社に変更することは原告に対する債務不履行ではないから、損害賠償や違約金に関する定めには当たらない。

 (被告の主張)
ア 被告は、令和元年頃、Aから本物件を購入したが、その際に、本件消費設備等の費用に関する説明を受けたことはなかった。被告としては、本件消費設備等である本物件のガス配管が原告の所有物とは思わず、その費用は本物件の購入代金に含まれているという認識であった。
 本件消費設備等は原告も認めているように、本物件に付合しており、被告は本件消費設備等を、本物件の一部としてその所有権を取得したのであり、原告から取得したのではない。したがって、本件消費設備等の取得につき、被告が原告にその費用を支払う義務はない。

 原告は、建売住宅である本物件の建築に際し、Aから本件消費設備等の設置工事を請け負い、同工事を行ったのであるが、原告はこの工事費用の支払を注文者であるAに求めていない。すなわち、原告は本件消費設備等の設置工事を無償で請け負ったのであり、その費用を同契約外の被告が負担しなければならないものではない。

イ 本件取決めは損害賠償ないし違約金の予定の定めである(本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意であるとの原告の主張する合意に対する積極否認)。
 本件取決めは、原告とのLPガス供給契約を解約したときに、当然かつ一方的に被告に金銭の支払義務を発生させるものであり、解約に伴う損害賠償の予定あるいは違約金の定めというべきものである。なお、その場合には、上記解約により原告には何らの損失・損害も発生しないから、本件取決めは、契約解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められたものとして消費者契約法9条1号により無効となるものである。

(3) 本件取決めは錯誤(ただし、平成29年法律第44号による改正前民法95条によるもの)により無効となるものか。
 (被告の主張)
 仮に、本件取決めが本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意であったとしても、上記(2)(被告の主張)記載のとおり、被告は本件消費設備等に係る費用を負担する義務を負っていないのに、これがあるものと誤信して本件取決めを行ったのであるから、本件取決めは錯誤により無効である。

 (原告の主張)
 否認する。

第3 当裁判所の判断
1 原告・被告間に本件契約書記載のとおりのLPガス供給契約が締結されたかについて

 原告と被告は、令和元年7月10日付けで、本件契約書に署名(記名)・押印しており、その後、被告は、その記載どおりに同日より、原告から本物件に係るLPガスの供給を受けていること(前提事実)からすれば、原告と被告の間には、本件契約書の記載どおりのLPガス供給契約が締結されたものと認められる。

2 本件取決めは、本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意といえるか(損害賠償の予定等の性質を有するものではないか)について
(1) 掲記の証拠等によれば次の事実が認定できる。
ア 原告は、令和元年頃までに、Aの承諾の下、本物件にLPガスの供給設備及び消費設備を設置したが、その設置費用についてはAに請求しなかった(甲1、弁論の全趣旨)。

イ 被告は、令和元年6月10日、Aから本物件を、売買代金2770万円(ただし、土地代金が1513万円、建物代金が1257万円。税込)で買った(乙1)。
 被告は、この売買に当たり、宅地建物取引士から、重要事項として、本物件にはガス設備が設けられており、その整備時期は令和元年5月頃であること、ガス配管設備(供給設備及び消費設備)の所有権はプロパンガス供給業者にあること、被告がプロパンガス供給業者を変更する場合には、償却残存期間に応じて費用が発生する場合があることといった説明を受けた(乙2、弁論の全趣旨)。

ウ 原告は、被告がLPガスの供給者を原告から日本瓦斯株式会社に変更したことに伴い、令和3年6月16日付けで、被告に対し、ガス供給解約に伴う残存簿価費用との件名で、17万3775円の支払を請求した(前提事実、甲4)。

(2) 検討
ア 本件取決めは、原告の本物件に対するLPガスの供給期間を10年以上と定めた上で、当該ガスの供給を受ける立場にある被告に、本件消費設備等の費用負担義務があるとしつつ、原告は、同供給期間中は、被告に対する同費用の支払請求をしないとする一方で、被告が上記供給期間経過前に原告からのLPガス供給を終了させる場合には、上記費用のうち所定の算定式で一定額を控除した額(以下「本件請求額」という。)を請求するというものである(前提事実、認定事実イ)。

イ しかし、前提事実、上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、本件消費設備等は、被告が本物件を取得する前に、Aの承諾の下、原告が本物件に設置し、これにより本物件に付合したものであるところ、原告は、その際に、その設置費用をAに請求することなく、原告が負担することとしたものといえる。結局、Aと原告の間では、原告が無償で本件消費設備等を本物件に設置したものであり、これによれば、当該設置費用は原告の判断により、これを原告が負担することとしたものといえる。また、被告は本件消費設備等が付合した本物件を、Aから売買により取得したのであるから、被告が本件消費設備等を取得したことに法律上の原因がないともいえない。

 そうすると、本件消費設備等の設置費用は、本物件をAから購入した者(被告)が当然に負担すべき性質のものではなく、また、その費用を原告が負担したのは原告自身の判断によるものなのであるから、本件取決めが、その文言に即して、単に本件消費設備等の費用を被告が負担するという合意であり、それに尽きるとするのは不合理である。

ウ 本件取決めの内容は、被告に本件消費設備等の費用負担義務があるとするものの、被告によるLPガス供給契約の中途解約(10年以内の解約)があった場合に限り、その具体的な支払義務が発生するというものになっており、その支払が実際に問題となる場面は、被告による中途解約の場合に限られている。

 また、原告は、本件消費設備等をAとの関係では無償で設置し、本物件をAから購入した被告との関係では、原告が被告とLPガスの供給契約を締結し、かつ、その期間を10年以上と定めるとともに、本件取決めを設けている。

 これらによれば、原告としては、被告との間でLPガスの供給を相当期間にわたり行うことで、本件消費設備等の設置に係る投下資本を回収しようとしたものと考えられ、中途解約の場合には、LPガスの供給に対する対価の支払を受けられなくなることから、本件消費設備等の費用に基づき算出された本件請求額の支払を被告に求めることとしたものといえる。

 すなわち、原告は、本件取決めをもって、本件消費設備等の費用そのものの支払を被告から受けようとしていたというよりも、中途解約の場合に同費用から算出された本件請求額の支払義務が被告に発生するとの仕組みを用いることで上記のLPガスの供給による対価の支払いを維持しようとしたものというべきであり、この場合に被告が負担する本件請求額の支払義務は、まさに中途解約に対する違約金というべきものであって、本件消費設備等の費用は、かかる違約金の算定方法として用いられたにすぎないものと見るのが合理的である。

 なお、原告は、被告が原告とのLPガス供給契約を中途解約することは債務不履行にならないとして、本件取決めは、損害賠償や違約金の定めではないと主張するが、上記のように本件取決めは、LPガスの供給契約を維持するための仕組みといえ、中途解約の場合には被告に一定の金銭負担を生じさせるものである。したがって、本件取決めは、10年間という期間設定のあるLPガスの供給契約を、上記金銭負担を背景に当該期間は維持させることを被告に約させるものといえるのであり、上記のとおり違約金として認定できるものである。

エ 以上のとおり、本件取決めは、原告の主張するような本件消費設備等費用を被告が負担する旨の合意ではなく、本件消費設備等の費用を算定の基礎として算出した中途解約に対する違約金を定める合意というべきものである。

 したがって、その余の点については検討するまでもなく、本件消費設備等の費用を被告が負担する旨の合意に基づく原告の被告に対する本件請求には理由がない(本件では、原告は中途解約に対する違約金の支払請求をしない旨の整理がされていることは事案の概要欄記載のとおりである。)。


3 結論
 よって、原告の請求には理由がないから棄却することとして主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第31部  (裁判官 増子由一)
以上:6,106文字
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R 8- 1-20(火):LPガス供給のための戸建住宅設置配管設備の住宅付合を認めた最高裁判決紹介
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○ 液化石油ガス(LPガス)供給のために戸建て住宅に設置された消費設備に係る配管等につき当該住宅に付合しており民法242条ただし書の適用もないとした令和7年12月23日最高裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。関連条文は以下の通りです。
民法第242条(不動産の付合)
 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。


○事案概要は以下の通りです。
・上告人XはLPガス供給業者で、A株式会社販売戸建て住宅にLPガス配管設備を設置
・h29.7被上告人YはAから戸建て住宅を購入し、h29.8に引渡受ける
・h29.9Y・X間にLPガス供給契約締結、その際、LPガス供給設備はX所有を確認し、配管設備売買予約契約締結、Yが供給契約解除の場合、予約完結権行使の特約
・r2.9Yは供給契約解除、Xは予約完結権を行使し、配管設備代金支払をYに求め、予備的に売買無効の場合、配管設備の引渡を求めた
・Yは、配管設備は民法第242条による建物に付合し、元々所有権はYにあるとして、Xの請求棄却を求める
・原審はYの主張を認めXの請求棄却し、Xが上告


○最高裁判決は、本件配管について、本件建物に付合し、民法242条ただし書の適用もなく、本件契約が締結される以前から被上告人Yがその所有権を有していたので、上告人から被上告人Yへの本件配管の売買予約について定めた本件契約書をその文言どおりに理解することは相当ではなく、本件契約を売買予約契約と解することはできないとしてXの上告を棄却しました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告受理申立て理由について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1)上告人は、液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給等を業とする株式会社である。

(2)上告人は、A株式会社が販売する戸建て住宅(以下「本件建物」という。)にLPガスの消費設備に係る配管及びガス栓等(以下、併せて「本件配管」という。)を設置した。

(3)本件建物へのLPガスの供給は、本件建物の外部に設置されている貯蔵設備からガスメーターまでの供給設備及び本件配管によって行われている。本件配管は、ガスメーターに接続され、本件建物の外壁を貫通して本件建物の内部に引き込まれていて外壁に固定されており、1階の床下において、システムキッチンのガスコンロに向かうものと本件建物の外部に設置されている給湯器に向かうものとに分岐している。前者は、本件建物の1階の床下断熱材及び床材を貫通し、システムキッチンの収納ボックスに開けられた穴から引き込まれてガスコンロに接続されており、後者は、本件建物の外壁を貫通して外部へと引き出され、コーキング材で外壁に固定された上で給湯器に接続されている。本件配管を本件建物から撤去するためには上記の断熱材や収納ボックス等を取り壊す必要がある。

(4)被上告人Yは、平成29年7月、Aから本件建物を購入し、同年8月にその引渡しを受けた。

(5)被上告人Yは、平成29年9月、上告人との間で、本件建物に係るLPガスの供給契約(以下「本件供給契約」という。)を締結するとともに、「液化石油ガス供給・消費設備の売買予約と貸与契約書」と題する契約書(以下「本件契約書」という。)を用いて、次のような内容の契約(以下「本件契約」という。)を締結し、本件建物へのLPガスの供給を受けるようになった。
ア 被上告人Yと上告人は、本件配管の所有権が上告人にあることを確認した上、本件配管について売買予約契約を締結する。
イ 上告人は、被上告人Yが本件供給契約を解除したときは、上記売買予約契約の予約完結権(以下「本件予約完結権」という。)を行使することができる。

ウ 本件予約完結権は、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律14条1項所定の書面が被上告人Yに交付された日の翌日から15年間存続する。
エ 本件予約完結権の行使により成立する売買契約(以下「本件売買契約」という。)における本件配管の代金額は、以下の算定式により得られる本件配管の残存価値相当額とする(以下、この合意を「本件条項」という。)。
(算定式)
21万円-(21万円×0.9×0.066×上記書面の交付日の翌日から本件予約完結権の行使により本件売買契約が成立した日までの経過月数÷12)

(6)被上告人Yは、令和2年9月、上告人に対し、本件供給契約を解除する旨の意思表示をした。上告人は、その後、被上告人Yに対し、本件予約完結権を行使する旨の意思表示をした。

2 本件は、上告人が、
〔1〕主位的請求として、被上告人Yは、上告人に対して本件売買契約に基づく売買代金債務を負っており、被上告人日本瓦斯株式会社は、被上告人Yの上告人に対する上記債務を併存的に引受けたなどと主張し、被上告人らに対し、売買代金等の支払を求めるとともに、
〔2〕予備的請求として、消費者契約法9条1号(令和4年法律第59号による改正前のもの。以下同じ。)により本件条項が無効となる場合には、本件売買契約は成立しないなどと主張し、被上告人Yに対し、本件配管の所有権に基づく本件配管の引渡し等
を求める事案である。

 被上告人らは、本件配管は、本件建物に付合したものであって、民法242条ただし書の適用はなく、被上告人Yがその所有権を有していたものであるから、本件契約の法的性質を売買予約契約と解することはできず、本件売買契約は成立しない上、本件条項は、消費者契約法9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(以下「違約金等条項」という。)に当たり、同号により無効になるなどと主張してこれを争っている。

3 所論は、本件契約を売買予約契約と解して本件売買契約の成立を肯定しながら、本件配管の代金額を定めた本件条項が、違約金等条項に当たり、その全部が無効となるとした原審の判断について、法令の解釈適用を誤った違法があるというものである。

4 本件契約が売買予約契約であるとすると、所論のとおり、本件条項は、本件配管の所有権を上告人から被上告人Yに移転することの対価である代金額について定めたもので、違約金等条項に当たらないと解する余地がある。
 しかしながら、原審は、本件配管は本件建物に付合したものではないとして、本件契約を売買予約契約であると解したものであるが、本件配管について、本件建物に付合したものであり、民法242条ただし書の適用もないのであれば、本件契約が締結される以前から被上告人Yがその所有権を有していたこととなる。このような場合、上告人から被上告人Yへの本件配管の売買予約について定めた本件契約書をその文言どおりに理解することは相当ではなく、本件契約を売買予約契約と解することはできないというべきである。

 前記事実関係からすると、本件配管を撤去するためには本件建物及びその住宅設備を相当程度毀損する必要があり、その撤去や本件建物等の復旧には相応の手間や費用を要することが見込まれる。また、本件配管は、本件建物の構造に合わせて設置されているもので、本件建物と一体となって利用されることではじめてその経済的効用を発揮するものである上、撤去後の本件配管の経済的価値が乏しいものであるとうかがわれることからすると、相応の費用等をかけて本件配管を撤去する意義は見いだし難い。これに加え、戸建て住宅に設置されている状態のLPガスの消費設備に係る配管が、当該住宅と別個独立に公の市場において取引されるものであるとはうかがわれないことも考え併せると、本件配管について、本件建物とは別個に所有権の客体となるものと解すべき必然性は乏しいといわざるを得ない。

 以上の事情に照らせば、本件配管については、本件建物に付合したものと解される。また、民法242条ただし書は、不動産に付合した物が、なお当該不動産とは別個の存在を有する場合にのみ適用されるものであるが(最高裁昭和38年(オ)第489号同39年9月8日第三小法廷判決・集民75号181頁参照),上記事情からすると、本件配管が本件建物と別個の存在を有するとはいえない。よって、本件配管について、民法242条ただし書の適用はないというべきである。

 以上からすると、被上告人Yは、本件契約締結以前から本件配管の所有権を有していたのであり、本件契約を本件契約書の文言どおりに売買予約契約と解することはできない。したがって、本件契約が売買予約契約であって本件売買契約が成立すること又は上告人が本件配管の所有権を有していることを前提とする上告人の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないこととなる。 

5 以上によれば、上告人の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 林道晴 裁判官 渡辺惠理子 裁判官 石兼公博 裁判官 平木正洋 裁判官 沖野眞已)

以上:3,810文字
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R 8- 1-19(月):映画”ラウンド・ミッドナイト”を観て-徐々に心地よく聴けました
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○令和8年1月18日(日)は、午後、AmazonのPrimeVideoで、1986(昭和61)年製作映画「ラウンド・ミッドナイト」を鑑賞しました。RU(異業種交流会ライジングアップ)の今年の企画も半分は映画鑑賞で、ジャズメンの友人が是非鑑賞したいとのことで、4KUHDとBDを探したのですが見つからず、AmazonPrimeVideoでBD版を1500円で購入していました。いつのまにかPrimeVideo会員になっており、初めて有償版を購入しました。映画「ラウンド・ミッドナイト」のDVDは販売されているのは3600円もするので、PrimeVideoの方が安く購入できました。

○映画コムでは「1940年代、50年代の代表的ジャズプレイヤーと、彼を神のように尊敬する若者の交流を描く。」と解説されています。この若者を演じた役者さんがどこかで観た顔であり、ダスティ・ホフマンによく似ており、ひょっとして本人かと思ったらフランソワ・クリュゼと言うフランス人で、フランスで名実ともにトップクラスの俳優とのことでした。

○アメリカのテナー・サックス奏者デイル・ターナー(デクスター・ゴードン)がパリ市内のクラブブルーノートに出演し、その演奏をクラブの中に入って聴くお金がなくて雨に打たれながらクラブの外にもれる音を聴いていた若者貧しいグラフィック・デザイナーのフランシス・ボリエ(フランンワ・クリューゼ)が、デイルと意気投合して、別れた妻から借金までして、アル中で挙動不安定なデイルを引っ越したアパートに同居させて面倒を見ると言う、私からは、あり得ないストーリーでした。しかし、映画レビューを見ると実話との説もありました。

○全編テナー・サックス奏者デイルのサックス音楽が流れますが、デイルを演じたデクスター・ゴードン氏は、アメリカの超一流テナーサックス奏者とのことで、映画での演奏も彼の実演のようです。専らパコ・デ・ルシア氏のフラメンコギター演奏しか聴かない私にはジャズの良さがよく判りません。しかし、当初退屈に感じた演奏が、時間の経過で心地よく聴けるようになってきたのは不思議でした。ストーリーは、私にとっては何か不自然と感じて感情移入ができませんでしたが、ジャズマンにとってはたまらない映画と思われます。

【和訳MV】ROUND MIDNIGHT (lyrics) Ella fitzgerald/映画 ラウンド・ミッドナイト


Round Midnight - Theatrical Trailer


以上:1,040文字
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R 8- 1-18(日):映画”カッコーの巣の上で”を観て-殆ど感覚が合わず
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○令和8年1月17日(土)は、ツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でしたが、練習後、夕食を取りながら、最近購入したBDソフトで1975(昭和50)年製作映画「カッコーの巣の上で」を鑑賞しました。1976年アカデミー賞作品賞、主演男優賞(ジャック・ニコルソン)、助演女優賞(ルイーズ・フレッチャー)ほか主要5部門を受賞した名作中の名作と言われる作品で、映画コムでは、「刑務所の強制労働から逃れるため精神異常を装い、精神病院に入ったマクマーフィは、絶対的な管理体制をしくラチェット婦長のやり方に反発を覚える。マクマーフィは、管理されることに慣れ、無気力になっていた入院患者たちに生きる希望と活力を与えようとするが……。人間の尊厳と社会の不条理を描いたヒューマンドラマの名作。」と解説されています。

○私はジャック・ニコルソン氏の出世作で、名作中の名作という評価だけは知っていましたが、「カッコーの巣」が精神病院を表すことも知らず、内容について全く予備知識なく大いに期待して鑑賞に至りました。しかし、残念ながら「映画”イージー・ライダー”を観て-全く感覚が合わず」とほぼ同じ感想でした。映画「カッコーの巣の上で」は、映画「イージー・ライダー」と並ぶ1960年代後半から1970年代にかけてアメリカ合衆国で製作された映画作品群を指すアメリカン・ニューシネマの代表作と言うことです。映画「俺たちには明日はない」、映画「卒業」等がアメリカン・ニューシネマの代表作で、70年代後半に登場する映画「タワーリング・インフェルノ」、映画「ジョーズ」、映画「スター・ウォーズ」等スピルバーグやジョージ・ルーカス等のハリウッド・ルネッサンス映画の登場で、アメリカン・ニューシネマは終焉を迎えたとのことです。

○どうやら私はアメリカン・ニューシネマには感覚が合わないようですが、映画「イージー・ライダー」の様に全く感覚が合わないとは言えず、部分的に感情移入できるシーンもありましたので、副題としては「殆ど感覚が合わず」としました。何と言ってもジャック・ニコルソン氏の演技の凄さには感服しました。ただストーリーには不自然と感じる部分が多々あり、さらに主人公ジャック・ニコルソン氏演ずる主人公の最後の悲惨な結果には極めて後味の悪いモノでした。

○どこかで見たことがある長い顔に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドク博士役クリストファー・ロイド氏37歳映画初出演を確認して感激しました。2mを越える聾唖を装うインディアン大男と主人公の遣り取りも心温まるものがありました。全体的には不自然さを感じるも、部分的に感じ入るシーンがあり、映画「イージー・ライダー」と違って再鑑賞の意欲は残る映画でした。

映画『カッコーの巣の上で』 - I Want My Cigarettes 日本語字幕


映画『カッコーの巣の上で』一羽は東に 一羽は西に 一羽はカッコーの巣の上を飛んでいった……


以上:1,215文字
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R 8- 1-17(土):2026年01月16日発行第405号”弁護士のアトリビュート”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和8年1月16日発行第405号「弁護士のアトリビュート」をお届けします。

○アトリビュートなんて言葉は聞いたことはありますが、その意味など考えた記憶がありません。ウィキペディアでは「アトリビュート(英: attribute)は、西洋美術において伝説上、歴史上の人物または神話上の神と関連付けられた持ち物。その物の持ち主を特定する役割を果たす。持物(じもつ・じぶつ)ともいう。正義の女神を例にとると、手に持った秤と剣、それに目隠しである。」と説明されています。初めて知りました(^^;)。大山ニューレターはホントに勉強になります。

○IT用語事典では、「アトリビュートとは、特性、特質、性質、~に要因を求める、~に帰する、などの意味を持つ英単語。ITの分野では対象の性質や設定などを示す付加情報を指すことが多く、「属性」と訳される。」と説明されています。日本語の「属性」でようやく何となく意味が判りました。

○私自身の属性はと考えると、何事にも「せわしない」でしょうか。別に忙しいわけではないのですが、落ち着きがなく「アクビ」は余りしないようです。「アクビ」は余裕がないとできないですね。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のアトリビュート

漫画家が、キャラクターを描き分けるのに苦労するという話を聞きました。下手をすると、みんな同じような顔になってしまうそうです。そんな問題の簡単な解決方法は、髪の色や服装で、その人だけの特徴を出すことなんです。こういった「その人を特徴つけるもの」をアトリビュートと言います。これは、現代の漫画家だけではなく、古今東西使われている手法です。例えばキリスト教の宗教画では、様々な聖人が描かれていますが、はっきり言って、どれが誰なのかなんてわかりません。そこで登場するのがアトリビュートです。

鍵を持っているおじさんなら、天国の鍵を預かった初代ローマ教皇聖ペテロだと分かります。本を持っていれば、福音書記聖ヨハネだといった具合です。こんなのは良いんですが、殉教した聖人の場合は、一気に趣味が悪くなります。車裂きの刑で殺された聖女カタリナは、車輪を持っています。そういえば以前トンカツ店が、包丁を持った豚の看板を作ったことで非難されたのを思い出しました。生きたまま皮膚を剥がされた聖バルトロマイは、自分の皮を持った姿で描かれます。ここまで趣味が悪いと、かえって感心しちゃうのです。

キリスト教だけでなく、ギリシャ神話の神々もアトリビュートを持っています。ゼウスの雷とか、ポセイドンの三叉戟なんて有名です。中国の豪傑達にもアトリビュートは使われています。青龍偃月刀を持った武将なら、三国志の関羽です。全身に龍の入れ墨がある豪傑は、水滸伝の九紋龍史進といった具合です。現代日本の温泉では「タトゥーのある方は入湯お断り」と表示されていますが、間違いなく対象となりそうです。事程左様にアトリビュートは便利なんです。そういえば「文学」の場合はアトリビュート無しで人物を描き分ける必要があるそうです。一方、娯楽小説や漫画では、その労力を、ストーリーの面白さに向けられます。手塚治虫先生も「漫画の人物は記号だ」と喝破されていました。どちらが良いのかは難しいところですが、私は頑張って描き分けるよりも、アトリビュートを使えばいいと思います。

もっとも、アトリビュートは便利なだけに、ほとんどの人は、そこしか見ないようです。私なんか、張飛が偃月刀を持っていたら、「これは関羽だ!」と即決してしまいます。おいおい。。。 推理小説の古典に「赤毛のレドメイン家」というのがあります。犯人は見事な赤毛で有名な人です。色々な所で目撃されます。しかし、本当は他人が赤毛のカツラを使って、犯人のフリをしていたという話です。「なんじゃそれは?」という気もしますが、読んでると引き込まれる名作推理小説です。

アトリビュートは美術や文学だけの話ではありません。現代社会で一番重要なアトリビュートといえば、何と言ってもブランドでしょう。買う人が、本当に品質で選ぶ目を持っているなら良いのですが、ほとんどの消費者は私と同レベルなので、ブランドしか見ないで、有難がって買う人は相当数います。そんなわけで、ブランドを偽造して消費者を騙す事件が起こるわけです。これは重大事件として、損害賠償だけでなく刑事罰も課せられることがよくあります。

というわけで、弁護士のアトリビュートですが、多分これは、弁護士バッチです。バッチを付けていれば、ほとんどの場合に弁護士と認めてもらえます。裁判所にも、バッチを見せれば、荷物検査など無しで入れてくれます。それだけにバッチの管理は厳しく要求されています。それぞれにシリアルナンバーが付いていて、どのバッチが悪用されたか分かってしまいます。紛失したらすぐに届け出ないといけませんし、凄く怒られてしまうのです。

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◇ 弁護士より一言

「パパのアトリビュートって何だろう?」と娘に聞いたら、「いつもアクビをしていること」と言われました。し、失礼な! 妻からは「ふわふわ白髪のおじさんがいたから、パパだと思って近づいちゃった」と言われたんです。このままではいけないので、カッコ良いアトリビュートを考えたいと思うのです。常に六法全書を持ち歩いているなんてどうでしょうか。。。

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R 8- 1-16(金):保証会社代位弁済があっても本人不払を理由に解除認めた地裁判決紹介
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○原告が、被告に対し、賃料1か月分の不払により賃貸借契約を解除したとして、その終了に基づき、賃貸した建物の明渡しを求めました。

○被告は、その1か月分の賃料等が滞納となっていることを本件訴訟が提起された後に初めて知り、これ以外の賃料等については、Cが原告に対して代位弁済していたので、原告と被告との間の信頼関係は破壊されていないから原告は本件賃貸借契約を解除することはできないと主張しました。

○これに対し、原告による解除の意思表示がされた時点において、被告が、原告に対し、同月分の賃料等の支払を怠っていたことは当事者間に争いがなく、一部の賃料等については、Cが原告に対して代位弁済していたものの、被告は、Cに対し、2万円を入金したのみであり、この時点で原告と被告との間の信頼関係が破壊されていなかったということはできず、原告の解除の意思表示により、本件賃貸借契約は解除されたものというべきであるとして、原告の請求を認容した令和6年12月4日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○被告は代位弁済したCに対し賃料代位弁済による求償債務合計71万8600円を支払っていますが、後の祭りで、この点は考慮されませんでした。

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主   文
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は、原告が、被告に対し、賃料不払により賃貸借契約を解除したとして、その終了に基づき、賃貸した建物の明渡しを求める事案である。
1 前提事実
(1)原告は、令和4年1月23日、被告との間で、賃貸借契約に基づき引渡していた別紙物件目録記載の建物を、次の約定で賃貸するとの更新合意をした(以下、この契約を「本件賃貸借契約」という。)(争いのない事実)。
ア 賃料等
賃料 月額13万円
共益費(管理費) 月額7000円
イ 支払条件等
 被告は,原告に対し、毎月28日までに翌月分の前記アの賃料等を支払う。

ウ 契約期間
 令和4年2月1日から令和6年1月31日まで

(2)
ア 原告は、令和6年3月8日、被告に対し、賃料及び共益費(以下「賃料等」という。)1か月分の支払を怠っており、また、それに先立ち、賃料等約3か月分の支払を怠ったため、被告の委託を受けて原告に対して本件賃貸借契約に基づく被告の債務を連帯保証したC株式会社(以下「C」という。)が、原告に代位弁済をしたとして、3日以内に賃料等1か月分を支払うよう催告するとともに、これを支払わなかった場合には、本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をした(争いのない事実、甲3、乙3)。 

イ 前記アの当時、被告は、原告に対し、令和5年12月分から令和6年3月分までの賃料等の合計54万8000円の支払をしていなかったため、Cが、原告に対し、このうち3か月分の41万1000円を代位弁済していたところ、被告は、Cに対し、2万円支払ったのみであった(甲5)。

(3)被告は、Cから求償権について催告を受け、令和6年4月19日、Cに対し、以下の合計71万8600円を支払った(争いのない事実)。
保証委託料 1万円
保証事務手数料 1万1880円
令和5年12月分 11万9970円
令和6年1月分 13万7000円
令和6年2月分 13万7000円
令和6年2月分 16万5750円
令和6年4月分 13万7000円

2 争点及び争点に関する当事者の主張
 本件の争点は、原告による本件賃貸借契約の解除の可否であり、これに関する当事者の主張は以下のとおりである。
(被告の主張)
 原告による解除の意思表示がされた令和6年3月8日時点において、同月分の賃料等が滞納となっており、原告がCに対してした同年4月19日の入金や、その後の入金によっても、同年3月分の賃料等が滞納のままであることは認めるが、被告は、同年3月分の賃料等が滞納となっていることを本件訴訟が提起された後に初めて知った。そして、これ以外の賃料等については、Cが原告に対して代位弁済していたことからすれば、原告と被告との間の信頼関係は破壊されていないのであって、原告は、本件賃貸借契約を解除することはできない。

(原告の主張)
 原告が被告に対して解除の意思表示をした時点で、被告には令和6年3月分の賃料等の滞納があったし、原告は、被告に対し、予備的に令和6年5月2日に送達された訴状をもって、支払期限の経過した賃料等を3日以内に支払うよう催告し、支払がなければ本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をしたから、本件賃貸借契約は解除された。

 また、前提事実(2)の原告による解除の意思表示の時点において、原告は、被告に対して令和6年3月分の賃料等の支払を怠っていたのみならず、令和5年12月分の一部並びに令和6年1月分及び同年2月分の賃料等につき、代位弁済したCに入金していなかった。Cが原告に代位弁済したとしても、被告による賃料等の不払いという事実は変わらないのであり、以上のCに対する滞納状況等にも鑑みれば、上記解除の意思表示の時点において、原告と被告との間の信頼関係は破壊されていたというべきである。

第3 当裁判所の判断
1 前提事実(2)のとおり原告による解除の意思表示がされた令和6年3月8日時点において、被告が、原告に対し、同月分の賃料等の支払を怠っていたことは当事者間に争いがなく、前提事実(2)のとおり、令和5年12月分から令和6年2月分の賃料等については、Cが原告に対して代位弁済していたものの、被告は、Cに対し、2万円を入金したのみであった。

 そして、前提事実(2)によれば、原告は、令和6年3月8日、被告に対し、3日以内に滞納していた賃料等を支払うよう催告し、その支払がないときには解除するとの意思表示をしたのであって、その催告期間内に被告が賃料等を支払ったとは認められないところ、被告は、Cがした41万1000円の代位弁済に関し、Cに対して一部である2万円を支払ったのみで全額の支払をしていなかったというのであるから、この時点で原告と被告との間の信頼関係が破壊されていなかったということはできず、上記解除の意思表示により、本件賃貸借契約は解除されたものというべきである。

2 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部 裁判官 荒谷謙介

別紙 物件目録
1 所在 世田谷区α×丁目 ××番地×
家屋番号 ××番×の×
種類 共同住宅
構造 鉄筋コンクリート造陸屋根4階建
床面積 1階 107.86平方メートル
    2階 110.23平方メートル
    3階  86.08平方メートル
    4階  63.36平方メートル
上記建物のうち2階×××号室40.64平方メートル部分
以上
以上:2,855文字
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R 8- 1-15(木):不貞期間5ヶ月に慰謝料100万円を認めた地裁判決紹介
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○原告女性は、原告の夫Cと5ヶ月間不貞行為を継続したCと同じ職場の被告女性に対し、慰謝料500万円と弁護士費用50万円の支払を求めました。

○被告女性は不貞の事実は認め、当初20万円の慰謝料支払を提案したことについて、原告は誠意がなく感情を逆なでした、不貞発覚後もCと同じ職場で勤務を継続しており原告の感情を慰謝する態度が微塵もないなどと非難しています。

○これに対し、原告とCは離婚しておらず、Cは、本件の不貞前と同様の生活を継続し、離婚の予定もなく、不貞の期間は5か月余りと短期間であったことから、本件の慰謝料額としては、100万円を認めるのが相当とした令和6年12月9日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○同じ裁判官が「期間4年の不貞行為について慰謝料100万円を認めた地裁判決紹介」記載の通り、不貞期間4年でも600万円の慰謝料請求に対し100万円の支払を認めています。不貞期間からは100万円の慰謝料は高すぎる感もしますが、最も責任がある配偶者Cはどのような責任をとるのか聞いてみたいところです。

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主   文
1 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和5年12月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和5年12月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が、原告の夫と不貞行為を行った被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害金合計550万円(慰謝料500万円、弁護士費用50万円)及びこれに対する不法行為後である令和5年12月21日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1 前提事実(争いがないか、掲記の証拠等により容易に認められる事実)
(1)原告は、平成14年11月に、C(以下「C」という。)と婚姻した。原告とCとの間には、令和6年5月30日時点で、18歳になる長女と16歳になる長男の2人の子がいる。(弁論の全趣旨)
(2)原告ら家族は、茨城県つくば市で生活していたが、Cの仕事の関係(Dにて勤務)で、平成29年頃から、Cは、平日は品川に単身で居住し、週末は自宅に帰宅する生活を送っていた(争いがない。)。

(3)被告は、令和5年4月から、Eの特別研究員として、Cの主催する研究室に所属することとなった(争いがない。)。
(4)令和5年5月末から、Cと被告は不貞関係になった(争いがない。)。
(5)令和5年11月9日、Cは、原告に対して不貞を認め、同月12日、被告は、原告に対して不貞を認めた。(争いがない。弁論の全趣旨)

2 争点及びこれに関する当事者の主張
 本件においては,被告がCと不貞関係にあったことについては、争いがなく、本件の争点は損害の点である。
(1)原告の主張
ア 慰謝料 500万円
 以下の点を踏まえれば、慰謝料額は500万円を下らないというべきである。 
(ア)原告とCの婚姻期間は20年以上であり、長期に平穏な婚姻生活を築いていたものであるが、被告の不法行為により、一瞬にしてそれは崩れ去った。
(イ)原告とCとの間には、子どもが2人いて、子どもを含めた家庭生活の平穏も害されている。

(ウ)不貞期間は、令和5年5月末から11月までの約半年、不貞の回数もかなりの回数に上っている。
(エ)被告は、当初、20万円という著しく低廉な慰謝料を提示するなど、原告の感情を逆なでしていた。
(オ)被告は、現時点でも不貞行為の相手であるCと同じ職場で働いており、原告の感情を慰謝する態度は微塵も見受けられない。
(カ)不貞行為が発覚してからも、Cと被告は、原告に見つからないようにやりとりを継続していた。

イ 弁護士費用 50万円
 弁護士費用としては、50万円が相当である。

ウ 合計 550万円

(2)被告の主張
ア 争う。
イ 慰謝料額の算定にあたっては、以下の点が斟酌されるべきである。
(ア)原告とCの婚姻関係は破綻していない。
(イ)原告とCの婚姻関係は、もともと円満を欠いていた。
(ウ)被告がCと初めて不貞行為に及んだのが令和5年5月29日で、最後が同年11月6日である。不貞期間は約5か月にすぎない。

(エ)不貞相手である被告の責任は副次的なものとみるべきである。
(オ)被告が不貞関係を主導した事実はない。
(カ)被告は、原告に対して、当初から不貞を認めて謝罪し、誠実な提案をしていた。

ウ なお、原告は、被告に職場を変更するよう要望しているが、被告にこれに応じる法的義務はなく、被告が職場の変更をしないことをもって、慰謝料の増額事由として考慮すべきではない。

第3 当裁判所の判断
1 慰謝料額について

(1)証拠(乙4、被告本人)によれば、被告とCは、令和5年5月29日から同年11月6日まで不貞関係にあったと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そして、前記前提事実(5)のとおり、同月12日までに、C及び被告が原告に対して不貞を認め、原告にCと被告の不貞行為が発覚したことが認められる。

(2)原告とCの婚姻関係は不貞開始時点で20年余り継続していたものであり(前記前提事実(1)、上記(1))、婚姻期間は長期間であったといえる。また、原告とCの婚姻関係が円満でなかったことを示す的確な証拠はなく、証拠(原告本人)によれば、当時、原告及びCは、高校3年生になる長女及び高校1年生になる長男と普通に家庭生活を送っていたものと認められる。

 もっとも、他方において、証拠(原告本人)によれば、原告とCは離婚しておらず、Cは、本件の不貞前と同様の生活(平日は単身赴任先(ただし、不貞後は、平日も、なるべく自宅に戻るようにしている)、週末は自宅に戻る)をしており、離婚の予定もないことが認められる。また、本件の不貞の期間は5か月余りであり、短期間であったといえる。

(3)以上の事情を考慮すると、本件の慰謝料額としては、100万円を認めるのが相当である。

 この点、原告は、被告が職場の変更をしないことや不貞発覚後に秘密のメールアドレスで連絡を取り合っていたことを指摘するが、これらの点をもって、特段慰謝料が増額されることになるとは解されない。
 その他、原告指摘の点、また、被告指摘の点を検討しても、上記判断が左右されることはないと解する。

2 弁護士費用
 上記1の認定額からすれば、弁護士費用としては、10万円を認めるのが相当である。

3 まとめ
 以上より、被告は、原告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、上記損害金合計110万円及びこれに対する不法行為後である原告が起算日としている令和5年12月21日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金を支払うべきである。

第4 結論
 よって、原告の請求は、主文第1項掲記の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法64条本文、61条を、仮執行の宣言につき同法259条1項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部 裁判官 烏田真人
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R 8- 1-14(水):共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介5
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○「共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介4」の続きで、原告持分20分の19、被告持分20分の1の土地について、土地・建物の売買・仲介等を目的とする会社である原告が、民法258条に基づき共有物分割を求め、全面価格賠償による分割を認めた令和6年12月12日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○判決は、本件各土地の共有物分割の方法として、全面的価格賠償の方法によることを求めているところ、本件各事情によれば、本件各土地について、現物を分割する方法によって分割することは適当ではなく、むしろ、本件各土地の性質及び形状、共有関係の発生原因、原告と被告の持分割合、本件各土地の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法に関する原告の意見等を踏まえて、本件各土地を原告に取得させるのが相当であると認められるとしました。

○被告の持分割合(20分の1)を踏まえた使用収益の可能性及び流動性の程度という観点も踏まえると、本件訴訟において、本件各土地の固定資産評価額を基準とすることも相当であると認められ、また、本件各土地上に原告が所有するに至った建物が存在することを考慮すると、建付減価として2割を減じることは相当として、価格賠償額を585万円としました。

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主   文
1 別紙訴状写し物件目録記載の各土地を次のとおり分割する。
(1)別紙訴状写し物件目録記載の各土地を原告の所有とする。
(2)原告は、被告に対し、後記(3)の持分移転登記手続と引換えに585万1083円を支払え。
(3)被告は、原告に対し、前項の金員の支払と引換えに、別紙訴状写し物件目録記載の各土地について、この判決が確定した日の共有物分割を原因とする持分20分の1の共有持分全部の移転登記手続をせよ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 別紙訴状写し「第1 請求の趣旨」記載のとおりである。

第2 請求原因及び共有物分割に関する原告の意見
 別紙訴状写し「第2 請求の原因」及び別紙原告の令和6年11月1日付け第1準備書面に記載のとおりである。

第3 当裁判所の判断
1 請求の原因について

 証拠(甲1~7)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因事実(別紙訴状写し「第2 請求の原因」1項、2項及び3項(1)の各事実)が認められる。

2 共有物の分割方法について
(1)上記1の認定事実のほか、証拠(甲2~9)及び弁論の全趣旨によれば、別紙訴状写し物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)の性質、形状、共有関係の発生原因、利用状況等について、別紙訴状写し「第2 請求の原因」の3項(3)ア~エの各事実が認められる。

(2)原告は、本件各土地の共有物分割の方法として、全面的価格賠償の方法によることを求めているところ、上記1及び2(1)の各事情によれば、本件各土地について、現物を分割する方法によって分割することは適当ではなく、むしろ、本件各土地の性質及び形状、共有関係の発生原因、原告と被告の持分割合、本件各土地の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法に関する原告の意見等を踏まえて、本件各土地を原告に取得させるのが相当であると認められる。

(3)
ア 全面的価格賠償の方法による共有物分割を命じるためには、共有物を特定の者に取得させるのが相当であると認められることに加えて、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が必要となる。

イ 原告は、被告が取得する対価(賠償金)の額について、〔1〕本件各土地の令和6年度の固定資産評価額(別紙訴状写し物件目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)につき7609万0500円、同目録記載2の土地(以下「本件土地2」という。)につき7018万6580円)に被告持分割合(20分の1)を乗じた金額(本件土地1:380万4525円、本件土地2:350万9329円)である合計731万3854円を基準額とし、〔2〕本件各土地上に原告所有建物が存在することから、借地権減価率を2割としてこれを減価し(減価後の額は585万1084円)、〔3〕更に流動性の低い持分であることによる3割の減価をした金額が、適正な価格であるとの意見を述べている。また、原告が今後、所在不明の被告に代わって納税を行うものであることを斟酌すべきであり、価格賠償金は550万円が相当である旨の意見も述べている。

ウ 上記原告の意見〔1〕については、被告の持分割合(20分の1)を踏まえた使用収益の可能性及び流動性の程度という観点も踏まえると、本件訴訟において、本件各土地の固定資産評価額を基準とすることも相当であると認められる。

エ また、上記原告の意見〔2〕についても、本件各土地上に原告が所有するに至った建物が存在することを考慮すると、建付減価として2割を減じることは相当であると認められる。

オ 他方で、上記原告の意見〔3〕については、共有物分割の結果として、原告が本件各土地の単独所有者となることに加えて、上記ウのとおり、被告の持分割合を踏まえた使用収益の可能性及び流動性について既に斟酌していることも踏まえると、更に流動性を理由とする減価をすることは相当ではない。
 また、原告は、原告が今後所在不明の被告に代わって納税を行うことを斟酌すべきであるとの意見も述べているが、共有物分割における賠償金額を定めるに当たり、共有者間における当該不動産に係る固定資産税の負担状況を斟酌することは困難であり、採用できない。

(4)以上によれば、本件各土地について、全面的価格賠償の方法によって原告の単独所有とする場合における被告共有持分の対価(賠償金)の額は、585万1083円とすることが相当である。
(計算式)
731万3854円(〔1〕)×(1-0.2)(〔2〕)=約585万1083円

(5)原告は、不動産の売買等を目的とする事業者であり、本判決の確定後、価格賠償金を支払う意思及び用意があると認められること(弁論の全趣旨)からすると、原告には被告に支払うべき賠償金の負担能力があると認めることが相当である。

(6)そして、原告の被告に対する本件各土地の被告持分に係る持分移転登記手続請求権と、被告の原告に対する賠償金支払請求権とは、実質的に対価関係にあることからすると、引換給付の判決をするのが相当である。

第4 結論
 よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判官 平井直也

別紙訴状抜粋
第1 請求の趣旨

1 別紙物件目録1及び2記載の各不動産を次のとおり分割する
(1)同目録1及び2記載の各不動産を,いずれも原告の所有とする
(2)原告は,被告に対し,204万7880円を支払え
2 被告は,原告に対し,同目録1及び2記載の各不動産について,この判決確定の日の共有物分割を原因とする持分20分の1の持分全部移転登記手続をせよ
3 訴訟費用は被告の負担とする
との判決を求める。

第2 請求の原因
1 当事者

 原告は,土地・建物の売買・仲介等を目的とする株式会社である(甲第1号証)。

2 共有関係の成立
(1)原告による別紙物件目録1(以下,「本件土地1」という。)及び2(以下,「本件土地2」といい,本件土地1と本件土地2の両土地を指す場合には「本件各土地」という。)記載の土地に関する共有持分の取得
ア 訴外cの死亡に伴う相続の発生
 本件各土地は,訴外cが単独所有していたところ,同人が平成7年8月3日に死亡したため,同日付相続を原因として,訴外d持分10分の2,訴外e持分10分の1,訴外f持分10分の1,訴外g持分10分の6につき,所有権移転登記がなされている(甲第2号証及び甲第3号証)。

イ 原告による本件各土地の共有持分の取得
 訴外gは,平成26年1月17日に死亡し,同日付相続を原因として,その持分全部につき,訴外hへの所有権移転登記がなされている。
 訴外hは,令和6年3月7日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分10分の6を譲渡した。
 訴外fは,令和6年4月26日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分10分の1を譲渡した。
 訴外dは,令和6年5月20日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分10分の2を譲渡した。
 訴外eは,令和4年11月13日に死亡し,同日付で訴外i及び被告が本件各土地の共有持分20分の1をそれぞれ相続し,その後,訴外iは,令和6年8月7日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分20分の1を譲渡した。

ウ 小括
 以上の結果,原告は,本件各土地のうち20分の19の持分を有するに至った(甲第2号証及び甲第3号証)。

(2)被告の持分
 被告は,本件各土地のうち,20分の1の持分を有している(甲第2号証及び甲第3号証)。

3 共有物分割の方法
(1)原告が求める共有物分割の方法
 原告は,被告と本件各土地の共有物分割に関する協議を行おうとしたが,被告は所在不明であり(詳細は後述(3)イ(ウ)の通り。),協議を行うことができなかった。
 これは民法258条1項柱書の「協議をすることができないとき」に該当する。
 そこで,原告は,本件各土地の共有物分割請求の訴を提起し,その方法として,全面的価格賠償による分割を請求する次第である。

以上:3,904文字
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R 8- 1-13(火):財産分与申立中マンション共有物分割請求を権利濫用とした地裁判決紹介
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○原告が元妻である被告に対し共有する建物について財産分与が請求されている中で共有物分割を求めることは権利の濫用であるとされた令和6年9月18日東京地裁判決(判時2635号57頁)関連部分を紹介します。論点が多岐に渡る長文判決であり、共有物分割を求めるcマンションに関する部分のみ掲載します。

○判決は、cマンション及びbマンションの帰するを財産分与手続に委ねた方が、他の夫婦共有財産と併せて分与の額及び方法を定めることができ、被告のみならず、原告にとっても、原被告間の権利義務関係を総合的に解決し得るという意味では利点があるとして、原告の請求を棄却しました。夫婦共有財産として財産分与請求中は、特段に事情がない限りは、共有物分割訴訟はできないと覚えておいて良いでしょう。

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主   文
1 被告は、原告に対し、377万3492円及びこれに対する令和4年2月17日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告の本訴請求に係る訴えのうち、別紙物件目録記載3の建物の分割を求める部分を却下する。
3 原告の本訴請求のうち、上記1の請求及び上記2の訴えに係る請求以外の請求をいずれも棄却する。
4 原告は、被告に対し、311万0290円及びこれに対する令和5年3月15日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
5 被告のその余の反訴請求を棄却する。
6 訴訟費用は、本訴について生じた部分は、これを10分し、その9を原告の、その余を被告の負担とし、反訴について生じた部分は、これを5分し、その2を被告の、その余を原告の負担とする。
7 この判決は、第4項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 本訴請求(原告)
(1)別紙物件目録記載1の建物を次のとおり分割する。
ア 別紙物件目録記載1の建物を被告の所有とする。
イ 被告は、原告に対し、ウの原告持分移転登記手続と引換えに、7384万5000円を支払え。
ウ 原告は、被告に対し、イの金員の支払と引換えに、別紙物件目録記載1の建物の持分5分の2について、共有物分割を原因とする原告持分移転登記手続をせよ。
(2)別紙物件目録記載2の建物を売却し、その売却代金から売却手続に要した費用を控除した金額を原告及び被告に各2分の1の割合で分割する。
(3)別紙物件目録記載3の建物を売却し、その売却代金から売却手続に要した費用を控除した金額を原告及び被告に各2分の1の割合で分割する。
(4)被告は、原告に対し、2930万1000円及びこれに対する令和4年2月17日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

2 反訴請求(被告)
 原告は、被告に対し、537万7287円及びこれに対する令和5年3月15日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本訴事件は、原告が、元妻である被告に対し、同人らの共有名義の建物3戸の共有物分割を求めるとともに、別居後、被告がそのうち1戸の共有建物の賃料等を単独で取得していたと主張して、不当利得に基づいて、被告の利得金及びこれに対する訴状送達日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

 一方、反訴事件は、被告が、原告に対し、別居後、被告が共有建物の住宅ローン,管理費及び固定資産税等の全額を負担していたと主張して、不当利得に基づいて、原告の利得金及びこれに対する反訴状送達日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

1 前提事実(末尾に認定の根拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがない。)

     (中略)

3 争点に関する当事者の主張

     (中略)

(2)共有物分割請求が権利の濫用に該当するか(争点2)。
(被告)
 前記(1)(被告)のとおり、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産の清算は、財産分与において夫婦共同生活の実態を踏まえて解決されるべきであり、単なる共有持分に基づく共有物分割請求においては、後記(3)(被告)のような実質的な寄与割合を考慮することができないため、被告が原告に財産分与を求める調停事件を申し立てた本件においては、原告の共有物分割請求は権利の濫用に該当するというべきである。

 なお、原告は、前提事実(9)の離婚等請求訴訟において、原告と被告がbマンション及びcマンションを共同購入したとして、財産分与の対象財産確定の基準時である原被告の経済的協力関係が終了した時期は、別居時ではなく、平成23年12月5日であると主張していた。

(原告)
 以下の諸点に照らすと、原告の共有物分割請求は権利の濫用に該当しないというべきである。
ア 財産分与の対象財産確定の基準時は別居時であるところ、cマンションの所有権取得日は別居後の平成20年3月4日であり、売買契約締結日である平成17年8月20日は実質的には売買予約がされた日であると考えるべきであるから、cマンションについては、財産分与請求ができず、共有物分割請求によるしかない。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点1(共有物分割請求に関する訴えの利益の有無)について


     (中略)

2 争点2(共有物分割請求が権利の濫用に該当するか。)について
(1)認定事実
 前記前提事実に証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
ア cマンションを購入する旨の売買契約の締結後、引渡しを受けるまでの経過

     (中略)

(2)検討
ア 前記(1)ア(ア)、(ウ)のとおり、原告と被告がcマンションの引渡しを受けたのは、原告が被告と別居するようになった後であるが、cマンションを購入する旨の売買契約の締結自体は、別居の前にされていること(同(ア))、原告は、別居後も、被告に対し、cマンションの駐車場の位置についての意向を伝えたり、内覧会に出席したり(同(ア)、(イ))、住宅ローンを借入れていること(同(ウ))を考慮すると、cマンションは、原告と被告の別居の時期にかかわらず、原告と被告が合意の上で取得したものであるといえるから、財産分与の対象財産となり得るものである。

また、前提事実(3)、(5)及び(6)のとおり、bマンションは、原告が被告と別居するようになる前に、これを購入する旨の売買契約が締結され、原告に対する引渡しがされたものであるから、財産分与の対象財産となり得るものである(なお、原告も、前記(1)ウのとおり,前提事実(9)の離婚等請求訴訟においては、cマンション及びbマンションが財産分与の対象財産となり得る旨の主張をしていたものである。)。

 そして、cマンション及びbマンションの帰するが財産分与手続に委ねられた場合には、他の夫婦共有財産と併せてその帰するが決せられることになり、cマンションの取得に関する当事者の意向(前記第2の3(3))、cマンションの取得に当たっての被告の特有財産の支出(前記(1)エ)を考慮すると、cマンションの住宅ローンについての原告の内部的な負担部分をゼロにすることで、被告が代償金を支払わずにこれを単独取得することとなる可能性があるが、これを共有物分割手続で処理する場合には被告が代償金を支払わずに単独取得する余地はないから、cマンションの帰するを決するために共有物分割手続を選択することは、被告が代償金を支払わずにcマンションを単独取得する可能性を奪うとともに、代償金の額が被告の資力を上回る場合にはcマンションに居住する被告(前提事実(8))の自宅を奪うこととなり、被告にとって酷な結果となる。
 
 これに対し、原告は、bマンションを売却すれば、cマンションの代償金を支払うことができる旨の主張をするが、その主張自体、被告が代償金を支払わずにcマンションを単独取得する可能性を否定するものであるし、被告は、前記第2の3(3)(被告)のとおり、bマンションの単独取得も希望している。そして、被告がbマンションを単独取得するために必要な代償金の額についても、被告の特有財産の支出等の無形の寄与を考慮できる財産分与手続によるか、これを考慮できない共有物分割手続によるかによって、異なる可能性があり(前記(1)オ(ア)参照)、共有物分割手続による場合には、bマンションの競売を命じた場合に被告が取得できる代金の額も、無形の寄与が考慮されない持分割合に応じたものとなる。

イ 他方、前記(1)エ(イ)、オ(イ)のとおり、cマンション及びbマンションの住宅ローンは、被告が単独で支払っていることが認められるし、前提事実(11)のとおり、原告と被告との離婚を命ずる判決が既に確定し、被告が原告に財産分与を求める調停事件を既に申し立てていることも考慮すると、原告を住宅ローン債務から早期に解放すべくcマンション及びbマンションの帰するのみを先に決するために共有物分割手続によるべき必要性は高いとはいえない。

むしろ、cマンション及びbマンションの帰するを財産分与手続に委ねた方が、他の夫婦共有財産と併せて分与の額及び方法を定めることができ、被告のみならず、原告にとっても、原被告間の権利義務関係を総合的に解決し得るという意味では利点がある。

 これに対し、原告は、前記(1)イ(オ)の債権差押命令により、原告の給与債権が差し押さえられたため、生活が窮乏し、早急に未払婚姻費用を弁済する必要が生じた旨の主張をするが、原告が婚姻費用の支払を怠ったことの結果にすぎない(なお、婚姻費用の減額の必要性が認められない旨の審判がされていることは、前記(1)イ(ウ)、(エ)のとおりである。)。

ウ そして、原告が、前提事実(9)の離婚等請求訴訟において離婚請求を認容する判決が言い渡され、離婚に伴う財産分与手続を進められる余地が生じた後に、本訴請求に係る訴えを提起していること(前提事実(10))、上記の離婚等請求訴訟においては、cマンション及びbマンションが財産分与の対象財産となり得る旨の主張をしていたにもかかわらず(前記(1)ウ)、本訴訟においては、一転して、財産分与の対象財産にならない旨の主張をしていること、婚姻費用の支払も任意に履行せず(同イ(イ))、部下よりも貧相な住まいに住む必要はないことや、被告が億ションに住んでいることへの憤りといった理由から、家賃月額29万5000円の住居に居住している旨の供述をするなどしていたこと(同イ(エ))、cマンションが財産分与の対象財産にならない旨の主張をしながら、原告が5分の2の持分しか有しない同マンションについて、持分の価格ではなく実質的持分2分の1相当の金銭の取得を希望するなどという一貫しない主張をしていること(前記第2の3(3)(原告))を考慮すると、共有物分割手続においてcマンション及びbマンションの帰するのみを先に決することを求める原告の意図は、被告の特有財産の支出等の無形の寄与が考慮された財産分与がされる前に共有物分割手続において持分の価格を取得し、夫婦共有財産の実質的な清算を拒むことで、被告に経済的な不利益を負わせる点にあったと推測される。

エ 以上のような、前提事実(11)の財産分与手続によらずに、本訴訟の共有物分割手続によってcマンション及びbマンションの帰するが決せられることにより原告の受ける利益と被告の被る不利益等の客観的事情のほか、本訴訟の共有物分割手続においてcマンション及びbマンションの帰するを決することを求める原告の意図とこれを拒む被告の意図等の主観的事情を総合考慮すれば、原告があえてcマンション及びbマンションの共有物分割を請求することは、権利の濫用に該当するというべきである。

(3)小括
 以上のとおりであるから、原告の本訴請求のうちcマンション及びbマンションの共有物分割請求は、争点3(cマンション、bマンション及びaマンションの分割方法)について判断するまでもなく理由がないというべきである。

5 結論
 以上の次第で、原告の本訴請求については、主文第1項の金員の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、原告の本訴請求に係る訴えのうちaマンションの分割を求める部分は不適法なものであるからこれを却下することとし、上記認容部分及び却下部分に係る各請求以外の請求は理由がないからいずれも棄却することとする。
 被告の反訴請求については、主文第4項の金員の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとする。
 よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第26部 裁判官 宮川広臣

以上:5,221文字
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