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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 7- 7- 2(水):2025年07月01日発行第392号”弁護士のドレッサー”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年7月1日発行第392号「弁護士のドレッサー」をお届けします。

○イギリス舞台劇「ドレッサー」なんて全く知りませんでしたが、映画「ドレッサー」もあるのですね。「ドレッサーというのは、楽屋で役者の衣装管理その他の雑用をする人」も初めて知りました。「ドレッサー」という言葉からは、ドレスを作る人くらいしか思いつきませんでした(^^;)。

○確かに「ドレッサー」的立場の方は報われないことが多いですね。ただ義理の親の介護に努めた嫁の立場は、令和元年7月相続法改正で相続人に対し「特別寄与料」の請求が認められ、少しは考慮されるようになりました。しかし、私の事務所では相続の相談はあってもこの特別寄与料の相談はまだ1件もありません。

○大山先生の言われる「人の気持ちに寄り添う解決」は、弁護士としては、ホントに重要な心構えと思います。小松弁護士は、ホントに私の気持ちに寄り添って尽くしてくれたと、お客様に思われるような弁護活動をしてきたかと振り返ると忸怩たる思いになるのが辛いところです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のドレッサー

「ドレッサー」は、50年近く前の、イギリスの演劇です。日本でも三谷幸喜が演出したりと、相当数上演されています。第二次世界大戦下、ロンドン郊外のシェイクスピア劇団が「リア王」を上演しようとします。しかし、主役のリア王を演じる老優は、空襲など戦時下の心労などでボケてきて、どこかに行ってしまう。「リア王」の芝居自体、老いてボケが入った王様が、嵐の荒野をさすらう話ですよね。2つの芝居の内容がリンクしているわけです。ドレッサーというのは、楽屋で役者の衣装管理その他の雑用をする人です。この芝居のドレッサーは、老優と友達でもあり、冗談を言ったり励ましたりもしていました。そして、老優の失踪後、多くの劇団員たちが公演開催を諦めかける中、ドレッサーだけは皆を鼓舞して最終的に公演を成功させるという話です。

この辺の奮闘がとても面白くて、劇の見せ場になっています。ボケていた老優も、ひとたび舞台に立つと、名演技を見せてくれました。これで終わればとても良い話なんですが、名作演劇ともなるとそうはいきません。もう一波乱あります。リア王の舞台が終わり、拍手喝さいを浴びた老優は、自分を支えてくれた人たちの名前を挙げて感謝の気持ちを表します。しかしそこには、誰よりも老優を思い奮闘したドレッサーの名前は出てこなかったのです。ドレッサーも別に感謝されたくて行動したわけでもないでしょう。誰よりも活躍したのに、特に感謝されることなく、誰にも知られず去っていくなんて、すごくカッコいいのかもしれません。「ドレッサー」の芝居の最後で、主人公が何を思っていたのかなど、議論が分かれそうです。

とは言いましても、私を始め一般的な「俗物」なら、自分の頑張りを無視されたら、やはり面白くないですよね。そういえば、やり手の占い師は、お客様の手相を見ながら、次のように言うそうです。「これまで人一番苦労して活躍してきましたね。それなのに誰にも分ってもらえない。本当に辛かったでしょう」 こういわれるとお客さんは、「本当によく当たる占い師だ!」と喜ぶんだそうです。わ。私なんか、毎日通っちゃいそうです。。。 考えてみると、近年話題になっている「妻からの熟年離婚」なんか、長年夫から認めてもらえなかった「ドレッサー」からの愛想尽くしかもしれません。「恋人とは舞台を共にし、妻とは楽屋を共にする」なんて言葉があるそうです。長年、夫の仕事を楽屋で支えてきた妻に対して、表舞台で感謝の気持ちを表明しない夫は沢山いそうです。わ、私も気を付けます。

政治家の秘書なんかも、こういうことあるそうです。秘書の仕事も、選挙対策、陳情対応、政策立案その他、すごく忙しいそうです。議員を励まして、選挙を勝ち抜かないといけません。それなのに、感謝の気持ちを表明されるどころか、「バカ!」「ハゲ!」などと秘書を罵倒していた女性議員が居ましたよね。こういうのはさすがに酷いですよね。こういった「縁の下の力持ち」は、法律の世界でも評価して欲しいと思います。でも、ドレッサーのような人が、現代日本の法律で正当に評価されるかというと、かなり難しいのです。「特に法的義務が無いのに勝手にやったんだろう」ということで、十分な評価はされないことが、日本をはじめほとんどの国の法律です。

例えば、夫と死別後の妻が、義両親の面倒を見続けるなんてことがあります。義両親が特に遺言を作って、お嫁さんへの感謝の言葉と共に財産を残せばよいのですが、そうしないケースが多い。こういう場合、お嫁さんが何も受け取ることができないというのが、現状の法律の世界です。ただ、お嫁さんにしても、劇のドレッサーにしても、お金が欲しくて頑張ったわけでもないでしょう。一言で良いので自分の頑張りを認めてくれて、感謝の言葉が欲しかったはずです。裁判制度の中でもお金による解決だけではなく、人の気持ちに寄り添う解決ができればよいと思ったのでした。

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◇ 弁護士より一言

結婚式で、両親に感謝の言葉を述べるなんて演出がありますよね。あれって、本当に恥ずかしいだろうと若いころから思っていました。実際、自分の結婚式でもしませんでした。でも、今になって思うと、感謝の言葉を送るのは良いことに思えます。そうは言っても「家で楽しそうにくらしている子供達が結婚する日なんてくるのだろうか?」と不安になったのです。。。

以上:2,392文字
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R 7- 7- 1(火):映画”ドールハウス”を観て-残念ながら途中で興ざめ・ネタバレ
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R 7- 6-30(月):映画”カリートの道”を観て-予想外の優れもの映画
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○令和7年6月29日(日)は午後、最近購入したばかりの4KUHDソフトで1993(平成5)年製作名優アル・パチーノ氏主演映画「カリートの道」を鑑賞しました。この映画は、LDもBDも購入したことがなく、価格の下がった4KUHDソフトを購入しての全く初めての鑑賞で、余り期待しないでの鑑賞でした。しかし、ストーリーは明快で判りやすく、グイグイ引き込まれ、ハラハラ・ドキドキ・ワクワクの映画の楽しみをシッカリ堪能できる予想外の優れもの映画でした。名優アル・パチーノ氏と恋人ゲイル役のペネロープ・アン・ミラー氏の魅力もシッカリ堪能できます。

○映画コムでは解説・あらすじとして「麻薬ビジネスで名を馳せた暗黒街の大物カリートが刑務所から出所。彼は犯罪から足を洗うことを決意し、クラブの経営者に収まる。かつての恋人ゲイルとよりを戻すこともできたが、捜査当局からは執拗にマークされ、さらにブロンクスの新興マフィア、ベニーとのいざこざも絶えない。そんな折、カリートはマフィアに脅迫されていた弁護士デイブを助けるが、それがきっかけで命を狙われるハメに……。」と記述されています。

○映画冒頭、アル・パチーノ氏演ずるカリートが銃弾に倒れて点滴を受けながら救急搬送されるも力強い目で生きてやると語りかけるシーンから始まりますが、どのような結末になるか期待と不安が入り混じるものでした。カリートは、殺人・麻薬ビジネス等の犯罪で30年の刑を受けますが、ショーン・ペン氏演ずる親友の敏腕弁護士の尽力で、5年で釈放され、犯罪から足を洗うことを決意します。しかし、一度悪の道に染まった者には、同じような連中が群がり、悪の道から抜けることが如何に難しいかを明快なストーリーでヒシヒシと感じさせます。

○自分を救ってくれ親友と信じていた弁護士からの依頼を断り切れず、女の勘で危険を感じた恋人ゲイルの必至の願いも振り切って弁護士の依頼を受けて実行したことが、その後の運命を決めます。善意のかけらもないやくざ・マフィアの悪の世界の非情さがシッカリと伝わるストーリー展開で、ラストのグランド・セントラル駅でのカリートを追うマフィアたちとの攻防のシーンは、その迫力と緊張感は凄まじく、正に手に汗握るもので、大いに見応えがありました。もう一度じっくり鑑賞したいと思わせる映画です。

『カリートの道』日本版劇場予告編

以上:976文字
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R 7- 6-29(日):映画”カリフォルニア・ダウン”を観て-ネタバレあり
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R 7- 6-28(土):会社締結生命保険契約死亡保険金の一部従業員帰属を認めた高裁判決紹介
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○「会社締結生命保険契約死亡保険金の一部従業員帰属を認めた地裁判決紹介」の続きで、その控訴審平成14年 4月24日名古屋高裁判決(最高裁判所民事判例集60巻4号1481頁、労働判例829号38頁)関連部分を紹介します。

○一審被告の従業員であった亡Dら3名の各妻が、一審被告が亡Dらを被保険者として訴外生命保険会社他8社との間で締結した団体定期保険契約に基づき、亡Dらの死亡によって一審被告が支払を受けた生命保険金について、遺族である各妻に支払われるべきものであるとして、一審被告にそれぞれの保険金金額相当額に相当する金員の支払を請求し、原審では妻らの請求が一部認容されました。

○名古屋高裁判決も、団体定期保険契約の主たる目的は、福利厚生措置によって遺族に支払う弔慰金、死亡退職金、労災上乗せ補償金等の給付に充てることにあり、相当額の経費の支出を要するから、全額遺族に支払われるべきものとは言えないとして、既払いの死亡退職金を控除した保険金相当額の支払いを命じました。

○また名古屋高裁判決は、団体定期生命保険は、各保険会社と会社との間で締結されるものであり、少なくとも一方の当事者が商人たる株式会社である以上、商行為に当たり、同契約に基づき、死亡した従業員の遺族に対して退職金等として支払われるべき給付については、商事法定利率年6分の遅延損害金が支払われるべきとしました。

○さらに、団体定期保険契約の保険契約者である会社は、同保険契約を維持し続けるために相当額の経費の支出しているのであるから、保険金額について社会的に相当な金額を超える部分を会社が取得し、会社が福利厚生措置によって遺族に支払う弔慰金、死亡退職金、労災上乗せ補償金等の給付に充てることは許容されるべきであり、保険金額がさらに増大した場合であっても、会社が保険金額の2分の1を限度に保険金を取得することは公序良俗に反しないとしました。妥当な判決と思いました。

○しかし、「会社締結生命保険契約死亡保険金の全部会社帰属を認めた最高裁判決紹介」記載のとおり、上告審最高裁判所は、原審名古屋高裁の判断には、違法があるとして、遺族の請求を全て棄却しました。遺族の衝撃と落胆は相当大きかったと思われます。

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主   文
1 1審原告らの控訴及び当審における請求の拡張に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1)1審被告は,1審原告甲野花子に対し,金1836万円及びこれに対する平成9年7月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)1審被告は,1審原告乙山月子に対し,金1711万5000円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3)1審被告は,1審原告丙川雪子に対し,金2111万7000円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(4)1審原告らのその余の請求(当審において拡張された請求を含む。)をいずれも棄却する。
2 1審被告の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審ともこれを3分し,その2を1審原告らの負担とし,その余を1審被告の負担とする。
4 この判決は,1項(1)ないし(3)に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 1審原告ら

(1)原判決を次のとおり変更する。
ア 1審被告は,1審原告甲野に対し,6120万円及びこれに対する平成9年7月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
イ 1審被告は,1審原告乙山に対し,6120万円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
ウ 1審被告は,1審原告丙川に対し,6680万円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(当審において,1審原告丙川は,請求金額を6120万円から6680万円に拡張し,かつ,1審原告ら全員は,遅延損害金の割合を年5分から年6分に拡張した。)
(2)1審被告の控訴を棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。
(4)仮執行宣言

2 1審被告
(1)原判決中1審被告の敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消しにかかる1審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3)1審原告らの控訴及び当審において拡張された請求をいずれも棄却する。
(4)訴訟費用は,第1,2審とも1審原告らの負担とする。

第2 事案の概要
1 本件は,1審被告の従業員であった亡甲野一郎(以下「亡一郎」という。),亡乙山二郎(以下「亡二郎」という。)及び亡丙川三郎(以下,「亡三郎」といい,上記3名を併せて「亡一郎ら」という。)の各妻が,1審被告が亡一郎らを被保険者として訴外日本生命保険相互会社ほか8社との間で締結した団体定期保険契約に基づき,亡一郎らの死亡によって1審被告が支払を受けた生命保険金について,それが遺族である各妻に支払われるべきものであるとして,1審被告に対し,それぞれ保険金全額に相当する金員の支払を請求した事案であり,原審が,1審原告らの請求を一部認容しその余は棄却したため,当事者双方が控訴したものである。

2 争いのない事実等,争点及び当事者の主張は,以下に原判決を改訂し,当審主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の一,二項及び「第三 争点についての当事者の主張」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

3 原判決の改訂

     (中略)

第3 当裁判所の判断
 当裁判所も,1審原告らの本訴請求(当審において拡張された請求を含む)は,1審原告甲野に対し1836万円及びこれに対する平成9年7月25日から,1審原告乙山に対し1711万5000円及びこれに対する平成10年10月6日から,1審原告丙川に対し2111万7000円及びこれに対する平成10年10月6日から,各支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下に原判決を改訂するほか,原判決「事実及び理由」の「第四 争点に対する判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。

1 原判決の改訂
(1)原判決117頁7行目の「と超えている」を「を超えている」と,同133頁7行目の「経済的損失の」を「経済的損失を」と,同161頁6行目の「契約者」を「保険契約者」と,同166頁4行目の「一通票」を「一通」と,同170頁4行目の「契約者」を「保険契約者」と,同182頁12行目の「四二」を「四二の1ないし3,四三」と,同206頁4行目の「退職協定」を「退職金協定」と,同225頁10行目の「確認されているに」を「確認されている」と,同226頁4行目の「あったすれば」を「あったとすれば」と,それぞれ改める。

(2)同228頁1行目の「これから」を「また,平成6年12月1日の契約更新によって保険金は6680万円になっていたが,亡三郎については,前記のとおり6090万円の限度で保険金が支払われたから,これから,」と改める。

(3)同228頁3行目の「5871万0600円」を「5841万0600円」と改める。

(4)同230頁13行目の「保険金6120万円」を「保険金,すなわち,亡一郎及び亡二郎につき6120万円,亡三郎につき6090万円」と改める。

(5)同231頁5行目から6行目にかけての「2935万5300円」を「2920万5300円」と,同232頁6行目(60頁右段33行目)の「1835万1000円」を「1836万円」と,それぞれ改める。

2 当審主張に対する判断
(1)1審原告らの当審主張(1),1審被告の当審主張(1)について
 前記第2の3(2)に認定のとおり,亡三郎死亡時点においては,本件各団体定期保険契約の保険金総額は6680万円に増額されていたものの,本件各保険会社から支払われた保険金は合計6090万円であり,この金額を前提とすると,1審原告丙川に対する認容額は,引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)のとおりとなる。
 1審原告らの上記主張は採用できない。

(2)1審原告らの当審主張(2),1審被告の当審主張(2)について
 当裁判所は,1審原告らの請求は,本件各保険会社と1審被告との間の契約の趣旨(付保目的)についての合意に基づき認められるものと判断するものであり,上記合意は,少なくとも一方の当事者が商人たる株式会社によってなされているから,商行為に当たり,同合意に基づく請求権については,商事法定利率年6分の遅延損害金が支払われるべきものである。
 1審被告の上記主張は採用できない。

(3)1審原告らの当審主張(5),(6)について
 引用にかかる原判決の認定によれば,団体定期保険契約の主たる目的は,福利厚生措置によって遺族に支払う弔慰金,死亡退職金,労災上乗せ補償金等の給付に充てることにあるところ,団体定期保険契約を毎年維持し続けるためには相当額の経費の支出が必要となり,保険金額が高額になるほどその経費は増大するものであり,保険契約者における団体定期保険契約の収支は,保険会社から支払われる配当金及び保険金の全額をその年度の保険料の支払に充当しても通常赤字になるものであるから,保険金額が社会的に相当な金額を超える場合には,原則として同相当額を超える部分を上記経費に充てることは許容すべきである。

ただし,保険金額がさらに大きくなり,上記社会的に相当な金額の2倍を上回るときには,上記原則に従うならば,1審被告が保険金額の2分の1を超えて取得することとなり,上記団体定期保険契約の主たる目的に沿わないものというべきであるから,保険金額の2分の1の限度において上記経費に充てることを許容すべきである。そうすると,保険金額が大きくなればなるほど,保険契約者が取得する金額が大きくなるが,このことは,同取得額が保険料の支払に充当され,他方で遺族に支払われる金額も大きくなることに鑑みると,不当なことではないと解される。

 以上のとおり考えると,保険金額が社会的に相当な金額を超えるときには、原則として上記相当な金額,ただし,保険金額が上記相当額の2倍を上回るときには保険金額の2分の1が,遺族に支払われるならば,団体定期保険契約は公序良俗に反しないものと解することは,相当であるといわなければならない。

 なお,団体定期保険契約に支分契約性があることから,直ちに,保険金相当額が全額被保険者に支払われるべきことを結論づけることはできないものと解される。 
 そうすると,1審原告らの上記主張は採用できない。

(4)1審原告らの当審主張(7),1審被告の当審主張(6)について
 引用にかかる原判決認定の事情,特に,本件各団体定期保険契約の保険金総額,1審被告の規模,福利厚生制度の内容のほか,現在の社会の状況等一切の事情を総合考慮すると,本件において,上記社会的に相当な金額は亡一郎らにつきいずれも3000万円と認めるのが相当であり,亡一郎らにつき,個別に異なる金額とすべきものとする事情は,これを認めるに足りる証拠はない。算定基準を示していない旨の1審原告らの非難は当たらない。

(5)1審原告らの当審主張(8)について
 引用にかかる原判決の認定判断のとおり,本件各保険会社と1審被告との保険契約の趣旨(付保目的)についての合意は,保険金の全部又は一部を福利厚生措置によって遺族に支払う弔慰金,死亡退職金,労災上乗せ補償金等の給付に充てることを内容とするものであるから,既払の死亡退職金は,遺族に対して支払われるべき保険金相当額から控除するのが相当である。

 1審原告らは,退職金は賃金の後払的性格を有し,福利厚生措置には含まれないとして,その控除をすべきでない旨主張するが,上記合意においては,保険金の充当されるべき対象として死亡退職金を含むことがその内容となっているから,「福利厚生措置」という文言の意味によって,退職金を控除することが否定されるものとは解されない。

 また,1審原告らは,仮に退職金への充当が許されると解したとしても日本生命との間の合意である755万円に限定されるべきである旨主張するが,引用にかかる原判決の認定事実のとおり,本件各団体定期保険契約においては,その契約の趣旨が,日本生命との間で755万円につき死亡退職金に充当することが合意されていたほかは,業務外の死亡に関しては,死亡退職金を含む福利厚生制度に基づく給付に充当することが合意されていただけで,具体的な使途は特定されていなかったものであるから,上記主張は採用できない。
 1審原告らの上記主張中のその余の部分も,引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)に照らして採用できない。

(6)1審被告の当審主張(8)について
 原判決は,本件各保険会社と1審被告との間の保険契約の趣旨(付保目的)についての合意を第三者のためにする契約と認定して同契約に基づく請求を認容したものであるところ,当審の第1回口頭弁論期日において,当事者双方は,原判決のとおり原審口頭弁論の結果を陳述したことは当裁判所に顕著である。

 そうすると,原審においては,上記契約に基づく請求権が選択的に併合されていたものと認められ,その請求原因は,そのような法的構成を明示して主張されていなかったとしても,原審の口頭弁論に顕れていたものと解するのが相当であるから,1審被告の上記主張は採用できない。

(7)その他,1審原告ら及び1審被告は当審においてるる主張し,証拠(〈証拠略〉)を提出するが,いずれも引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)及び上記判断を覆すに足りない。

第4 結論
 よって,1審原告らの控訴及び当審における請求の拡張に基づき,以上と異なる原判決を変更し,1審被告の控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。名古屋高等裁判所民事第3部
裁判長裁判官 福田晧一 裁判官 藤田敏 裁判官 倉田慎也

以上:5,804文字
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R 7- 6-27(金):会社締結生命保険契約死亡保険金の一部従業員帰属を認めた地裁判決紹介
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○「会社締結生命保険契約死亡保険金の全部会社帰属を認めた最高裁判決紹介」の続きで、その第一審の平成13年3月6日名古屋地裁判決(判タ1093号228頁)関連部分を紹介します。

○被告の従業員らの妻達である原告が、被告が従業員らを被保険者として訴外保険会社と締結した団体定期保険契約に基づき受け取った生命保険金は、原告に支払われるべきであると主張し、被告に対し、保険金全額に相当する金員6120万円の支払を求めました。

○これに対し、名古屋地裁判決は、保険金の使途が特定されていない場合でも、保険会社から支払われる死亡保険金より共益費用となる当該被保険者についての保険料の既払額を差し引いた残額のうちから、被保険者の遺族に対する給付に充当すべき金額を算出し、これから、企業の福利厚生制度による社内規定によって既に給付された金額を差し引いた残額をもって遺族への給付額とすべきものであるとして、請求の一部を認容しました。

○被告と保険会社の間の保険金の全部又は相当部分の支払の合意については、これらの合意は,被保険者の死亡保険金の全部又は一部[保険金額が従業員の死亡の場合に福利厚生制度に基づいて支払われる給付額として社内的に相当な金額の範囲内のものであれば,原則としてその全部を,保険金額が右給付額として社会的に相当な金額を超えて多額に及ぶ場合には,保険金額の少なくとも2分の1に相当する金額(ただし,右給付額として社会的に相当な金額が右2分の1に相当する金額を上回る場合には,社会的に相当な金額が基準になるというべきである。)]を被保険者の遺族に対して福利厚生制度に基づく給付に充当することを内容とするとしました。

○そして,在職中の不慮の死亡に対する付加給付の金額等総合考慮すれば,死亡従業員亡一郎らにつき,それぞれ3000万円を下回るものではないと認めるのが相当として、被告の社内規定に基づいて亡一郎らの相続人である原告らに支払われた給付分にも死亡保険金による充当が認められ,これを既払分として控除し、未払額は,亡一郎関係につき,1835万1000円,亡二郎関係につき,1711万5000円,亡三郎関係につき,2111万7000円となるとしました。私自身としては、バランスの取れた妥当な判断と思いました。

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主   文
一 被告は,原告甲野花子に対し,金1835万1000円及びこれに対する平成9年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 被告は,原告乙山月子に対し,金1711万5000円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 被告は,原告丙川雪子に対し,金2111万7000円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
四 原告らのその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
六 この判決は,原告ら勝訴の部分に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

一 被告は,原告甲野花子に対し,金6120万円及びこれに対する平成9年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 被告は,原告乙山月子に対し,金6120万円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 被告は,原告丙川雪子に対し,金6120万円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は,被告の従業員であった亡甲野一郎(以下「亡一郎」という。),亡乙山二郎(以下「亡二郎」という。)及び亡丙川三郎(以下「亡三郎」という。なお,亡一郎,亡二郎及び亡三郎を含め,以下「亡一郎ら」という。)の各妻が,被告が亡一郎らを被保険者として訴外日本生命保険相互会社ほか8社との間で締結した団体定期保険契約に基づき,亡一郎らの死亡によって被告が支払を受けた生命保険金について,それが遺族である各妻に支払われるべきものであるとして,被告に対し,それぞれ保険金全額に相当する金員の支払を請求した事案である。

一 争いのない事実等(証拠を示した部分以外は争いがない。)
1 当事者
(一)亡一郎(昭和14年7月1日生)は,昭和38年に被告に臨時工として入社し,約1年後に正社員となって以降,被告の従業員として勤務していたところ,平成6年6月13日,脳梗塞により死亡した(死亡時満54歳)。

     (中略)

2 団体定期保険契約の締結
(一)被告は,次のとおり,生命保険会社9社(以下「本件各保険会社」という。)との間で,それぞれ団体定期保険契約を締結していた(以下「本件各団体定期保険契約」という。)。
(1)日本生命保険相互会社(以下「日本生命」という。)関係

     (中略)

3 死亡保険金
 被告は,亡一郎らの死亡により,本件各団体定期保険契約に基づき,本件各保険会社より,死亡保険金としてそれぞれにつき合計6120万円の支払を受けた。なお,内訳は,別紙保険目録記載のとおりである。
 なお,亡三郎の死亡当時,同人を被保険者とする生命保険金の総額は,合計6680万円であった(平成6年12月1日をもって増額された。)と考えられるところ,当事者間では,合計6120万円として請求原因事実に争いがないものである。

4 原告らが亡一郎らの死亡により被告から支給を受けた金員(〈証拠略〉)
(一)亡一郎(原告甲野花子)関係(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)
退職金 1093万4000円(遺族一時金を含む。)
葬祭料   65万6000円
慶弔金    5万0000円(他に供花1対)
合計  1164万0000円
 なお,この他に,健康保険組合から埋葬料36万円が支給されている。

     (中略)

二 争点
1 保険金の全部又は相当部分の支払の合意の存否
2 仮に,被告と亡一郎らとの労働契約関係において,本件各団体定期保険契約による保険金の全部又は相当部分の支払の合意がないことにより,被告において,右保険金の全部又は相当部分を被保険者の遺族に支払うことなく,自ら取得して他の用途に使用するという取扱いが既成事実となっていたとした場合,かかる取扱いの公序良俗違反性の有無
3 信義則上の支払義務の存否
4 準共有の成否
5 不当利得返還請求権の存否(本件各団体定期保険契約における保険金受取人指定部分の有効性)
6 被告が亡一郎らの遺族に対して支払うべき金額

     (中略)

第三 争点についての当事者の主張〈略〉

第四 争点に対する判断
一 団体定期保険制度の沿革とその運用経過について

1 証拠によれば,次の事実が認められる。

     (中略)

2 団体定期保険契約(Aグループ保険)の法的性格について
(一)団体定期保険契約の目的について

     (中略)

二 被告による本件各団体定期保険契約締結の経過等について
1 証拠によれば,次の事実が認められる。

     (中略)

〔1〕保険契約の目的
 従業員死亡の際の会社としての具体的な出費及び人的損失を担保するものであり,具体的には,次のとおりである。
ア 遺族補償
弔慰金
供花料
死亡退職金
遺児福祉年金
特別弔慰金(労災付加補償)
イ 従業員死亡に伴う経済的損失の補填
従業員死亡に伴う逸失利益
代替人材の採用・育成経費等
ウ その他
当該死亡に関連する不慮の出費の補填等

〔2〕被保険者の同意
 従業員全員が被保険者となるため,事前に全員について個別に同意を得ることは事実上不可能であり,訴外組合に対しその趣旨を説明の上,一括同意を得ることとし,従業員死亡の際には,遺族に説明の上,了解を得て必要書類を提出して頂くこととする。

     (中略)

三 保険金の全部又は相当部分の支払の合意の存否について
 本件各団体定期保険契約については,いずれも,保険会社と保険契約者である被告との間で,前記のとおり,契約の趣旨(付保目的)についての各合意が成立しているところ,これらの合意は,被保険者の死亡保険金の全部又は一部[保険金額が従業員の死亡の場合に福利厚生制度に基づいて支払われる給付額として社内的に相当な金額の範囲内のものであれば,原則としてその全部を,保険金額が右給付額として社会的に相当な金額を超えて多額に及ぶ場合には,保険金額の少なくとも2分の1に相当する金額(ただし,右給付額として社会的に相当な金額が右2分の1に相当する金額を上回る場合には,社会的に相当な金額が基準になるというべきである。)]を被保険者の遺族に対して福利厚生制度に基づく給付に充当することを内容とするものであり,既存の社内規定に基づく給付額が右保険金によって充当すべき金額と一致するか,又はこれを上回るときは,既存の社内規定に基づく給付額で足りるが,逆に,これを下回るときは,その差額分を保険金から支払うことを意味内容として含むものであり,被保険者の遺族において,右合意の利益を享受する意思を表示したときには,保険契約者に対し,右合意に基づいて給付を請求する権利を取得するものである。

 しかして,原告らは,本件訴訟を提起したことにより,亡一郎らの相続人として右合意の利益を享受する意思を表示していることは明らかである。
 なお,原告らは,保険金の全部又は相当部分の支払の合意について,第1次的には,保険契約者である被告と被保険者である従業員らとの間の合意として主張しているものであるが,要件事実としては,保険会社と保険契約者である被告との間で契約の趣旨(付保目的)についての確認がなされていることを前提とし、被保険者がこれに同意することによって,被保険者の遺族が保険契約者に保険金の全部又は相当部分の支払を請求する権利を取得する合意が成立することを主張しているものであって,右認定事実とは,要件事実としての同一性の範囲内のものと認めるのが相当である。

四 被告が亡一郎らの相続人である原告らに対して支払うべき金額について
 前記判示のとおり,本件各団体定期保険契約の保険金6120万円から共益費用である亡一郎らのために支払われた保険料総額を差し引いた残額の2分の1に相当する金額,又は,遺族補償として社会的にも相当な金額のうち,より多額の方が,亡一郎らの相続人である原告らに遺族補償として支払われるべき金額となるところ,2分の1に相当する金額は,亡一郎につき,2940万2205円,亡二郎につき,2963万9526円,亡三郎につき,2935万5300円となるが,他方,遺族補償として社会的にも相当な金額としては,本件に現われた一切の事情(配当金による還元があったことに加え,後述のとおり,既に原告らに支払われた給付の全額に保険金の充当が認められるものであり,かつ,その給付は,ほとんどが退職金であり,在職中の不慮の死亡に対する付加給付としては,葬祭料のほか,わずかに慶弔金5万円と原告丙川につき遺児福祉年金75万円が支給されているのみで弔慰金の支給は全くないことなどの事情を含む。)を総合考慮すれば,亡一郎らにつき,それぞれ3000万円を下回るものではないと認めるのが相当であり,結局,原告らに遺族補償として支払われるべき金額は,それぞれ3000万円をもって相当と認める。

 しかして,前記認定にかかる被告と本件各保険会社との本件各団体定期保険契約についての契約の趣旨(付保目的)についての合意の内容に照らせば,被告の社内規定に基づいて亡一郎らの相続人である原告らに支払われた給付分にも死亡保険金による充当が認められるものと解されるから,これを既払分として控除すると,未払額は,亡一郎関係につき,1835万1000円,亡二郎関係につき,1711万5000円,亡三郎関係につき,2111万7000円となる。

 なお,右の結果により,被告は,亡一郎らの各死亡保険金のうち,それぞれ3000万円近くを取得することになるところ,被告においては,3000名を超える従業員全員を被保険者として本件各団体定期保険契約に加入し,これを継続することにより,毎年度多額の保険料を負担して,恒常的に相当の持ち出しをしているものであり,右のように従業員の死亡保険金のうち,半分近くを取得したとしても,何ら利得を得るものではないことからすれば,福利厚生措置としての本件各団体定期保険契約の継続の費用に充当するためのものとして,その取得を認めることに不都合はないというべきである。

五 原告らのその余の主張について
 原告らは,本件各団体定期保険契約において被告を保険金受取人と指定した部分は公序良俗に違反するもので無効である旨主張するけれども,団体定期保険契約において保険金の受取人を保険契約者である企業とすることは通常よく行われていることであり,保険会社との関係で保険契約者が自ら保険金の受取人になったとしても,それだけで,団体定期保険契約を公序良俗に違反する目的で利用したことになるものではないというべきであり,主張自体失当である。

2 信義則上の支払義務の主張について
 原告らは,労働契約に付随する信義則上の義務として,特段の事情がない限り,保険契約者である使用者は,団体定期保険によって支払を受けた保険金を被保険者である従業員又はその遺族に支払うべき義務を負う旨主張するけれども,信義則のみを根拠にして,かかる支払義務を使用者が負うと解することはできないというべきであり,これについても主張自体失当である。

六 結論
 以上の事実によれば,原告らの本訴各請求は,それぞれ主文認容の限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第1部 裁判官 田近年則
以上:5,673文字
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R 7- 6-26(木):会社締結生命保険契約死亡保険金の全部会社帰属を認めた最高裁判決紹介
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○「会社契約傷害保険契約に基づく保険金の従業員帰属を認めた高裁判決紹介」の続きで、従業員を被保険者とした生命保険契約についての死亡保険金の帰属を受取人と指定された会社に帰属することを認めた平成18年4月11日最高裁判決(判時1933号61頁、判タ1212号102頁)全文を紹介します。

○Y社が、複数の生命保険会社との間で、保険金受取人をY、被保険者をYの従業員全員とし、死亡保険金の合計額が従業員1人につき6120万円を超える団体定期保険(いわゆるAグループ保険)契約を締結し、従業員の死亡により保険金を受領する一方、当該従業員の遺族Xに対しては、社内規定に基づく給付額である1000万円程度の死亡時給付金を支払ったにとどまりました。そこで、従業員遺族は、Y社に対し受領保険金6120万円全額を遺族に支払うべきとして提訴しました。

○これに対し、一審・控訴審判決は、第1審被告が第1審原告らに支払うべき死亡時給付金として社会的に相当な金額は,本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,それぞれ3000万円を下回るものではないと認められ、第1審被告は,3000万円から既払の退職金等の額を控除した金額を,第1審原告らそれぞれに支払うべき義務があるとして、約1711~2111万円程度の支払を命じました。

○これに対し、最高裁判決は、
〔1〕他人の生命の保険については被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図るべく保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求する規制を採用していない立法の下では、直ちに上記契約が公序良俗に違反するとはいえないこと、
〔2〕Yは、団体定期保険の主たる目的が受領保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあることは認識していたものの、死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然と考え、そのような取扱いに終始していたのであり、社内規定に基づく給付額を超えて受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを黙示的にも合意したと認める余地はないことなど判示の事情の下では、上記のような団体定期保険の運用が公序良俗に違反することを前提として、これを免れるためには、Yは、生命保険会社との間の第三者のためにする契約をもって、社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金として社会的に相当な金額(3000万円)に満つるまでの額をXに支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断には、違法があるとして、遺族の請求を全て棄却しました。

○バランス的には一審・控訴審判決が妥当な気がしますが、最高裁は、生命保険については、保険法第8・12条の規定がない以上、受取人の会社が全額受領しても、公序良俗違反にはならないとしました。

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主   文
1 原判決のうち平成14年(受)第1359号上告人敗訴部分を破棄する。
2 第1審判決のうち平成14年(受)第1359号上告人敗訴部分を取り消す。
3 平成14年(受)第1359号被上告人らの前項の部分に関する請求及び原審における請求の拡張部分を棄却する。
4 第1項の部分に関する平成14年(受)第1359号被上告人X1の控訴を棄却する。
5 平成14年(受)第1358号上告人らの上告をいずれも棄却する。
6 訴訟の総費用は平成14年(受)第1358号上告人・同第1359号被上告人らの負担とする。

理   由
第1 事案の概要

1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)平成14年(受)第1358号被上告人・同第1359号上告人(以下「第1審被告」という。)は,非鉄金属部品の製造,販売等を業とする株式会社であり,従業員は約3200人である。

(2)第1審被告は,昭和48年以降,団体定期保険(いわゆるAグループ保険。以下同じ。)契約を締結するようになり,下記(5)の従業員らの死亡当時,A,B,C,D,E,F,G,H及びI(商号はいずれも当時。以下「本件各生命保険会社」という。)との間で,それぞれ,保険契約者兼保険金受取人を第1審被告,被保険者を第1審被告の従業員全員とする団体定期保険契約(以下「本件各保険契約」という。)を締結していた。


(3)本件各保険契約には商法674条1項所定の被保険者の同意が要求されるところ,第1審被告は,その従業員によって組織される労働組合であるJの執行部役員に対し,労働協約に基づく従業員への給付制度の財源対策として,従業員全員を被保険者とし第1審被告を保険金受取人とする団体定期保険に加入するという程度の説明を,口頭で簡単にしたことにより,被保険者となる従業員全員の同意に代えていた。そして,第1審被告も,上記労働組合も,その従業員,組合員に対し,本件各保険契約を周知させる措置を執ったことはなく,同労働組合の執行部役員の経験者を除いて,第1審被告の従業員のほとんどの者は,本件各保険契約の存在さえ知らず,自らがその被保険者となっていることの認識もなかった。

(4)団体定期保険の運用については,かねてから,保険契約の存在や保険金支払の事実を従業員又はその遺族に知らせなかったり,保険会社から資金の貸付けを受ける見返りとして,従業員が死亡しても保険金を請求しないなどの不適切な事例がみられたことから,当時の監督官庁である大蔵省は,生命保険各社に対し,団体定期保険の本来の趣旨に沿った運用を行うことを徹底するよう行政指導を行ってきた。これを受けて,生命保険各社は,平成4年3月以降,保険契約者に対し,福利厚生制度のうちいかなる給付制度との関係で契約を申し込むものか申込書等に明示するよう求めて契約の趣旨を明らかにさせるとともに,保険契約者との間で協定書等を取り交わすことにより,保険金の全部又は一部を社内規定に基づいて遺族に支払う金員に充当することを確約させるという取扱いを実施するようになった。

これ以後,第1審被告においても,団体定期保険の主たる目的が,受領した保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあり,保険金の全部又は一部を社内規定に基づく給付に充当すべきことを認識するに至った。もっとも,第1審被告が団体定期保険契約を締結した主な動機は,生命保険各社との関係を良好に保つことで,設備資金等の長期借入金の融資を受けやすくすることを意図したものであり,これを従業員の福利厚生のために役立てるなどして有効に活用しようとする意識に欠け,受領した配当金及び保険金は,これを漫然と保険料の支払に充当するにすぎなかった。

 なお,第1審被告が,毎年度,本件各保険契約に基づいて受領する配当金及び保険金の総額は,本件各生命保険会社に支払う保険料の総額の75~90%程度にすぎず,その収支は常に赤字であった。

(5)平成14年(受)第1358号上告人・同第1359号被上告人(以下「第1審原告」という。)らは,死亡当時第1審被告の従業員であった下記3名のそれぞれの妻であり,夫の死亡により,本訴請求(その内容は後記2のとおり。)に係る地位を単独で相続した。その死亡保険金及び社内規定に基づく死亡時給付金の支払状況は,以下のとおりである。

ア K(第1審原告X1関係)
 同人は平成6年6月13日に脳こうそくにより死亡した(当時54歳)。第1審被告は,本件各保険契約に基づく同人の死亡保険金として,本件各生命保険会社から計6120万円を受領する一方,社内規定に基づき,第1審原告X1に対し,退職金1093万4000円,葬祭料65万6000円,慶弔金5万円,以上合計1164万円を支払った。

イ L(第1審原告X2関係)
 同人は平成6年7月10日にすい臓がんにより死亡した(当時51歳)。第1審被告は,本件各保険契約に基づく同人の死亡保険金として,本件各生命保険会社から計6120万円を受領する一方,社内規定に基づき,第1審原告X2に対し,退職金1196万4000円,葬祭料87万1000円,慶弔金5万円,以上合計1288万5000円を支払った。

ウ M(第1審原告X3関係)
 同人は平成6年12月21日に肝臓がんにより死亡した(当時52歳)。第1審被告は,本件各保険契約に基づく同人の死亡保険金として,本件各生命保険会社から計6090万円を受領する一方,社内規定に基づき,第1審原告X3に対し,退職金736万8000円,葬祭料71万5000円,慶弔金5万円,遺児福祉年金75万円,以上合計888万3000円を支払った。

2 本件は,第1審原告らが,第1審被告に対し,それぞれの夫の死亡により支払われた保険金の全額に相当する金員の支払を求める事案である。第1審原告らは,その根拠として,
〔1〕第1審被告は,本件各保険契約に基づく死亡保険金が支払われた場合には,その全部又は相当部分を死亡従業員の遺族に支払う旨の明示又は黙示の合意をした,
〔2〕第1審被告は,労働契約に付随する信義則上の義務として,本件各保険契約に基づいて支払を受けた保険金を被保険者の遺族に支払う義務がある
などと主張する。

第2 平成14年(受)第1359号上告代理人宮島康弘,同富田純司,同布施謙吉の上告受理申立て理由について
1 原審は,次のとおり判断して,第1審被告に対し,第1審原告X1に1836万円,同X2に1711万5000円,同X3に2111万7000円及びこれらに対する遅延損害金の支払を命ずる限度で,第1審原告らの請求を認容した。

(1)団体定期保険の主たる目的は,保険契約者である企業において,その受領した保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあり,保険契約者がその本来の目的と異なる目的又は方法で団体定期保険契約を利用することは、公序良俗に違反するものとして許されないと解すべきである。そして,公序良俗に違反しないというためには,従業員の死亡保険金を受領した企業が,保険金の全部又は一部,少なくとも,死亡時給付金として社会的に相当な金額に満つるまでの額を,遺族補償として支払う必要がある。

(2)前記のとおり,平成4年3月以降,保険契約者は,団体定期保険の締結に当たり,契約申込書等に契約の趣旨として福利厚生制度との関連を明示するとともに,保険会社との間で協定書等を取り交わすことにより,団体定期保険契約の目的を明確にし,保険金の全部又は一部を社内規定に基づいて遺族等に支払う給付に充当することを確約する取扱いとなっていた。これは,保険契約者が,保険会社との間で,上記(1)の額を被保険者の遺族に対する給付として充当することを合意した趣旨であると解するのが相当である。そして,この保険会社と保険契約者との間の合意は,第三者である被保険者のためにする契約に当たるものであり,被保険者又はその遺族が受益の意思表示をしたときは,保険契約者に対する給付請求権を取得することとなる。 

(3)本件における第1審被告と本件各生命保険会社との間においても,第1審被告が,本件各保険契約に基づいて受領した保険金の全部又はそのうち少なくとも死亡時給付金として社会的に相当な金額に満つるまでの額を,遺族補償として支払う旨の合意(第三者のためにする契約)が成立したというべきであり,かつ,この合意は,社内規定に基づく給付額が遺族補償として支払うべき上記金額を下回るときは,第1審被告がその差額分を保険金から支払うとの内容を含むものと解される(以下,この合意を「本件合意」という。)。そして,第1審被告が第1審原告らに支払うべき死亡時給付金として社会的に相当な金額は,本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,それぞれ3000万円を下回るものではないと認められる。そうすると,第1審被告は,3000万円から既払の退職金等の額(前記第1の1(5))を控除した金額を,第1審原告らそれぞれに支払うべき義務がある。

(4)信義則に基づく請求など,本件合意以外の根拠に基づく第1審原告らの請求は,いずれも理由がない。

2 しかしながら,原審の上記判断のうち(4)は是認することができるが,その余の部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1)団体定期保険契約は,他人の死亡により保険金の支払を行うものであるところ,このような他人を被保険者とする生命保険は,保険金目当ての犯罪を誘発したり,いわゆる賭博保険として用いられるなどの危険性があることから,商法は,これを防止する方策として,被保険者の同意を要求することとする(674条1項)一方,損害保険における630条,631条のように,金銭的に評価の可能な被保険利益の存在を要求するとか,保険金額が被保険利益の価額を超過することを許さないといった観点からの規制は採用していない。

 本件で,第1審被告が,被保険者である各従業員の死亡につき6000万円を超える高額の保険を掛けながら,社内規定に基づく退職金等として第1審原告らに実際に支払われたのは各1000万円前後にとどまること,第1審被告は,生命保険各社との関係を良好に保つことを主な動機として団体定期保険を締結し,受領した配当金及び保険金を保険料の支払に充当するということを漫然と繰り返していたにすぎないことは,前記のとおりであり,このような運用が,従業員の福利厚生の拡充を図ることを目的とする団体定期保険の趣旨から逸脱したものであることは明らかである。

しかし,他人の生命の保険については,被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図ることとし,保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求するような規制を採用していない立法政策が採られていることにも照らすと,死亡時給付金として第1審被告から遺族に対して支払われた金額が,本件各保険契約に基づく保険金の額の一部にとどまっていても,被保険者の同意があることが前提である以上,そのことから直ちに本件各保険契約の公序良俗違反をいうことは相当でなく,本件で,他にこの公序良俗違反を基礎付けるに足りる事情は見当たらない。原審の上記判断は,その立論の前提を欠くというべきである。

(2)また,第1審被告が,団体定期保険の本来の目的に照らし,保険金の全部又は一部を社内規定に基づく給付に充当すべきことを認識し,そのことを本件各生命保険会社に確約していたからといって,このことは,社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金を遺族等に支払うことを約したなどと認めるべき根拠となるものではなく,他に本件合意の成立を推認すべき事情は見当たらない。

むしろ,第1審被告は,死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然のことと考え,そのような取扱いに終始していたことが明らかであり,このような本件の事実関係の下で,第1審被告が,社内規定に基づく給付額を超えて,受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを,明示的にはもとより,黙示的にも合意したと認めることはできないというべきである。

原審は,合理的な根拠に基づくことなく,むしろその認定を妨げるべき事情が認められるにもかかわらず,本件合意の成立を認めたものであり,その認定判断は経験則に反するものといわざるを得ない。このような合意を根拠とする第1審原告らの請求は理由がない。

3 以上によれば,第1審原告らの請求を一部認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決のうち第1審被告敗訴部分は破棄を免れない。第1審被告の論旨は理由がある。

第3 平成14年(受)第1358号上告代理人山本博ほかの上告受理申立て理由について
 上告受理申立て理由第1から第3までは,第1審被告が受領した保険金の全部又は一部を死亡従業員の遺族に支払うべき義務があることを前提に,その支払義務の範囲を論ずるものであるが,そのような支払義務を認めることのできないことは上記のとおりである。論旨は前提を欠くものとして採用することができない。
 上告受理申立て理由第4は,信義則に基づく請求を認めなかった原審の判断の法令違反をいうものであるが,この点の原審の判断は正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は理由がない。

第4 結論
 以上のとおりであるから,第1審被告の上告に基づき,原判決のうち第1審被告敗訴部分を破棄し,第1審判決のうち第1審被告敗訴部分を取消し,同部分に関する第1審原告らの請求及び第1審原告らの原審における請求の拡張部分をいずれも棄却するとともに,第1審原告X1の控訴(原審で第1審原告X1の認容額を増額する変更がされた部分に係る控訴)を棄却し,第1審原告らの上告については,これを棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官上田豊三,同藤田宙靖の各補足意見がある。
以上:6,942文字
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R 7- 6-25(水):会社締結損害保険契約に基づく保険金の従業員帰属を認めた高裁判決紹介
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○「会社契約損害保険契約に基づく保険金の従業員帰属を認めた地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和5年4月14日大阪高裁判決(判例時報2621号17頁)全文を紹介します。

○被控訴人が、被控訴人(原告)と控訴人(被告)との間の神戸地方法務局所属公証人△△△△作成債務承認並びに弁済契約公正証書に表示された債権が、被控訴人が控訴人に対して有する反対債権との相殺によって全部消滅したとして、異議権に基づき、本件公正証書の執行力の排除を求めたところ、原審が被控訴人の請求を認容したため、これを不服として、控訴人が控訴しました。控訴人は、本件保険金の受給権者は控訴人であるから、控訴人に不当利得が生じる余地はないと主張しました。

○大阪高裁は、法人契約特約が付されていることを明確に示す記載は見当たらず、本件損害保険契約においては、控訴人が主張する法人契約特約が付されていたとまで認めることはできず、仮に、本件保険契約において法人契約特約が付されていたとしても、同特約は、本件保険契約の内容や、本件保険金が被控訴人の労災事故に起因して給付された入院保険金、通院保険金等であることからしても、保険法8条の規定に反する特約で被保険者である被控訴人に不利なものとして、同法12条により無効であるとして、いずれにしても、控訴人の主張は採用できないとして、控訴を棄却しました。

○関係する保険法規定は以下の通りです。
第8条(第三者のためにする損害保険契約)
 被保険者が損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、当然に当該損害保険契約の利益を享受する。

第12条(強行規定)
 第8条の規定に反する特約で被保険者に不利なもの及び第9条本文又は前2条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。


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主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。

第2 事案の概要(以下、略語は特記しない限り原判決の例による。)
1 事案の骨子

 本件は、被控訴人が、被控訴人と控訴人との間の神戸地方法務局所属公証人△△△△作成平成28年第×××号債務承認並びに弁済契約公正証書(本件公正証書)に表示された債権が、被控訴人が控訴人に対して有する反対債権との相殺によって全部消滅したとして、異議権に基づき、本件公正証書の執行力の排除を求める事案である。
 原審は、被控訴人の請求を認容したので、これを不服として、控訴人が控訴をした。

2 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
 原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要等」欄の2項のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決3頁8行目から9行目にかけての「傷害総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた(乙3)」を、「損害保険契約である傷害総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結し、控訴人が本件保険契約の保険料を支払っていた(乙3)。

なお、本件保険契約は、損害保険契約であり、その約款(乙4)には、保険金とは入院保険金・手術保険金・通院保険金等で、保険金請求権者とは被保険者若しくはその父母、配偶者又は子であり(第1章第1条)、入院保険金や通院保険金は入通院日数に応じて、後遺障害保険金は後遺障害の内容に応じてそれぞれ算定され、入院保険金や通院保険金については被保険者に支払うものとされ(第2章第5条から第7条まで)、保険金額算定のため入通院日数や後遺障害の内容を保険会社に送付すべきものとされている(第4章第21条、別表第6)。」と改める。

3 主たる争点及びこれに関する当事者の主張
 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要等」欄の3項及び4項のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決4頁15行目から16行目にかけて及び同19行目から20行目にかけての各「本件保険金を取得したこと」を「本件保険金を取得したこと又は取得後これを保持し続けること」と各改める。

(2)原判決5頁13行目の末尾に改行して、次のとおり加える。
 「本件保険契約に控訴人主張の法人契約特約が付されていたとしても、同特約は、被保険者の取得すべき保険金を保険契約者である控訴人に帰属させるもので、保険法12条により「被保険者に不利なもの」として無効であることは明らかである。」

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、原判決と同じく、被控訴人の請求は理由があると判断する。その理由は、次項のとおり原判決を補正し、3項において説明を付加するほか、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」欄の1項及び2項のとおりであるから、これを引用する。

2 原判決の補正
(1)原判決7頁9行目から12行目までを、次のとおり改める。
「(3)本件保険契約には、事業主費用保障特約が付されていた。
(4)保険会社は、平成28年5月12日付で、被控訴人に対し、同社が平成27年9月25日を事故日とし、被控訴人を被保険者とする事故を受け付けたこと、同事故を受け付けた契約が本件保険契約であること、支払対象となる可能性のある保険金についてウェブサイト等で案内していること等が記載された書面(甲3)を送付した。
 また、保険会社は、平成28年9月、被控訴人に対し、同月5日を支払予定日とし、支払金額を114万円とする保険金を控訴人の預金口座に支払ったのでご案内する旨記載した書面(甲4)を送付した。」

(2)原判決7頁23行目から8頁5行目までを、次のとおり改める。
 「そうである以上、控訴人が保険会社から本件保険契約に基づき本件保険金を受け取った場合、当該受取行為は、被保険者である被控訴人からの委託に基づくものでなくとも、同人のためにするものとして、事務管理に該当し、受け取った本件保険金は、特段の事情がない限り、同人に引き渡さなければならず(民法701条、646条1項)、控訴人がこれを引き渡さない場合には、本件保険金は不当利得になると解される。」

(3)原判決8頁11行目から18行目までを削る。

(4)原判決8頁20行目の「及びこれに対する法定利息の支払請求権」を削る。

3 付加説明
 控訴人は、当審においても、本件保険契約には法人契約特約(法人を保険契約者とし、その役員、従業員を被保険者とする保険契約において、死亡保険金受取人を保険契約者である法人とした場合に、後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金についても死亡保険金受取人に支払う特約)が付されており、したがって、本件保険金の受給権者は控訴人であるから、控訴人に不当利得が生じる余地はない旨主張する。

 しかし、本件保険契約に係る「傷害総合保険契約更改申込書」(乙3)を子細にみても、本件保険契約について、事業主費用補償特約は付されているものの、控訴人が主張する、法人契約特約が付されていることを明確に示す記載は見当たらない。

そもそも、本件保険契約(傷害総合保険)については、約款(乙4)で、保険金請求権者は被保険者(若しくはその父母、配偶者又は子)で、入院保険金や通院保険金は被保険者に支払うものとされているところ、確かに本件保険金は控訴人の預金口座に振り込まれているものの、上記認定のとおり、保険会社は、いずれも被控訴人に宛てて、平成28年5月12日付けで,保険会社が平成27年9月25日を事故日とし、被控訴人を被保険者とする事故を受け付けたこと、同事故を受け付けた契約が本件保険契約であること、支払対象となる可能性のある保険金についてウェブサイト等で案内していること等が記載された書面(甲3)を送付したり、平成28年9月には、同月5日を支払予定日とし、支払金額を114万円する保険金を控訴人の預金口座に支払をしたのでご案内する旨記載した書面(甲4)を送付したりしているもので、これらの事実も、本件保険契約において、控訴人が主張する法人契約特約が付されていたことに疑いを生じさせる事実といえる。控訴人の提出する保険会社担当者作成の説明書面(乙1)もその記載自体からして上記疑問を拭い去るに十分なものとはいえない。結局、本件保険契約においては、控訴人が主張する法人契約特約が付されていたとまでは認めることはできない。

なお、仮に、本件保険契約において法人契約特約が付されていたとしても、同特約は、本件保険契約の内容や、本件保険金が被控訴人の労災事故に起因して給付された入院保険金、通院保険金等であることからしても、保険法8条の規定に反する特約で被保険者である被控訴人に不利なものとして、同法12条により無効であるというべきである。

以上、いずれにしても、この点に関する控訴人の主張は採用できない。

第4 結論
 以上によれば、被控訴人の請求は理由があるから認容すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 
裁判長裁判官 植屋伸一 裁判官 福田修久 裁判官 大河三奈子
以上:3,767文字
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R 7- 6-24(火):会社締結損害保険契約に基づく保険金の従業員帰属を認めた地裁判決紹介
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○原告が、原告と原告元雇用主で砕石業を営む株式会社である被告の間の神戸地方法務局所属公証人△△△△作成平成28年第×××号債務承認並びに弁済契約公正証書について、公正証書上の債権と原告が被告に対して有する不当利得返還請求権等の債権とを対当額で相殺した旨主張して、異議権に基づき、本件公正証書の執行力の排除を求めました。

○原告の元雇用主被告会社は、全役員及び従業員を被保険者として損害保険契約である傷害総合保険契約を締結しており、元従業員の原告に労災事故が発生し、保険会社から元雇用主の被告に保険金が支払われており、原告はこの保険金相当額について、被告は原告に対し、不当利得返還義務があると主張しました。

○これについて、本件においては、被保険者において保険契約者が保険金を保持することを明示又は黙示に承諾していたなどの事情を認めることはできず、被告が取得した本件保険金は、原告との関係において、法律上の原因のないものとして、不当利得に当たるとして、原告は被告に対し、本件保険金114万円につき不当利得返還請求権及びこれに対する法定利息の支払請求権を有するとし、受働債権である本件貸金返還請求権(73万円)は、弁済期が到来したと認めるのが相当であり、他方、自働債権である本件保険金(114万円)の不当利得返還請求権については、本件保険金が被告に支払われた日に弁済期が到来したと認めるのが相当であるから、上記両債権は、相殺適状となったものであり、原告の相殺の意思表示により、遡って相殺の効力を生じたとし、上記相殺により、本件貸金返還請求権(73万円)及びこれに対する遅延損害金2万5530円はすべて消滅したとして、原告の請求を認容し、本件につき、簡易裁判所がした強制執行停止決定を認可した令和4年10月11日神戸地裁社支部判決(判時2621号21頁)関連部分を紹介します。

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主   文
1 原告と被告の間の神戸地方法務局所属公証人△△△△作成平成28年第×××号債務承認並びに弁済契約公正証書に基づく強制執行は、これを許さない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 本件につき、社簡易裁判所が令和3年4月●日にした強制執行停止決定(同裁判所令和3年(サ)《事件番号略》)は、これを認可する。
4 この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 主文1項と同旨

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は、原告が、原告と被告の間の神戸地方法務局所属公証人△△△△作成平成28年第×××号債務承認並びに弁済契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)について、公正証書上の債権と原告が被告に対して有する不当利得返還請求権等の債権とを対当額で相殺した旨主張して、異議権に基づき、本件公正証書の執行力の排除を求める事案である。

2 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)被告は、砕石業を営む株式会社であり、原告は被告の元従業員である。

(2)被告の原告に対する債務名義として、次のものが存在する(本件公正証書、甲1)。
ア 債務名義の種類
 公正証書
イ 債務名義の成立年月日
 平成28年3月8日

ウ 債務名義にあげられた請求権の内容等
 本件公正証書には、要旨、次の記載がある。
(ア)原告は、被告に対し、平成27年9月1日に原告が被告から借り受けた借入金80万円から既払金7万円を差し引いた残額73万円の支払債務を負う(以下「本件貸金返還請求権」という。)。
(イ)原告は、被告に対し、前記(ア)の金員を、次のとおり15回に分割して支払う。
〔1〕平成28年3月から平成29年4月まで毎月末日限り、5万円
〔2〕平成29年5月末日限り、3万円

(ウ)原告が続けて2回以上前記(イ)の分割金の支払を怠ったとき等は、被告からの催告がなくても当然期限の利益を失い、前記の73万円から既払額を控除した残額を直ちに支払う。
(エ)原告は、被告に対し、期限の利益喪失後、73万円(既払額があれば控除する)に対し完済に至るまで年10.0%の割合による遅延損害金を支払う。
(オ)原告が上記の債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する。

(3)労災事故の発生
 平成27年9月25日、原告が被告のもとで就業中、半月板損傷等の傷害を負う労災事故が発生した。原告は、入院(全38日)及び手術のため、休業を余儀なくされた(甲3)。

(4)保険会社からの保険給付
 被告は、A株式会社(以下「保険会社」という。)との間で、被告を保険契約者、被告の役員、従業員全員を被保険者とする傷害総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた(乙3)。
 原告が前記(3)の労災事故で入院・休業・手術を受けたことを受け、本件保険契約に基づき、入院保険金、休業保険金、手術保険金が支払われることとなり、平成28年9月5日、保険会社から被告名義の金融機関の口座に、入院保険金19万円、休業保険金90万円、手術保険金5万円の合計114万円(以下、これらを併せて「本件保険金」という。)が振込入金された(甲4)。

(5)原告は、本件貸金返還請求権につき、平成28年3月末日及び同年4月末日に支払うべき前記(2)ウ(イ)の分割金の支払を続けて2回怠り、同月末日の経過によって期限の利益を失った。
 被告は、神戸地方裁判所社支部に対し、前記(2)の債務名義に基づいて、本件貸金返還請求権(73万円)及びこれに対する平成28年5月1日から令和3年4月7日までの遅延損害金36万0266円並びに執行費用1万0572円の合計110万0838円を請求債権とし、原告の給与債権を同金額に満つるまで差し押さえる債権差押命令申立事件を申立て(令和3年(ル)《事件番号略》)、令和3年4月9日、債権差押命令が出された(甲2)。

(6)相殺の意思表示
 原告は、被告に対し、令和3年4月19日到達の内容証明郵便で、原告の被告に対する本件保険金114万円の不当利得返還請求権及びこれに対する平成28年9月5日から令和3年4月16日までの年5分の割合による法定利息26万2930円を自動債権とし、本件公正証書に基づく債権を受働債権とし、これらを対当額で相殺する旨の意思表示をした(甲5、6)。
 また、原告は、被告に対し、本件の口頭弁論期日において、本件保険金の信義則上の返還請求権を自働債権とし、本件公正証書に基づく債権を受働債権とし、これらを対当額で相殺する旨の意思表示をした。

(7)強制執行停止決定等
 原告は、令和3年4月22日、社簡易裁判所への本件訴えの提起に伴い、前記(2)の債務名義に基づく強制執行の停止を求める申立てをし、同裁判所は、令和3年4月23日、原告に22万円の担保を立てさせた上で、本件訴訟の判決において民事執行法37条1項の裁判があるまで本件債務名義に基づく強制執行を停止する決定をした(社簡易裁判所令和3年(サ)第1号)。
 社簡易裁判所は、本件を神戸地方裁判所社支部に移送した。

3 争点(いずれも相殺の再抗弁の自働債権についてのもの)

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、次の事実を認定することができる。
(1)本件保険契約は、損害保険契約であり、保険契約者を被告とし、被保険者を被告の役員・従業員全員とするものであった(乙3)。本件保険契約の保険料は被告が支払っていた。

(2)本件保険契約の約款には、入院保険金・手術保険金等を、被保険者に支払う旨の記載があった(乙4・第6条)。

(3)本件保険契約には、法人を保険契約者とし、その役員・従業員を被保険者とする保険契約において、死亡保険金受取人を保険契約者である法人とした場合に、後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金についても死亡保険金受取人に支払うとの特約が付されていた(乙1)。

2 争点に対する判断
(1)争点〔1〕(本件保険金につき不当利得返還請求権が認められるか(被告が本件保険金を取得することにつき法律上の原因がないといえるか))について

(ア)前記1認定事実(1)によると、本件契約は、保険契約者と被保険者が異なる損害保険契約であるから、保険法8条にいう、被保険者が保険契約の当事者以外の者である損害保険契約に該当し、被保険者が民法537条所定の受益の意思表示をするまでもなく、当然に被保険者に保険契約の利益が帰属し、被保険者は、自己固有の権利として保険給付請求権を取得することとなり、他方で、保険契約者には被保険利益がないこととなるものと解される。

 そうである以上、上記のような契約のもとにおいて保険契約者である被告が保険金を受け取った場合、被保険者において保険契約者が保険金を保持することを明示又は黙示に承諾していたなどの事情がなければ、保険契約者が受け取った保険金は、被保険者との関係において、法律上の原因がないものとして不当利得に当たるものと解される。

 そして、本件の証拠等によっては、上記のような事情を認めることはできないから、被告が取得した本件保険金は、原告との関係において、法律上の原因のないものとして、不当利得に当たると認めるのが相当と解される。


(イ)これに対し、被告は、本件保険契約は第三者のためにする保険契約ではない旨主張するが、前記1認定事実(1)によると、本件契約は、保険契約者と被保険者が異なる損害保険契約であるから、第三者のためにする損害保険契約であると認めるほかないものと解される。よって、被告の上記主張は採用することができない。

 また、本件保険契約には前記1(3)の特約が付されていたが、この特約によって、保険会社と保険契約者である被告の間において被告が本件保険金の支払を受けることが合意されていたということはいえても、これを超えて、被保険者である原告が本件保険金を被告が保持することを承諾していたと直ちには認めることができないし、ほかに、そのことを原告が明示又は黙示に承諾していたことを根拠づける証拠や事実も見当たらない(原告が本件保険契約の告知を受けていたというだけでは上記承諾を認めるには足りないと解される。)。

(ウ)以上からすれば、原告は被告に対し、本件保険金114万円につき不当利得返還請求権及びこれに対する法定利息の支払請求権を有するというべきである。

イ 次に、相殺についてみると、相殺の意思表示は双方の債務が互いに相殺をするに適するに至った時点に遡って効力を生ずるものである(民法506条2項)から、その計算をするに当たっては、双方の債務につき弁済期が到来し、相殺適状となった時期を基準として双方の債権額を定め、その対当額において差引計算をすべきである(最高裁昭和54年3月20日判決・集民126号277頁)。これを本件についてみると、受働債権である本件貸金返還請求権(73万円)は、平成28年5月1日に弁済期が到来したと認めるのが相当であり、他方、自働債権である本件保険金(114万円)の不当利得返還請求権については、本件保険金が被告に支払われた平成28年9月5日に弁済期が到来したと認めるのが相当である。

 そうすると、上記両債権は、平成28年9月5日をもって相殺適状となったものであるから、原告の相殺の意思表示により、平成28年9月5日に遡って相殺の効力を生じたものというべきである。そして、上記相殺により、本件貸金返還請求権(73万円)及びこれに対する平成28年5月1日から同年9月5日までの年10%の割合による遅延損害金2万5530円は全て消滅したものといわなければならない。

(2)以上によると、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がある。

3 結論
 以上によると、原告の請求には理由があるからこれを認容し、民事執行法37条1項に基づき、前提事実(7)の強制執行停止決定を認可することとして、主文のとおり判決する。
裁判官 清水紀一朗
以上:4,947文字
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R 7- 6-23(月):AmazonPrime”衝撃の映像・第二次世界大戦”を観て-米軍強さ実感
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○令和7年6月22日(日)は、早朝、トランプ大統領のイラン攻撃会見ニュースを見て驚きました。トランプ大統領は、一昨日までは2週間様子を見て攻撃するかどうかを決めると報道されているのを見て、イランに対する脅しとして言っているだけで、実際米軍が出てくることは無いだろうと思っていたからです。ところが実際米軍が出動してイランの核施設3箇所を完全破壊したなんて会見で言っており、ちと独裁者の怖さを感じました。何をするか判らない大統領の評価は本物でした。

○このアメリカのイラン攻撃ニュースを見てちと全面戦争が心配になり、第二次世界大戦を振り返りたくなりました。AmazonPrimeを見ると第二次世界大戦に関する番組は結構あり、その中で「衝撃の映像・第二次世界大戦」という番組を見つけて、22日午後はその鑑賞に没頭しました。冒頭第二次世界大戦でドイツは国民のうち800万人が犠牲になったとあり、日本の犠牲者310万人よりズッと多いのに驚きました。その当時の人口は日本7138万人・ドイツ6985万人で僅かに日本が多いのに犠牲者数は2倍以上で、ドイツ国内への連合国側の攻撃も相当激しかったようです。

○第二次世界大戦の概要は、大昔、世界史で習いましたが殆ど忘却の彼方であり、部分的には古くは映画「史上最大の作戦」、最近では映画「ダンケルク」等で見ていますが、その全体像は覚えておらず、以下の番組「衝撃の映像・第二次世界大戦」で概要が掴めます。以下、番組概要紹介を記載しますが、エピソード3位までは我慢して全編通して鑑賞しましたが、エピソード4以下は、早送りで飛ばし飛ばしの鑑賞でした。第二次世界大戦は連合国側が勝利しましたが、米軍の強さ・凄さをあらためて実感しました。

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AmazonPrime「衝撃の映像・第二次世界大戦」概要

エピソード1 - 独軍電撃作戦・1時間12分
1939年9月最新兵器で武装した独軍が国境を越えポーランドになだれ込んだ。それまで独の領土拡張を黙認してきた英仏はようやく開戦に踏み切る。しかし、独の勢いは止められず翌年4月には仏が独の軍門に下る。

エピソード2 - 激闘! 北アフリカ戦線・37分
北アフリカへの上陸作戦はトーチ作戦と名付けられ、カサブランカ、オラン、アルジェが上陸地点に選ばれた。1942年11月作戦は決行され、4日間の戦いの後、仏軍は停戦を受け入れ、連合軍は上陸地点間にある主要な港を奪取することに成功した。

エピソード3 - ロンメル軍団の死闘・37分
米英仏の連合軍は、“砂漠の狐”ロンメル率いる独アフリカ軍団を一進一退の末、チュニジアに封じ込めた。独軍は各地で、なおも粘り強く反撃を続けたが、1943年5月ついに北アフリカの全域が連合軍の占領下に入ることとなる。

エピソード4 - 第三帝国 崩壊の序曲・1時間14分
シチリア島を解放した連合軍は、伊南部の重要都市ナポリ攻略を開始した。戦争に疲弊していた伊は降伏を即断したが、支援する独軍は防御態勢を整え、連合軍に猛撃を加えた。結果として、戦線は膠着し、双方に多大な犠牲を強いることになる。

エピソード5 - 史上最大の作戦・56分
ヨーロッパ戦線の全貌を記録したドキュメントの真髄!(1)ノルマンディ上陸前夜 連合軍は空挺師団を先遣隊として送り込む。(2)史上最大の作戦 ドーヴァー海峡を渡って連合軍が上陸。(3)独ロケットロンドン攻撃 独軍はロンドン爆撃を行い、強力な攻撃を続けていた。

エピソード6 - パリ解放・1時間15分
ヨーロッパ戦線の全貌を記録したドキュメントの真髄!(1)連合軍がフランス国内を進む中、独軍はモルタンに大機甲部隊を集結させていた。連合軍は勝利しパリを目指した。(2)地中海から上陸した部隊は南仏から独軍を追うようにパリに向かっていた。

エピソード7 - ドイツ空爆・1時間15分
ヨーロッパ戦線の全貌を記録したドキュメントの真髄!(1)苦戦しながらも着実に進軍する連合軍、米陸軍補給部が活躍した。(2)開戦から2年以上が過ぎた1942年初頭からドイツを空爆するための基地が英国内に設けられた。

エピソード8 - ドイツ無条件降伏・1時間51分
ヨーロッパ戦線の全貌を記録したドキュメントの真髄!(1)のびきった連合軍の補給線。独軍からの猛攻にあい、多数の死傷者を出し苦戦した。(2)1945年3月、ドイツ国内での戦いが始まる。(3)ドイツ国内ではあらゆる機能が麻痺していき、連合軍は順調に東に進んだ。

エピソード9 - ニュルンベルク裁判・1時間15分
ヨーロッパ戦線の全貌を記録したドキュメントの真髄!(1)ドイツの降伏で、連合国の国民は勝利に沸いていた。(2)1945年7月17日から主要連合国の首脳4人がベルリン郊外のポツダムに集まり、第二次大戦の戦後処理が話し合われた。
以上:2,021文字
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R 7- 6-22(日):映画”隠し砦の三悪人”を観て-準主役女優が魅力あり
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○令和7年6月21日(土)は、1ヵ月ぶりのツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でした。オカリナでメロディを演奏し、ギター2台で伴奏をするスタイルの練習を始めて行いました。オカリナの音の響きが心地よくギターでのメロディとは違った楽しみを感じました。当面、演奏会の予定がありませんが、じっくり器楽演奏を楽しんでいきます。

○演奏練習終了後、恒例の夕食を取りながらの映画鑑賞は、1958(昭和33)年製作黒澤明監督作品映画「隠し砦の三悪人」を最近購入したばかりの4KUHDソフトで鑑賞しました。平成の初め頃LDを購入し、何回か鑑賞していますが、おそらく30年数年ぶりでの鑑賞になります。これで販売されている黒澤監督シリーズ映画4KUHDソフトは殆ど購入しましたが、いずれもAmazon価格でも5000円前後と高いのが痛いところです。4KUHD化された映画は、洋画が圧倒的に多く、邦画は少ないのですが、邦画はいずれも価格が高いのが難点です。

○30数年ぶりでの映画「隠し砦の三悪人」鑑賞の感想は、「七人の侍」、「用心棒」、「椿三十郎」と比較すると少々落ちるというものでした。主要登場人物の顔は良く覚えているのですが、肝心のストーリーは、殆ど忘却の彼方だったことが、いつものことですが、ガッカリでした。シッカリと覚えていたのは、三船敏郎氏演ずる真壁六郎太が、馬に乗って敵方役人侍2人を追いかけて、いずれも馬上のまま2人の侍を切り捨てるシーンです。スタントマン無しで三船敏郎氏本人演じたその場面の迫力は強く印象に残っていました。

○黒澤映画の常連藤田進氏演ずる敵方の侍大将田所兵衛との長い槍での決闘シーンは、確かに迫力はありましたが、ちと長すぎると感じました。藤原鎌足氏と千秋実氏演ずる百姓2人のからみあいのシーンが長く挿入されていますが、いずれの場面も、ちとテンポが散漫に感じて、「用心棒」、「椿三十郎」での小気味よい痛快なテンポでのストーリー展開に劣ると感じました。準主役雪姫役は上原美佐氏と言う女優が演じていましたが、素人を抜擢したとのことで、少々ぎこちない初々しい演技も良かったのですが、何より長い脚のホットパンツ姿が大変魅力的でした(^^;)。

○4KUHD化された映像は、昭和33年製作映画にしては、相当修復され、同じく4KUHD化された「用心棒」、「椿三十郎」と殆ど変わらないクッキリした目に心地よい映像になっていました。この点は高い価格に納得しました。

NHKBSプレミアム「隠し砦の三悪人」(サムネは映画祭告知)


THE HIDDEN FORTRESS (1958) Theatrical Trailer - Toshirô Mifune, Misa Uehara, Minoru Chiaki



以上:1,140文字
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R 7- 6-21(土):自賠責後遺障害非該当を14級後遺障害認定地裁判決紹介4
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○「自賠責後遺障害非該当を14級後遺障害認定地裁判決紹介3」の続きで、自賠責後遺障害非該当認定を14級後遺障害と認めた令和4年9月21日名古屋地裁判決(交通事故民事裁判例集55巻5号1272頁)関連部分を紹介します。

○頸部痛につき自賠責保険の事前認定においては後遺障害非該当とされた被害者(男・21歳・大学生(卒業後公務員))が14級に該当するとして、468万円の損害賠償請求を求めました。これに対し被告側では、後遺障害は認められないと厳しく争いました。

○判決は、本件事故により原告の頚部に相当程度の衝撃等が加わり、現に原告には本件事故後から頚部痛が生じ、この症状は治療に伴って徐々に回復するも一定程度の症状を残して症状固定に至ったものと認められ、その症状も日常的に生じているものと評価できるところ(なお、本件における後遺障害の認定に当たり、たとえば原告の体勢等と無関係に常時疼痛が生じていることまでが要件として求められるものとは解されない)、原告が主張する右頚部痛については、「局部に神経症状を残すもの」として、14級9号に該当するものと認められるとしました。

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主   文
1 被告は、原告に対し、311万1108円及びこれに対する平成30年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、468万2825円及びこれに対する平成30年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が、被告が運転する自動車が対向車線にはみ出して原告運転に係る自動車に正面衝突する交通事故が発生し原告が傷害を負ったとして、被告に対し、民法709条及び自賠法3条に基づき、人的損害賠償金468万2825円及びこれに対する不法行為(交通事故)の日である平成30年10月27日から支払済みまで民法(ただし、平成29年法律第44号による改正前のもの。以下、利率について同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 争いのない事実等

     (中略)

第3 争点に係る検討・判断
1 認定事実
(証拠の記載は、枝番があるものは枝番を含む。)
(1)本件事故状況等(甲1、2、32、33、原告本人)
 原告は、本件事故当時、京都市内の大学の4回生であり、硬式野球部に所属していた。本件事故当日、原告は、滋賀県で開催される野球の試合に出るために、野球部の後輩やマネージャーを同乗させ、原告車を運転していた。
 本件道路(本件事故現場付近)は、片側1車線のいわゆる山道である。本件事故現場付近は急カーブになっており、本件事故当時、路面は濡れていた。

 原告は、原告車を運転し、本件道路をb方面からc方面に向けて進行していた。この際、原告車には、助手席に1人、後部座席に3名の同乗者がいた(後部座席の3名についてはシートベルトを着用していなかった。)。

 本件事故の際、被告は、被告車を運転し、実家に向かうべく、本件道路をc方面からb方面に進行していた。被告は、本件事故に至るまでの間、直線道路では時速100km以上出すなどしており、時速80km程度で本件事故現場に差し掛かり、カーブをうまく攻略しようなどと考え、(いつも曲がっている時の時速40kmよりも早い)時速50~60kmまで減速し、カーブに入ろうとハンドルを切ったが、カーブを曲がり切れず、被告車を対向車線にはみ出させ、被告車の右前部を対向してきた銀色の自動車(ホンダフリード。以下「訴外自動車」という。)の右後部にすれ違いざまに衝突させ、さらに対向車線上を走行させた上、同車線上で原告車と正面衝突させた(他方、原告車は、カーブに差し掛かった際、時速30km程度で走行していた。)。

     (中略)

2 争点(原告の損害の内容。特に後遺障害の有無。)についての検討・判断
(1)後遺障害の有無について

ア 上記認定事実を踏まえて検討するに、相当程度の速度で走行する車両同士の正面衝突という本件事故の態様、原告車及び被告車の損傷状況等に照らすと、本件事故により原告の頚部には相当の衝撃や負荷が加わったものと推認される。
 そして、原告の供述のほか医療記録に現れた通院経過について検討しても、原告は、本件事故後症状固定に至るまで、首の向きを変えたとき等の日常動作に係る頚部の症状を訴え続けているといえるのであり(その状況や内容については後述する。)、症状固定と診断された令和2年9月30日以降においても、上を向くときや左を向くときの首の痛みがとれず、パソコン作業を続けた際や自動車の運転の際等に痛みを感じたり、就寝に伴う症状を和らげるために枕を使い分けるなどしており、日常的に(特殊な動作や運動をした際などに限られるものではなく)痛みを感じる状況がある。

 そして、原告の主治医も、相当長期間に及んだ治療状況を踏まえ、原告の症状について「かわりなし」との見通しを示している。
 以上は、原告に後遺障害が残存したことを示す有力な事情である。

イ これに対し、被告は、原告が本件事故後野球の試合に出場していることなどから、原告の主訴が信用できないなどと指摘する。確かに、原告は本件事故に近接した時期に野球の練習や試合に参加又は出場しており、このことは、当時、原告が一定の運動が可能な状態であり、さほど重い症状が生じていなかったことを示すものとはいえる(少なくともある程度激しい運動が可能な状況であったといえる。)。しかし、本件に係る原告の主訴、症状、診断等に照らしても、当時野球の練習をしたり試合に出場すること自体が不可能又は著しく困難な状況ではなかったといえるし(原告主張に係る傷害ないし後遺障害は、そこまで重篤な内容のものではない。)、原告は、この時期においても、頻度は相当低いものであるが医療機関において頚部痛を継続して訴え続け、投薬治療等を受けていたものであり、必ずしも原告が野球をしていたことをもって原告の主訴に係る症状ないし後遺障害の存在が否定されるものではない。

 上記に関連して、原告の本件事故後数か月の通院状況を見るに、原告は、平成31年1月までの間、本件事故当日の救急搬送を除けば1か月に1回しか通院しておらず、その後に通院の頻度が増している。通常、交通事故の直後に最も重い症状があり、それが治療によって改善していくという経緯が想定されるところ、原告のこうした通院状況は、原告の症状の一貫性ないし後遺障害の残存に疑問を生じさせるものであるといわざるを得ない。

しかし、原告は本件事故後数か月の期間、卒業間近ということもあり、卒業論文の作成を行っており、比較的多忙な状況にあった旨の事情は指摘できるし、この間も投薬治療等は継続しており、その後に物理療法を希望して転医し、リハビリ等の治療を開始ないし継続したという経緯からすると、原告の通院経過がおよそ不自然とはいえず(繁忙状況に応じて限られた回数のみ通院して投薬治療等を受けたが、症状が思うように改善しないため、次の治療法を模索して物理療法を希望するに至ったなどの事情がうかがわれ、こうした経緯はおよそ不自然であるとはいえず、本件事故後数か月の通院経過をもって直ちに原告の主訴が信用できないとか当時通院の必要性がなかったなどとはいえない。)、この点が原告の症状等を否定すべき事情であるとまではいえない。

 また、被告は、医療記録の記載等を踏まえ、原告の症状が一貫性に欠けることや、さらなる改善可能性がないとはいえないことなどを指摘する。たしかに、原告の症状については、医療記録上、たとえば運転やデスクワーク等に際し、疼痛があったりなかったりしている。

しかし、原告の職務内容等については、その時期によってデスクワークの多少等の差異があると認められ、こうした職務の内容や生活状況よって特に痛みが生じる状況が変化することはあり得るものであり、これを踏まえて原告が医師に症状について適宜の説明をした結果、医療記録上、原告が痛みを訴える状況等に種々のものがみられることになっても特段不自然とはいえない(すなわち、原告の仕事の状況等により疼痛を感じる場面の説明が変化することをもって、直ちにその症状に一貫性がないものとはいい難い。)。

他方、上記医療記録の記載に照らすと、原告は、左を向いたときや上を向いたときなど、頚部の動き等に伴って右頚部に痛みが生じることは継続して訴えているものと評価できるし、少なくとも原告が症状を訴える部位が変化したり、痛みが生じる状況が相互に矛盾するなど、およそ不自然で一貫性を欠くような事情はうかがわれない。また、原告の症状につき、将来的な見込みとして「かわりなし」とした症状固定に係る主治医の判断については、継続して頚部痛を訴える原告の主訴や治療経過等に照らして特段不自然な点はなく、その医師としての知見ないし医学的根拠、判断の合理性に問題を生じさせる事情もうかがわれない。

 以上を総合すると、本件事故により原告の頚部に相当程度の衝撃等が加わり、現に原告には本件事故後から頚部痛が生じ、この症状は治療に伴って徐々に回復するも一定程度の症状を残して症状固定に至ったものと認められ、その症状も日常的に生じているものと評価できるところ(なお、本件における後遺障害の認定に当たり、たとえば原告の体勢等と無関係に常時疼痛が生じていることまでが要件として求められるものとは解されない。)、原告が主張する右頚部痛については、「局部に神経症状を残すもの」として、14級9号に該当するものと認められる(なお、原告が、本件事故前から頚部の神経症状を有していたことをうかがわれせる事情はない。)。

     (中略)

(2)損害の内容(算定)について

     (中略)

カ 後遺障害慰謝料 110万円
 本件における原告の後遺障害の内容・程度等に照らすと、標記の金額が相当である。
(ここまでの小計383万0203円)

キ 損害の填補 ▲100万1923円
(ここまでの小計282万8280円)

ク 弁護士費用 28万2828円
 本件事案の内容、原告の損害等に照らすと、標記の金額を相当と認める。

ケ 以上合計 311万1108円

第4 結論
 以上によれば、原告の請求は、主文第1項の限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
裁判官 小川敦

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