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なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 1- 8-23(金):弁護士法照会に対する報告義務確認の利益を欠くとした最高裁判決紹介
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○「弁護士法照会拒否回答で弁護士会に損害賠償義務を否認した最高裁判決紹介」の続きで、弁護士法照会をした弁護士会が、その相手方に対し、その照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠き不適法であるとした平成30年12月21日最高裁判決(判タ1460号51頁、判時2410号○頁)を紹介します。

○弁護士法23条の2第1項は、「弁護士は,受任している事件について,所属弁護士会に対し,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。」などと定め,第2項において「弁護士会は,前項の規定による申出に基き,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」と定めており、弁護士法照会と呼ばれます。

○警察署・銀行等に問い合わせをしても、特に個人情報保護法が規定されてからは、弁護士個人の照会には回答できないので弁護士法照会として弁護士会を通じて照会して下さいと断られることが多くなりました。交通事故事件での現場見取図等を警察署に被害者側弁護士として取寄申請するのも、昔は被害者個人の代理人弁護士として申請しても開示してくれたのですが、今は、弁護士法照会手続で弁護士会を通じないと開示してくれなくなりました。

○「弁護士法照会拒否回答で弁護士会に損害賠償義務を否認した最高裁判決紹介」の事案は、名古屋弁護士会の日本郵便に対する民事訴訟の和解金を払わない相手先に強制執行を求める男性から依頼を受け、日本郵便に相手先の転居情報の回答を求めたが、「郵便法の守秘義務がある」と拒否したことについて、名古屋弁護士会として日本郵便に不法行為として損害賠償の訴えを提起し、名古屋高裁は不法行為の成立を認め日本郵便に1万円の支払を命じました。

○これについて平成28年10月18日最高裁判決(裁判所ウェブサイト)は、弁護士法照会に対する報告を拒絶する行為が,23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはないとし、同時に名古屋弁護士会の日本郵便に対する弁護士法照会に報告義務があることの確認を求める訴えについては、名古屋高裁に差し戻されていました。

○差し戻し後の名古屋高裁は、確認の利益があるとしたのですが、平成30年12月21日最高裁判決は、確認の利益は確認判決を求める法律上の利益であるとした上,弁護士法照会の相手方に報告義務があることを確認する判決の効力が報告義務に関する法律上の紛争の解決に資するとはいえないことを理由として,名古屋弁護士会には報告義務の確認を求める法律上の利益がないと判示しました。弁護士法照会に対する拒絶は、不法行為も成立せず、また、照会に対する報告義務の確認も求められないとされ、その弁護士法照会の効果は、照会先の「任意の履行を期待するほかはない」ものになりました。

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主   文
1 原判決を破棄する。
2 原判決別紙の照会についての報告義務確認請求に係る訴えを却下する。
3 前項の請求についての訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 

理   由
第1 事案の概要

1 本件は,郵便事業株式会社に対して弁護士法23条の2第2項に基づき原判決別紙の照会(以下「本件照会」という。)をした弁護士会である被上告人が,上記会社を吸収合併した上告人に対し,本件照会についての報告義務があることの確認を求める事案である。

2 原審は,上記の確認請求(以下「本件確認請求」という。)に係る訴えの確認の利益について次のとおり判断し,上記訴えが適法であることを前提として,本件確認請求の一部を認容し,その余を棄却した。
 本件確認請求が認容されれば,上告人が報告義務を任意に履行することが期待できること,上告人は,認容判決に従って報告をすれば,第三者から当該報告が違法であるとして損害賠償を請求されたとしても,違法性がないことを理由にこれを拒むことができること,被上告人は,本件確認請求が棄却されれば本件照会と同一事項について再度の照会をしないと明言していることからすれば,本件照会についての報告義務の存否に関する紛争は,判決によって収束する可能性が高いと認められる。したがって,本件確認請求に係る訴えには,確認の利益が認められる。

第2 上告代理人○○○○ほかの上告受理申立て理由第1の6について
1 所論は,本件確認請求に係る訴えに確認の利益を認めて本件確認請求の一部を認容した原審の判断には,法令の解釈を誤る違法があるというものである。

2 弁護士法23条の2第2項に基づく照会(以下「23条照会」という。)の制度は,弁護士の職務の公共性に鑑み,公務所のみならず広く公私の団体に対して広範な事項の報告を求めることができるものとして設けられたことなどからすれば,弁護士会に23条照会の相手方に対して報告を求める私法上の権利を付与したものとはいえず,23条照会に対する報告を拒絶する行為は,23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはない(最高裁平成27年(受)第1036号同28年10月18日第三小法廷判決・民集70巻7号1725頁)。

 これに加え,23条照会に対する報告の拒絶について制裁の定めがないこと等にも照らすと,23条照会の相手方に報告義務があることを確認する判決が確定しても,弁護士会は,専ら当該相手方による任意の履行を期待するほかはないといえる。そして,確認の利益は,確認判決を求める法律上の利益であるところ,上記に照らせば,23条照会の相手方に報告義務があることを確認する判決の効力は,上記報告義務に関する法律上の紛争の解決に資するものとはいえないから,23条照会をした弁護士会に,上記判決を求める法律上の利益はないというべきである。

 本件確認請求を認容する判決がされれば上告人が報告義務を任意に履行することが期待できることなどの原審の指摘する事情は,いずれも判決の効力と異なる事実上の影響にすぎず,上記の判断を左右するものではない。

 したがって,23条照会をした弁護士会が,その相手方に対し,当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法であるというべきである。

3 以上によれば,本件確認請求に係る訴えは却下すべきであり,原審の判断のうち本件確認請求の一部を認容した部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由がある。

第3 職権による検討
 前記第2の説示のとおり,本件確認請求に係る訴えは却下すべきであり,原審の判断のうち本件確認請求の一部を棄却した部分にも,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

第4 結論
 以上によれば,原判決の全部を破棄し,本件確認請求に係る訴えを却下すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 菅野博之 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 山本庸幸 裁判官 三浦守) 
以上:2,939文字
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R 1- 8-22(木):交通事故と医療過誤の共同不法行為についての高裁裁判決紹介
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○「交通事故と医療過誤の共同不法行為についての地裁裁判決紹介」の続きで、その控訴審である平成10年4月28日東京高裁判決(判タ995号207頁、判時1652号75頁)関係部分を紹介します。

○一審平成9年1月30日浦和地裁川越支部判決(民集55巻2号345頁)は、被害者Aの死亡は本件交通事故と本件医療過誤が競合した結果発生し、本件交通事故における運転者の行為と本件医療過誤における医師の行為は共同不法行為であるとし、D病院に、発生した全損害の賠償責任を負わせていました。た上で(なお、原審は、交通事故の関係でAに3割の、Yとの関係でXらに1割の過失相殺事由があるとした。)、

○控訴審平成10年4月28日東京高裁判決は、各行為が共同不法行為であるとしながら、「個々の不法行為が当該事故の全体の一部を時間的前後関係において構成し、しかもその行為類型が異なり、行為の本質や過失構造が異なり、かつ、共同不法行為とされる各不法行為につき、その一方又は双方に被害者側の過失相殺事由が存する場合には、各不法行為者の損害発生に対する寄与度の分別を主張、立証でき、個別的に過失相殺の主張をできるものと解すべきであり、このような場合は、個々の不法行為の寄与度を定め、個々の不法行為についての過失相殺をした上で、各不法行為者が責任を負うべき賠償額を分別して認定するのが相当である。」とし、本件において、本件医療過誤の寄与度は5割とし、全損害の5割相当額について、1割の過失相殺をする等して、被告が責任を負うべき損害額を、一審の半分に減額しました。

○交通事故の被害者が、その後に受診した医師の診療過誤により死亡したり、症状が悪化した場合、交通事故の加害者の責任と医師の責任との関係をどのように把握し、処理するかについては、従来から学説、判例上見解が分れていました。共同不法行為の成立を認めて、双方の全部責任を認める見解(福永政彦・民事交通事故の処理に解する研究341頁、東京地判昭60.5.31本誌559号88頁、判時1174号90頁など参照)と、共同不法行為の成立を認めながらも、寄与度責任を認める見解(伊藤進・不法行為法の現代的課題208頁、横浜地判昭57.11.2判時1077号111頁など参照)などがありましたが(山川一陽「交通事故と医療過誤の競合」新・現代損害賠償法講座5巻237頁参照)、この高裁判決は後者の見解を取りました。

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主   文
一 原判決を次のとおり変更する。
1 控訴人は被控訴人らに対し、各金1007万7317円及び内金917万7319円に対する昭和63年9月14日から支払済みまで年5分の金員を支払え。
2 被控訴人らのその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、第1、2審を通じこれを7分し、その2を控訴人の負担とし、その余を被控訴人らの負担とし、補助参加費用は、第1、2審を通じこれを7分し、その2を控訴人の負担とし、その余を補助参加人らの負担とする。

事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判

一 控訴人
1 原判決中控訴人敗訴部分を取消す。
2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

第二 本件事案の概要(争いのない事実等)

         (中略)

第三 争点
一 被控訴人らの主張

1 E医師の診断治療行為(以下「本件診療」という。)には、次のとおりの過失が存するので、控訴人は民法44条に基づき不法行為(以下「本件不法行為」という。)による損害賠償責任がある。
(一) 本件事故はAが歩行中に乗用車に軽く接触したに過ぎないなどと本件傷害の契機の認識を誤るなど、正確な問診をすることを怠った。

(二) Aには本件傷害として左頭部打撲挫傷、顔面打撲の他にも左側胸部打撲、左側肺の軽度圧迫、左右膝蓋内側の打撲傷、左下腿前側打撲傷(以下「その他の負傷部分」という。)も存したのにこれを看過するなど、受傷部位の正確な判断を怠った。

(三) 本件傷害後、6時間以内にCTスキャナーによる検査(以下「CT検査」という。)をすれば、本件傷害による硬膜外出血を発見できたのに、CT検査をすることを怠った。

(四) 本件傷害後少なくとも6時間は、Aを控訴人病院に留めてその経過観察をすべきであったのにこれを怠った。

(五) Aに付き添っていた被控訴人田中ひとみ(以下「被控訴人ひとみ」という。)に対し、本件傷害による硬膜外出血等の可能性を教示し、かつ、その具体的症状を説明して、Aの経過観察をすべきことを指示することを怠った。


         (中略)

第四 争点に対する判断
一 本件交通事故について


         (中略)


1 前記認定にかかる本件交通事故に関する事実関係によれば、Cには、本件交差点に進入するに際して自動車運転手として遵守すべき注意義務を懈怠した結果本件事故を惹起した過失があるものと認められる。
 (なお、本件交通事故の発生に関しては、Aにも自転車の運転手として、本件交差点に進入するに際しての一時停止義務、左右の安全確認義務の懈怠が存するのであるから、前記本件交通事故等の状況等を総合勘案するとA側に3割の過失相殺事由があると認めるのが相当である。)

2 本件診療に関して、被控訴人らは、「E医師は、正確な問診をすることを怠った。」旨主張しているが、E医師は、本件傷害の契機となった本件交通事故を歩行中のAが本件自動車に軽く接触したものであると誤って理解していたことは前記のとおりであるが、それに関しては控訴人病院にAを搬送してきた救急隊員も同様に間違った認識を有していたこと、Aの問診を行ったときには被控訴人ひとみも付き添っていたことなどからすると、E医師の問診が不十分であったため、右間違いが生じたものとは到底考えられず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

 また、被控訴人らは、「E医師は、Aの受傷部位の正確な把握を怠った。」と主張しているが、E医師の診断は本件傷害は左頭部及び顔面の打撲と挫傷であるとしたことは前記のとおりであるところ、前掲甲27(鑑定書)によれば、死後Aの身体には、前記打撲傷と挫傷のほかに、左側胸部打撲、左右肺の胸膜下出血、左右膝蓋内側の打撲傷、左下腿前側打撲傷等のその他の負傷部分が存したことは認められる。しかしながら同証拠によれば、右の肺の胸膜下出血が生じた原因は、Aに対する前記救命措置による可能性も否定できないことが認められ、その余の右各傷害が本件死亡事故の死因であることや、右各傷害の看過が本件死亡につながったことを認めるに足りる証拠はない。

 また、被控訴人らは、「E医師は、本件診察ないしその後に際してCT検査を行うべきであった。」と主張しているが、前記のとおり、医師は、その傷害部位、程度またそれが生じた契機等からして頭部に著しい衝撃が加わった虞があって硬膜外血腫の存在の疑いが認められる場合には、脳出血の診断に優れているCT検査を行うべきではあるが、臨床上診察の結果右疑いがないと判断されるときにも必ず同検査を行わなければならない必要はないと解されるので、E医師の前記診断によれば、Aについて直ちにCT検査の必要を認めなかったことは、当初診断の際の状況からしてやむを得なかったものと判断されるが、鑑定の結果及び証人高津光洋の証言によれば、経過観察をしていたらCT検査をすべきであったという状況が出現した可能性も否定できない。

 さらに、被控訴人らは、「E医師は、Aを本件傷害後、少なくとも6時間Aを控訴人病院に留めてその経過観察をすべきであったのに、同人を帰宅させてこれを怠った。」と主張しているが、鑑定の結果によれば、前記本件診療の経緯とAの状況からして、Aを控訴人病院に留めて経過観察をせず帰宅を許可したことにつき、医師の処置判断としてはやや安直過ぎるものといわざるを得ず、この点に過失があるといわざるを得ないが、仮にAを帰宅させるのをやむを得なかったとしても、硬膜外血腫においては、脳内出血が存しても当初相当期間意識清明期が存在することがあることが特徴であり、また、小児の場合には、頭蓋骨骨折を伴わずに硬膜外への出血が発生している可能性もあるのであるから、その診療に当たった医師は、外見上の傷害の程度には拘わらず頭部に強い衝撃を受けている可能性が皆無と言えないことが多い交通事故等による頭部負傷者に対しては、事故後に意識が清明であっても、その後硬膜下血腫の発生に至る脳出血の進行が発生することがあること、その典型的な症状は、意識清明後の嘔吐、激しい頭痛、ぼんやりしてその応答がはっきりしなくなる、異常に眠たがる(傾眠)、睡眠時にいつもより激しい鼾、流涎がある、呼んでも目覚めない等であることを具体的に説明して当該患者ないしその看護者に、右症状が現れる本件事故後少なくとも約6時間以上は慎重な経過観察と、右症状の疑いが生じたことが発見されたときには直ちに医者の診察を受ける必要があること等の教示、指導するべき義務が患者を帰宅させる場合には存するものと判断される。

 本件においては、E医師は、Aの看護者である被控訴人ひとみに対して、前記硬膜外血腫が発生したときの症状については何らの説明もすることなく、また、「明日は、学校へ行ってもよいが、体育は止めるように。」と暫くの間激しい運動を控えるように指導するとともに、Aの本件交通事故後の経過観察等の必要から「明日も診察を受けに来るように。」「何か変ったことがあれば来てください。」と一般的な指示、指導をしたに止まり、右指導、指示の意味が帰宅後Aの硬膜下出血その他の脳内出血の有無の確認に重要である旨の説明、経過観察として注意すべきAの具体的症状についての説明を懈怠し、交通事故によって頭部に負傷した患者に対する経過観察の指示、説明としては不十分であったものと解さざるを得ない。

 したがって、E医師には、本件診療行為につき右の点についても過失が認められる。

 他方、本件医療事故の発生に関しては、本件交通事故の影響以外の原因が存在しない状況下において、Aは、帰宅直後、嘔吐したり、夕食も欲しがらずに鼾をかいて、涎を流して寝込んでしまったもので、Aが普段も睡眠中に鼾をかいたり、涎を流すことがあったとしても、通常、脳の機能障害が生じたことから睡眠に至ったときには、その鼾、流涎は通常の程度を超えるものであり、呼んでも目覚めない等通常の状態とは差異があることが普通であるから、また、被控訴人らにおいてはAの状態が氷枕の使用が必要であると考えたのに、右症状に対する判断の誤りからその後Aに前記除脳硬直が発生して呼吸停止が生じたその4時間ないし5時間後まで何らの措置を採ることもなく、そこに至って初めてAが重篤な状態に至っていたことを気付いたのは前記のとおりであって、E医師の前記指示が具体的でなかったことを考慮しても、これはAの保護者である父母としてのAの経過観察及び保護義務に懈怠があったものというべきである。

 したがって、本件医療事故に関するAないしその相続人である被控訴人らには、1割の過失相殺事由があると認めるのが相当である。

四 以上によれば、被害者であるAの死亡事故は、本件交通事故と本件医療事故が競合した結果発生したものであるが、その原因競合の寄与度を特定して主張立証することに困難が伴うこともあるから、被害者保護の見地から、本件交通事故におけるCの過失行為と本件医療事故におけるE医師の過失行為は共同不法行為として、被害者は、各不法行為に基づく損害賠償請求も分別することなく、全額の賠償請求をすることもできると解すべきであるが(その場合不法行為者同士の内部分担については当該共同不法行為における過失割合に従った求償関係によってこれを処理すべきことになる。)、本件の場合のように、自動車事故と医療過誤のように個々の不法行為が当該事故の全体の一部を時間的前後関係において構成し、しかもその行為類型が異なり、行為の本質や過失構造が異なり、かつ、共同不法行為とされる各不法行為につき、その一方又は双方に被害者側の過失相殺事由が存する場合は、各不法行為者の各不法行為の損害発生に対する寄与度の分別を主張、立証でき、個別的に過失相殺の主張をできるものと解すべきである。そして、そのような場合は、裁判所は、被害者の全損害を算定し、当該事故における個々の不法行為の寄与度を定め、そのうえで個々の不法行為についての過失相殺をしたうえで、各不法行為者が責任を負うべき損害賠償額を分別して認定するのが相当である。

 前記認定にかかる本件死亡事故の経過等を総合して判断するときには、本件交通事故と本件医療過誤の各寄与度は、それぞれ5割と推認するのが相当である。
 控訴人は、Aに対して適切な治療がなされておれば救命率は90パーセント以上であるとして本件医療過誤の寄与度が、90数パーセントであると主張するが、E医師の過失がない場合が即適切な治療が行われたことになるわけでないうえ、救命率が直ちに寄与度に結びつくわけでもないので、右の主張は採用できない。

五 損害について
1 過失相殺前の損害額各金2039万4038円(ただし、弁護士費用を除く)

(一) 逸失利益各金1189万4038円
 A(昭和57年1月13日生)は、前記死亡時(昭和63年9月13日)満6才8か月であって、同人の稼働可能期間は満18才から満67才までの49年間とするのが相当である。昭和63年の賃金センサス第一巻第一表産業別・企業規模計・学歴計によれば、男子労働者の年間給与額は金455万1000円である。そのうえで、生活費控除を5割とし、中間利息をライプニッツ式計算法(係数10.454)により控除して、Aの逸失利益を計算すると金2378万8077円(455万1000円×10.454×0.5)となる。

 被控訴人らは、Aの法的地位を各2分の1の割合で相続により承継していることは前記のとおりであるから、被控訴人各自の承継した逸失利益は各金1189万4038円となる。

(二) 慰籍料各金800万円
 本件によって被控訴人らの被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は、Aの家族内の地位(いわゆる一家の支柱ではない。)等に鑑みて、被控訴人ら各自800万円と判断するのが相当である。

(三) 葬儀費用各50万円
 弁論の全趣旨によれば、Aについては葬儀が行われたので、その葬儀費用についてはAの家族内の地位を考慮して、被控訴人ら各自が出捐した葬儀費用のうち各金50万円を本件と相当因果関係にある損害と認める。

2 本件医療過誤に対する寄与度と過失相殺の適用
 前記のとおり本件死亡事故に対する寄与度を5割、被害者側の過失相殺率を1割とすると、本件医療過誤における被控訴人らの各損害額は、各金917万7317円(2039万4038円×0.5×0.9)となる。
 (因みに前記のとおり本件死亡事故に対する本件交通事故の寄与度を5割、被害者側の過失相殺率を3割とすると、本件交通事故における被控訴人らの損害額は、713万7913円(2039万4038円×0.5×0.7)となる。)
 なお、乙第12号証によって補助参加人Bが加入している保険契約により葬儀費用50万円が補填されていることが認められるが、これは分別された本件交通事故による損害賠償責任分に補填されたものと取扱うのが公平であり、控訴人の負担すべき損害賠償責任の補填の一部とは認められない。

3 被控訴人らは、本件訴訟の追行を弁護士である被控訴人ら訴訟代理人に委任し、弁護士費用の支払を約していることは明らかであるので、そのうち前記認容損害の約1割である各金90万円が本件Aの死亡事故と相当因果関係にある損害と認める。

六 以上によれば、被控訴人らの本件各請求は、各自金1007万7317円及び内金金917万7317円に対する不法行為後である昭和63年9月14日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、それを超える請求部分は理由がないので棄却すべきである。
 よって、本件控訴は一部理由があるので、原判決を右のとおり変更することとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官鬼頭季郎 裁判官佐藤久夫 裁判官廣田民生)
以上:6,758文字
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R 1- 8-21(水):交通事故と医療過誤の共同不法行為についての地裁裁判決紹介
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○「交通事故と医療過誤の共同不法行為についての最高裁判決紹介」の続きで、その第一審である平成9年1月30日浦和地裁川越支部判決(民集55巻2号345頁)全文を紹介します。
判決は、被害者Aの死亡は本件交通事故と本件医療過誤が競合した結果発生し、本件交通事故における運転者の行為と本件医療過誤における医師の行為は共同不法行為であるとし、被告病院に、発生した全損害の賠償責任を負わせました。

○別コンテンツでその要旨を紹介しますが、二審平成10年4月28日東京高裁判決(判タ995号207頁、判時1652号75頁)は、各行為が共同不法行為であるとしながら、「個々の不法行為が当該事故の全体の一部を時間的前後関係において構成し、しかもその行為類型が異なり、行為の本質や過失構造が異なり、かつ、共同不法行為とされる各不法行為につき、その一方又は双方に被害者側の過失相殺事由が存する場合には、各不法行為者の損害発生に対する寄与度の分別を主張、立証でき、個別的に過失相殺の主張をできるものと解すべきとしました。

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主   文
1 被告は原告ら各自に対し金2201万0616円及び各内金2001万0616円に対する昭和63年9月14日より支払いずみまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用のうち、原告らと被告との間で生じた分は、これを3分し、その1を原告らの、その余を被告の各負担とし、参加人らと被告との間で生じた分も、これを3分し、その1を参加人らの、その余を被告の各負担とする。
この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事   実
 原告ら訴訟代理人は、「被告は原告ら各自に対し金3491万9809円及び内金3241万9809円に対する昭和63年9月14日より支払いずみまで年5分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決、並びに仮執行の宣言を求め、
 被告訴訟代理人は、請求棄却の判決を求めた。

(当事者双方の主張)
一 原告らの請求原因

1 A(昭和57年1月13日生)は、原告ら夫婦の長男であるところ、昭和63年9月12日午後3時40分頃、埼玉県上福岡市仲二丁目一番八号先路上において、自転車に乗車して走行中、補助参加人B株式会社の従業員である補助参加人Cが運転する普通乗用自動車(タクシー)と接触して、頭部に受傷したため、救急車により被告が経営するD病院(以下「被告病院」という。当時の名称は、「上福岡第二病院」である)へ搬送され、医師Eの診察を受けたところ、同医師は、頭部のレントゲン写真を2枚撮り、化膿止めの処方をしたのみで帰宅させたところ、Aは、同日午後11時過、突然39度3分の高熱を出して容態が急変したので、救急車により三芳厚生病院に搬送されたが、翌13日午前0時45分同病院において、左中硬膜動脈損傷による急性硬膜外血腫により死亡した。

2 医師Eは、被告の代表者であるところ、被告の職務を行うにつき、次のような過失によりAを死亡させたのであるから、被告は、民法44条により、法人としての不法行為責任を負うべきである。
(一) Eは、Aの受傷内容、その程度、及び受傷部位について正確詳細な問診をすることを怠った。
(二) Eが診断した受傷部位は、左頭部打撲挫傷、顔面打撲だけであって、その外の左側胸部打撲、左側肺の軽度圧迫、左右膝蓋内側の打撲傷、左下腿前側の打撲傷を診断しなかった等、受傷部位を正確に把握する義務を怠った。
(三) Eは、Aの受傷後6時間以内にCT検査をしていれば、確実に脳内出血を発見できたのに、CT検査をすべき義務を怠った。
(四) Eは、少なくとも受傷後6時間位被告病院で経過を観察すべきであったのに、これを怠った。
(五) Eは、付き添ってきた母である原告ひとみに対し、頭部内出血の可能性を教え、Aの症状観察を怠らないよう注意すべきであったのに、そのような指示及び忠告をしなかった。

3 被告の不法行為により蒙った原告らの損害は、次のとおりである。
(一) Aの逸失利益 金4183万9618円
 昭和63年の男子全年齢平均賃金年金455万1000円について、生活費を50パーセント控除したうえ、18歳から67歳まで49年間稼動しうるとして、新ホフマン係数により中間利息を控除して計算する。
(算式)
 4,551,000×18.387×0.5=41,839,618

(二) 原告らの慰謝料 金2200万円
 原告ら各自につき金1100万円

(三) 葬儀費 金100万円
 実際に支出した葬儀費の内金100万円について、原告ら各50万円として請求する。

(四) 弁護士費用 金500万円
 原告ら各金250万円
 以上を合計すると、原告ら各自につき、(一)の相続額2091万9809円に(二)ないし(四)を加算した合計金3491万9809円になる。

4 よって、原告らは被告に対し、損害賠償として各自金3491万9809円、及び内金3241万9809円に対する不法行為の後である昭和63年9月14日より支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二 請求原因に対する被告の答弁
請求原因1のうち、Aが自転車で走行中に接触したとの点は知らない。その余の事実は、認める。
同2の主張は、すべて争う。
(一) Eの問診に対し、原告ひとみは、Aが走行中にタクシーと軽くぶつかった旨説明するに終始した。Eはこのように問診義務を尽くしたうえ、Aはタクシーの車体に左顔面・頭部を接触して軽度の傷害を負ったもので、その際の衝撃の程度も軽微であったと判断したものである。
(二) Eは、正確な問診と視診・触診の外、頭部レントゲンの撮影までしたうえ、診察・診断をしたのであるから、「硬膜外血腫」や「硬膜外血腫のおそれ」を診断しなかったとしても、医療水準からして無理からぬことである。
(三) Eは、頭部レントゲン撮影までしたうえ、一定の診断に達したのであるから、さらにCT検査を実施する臨床上の注意義務はない。
(四) 本件においては6時間もの院内観察をする必要がなかった。
(五) Eは、頭部出血の可能性を予見していなかったところ、予見しなかったことについても、過失がなかったから、これを前提として、原告ひとみに対し、症状観察を指導すべき義務もない。

 同3も、争う。
(証拠関係)省略

理   由
一 請求原因1のうち、いずれも成立に争いのない乙第4号証の6乃至8、31、証人Fの証言によると、Aは、20インチ子供用自転車に乗車して走行中、補助参加人C運転のタクシーと接触する交通事故に遭ったことが認められ、右認定に反する証拠がないところ、その余の事実は、当事者間に争いがない。

二 いずれも成立に争いのない甲第1乃至第7号証、第29、30号証、乙第1、2号証、第4号証の11、12、20、24、いずれも原本の存在及びその成立に争いのない甲第8乃至第12号証、第27、28号証、第33号証、第37乃至第40号証、第42、43号証、原告らと被告との間では、成立に争いがなく、補助参加人らと被告との間では、弁論の全趣旨により、真正に成立したものと認められる乙第3号証、証人F、同G(但し、後記信用しない部分を除く)、同Hの各証言、原告田中ひとみ本人尋問の結果、鑑定人Iの鑑定の結果、並びに弁論の全趣旨によると、次の事実を認めることができる。

(1)Aは、頭部を打撲したため、事故後頭が痛いと訴えていた。

(2)原告ひとみは、スーパーで買い物をしていると、近隣の主婦から、Aが交通事故に遭ったことを知らされて、現場に駆けつけたところ、すでに救急車が来ており、救急車に同乗すると、Aは、救急隊の意向により、被告病院に搬送された。

(3)同日午後3時46分被告病院に到着すると、医師Eが待ち受けていて、Aは、自ら歩いて診察室に入った。Eは、Aを立たせたまま診察をし、Aの頭部を視診したうえ、Aの意識が清明であり、元気でもあったので、Aの訴えを単なる傷の痛みと軽信して、軽度の左頭部、顔面打撲挫傷と診断をし、化膿止めの処置をした後、念のため二方向から頭部レントゲン撮影をしたものの、骨折または骨折線を発見することができなかった。

(4)補助参加人Cも、救急車に追尾して被告病院に至ったものの、Eから事故の模様の詳細について質問を受けたことはなかった。

(5)補助参加人Cは、CTを撮ってくれるよう依頼したが、Eは、その必要がないと判断し、Aに対して、明日学校に行ってもよいが、体育は休むようにとだけ注意をして、午後4時30分頃帰宅させた。原告ひとみは、埼玉県東入間警察署に立ち寄った後、Aとともに同日午後5時30分頃帰宅した。

(6)Aは、家に入る前、玄関で嘔吐をしたうえ、食事もしないで眠いといって、寝入ってしまった。原告ひとみは、Eから特別の注意を受けなかったので、ただ疲れているだけと判断をして、Aの異常に気づかなかった。

(7)Aは、同日午後7時頃から冷や汗をかき始め、同日午後11時過ぎになると、39度もの熱を出したので、原告らが異常事態と判断をして救急車を呼び、三芳厚生病院に連れて行ったが、同病院に到着した翌日午前0時45分には、自発呼吸がなく、心電図は平坦な状態ですでに死亡していた。

(8)埼玉医科大学法医学教室による司法解剖の結果、Aの死因は、左側頭部打撲に起因した硬膜外血腫であって、左頭頂骨前下端部に近いところから、前下方に走り、左蝶形骨上端部の端を経て左側頭骨前端を前下方に向かい、岩様部直前に至ってとどまる線状骨折が1条あり、その長さは、頭蓋外面で約7センチメートル、内面で約8センチメートルに達する。

(9)被告は、本件事故当時被告病院の外、近隣で上福岡中央病院も経営していたところ、当時常勤の医師は4名、非常勤の医師は約20名いたが、Eは、消化器外科が専門であり、脳神経外科も診療科目に入っていたものの、脳外科の手術は、被告病院ではせずに、すべて防衛医科大学校付属病院に転送していた。

(10)Aの場合、被告病院を退出した午後4時30分頃に頭部のCT検査を受診しておれば、左側頭部の血腫形成、あるいはその兆しが認められる可能性が大きいうえ、単純レントゲン撮影では識別されなかった頭蓋骨骨折も識別され、適切な左急性硬膜外血腫の診断が可能であった。さらに、遅くとも受傷当日午後7時頃までに血腫除去手術が施行されておれば、Aの救命は可能であったし、その予後も良好であった。

 以上の事実を認めることができ、右認定に反する、成立に争いのない乙第九号証の二、証人千ケ崎裕夫の証言の一部、被告代表者本人尋問の結果の一部は、前掲各証拠と対比して信用することができず、他に右認定を覆すに足りる的確な証拠はない。

三 右認定事実によると、被告の代表者であるEには、被告の職務を行うにつき、Aを最初に診察した際、適切な問診をしないまま、本件交通事故の態様を的確に把握せず、Aに対して頭部CT検査をすることなく、Aの受傷の外観と意識が清明であること、及び頭部単純レントゲン写真のみから、左硬膜外血腫の存在またはその徴候を発見できなかった点、また、Aを帰宅させるに当たり、付き添ってきた母親である原告ひとみに対し、Aが嘔吐をするか、傾眠傾向を示したときは、直ちに来院して適切な処置を受けるよう指示しなかった点に、不法行為上の過失が認められるというべきであるから、被告は、民法44条に従い、補助参加人Cとの共同不法行為者としての責任が免れないといわなければならない

四 そこで、被告の不法行為により、原告らが蒙った損害について検討する。
1 Aの逸失利益 金2302万1233円
 前記認定の事実によると、Aは、本件事故当時6歳の男児であったところ、昭和63年における、男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の年間給与額は、金455万1000円なので、生活費を50パーセント控除したうえ、18歳から67歳まで49年間稼動しうるとして、ライプニッツ式計算法により、中間利息を控除して計算する。
(算式)
 4,551,000×0.5×(18.9802-8.8632)=23,021,233
 原告らは、いずれもAの逸失利益の2分の1一金1151万0616円を相続した。

2 原告らの慰謝料 各金800万円
 補助参加人C及び被告の共同不法行為により、Aを失った精神的苦痛に対する慰謝料は、その両親である原告ら各自につき、金800万円と認めるのが相当である。

3 葬儀費 各金50万円
 原告らが支出した葬儀費用のうち、本件不法行為と相当因果関係に立つ費用は、原告ら各自につき金50万円と認めるのが相当である。

4 弁護士費用 各金200万円
 1ないし3を合計すると、原告ら各自につき金2001万0616円になるところ、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して、各金200万円をもって、本件不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用と認めるのが相当である。

五 以上の次第で、原告らの被告に対する本訴請求は、不法行為に基づく損害賠償として各金2201万0616円、及び内金2001万0616円に対する不法行為の後である昭和63年9月14日より支払いずみまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で、正当としてこれを認容し、その余を失当として棄却すべきである。
よって、訴訟費用の負担について、民訴法92条本文、93条1項本文、94条後段、89条を、仮執行の宣言について同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

以上:5,620文字
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R 1- 8-20(火):交通事故と医療過誤の共同不法行為についての最高裁判決紹介
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○交通事故と医療過誤が競合した場合の損害賠償責任についての裁判例を探しています。交通事故と医療事故とが順次競合し、そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり、結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し、責任を負うべき損害額を限定することはできないとした平成13年3月13日最高裁判決(判タ1059号59頁、判時1747号87頁)全文を紹介します。

○この最高裁判決は、交通事故と医療事故とが順次競合し、そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において、過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されないとしています。

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主  文
1 原判決主文第1項を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
(1) 被上告人は、上告人ら各自に対し、1900万4634円及びうち1810万4634円に対する昭和63年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 上告人らのその余の請求を棄却する。
2 訴訟の総費用は、これを3分し、その1を上告人らの、その余を被上告人の負担とし、参加によって生じた費用は、これを3分し、その1を上告補助参加人らの、その余を被上告人の負担とする。

理  由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由第一ないし第三及び第五について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
(1) 上告人らの長男であるA(昭和57年1月13日生)は、昭和63年9月12日午後3時40分ころ、埼玉県上福岡市仲2丁目1番8号先路上において、自転車を運転し、一時停止を怠って時速約15kmの速度で交通整理の行われていない交差点内に進入したところ、同交差点内に減速することなく進入しようとした上告補助参加人B株式会社の従業員である同C運転に係る普通乗用自動車と接触し、転倒した(以下「本件交通事故」という。)。

(2) Aは、本件交通事故後直ちに、救急車で被上告人が経営するD病院(以下「被上告人病院」という。)に搬送された。被上告人の代表者で被上告人病院院長であるE医師(以下「E医師」という。)は、Aを診察し、左頭部に軽い皮下挫傷による点状出血を、顔面表皮に軽度の挫傷を認めたが、Aの意識が清明で外観上は異常が認められず、Aが事故態様についてタクシーと軽く衝突したとの説明をし、前記負傷部分の痛みを訴えたのみであったことから、Aの歩行中の軽微な事故であると考えた。そして、E医師は、Aの頭部正面及び左側面から撮影したレントゲン写真を検討し、頭がい骨骨折を発見しなかったことから、さらにAについて頭部のCT検査をしたり、病院内で相当時間経過観察をするまでの必要はないと判断し、前記負傷部分を消毒し、抗生物質を服用させる治療をした上、A及び上告人ひとみに対し、「明日は学校へ行ってもよいが、体育は止めるように。明日も診察を受けに来るように。」「何か変わったことがあれば来るように。」との一般的指示をしたのみで、Aを帰宅させた。

(3) 上告人ひとみは、Aとともに午後5時30分ころ帰宅したが、Aが帰宅直後におう吐し、眠気を訴えたため、疲労のためと考えてそのまま寝かせたところ、Aは、夕食を欲しがることもなく午後6時30分ころに寝入った。Aは、同日午後7時ころには、いびきをかいたり、よだれを流したりするようになり、かなり汗をかくようになっていたが、上告人らは、多少の異常は感じたものの、Aは普段でもいびきをかいたりよだれを流したりして寝ることがあったことから、この容態を重大なこととは考えず、同日午後7時30分ころ、氷枕を使用させ、そのままにしておいた。しかし、Aは、同日午後11時ころには、体温が39度まで上昇してけいれん様の症状を示し、午後11時50分ころにはいびきをかかなくなったため、上告人らは初めてAが重篤な状況にあるものと疑うに至り、翌13日午前0時17分ころ、救急車を要請した。救急車は同日午前0時25分に上告人方に到着したが、Aは、既に脈が触れず呼吸も停止しており、同日午前0時44分、三芳厚生病院に搬送されたが、同日午前0時45分、死亡した(以下「本件医療事故」という。)。

(4) Aは、頭がい外面線状骨折による硬膜動脈損傷を原因とする硬膜外血しゅにより死亡したものであり、被上告人病院から帰宅したころには、脳出血による脳圧の亢進によりおう吐の症状が発現し、午後6時ころには傾眠状態を示し、いびき、よだれを伴う睡眠、脳の機能障害が発生し、午後11時ころには、治療が困難な程度であるけいれん様の症状を示す除脳硬直が始まり、午後11時50分には自発呼吸が不可能な容態になったものである。

 硬膜外血しゅは、骨折を伴わずに発生することもあり、また、当初相当期間の意識清明期が存することが特徴であって、その後、頭痛、おう吐、傾眠、意識障害等の経過をたどり、脳障害である除脳硬直が開始した後はその救命率が著しく減少し、仮に救命に成功したとしても重い後遺障害をもたらすおそれが高いものであるが、早期に血しゅの除去を行えば予後は良く、高い確率での救命可能性があるものである。したがって、交通事故により頭部に強い衝撃を受けている可能性のあるAの診療に当たったE医師は、外見上の傷害の程度にかかわらず、当該患者ないしその看護者に対し、病院内にとどめて経過観察をするか、仮にやむを得ず帰宅させるにしても、事故後に意識が清明であってもその後硬膜外血しゅの発生に至る脳出血の進行が発生することがあること及びその典型的な前記症状を具体的に説明し、事故後少なくとも6時間以上は慎重な経過観察と、前記症状の疑いが発見されたときには直ちに医師の診察を受ける必要があること等を教示、指導すべき義務が存したのであって、E医師にはこれを懈怠した過失がある。

(5) 他方、上告人らにおいても、除脳硬直が発生して呼吸停止の容態に陥るまでAが重篤な状態に至っていることに気付くことなく、何らの措置をも講じなかった点において、Aの経過観察や保護義務を懈怠した過失があり、その過失割合は1割が相当である。

(6) なお、本件交通事故は、本件交差点に進入するに際し、自動車運転手として遵守すべき注意義務を懈怠した、上告補助参加人Cの過失によるものであるが、Aにも、交差点に進入するに際しての一時停止義務、左右の安全確認義務を怠った過失があり、その過失割合は3割が相当である。

(7) 上告人らは、Aの本件交通事故及び本件医療事故による次の損害賠償請求権を各2分の1の割合で相続した。Aの死亡による上告人らの弁護士費用分を除く全損害は、次のとおりである。
 逸失利益 2378万8076円
 慰謝料 1600万円
 葬儀費用 100万円
 なお、上告人らは、上告補助参加人B株式会社から葬儀費用として50万円の支払を受けた。

2 本件は、上告人らが、E医師の診療行為の過失によりAが死亡したとして、被上告人に対し、民法709条に基づき損害賠償を求めている事案である。
 原審は、前記事実関係の下において、概要次のとおり判断した。
(1) 被害者であるAの死亡事故は、本件交通事故と本件医療事故が競合した結果発生したものであるところ、原因競合の寄与度を特定して主張立証することに困難を伴うので、被害者保護の見地から、本件交通事故における上告補助参加人Cの過失行為と本件医療事故におけるE医師の過失行為とを共同不法行為として、被害者は、各不法行為に基づく損害賠償請求を分別することなく、全額の損害の賠償を請求することもできると解すべきである。

(2) しかし、本件の場合のように、個々の不法行為が当該事故の全体の一部を時間的前後関係において構成し、その行為類型が異なり、行為の本質や過失構造が異なり、かつ、共同不法行為を構成する一方又は双方の不法行為につき、被害者側に過失相殺すべき事由が存する場合には、各不法行為者は、各不法行為の損害発生に対する寄与度の分別を主張することができ、かつ、個別的に過失相殺の主張をすることができるものと解すべきである。すなわち、被害者の被った損害の全額を算定した上、各加害行為の寄与度に応じてこれを案分して割り付け、その上で個々の不法行為についての過失相殺をして、各不法行為者が責任を負うべき損害賠償額を分別して認定するのが相当である。

(3) 本件においては、Aの死亡の経過等を総合して判断すると、本件交通事故と本件医療事故の各寄与度は、それぞれ5割と推認するのが相当であるから、被上告人が賠償すべき損害額は、Aの死亡による弁護士費用分を除く全損害4078万8076円の5割である2039万4038円から本件医療事故における被害者側の過失1割を過失相殺した上で弁護士費用180万円を加算した2015万4634円と算定し、上告人らの請求をこの金員の2分の1である各1007万7317円及びうち917万7317円に対する本件医療事故の後である昭和63年9月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものである。

3 しかしながら、原審の前記2(2) (3) の判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 原審の確定した事実関係によれば、本件交通事故により、Aは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの、事故後搬入された被上告人病院において、Aに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもってAを救命できたということができるから、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Aの死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。

 本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。

 けだし、共同不法行為によって被害者の被った損害は、各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして、各不法行為者はその全額を負担すべきものであり、各不法行為者が賠償すべき損害額を案分、限定することは連帯関係を免除することとなり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり、損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。
 したがって原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。

4 本件は、本件交通事故と本件医療事故という加害者及び侵害行為を異にする二つの不法行為が順次競合した共同不法行為であり、各不法行為については加害者及び被害者の過失の内容も別異の性質を有するものである。ところで、過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから、本件のような共同不法行為においても、過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしん酌して過失相殺をすることは許されない。

 本件において被上告人の負担すべき損害額は、Aの死亡による上告人らの損害の全額(弁護士費用を除く。)である4078万8076円につき被害者側の過失を1割として過失相殺による減額をした3670万9268円から上告補助参加人B株式会社から葬儀費用として支払を受けた50万円を控除し、これに弁護士費用相当額180万円を加算した3800万9268円となる。したがって、上告人ら各自の請求できる損害額は、この2分の1である1900万4634円となる。

5 以上によれば、上告人らの本件請求は、各自1900万4634円及びうち1810万4634円に対する本件医療事故の後である昭和63年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないから棄却すべきである。したがって、これと異なる原判決は、主文第1項のとおり変更するのが相当である。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 元原利文 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)

以上:5,543文字
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R 1- 8-19(月):民法第733条再婚禁止期間改正のもととなった最高裁判決紹介2
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○「民法第733条再婚禁止期間改正のもととなった最高裁判決紹介」の続きで、平成27年12月16日最高裁判決(判タ1421号61頁、判時2284号20頁)のうち、立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける場合について、国会が民法733条1項の規定を改廃する立法措置をとらなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとした部分について、多数裁判官の補足意見も含めて紹介します。

○判決要旨は、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるとし、

平成20年当時において国会が民法733条1項の規定を改廃する立法措置をとらなかったことは、
(1)同項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分が合理性を欠くに至ったのが昭和22年民法改正後の医療や科学技術の発達及び社会状況の変化等によるものであり、
(2)平成7年には国会が同条を改廃しなかったことにつき直ちにその立法不作為が違法となる例外的な場合に当たると解する余地のないことは明らかであるとの最高裁判所第三小法廷の判断が示され、
(3)その後も上記部分について違憲の問題が生ずるとの司法判断がされてこなかった
など判示の事情の下では、上記部分が違憲であることが国会にとって明白であったということは困難であり、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとしたものです。

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第3 本件立法不作為の国家賠償法上の違法性の有無について
1 国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるところ,国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり,立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。

 そして,上記行動についての評価は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって,仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても,そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。

 もっとも,法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして,例外的に,その立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。

2 そこで,本件立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるか否かについて検討する。
(1) 本件規定は,前記のとおり,昭和22年民法改正当時においては100日超過部分を含め一定の合理性を有していたと考えられるものであるが,その後の我が国における医療や科学技術の発達及び社会状況の変化等に伴い,再婚後に前夫の子が生まれる可能性をできるだけ少なくして家庭の不和を避けるという観点や,父性の判定に誤りが生ずる事態を減らすという観点からは,本件規定のうち100日超過部分についてその合理性を説明することが困難になったものということができる。

(2) 平成7年には,当裁判所第三小法廷が,再婚禁止期間を廃止し又は短縮しない国会の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるかが争われた事案において,国会が民法733条を改廃しなかったことにつき直ちにその立法不作為が違法となる例外的な場合に当たると解する余地のないことは明らかであるとの判断を示していた(平成7年判決)。これを受けた国会議員としては,平成7年判決が同条を違憲とは判示していないことから,本件規定を改廃するか否かについては,平成7年の時点においても,基本的に立法政策に委ねるのが相当であるとする司法判断が示されたと受け止めたとしてもやむを得ないということができる。

 また,平成6年に法制審議会民法部会身分法小委員会の審議に基づくものとして法務省民事局参事官室により公表された「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」及びこれを更に検討した上で平成8年に法制審議会が法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においては,再婚禁止期間を100日に短縮するという本件規定の改正案が示されていたが,同改正案は,現行の嫡出推定の制度の範囲内で禁止期間の短縮を図るもの等の説明が付され,100日超過部分が違憲であることを前提とした議論がされた結果作成されたものとはうかがわれない。

(3) 婚姻及び家族に関する事項については,その具体的な制度の構築が第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねられる事柄であることに照らせば,平成7年判決がされた後も,本件規定のうち100日超過部分については違憲の問題が生ずるとの司法判断がされてこなかった状況の下において,我が国における医療や科学技術の発達及び社会状況の変化等に伴い,平成20年当時において,本件規定のうち100日超過部分が憲法14条1項及び24条2項に違反するものとなっていたことが,国会にとって明白であったということは困難である。

3 以上によれば,上記当時においては本件規定のうち100日超過部分が憲法に違反するものとなってはいたものの,これを国家賠償法1条1項の適用の観点からみた場合には,憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反することが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたって改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできない。したがって,本件立法不作為は,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきである。

第4 結論
 以上のとおりであるから,上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。
 よって,裁判官山浦善樹の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 なお,裁判官櫻井龍子,同千葉勝美,同大谷剛彦,同小貫芳信,同山本庸幸,同大谷直人の補足意見,裁判官千葉勝美,同木内道祥の各補足意見,裁判官鬼丸かおるの意見がある。

 裁判官櫻井龍子,同千葉勝美,同大谷剛彦,同小貫芳信,同山本庸幸,同大谷直人の補足意見は,次のとおりである。
 私たちは,本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分(以下「100日以内部分」という。)について憲法14条1項又は24条2項に違反するものではないとする多数意見に賛同するものであるが,再婚禁止による支障をできる限り少なくすべきとの観点から,上記100日の期間内であっても,女性が再婚をすることが禁止されない場合を認める余地が少なくないのではないかと考えており,100日以内部分の適用除外に関する法令解釈上の問題について補足しておきたい。

 多数意見が判示するとおり,本件規定の立法目的は,父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解され,女性の再婚後に生まれた子につき民法772条の規定による父性の推定の重複を避けるため100日の再婚禁止期間を設けることは,国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく,上記立法目的との関連において合理性を有するということができる。

 ところで,100日以内部分の適用を除外する場合に関する民法733条2項は,除外する事由として,女性が前婚の解消等の後にその前から懐胎していた子を出産した場合を挙げているところ,これは,その出産後に懐胎した子については,当然に前夫との婚姻中に懐胎したものではないから,同法772条の規定による父性の推定を及ぼす必要がないとの理由によるものであると思われる。そうすると,女性にのみ再婚禁止期間が設けられた立法目的が上記のとおり父性の推定の重複を回避することにあることからすれば,民法733条2項は,上記の場合以外であっても,およそ父性の推定の重複を回避する必要がない場合には同条1項の規定の適用除外を認めることを許容しているものと解するのが相当であろう。また,そのように解することは,婚姻をするについての自由を尊重する多数意見の立場にも沿うものということができる。

 具体的には,女性に子が生まれないことが生物学上確実であるなど父性の推定の重複が生じ得ない場合,離婚した前配偶者と再婚するなど父性の推定が重複しても差し支えない場合及び一定の事由により父性の推定が及ばないと解される場合(最高裁昭和43年(オ)第1184号同44年5月29日第一小法廷判決・民集23巻6号1064頁,最高裁昭和43年(オ)第1310号同44年9月4日第一小法廷判決・裁判集民事96号485頁,最高裁平成7年(オ)第2178号同10年8月31日第二小法廷判決・裁判集民事189号497頁等参照)には,民法733条1項の規定の適用がないというべきである。

 従来の戸籍実務においても,前婚の夫との再婚の場合(大正元年11月25日民事第708号民事局長回答),夫の3年以上の生死不明を理由とする離婚判決によって前婚を解消した場合(大正7年9月13日民第1735号法務局長回答,昭和25年1月6日民事甲第2号民事局長回答),女性が懐胎することのできない年齢(67歳)である場合(昭和39年5月27日民事甲第1951号民事局長回答)及び3年前から音信不通状態にあり悪意の遺棄を理由とする離婚判決によって前婚を解消した場合(昭和40年3月16日民事甲第540号民事局長回答)などにおいて,再婚禁止期間内の婚姻届を受理してよい旨の取扱いがされており,このような取扱いは,民法733条1項の規定の適用除外についての上記のような理解に沿ったものと思われる。

 以上の理解に立つと,女性がいわゆる不妊手術を受けている場合についても,これをもって当該女性に子が生まれないことが生物学上確実であるときは,上記の各場合と同等に取り扱って差し支えないものと解されるであろう。また,前婚の解消等の時点で懐胎していない女性については,民法733条2項に規定する前婚の解消等の後にその前から懐胎していた子を出産した場合と客観的な状況は異ならないのであるから,100日以内部分の適用除外の事由があるとしても不相当とはいえないであろう。

 このように,本件規定の立法目的との関連において考えれば,100日以内部分の適用除外の事由に当たると解される場合は,民法733条2項に直接規定されている場合や従来の戸籍実務において認められてきた場合に限られるものではないということができるのである。
 もとより,婚姻届の提出の場面においては,戸籍事務管掌者が行う形式的審査の限界から,その届出の時点で民法733条1項の規定の適用除外とされる事由の範囲に影響があること自体はやむを得ず,上記のように前婚の解消等の時点で懐胎していないという事由は,医師の作成した証明書など明確性・客観性の上で確実な証明手段による認定を要するという制約は受け入れなければならないであろう。
以上:5,025文字
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R 1- 8-18(日):民法第733条再婚禁止期間改正のもととなった最高裁判決紹介
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○民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項、24条2項に違反しないが、100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は、平成20年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていたとする平成27年12月16日最高裁判決(判タ1421号61頁、判時2284号20頁)の該当部分を紹介します。これを受けて民法第733条は平成28年3月に改正されました。

*********************************************

主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。 

理   由
 上告代理人○○○○の上告理由について
第1 事案の概要等
1 本件は,上告人が,女性について6箇月の再婚禁止期間を定める民法733条1項の規定(以下「本件規定」という。)は憲法14条1項及び24条2項に違反すると主張し,本件規定を改廃する立法措置をとらなかった立法不作為(以下「本件立法不作為」という。)の違法を理由に,被上告人に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求める事案である。

 原審の適法に確定した事実関係によれば,上告人は,平成20年3月○日に前夫と離婚をし,同年10月○日に後夫と再婚をしたが,同再婚は,本件規定があるために望んだ時期から遅れて成立したものであったというのである。上告人は,これにより被った精神的損害等の賠償として,被上告人に対し,165万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている。

2 原審において,上告人は,本件規定が合理的な根拠なく女性を差別的に取り扱うものであるから憲法14条1項及び24条2項に違反し,本件立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける旨を主張した。その趣旨は,次のようなものと解される。
(1) 本件規定は,道徳的な理由に基づいて寡婦に対し一定の服喪を強制するという不当な趣旨を含むものである。また,本件規定の立法目的が父性の推定の重複を回避することにあるとしても,DNA検査等によって父子関係を確定することが容易になっているなどの近年の状況に鑑みれば,父を定めることを目的とする訴え(民法773条)の適用対象を広げることなどによって子の父を確定することでも足りるはずであり,あえて再婚禁止期間を設けて女性の婚姻の自由を制約することに合理性は認められない。

(2) また,民法772条は,婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子を当該婚姻に係る夫の子と推定していることから,前婚の解消等の日から300日以内で,かつ,後婚の成立から200日の経過後に子が生まれる事態を避ければ父性の推定の重複を回避することができる。そのためには,100日の再婚禁止期間を設ければ足りるから,少なくとも,本件規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分(以下「100日超過部分」という。)は,女性に対し婚姻の自由の過剰な制約を課すものであり,合理性がない。

3 これに対し,原判決は,本件規定の立法目的は父性の推定の重複を回避し,父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解されるところ,その立法目的には合理性があり,これを達成するために再婚禁止期間を具体的にどの程度の期間とするかは,上記立法目的と女性の婚姻の自由との調整を図りつつ国会において決定されるべき問題であるから,これを6箇月とした本件規定が直ちに過剰な制約であるとはいえず,本件立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
 所論は,要するに,原判決には憲法14条1項及び24条2項の解釈の誤りがあるというものである。

第2 本件規定の憲法適合性について
1 憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁等)。そして,本件規定は,女性についてのみ前婚の解消又は取消しの日から6箇月の再婚禁止期間を定めており,これによって,再婚をする際の要件に関し男性と女性とを区別しているから,このような区別をすることが事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものと認められない場合には,本件規定は憲法14条1項に違反することになると解するのが相当である。

 ところで,婚姻及び家族に関する事項は,国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ,それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものである。したがって,その内容の詳細については,憲法が一義的に定めるのではなく,法律によってこれを具体化することがふさわしいものと考えられる。憲法24条2項は,このような観点から,婚姻及び家族に関する事項について,具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに,その立法に当たっては,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請,指針を示すことによって,その裁量の限界を画したものといえる。

 また,同条1項は,「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。」と規定しており,婚姻をするかどうか,いつ誰と婚姻をするかについては,当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解される。婚姻は,これにより,配偶者の相続権(民法890条)や夫婦間の子が嫡出子となること(同法772条1項等)などの重要な法律上の効果が与えられるものとされているほか,近年家族等に関する国民の意識の多様化が指摘されつつも,国民の中にはなお法律婚を尊重する意識が幅広く浸透していると考えられることをも併せ考慮すると,上記のような婚姻をするについての自由は,憲法24条1項の規定の趣旨に照らし,十分尊重に値するものと解することができる。

 そうすると,婚姻制度に関わる立法として,婚姻に対する直接的な制約を課すことが内容となっている本件規定については,その合理的な根拠の有無について以上のような事柄の性質を十分考慮に入れた上で検討をすることが必要である。
 そこで,本件においては,上記の考え方に基づき,本件規定が再婚をする際の要件に関し男女の区別をしていることにつき,そのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠があり,かつ,その区別の具体的内容が上記の立法目的との関連において合理性を有するものであるかどうかという観点から憲法適合性の審査を行うのが相当である。以下,このような観点から検討する。

2 本件規定の立法目的について
(1) 昭和22年法律第222号による民法の一部改正(以下「昭和22年民法改正」という。)により,旧民法(昭和22年民法改正前の明治31年法律第9号をいう。以下同じ。)における婚姻及び家族に関する規定は,憲法24条2項で婚姻及び家族に関する事項について法律が個人の尊厳及び両性の本質的平等に立脚して制定されるべきことが示されたことに伴って大幅に変更され,憲法の趣旨に沿わない「家」制度が廃止されるとともに,上記の立法上の指針に沿うように,妻の無能力の規定の廃止など夫婦の平等を図り,父母が対等な立場から共同で親権を行使することを認めるなどの内容に改められた。

 その中で,女性についてのみ再婚禁止期間を定めた旧民法767条1項の「女ハ前婚ノ解消又ハ取消ノ日ヨリ六个月ヲ経過シタル後ニ非サレハ再婚ヲ為スコトヲ得ス」との規定及び同条2項の「女カ前婚ノ解消又ハ取消ノ前ヨリ懐胎シタル場合ニ於テハ其分娩ノ日ヨリ前項ノ規定ヲ適用セス」との規定は,父性の推定に関する旧民法820条1項の「妻カ婚姻中ニ懐胎シタル子ハ夫ノ子ト推定ス」との規定及び同条2項の「婚姻成立ノ日ヨリ二百日後又ハ婚姻ノ解消若クハ取消ノ日ヨリ三百日内ニ生レタル子ハ婚姻中ニ懐胎シタルモノト推定ス」との規定と共に,現行の民法にそのまま引き継がれた。

(2) 現行の民法は,嫡出親子関係について,妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定し(民法772条1項),夫において子が嫡出であることを否認するためには嫡出否認の訴えによらなければならず(同法775条),この訴えは夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない(同法777条)と規定して,父性の推定の仕組みを設けており,これによって法律上の父子関係を早期に定めることが可能となっている。しかるところ,上記の仕組みの下において,女性が前婚の解消等の日から間もなく再婚をし,子を出産した場合においては,その子の父が前夫であるか後夫であるかが直ちに定まらない事態が生じ得るのであって,そのために父子関係をめぐる紛争が生ずるとすれば,そのことが子の利益に反するものであることはいうまでもない。

 民法733条2項は,女性が前婚の解消等の前から懐胎していた場合には,その出産の日から本件規定の適用がない旨を規定して,再婚後に前夫の子との推定が働く子が生まれない場合を再婚禁止の除外事由として定めており,また,同法773条は,本件規定に違反して再婚をした女性が出産した場合において,同法772条の父性の推定の規定によりその子の父を定めることができないときは裁判所がこれを定めることを規定して,父性の推定が重複した場合の父子関係確定のための手続を設けている。これらの民法の規定は,本件規定が父性の推定の重複を避けるために規定されたものであることを前提にしたものと解される。

(3) 以上のような立法の経緯及び嫡出親子関係等に関する民法の規定中における本件規定の位置付けからすると,本件規定の立法目的は,女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解するのが相当であり(最高裁平成4年(オ)第255号同7年12月5日第三小法廷判決・裁判集民事177号243頁(以下「平成7年判決」という。)参照),父子関係が早期に明確となることの重要性に鑑みると,このような立法目的には合理性を認めることができる。

(4) これに対し,仮に父性の推定が重複しても,父を定めることを目的とする訴え(民法773条)の適用対象を広げることにより,子の父を確定することは容易にできるから,必ずしも女性に対する再婚の禁止によって父性の推定の重複を回避する必要性はないという指摘があるところである。

 確かに,近年の医療や科学技術の発達により,DNA検査技術が進歩し,安価に,身体に対する侵襲を伴うこともなく,極めて高い確率で生物学上の親子関係を肯定し,又は否定することができるようになったことは公知の事実である。

 しかし,そのように父子関係の確定を科学的な判定に委ねることとする場合には,父性の推定が重複する期間内に生まれた子は,一定の裁判手続等を経るまで法律上の父が未定の子として取り扱わざるを得ず,その手続を経なければ法律上の父を確定できない状態に置かれることになる。生まれてくる子にとって,法律上の父を確定できない状態が一定期間継続することにより種々の影響が生じ得ることを考慮すれば,子の利益の観点から,上記のような法律上の父を確定するための裁判手続等を経るまでもなく,そもそも父性の推定が重複することを回避するための制度を維持することに合理性が認められるというべきである。

3 そうすると,次に,女性についてのみ6箇月の再婚禁止期間を設けている本件規定が立法目的との関連において上記の趣旨にかなう合理性を有すると評価できるものであるか否かが問題となる。以下,この点につき検討する。
(1) 上記のとおり,本件規定の立法目的は,父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解されるところ,民法772条2項は,「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定して,出産の時期から逆算して懐胎の時期を推定し,その結果婚姻中に懐胎したものと推定される子について,同条1項が「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と規定している。そうすると,女性の再婚後に生まれる子については,計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって,父性の推定の重複が回避されることになる。夫婦間の子が嫡出子となることは婚姻による重要な効果であるところ,嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父性を推定し,父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図る仕組みが設けられた趣旨に鑑みれば,父性の推定の重複を避けるため上記の100日について一律に女性の再婚を制約することは,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく,上記立法目的との関連において合理性を有するものということができる。
 よって,本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項にも,憲法24条2項にも違反するものではない。

(2) これに対し,本件規定のうち100日超過部分については,民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない。
 旧民法767条1項において再婚禁止期間が6箇月と定められたことの根拠について,旧民法起草時の立案担当者の説明等からすると,その当時は,専門家でも懐胎後6箇月程度経たないと懐胎の有無を確定することが困難であり,父子関係を確定するための医療や科学技術も未発達であった状況の下において,再婚後に前夫の子が生まれる可能性をできるだけ少なくして家庭の不和を避けるという観点や,再婚後に生まれる子の父子関係が争われる事態を減らすことによって,父性の判定を誤り血統に混乱が生ずることを避けるという観点から,再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず,一定の期間の幅を設けようとしたものであったことがうかがわれる。

 また,諸外国の法律において10箇月の再婚禁止期間を定める例がみられたという事情も影響している可能性がある。上記のような旧民法起草時における諸事情に鑑みると,再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず,一定の期間の幅を設けることが父子関係をめぐる紛争を未然に防止することにつながるという考え方にも理解し得る面があり,このような考え方に基づき再婚禁止期間を6箇月と定めたことが不合理であったとはいい難い。このことは,再婚禁止期間の規定が旧民法から現行の民法に引き継がれた後においても同様であり,その当時においては,国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものであったとまでいうことはできない。


 しかし,その後,医療や科学技術が発達した今日においては,上記のような各観点から,再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず,一定の期間の幅を設けることを正当化することは困難になったといわざるを得ない。
 加えて,昭和22年民法改正以降,我が国においては,社会状況及び経済状況の変化に伴い婚姻及び家族の実態が変化し,特に平成期に入った後においては,晩婚化が進む一方で,離婚件数及び再婚件数が増加するなど,再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっている事情も認めることができる。

 また,かつては再婚禁止期間を定めていた諸外国が徐々にこれを廃止する立法をする傾向にあり,ドイツにおいては1998年(平成10年)施行の「親子法改革法」により,フランスにおいては2005年(平成17年)施行の「離婚に関する2004年5月26日の法律」により,いずれも再婚禁止期間の制度を廃止するに至っており,世界的には再婚禁止期間を設けない国が多くなっていることも公知の事実である。それぞれの国において婚姻の解消や父子関係の確定等に係る制度が異なるものである以上,その一部である再婚禁止期間に係る諸外国の立法の動向は,我が国における再婚禁止期間の制度の評価に直ちに影響を及ぼすものとはいえないが,再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっていることを示す事情の一つとなり得るものである。

 そして,上記のとおり,婚姻をするについての自由が憲法24条1項の規定の趣旨に照らし十分尊重されるべきものであることや妻が婚姻前から懐胎していた子を産むことは再婚の場合に限られないことをも考慮すれば,再婚の場合に限って,前夫の子が生まれる可能性をできるだけ少なくして家庭の不和を避けるという観点や,婚姻後に生まれる子の父子関係が争われる事態を減らすことによって,父性の判定を誤り血統に混乱が生ずることを避けるという観点から,厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間を超えて婚姻を禁止する期間を設けることを正当化することは困難である。他にこれを正当化し得る根拠を見いだすこともできないことからすれば,本件規定のうち100日超過部分は合理性を欠いた過剰な制約を課すものとなっているというべきである。

 以上を総合すると,本件規定のうち100日超過部分は,遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして,その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される。

(3) 以上の次第で,本件規定のうち100日超過部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり,上記当時において,同部分は,憲法14条1項に違反するとともに,憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである。


(後略)
以上:7,518文字
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R 1- 8-17(土):小松家3回目のSF家族旅行第5日目-終了後の備忘録
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R 1- 8-16(金):2019年08月16日発行第251号”弁護士のプレイバック”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和元年8月16日発行第251号「弁護士のプレイバック」をお届けします。

○山口百恵さんは、私も3人娘の中で最も惹かれた女性で、熱狂的とまでは言えませんが、多くの男性ファンの一人でした。

以下、懐かしの歌詞全文を引用します。

プレイバック Part2 (Play back part 2)

緑の中を走り抜けてく真紅(まっか)なポルシェ
ひとり旅なの 私気ままにハンドル切るの
交差点では隣りの車がミラーこすったと
怒鳴っているから私もついつい大声になる

馬鹿にしないでよ そっちのせいよ
ちょっと待って Play Back, Play Back
今の言葉 Play Back, Play Back

馬鹿にしないでよ そっちのせいよ
これは昨夜の私のセリフ
気分次第で抱くだけ抱いて
女はいつも待ってるなんて

坊や、いったい何を教わって来たの
私だって、私だって、疲れるわ

はるかな波がキラキラ光る海岸通り
みじかい旅よ力一杯アクセル踏むの
潮風の中ラジオのボリュームフルに上げれば
心かすめてステキな唄が流れてくるわ

勝手にしゃがれ 出ていくんだろ
ちょっと待って Play Back, Play Back
今の歌を Play Back, Play Back

勝手にしゃがれ 出ていくんだろ
これは昨夜のあなたのセリフ
強がりばかり言ってたけれど
本当はとても淋しがり屋よ

坊や、いったい何を教わって来たの
私やっぱり、私やっぱり、帰るわね
あなたのもとへ Play Back, Play Back
あなたのもとへ Play Back


*******************************************
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のプレイバック


現在の山口百恵の写真が、ネットに載ってました。「えっ、おばさん?」と驚いたんです。私も山口百恵、大好きでした!何といってもプレイバックPart2をよく覚えています。「♪緑の中を走り抜けてく真紅なポルシェ♪」を読んだだけで、私と同年代の人達は、自然にメロディーが頭に鳴り響きますよね。「交差点では隣の車がミラーこすったと怒鳴っているから私もついつい大声になる」と続きます。40数年前、15歳の子供の頃これを聞いて、「一体どういう人が、真紅なポルシェに乗っているキレイなお姉さんに怒鳴るんだろう?」と、不思議に思ったのを覚えています。ここで山口百恵の決め台詞が出るんです。
「♪馬鹿にしないでよそっちのせいよ♪」

弁護士なんて仕事をしてますと、様々な紛争を体験します。それら紛争の8割以上が、突き詰めてみますと、「馬鹿にしないでよそっちのせいよ」ということなんです。現在、隣国の韓国と、かなり関係が悪化しています。それについては両国とも、「馬鹿にしないでよそっちのせいよ」と言っているようです。一方、山口百恵の場合、この場面で「ちょっと待ってplay back」と、過去の自分の言動を振り返るんですね。

今回の争いについて、日本の世論は、「韓国が国家間の約束を守らないのが原因」と主張しています。これはその通りに思えます。しかし日本も、基地問題その他でアメリカから、「国家間の約束を守らない。」と散々非難されていたはずです。それを考えますと、韓国のことばかり、責められない気もしてきます。

似たようなことは、弁護士の仕事ではよくあります。弁護士に事件を依頼しようと思う人は、基本的に自分が正しいと信じています。確かに話を聞くと、もっともです。その一方、依頼者も相手と同じ立場にいれば、同じように無茶な主張をするかもしれません。そこで、依頼者に対して、「ちょっと待ってplay back」ということで、「違う立場では、相手と同じ様なことを主張するのでは?」なんて言ってしまいます。その結果「先生は、相手の弁護士ですか?」なんて怒られることもあるのです。ううう。。。

さらに言いますと、プレイバックして自分を省みるのではなく、相手に対して怒りをつのらせる場合もあります。離婚や相続みたいな、身内の争いは特にそうですね。「これ以上争っても、かえって損するだけです。」なんて説得して、とりあえず納得して貰います。ところが暫くしますと、過去の恨みがプレイバックしてくるのです。「何年前のあの事を思い出すと、やはり許せん。」と、恨みの深さをぶつけられます。「ちょっと待って!」と思わず言いたくなります。

歌の話に戻りますと、15歳の私は、山口百恵の恋人を、酷い男だと思ったのです。「♪気分次第で抱きたいだけ抱いて女はいつも待ってるなんて坊やいったい何を教わってきたの私だって私だって疲れるわ♪」なんです。ところが山口百恵は、そんな男のもとに帰って行きます。「♪強がりばかり言ってたけれど本当はとても淋しがり屋よ貴方のもとへplay back♪」これを聞いた当時の私は、「こりゃダメだ。こういう女性が不幸になるんだな。」と思ったものでした。

しかし、60歳に近い今では、私も違う感想があります。真紅なポルシェに乗っていたのは、キレイなお姉さんではなく、おばさんになった山口百恵です。おばさんだからポルシェに乗る経済力もあります。隣の車と怒鳴り合うのも、いかにもおばさんのやりそうなことです。若い恋人を甘やかすのも、おばさんなら自然なことに思えます。かつてのファンとして、是非とも現在の山口百恵に、プレイバックpart2を歌って欲しいと思ったのでした。な、なんのこっちゃ。。。)

*******************************************

◇ 弁護士より一言

我家の大学、高校、中学の子供達に、「山口百恵を知っているのか?」聞いてみました。ちびまる子ちゃんを通して皆知っていて、特に高校生の娘はファンなんだそうです。そこで娘に、今回の記事見せたところ、「おばさんだなんて書いて、山口百恵協会!?の人に訴えられたらどうするの?キレイなおば様って書いてよ!」と怒られてしまいました。
以上:2,498文字
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R 1- 8-16(金):小松家3回目のSF家族旅行第4日目-サンノゼファミリーコート見学等
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R 1- 8-15(木):小松家3回目のSF家族旅行第3日目-アルカトラズ島外
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R 1- 8-14(水):小松家3回目のSF家族旅行第2日目-リッチモンドの穴場巡り
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R 1- 8-13(火):小松家3回目のSF家族旅行第1日目-ソノマのワイナリー巡り
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