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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 1- 7-17(水):交通事故と外傷性頚髄症との因果関係を認めた地裁判決紹介1
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○外傷後の頚髄症と交通事故との因果関係を認めた判例を探していますが、交通事故により頭部外傷I型、腰部側胸部打撲症、外傷性頚髄症の傷害を受け、頚髄症に基づく後遺障害(8級該当)を残した被害者(50歳・女)につき、事故後の症状に同人の自律神経失調症、高血圧症、肩甲関節周囲炎等の既応症と加齢による頸椎の退行性変化に事故による外力が加わって症状の増悪、拡大をもたらしたものであるとして、外傷性頚髄症と事故との間の相当因果関係が認められた平成6年11月24日神戸地裁判決(交民27巻6号1711頁)の関連部分を紹介します。

○同判決は、交通事故の被害者が罹患していた疾患が損害の発生ないし拡大に寄与した場合、損害額の算定に当たり、損害の公平な分担の見地から、民法722条2項の規定を類推適用してこれを斟酌することができると解すべきで、被害者の事故後の症状については、事故前から既往症や加齢による頚椎の退行性変化が大きく寄与していることは明らかであり、その寄与の程度は少なくとも3分の1の割合を下回ることはなく、損害額の算定に当たっては、その全額について3分の1を減額するのが相当しました。

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主   文
一 被告らは、原告に対し、各自、金129万5980円及びこれに対する平成元年4月13日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の、その余を被告らの各負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一 原告の請求

 被告らは、原告に対し、各自、金1351万5465円及びこれに対する平成元年4月13日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
一 本件は、被告京都タクシー株式会社(以下「被告会社」という)の従業員である被告森田進(以下「被告森田」という)運転のタクシーの乗客であつた原告が、右タクシーと被告内藤喜一(以下「被告内藤」という)運転の普通乗用自動車が衝突して発生した交通事故によつて損害を被つたとして、被告ら全員に対し損害賠償を請求した事案である。

         (中略)

第三 争点に対する判断
一 本件事故と原告の症状との間の因果関係の有無
1 原告の本件事故前後における症状等について

 まず、前記「争いのない事実など」の項で判示した各事実と証拠(甲1ないし9号証、14号証、15号証の1ないし3、乙1、2、10号証、16号証の1ないし10、17、18号証、19号証の1ないし3、原告本人の供述)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の各事実が認められる。

(一) 原告(昭和14年6月26日生)は、本件事故(平成元年4月13日発生。満47歳)当時、殆ど就労しておらず、昭和56年頃以降、独り暮らしのため、生活保護を受給して生活していた(なお、原告には、昭和46年頃、るいれき[結核性頸部リンパ節炎]の既往症があつた。)。

(二) 原告は、昭和58年12月13日以降本件事故時までの間、自宅近くの旭診療所に頻繁(ほぼ2日に一回の割合)に通院し、自律神経失調症、高血圧症及び気管支炎(さらに平成元年2月以降は肩甲関節周囲炎等が追加)の診断名によつて治療を受けており、その間、頭痛、めまい、動悸、異常発汗、関節痛、四肢の痙攣・知覚異常、握力低下、膝蓋腱反射の亢進等多様な症状を訴えていたが(なお、主治医は、ギヤランバレー症候群[感染性の神経炎]の疑いを持つていた。)、昭和63年1月頃以降(一時期の再発を除いて)、右症状のうち動悸、冷感及び四肢の痙攣等については症状の軽減がみられるようになつた。

(三)
(1) 原告は、本件事故によつて、頸部から右肩の痛みと腰痛等を訴え、同事故直後、同事故現場近くの市立舞鶴市民病院において治療を受け、前記のとおり「頭部外傷Ⅰ型、腰部側胸部打撲傷、外傷性頸髄症」と診断された。

(2) 原告は、右診療時において、同病院担当医に対し、以前から右足の脱力感があつたことを説明したが、担当医においては、レントゲン検査上第3―第4頸椎の強い不安定性、頸椎の多椎間ヘルニア(ただし、本件事故による受傷前のものと診断)や脊椎管狭窄を認め、また、右上肢の知覚過敏、膝蓋腱反射やホフマン反射、バビンスキー反射(手足の指等の反射)等について異常を認めた。

(四) 原告は、平成元年4月18日、右病院から神戸市中央区内の川北病院に転医し、同年5月3日までの間前記のとおり入通院して投薬や理学療法等による治療を受けたが、その間、頭痛、頸部痛、悪心、めまい、吐気、不眠、右半身の疼痛と脱力感、坐骨神経痛等多様な症状を訴えた。

(五) その後、原告は、右症状の軽減がみられないため、同年5月12日からさらに神戸海岸病院に転医し、膝蓋腱反射やホフマン反射、バビンスキー反射及びトロンマー反射等について異常が認められたため、同月15日に入院し、CTスキヤン検査等による精査の結果、脊髄症が原告の症状発現の原因であると診断され、「頸椎後縦靱帯骨化症」と併せて「外傷後頸椎症性脊髄症」と診断された(甲5、8号証の各診断書と乙19号証の2の14枚目及び15枚目の各診断書[平成元年9月10日付]参照)後、同年6月21日、第2頸椎から第7頸椎にかけて頸部脊柱管拡大術を受け、その後は入通院しながら同病院においてリハビリ治療を受けた。

(六) しかしながら、原告の前記各症状は、その後も改善されず、その結果、平成2年2月21日、右病院において、頚部から頭部にかけての痛み、四肢の痙攣・痛み・知覚異常、腱反射異常、上肢の挙上制限、歩行障害、さらに頚椎(脊柱)の障害、頚椎の可動域制限等の後遺障害を残したまま症状が固定した旨の診断を受けた。

(七) なお、原告は、本件事故後、以上のとおり入通院による治療を受けていた期間中においても、平成3年2月頃に至るまでの間、右治療と併行して前記旭診療所に通院し、前記高血圧症、肩甲関節周囲炎や高脂血症等について治療を受けた。

2 本件事故と原告の本件事故後の症状との間の因果関係について
(一) ところで、被告会社及び被告森田において、原告の本件事故後の症状のすべてが既往症である自律神経失調症や高血圧症、頚椎の退行性変化等に基づいて同事故前から既に生じていた症状と同一であるなどとして、同事故と同事故後の症状との間の因果関係を争つていることは前記のとおりである。

(二) そこで、検討するに、前記1で認定した事実関係によると、原告は、本件事故前の昭和58年12月頃以降、自律神経失調症、高血圧症や肩甲関節周囲炎等のために長期間にわたつて治療を継続し、その間、頭痛、めまい、動悸、異常発汗、関節痛、四肢の痙攣・知覚異常、握力低下、膝蓋腱反射の亢進等自律神経系及び運動神経系に関する多様な症状を訴えていたが、昭和63年1月頃以降には、右症状のうち動悸、冷感や四肢の痙攣等についてはいつたんある程度改善されたにもかかわらず、本件事故後に再びかなり悪化していること、また、原告の右多様な症状のうちでも、本件事故後に至つては、手足の指等に関する反射異常が顕著になり、また、頚椎の可動域制限等が生じていることが認められる。

 さらに、本件事故前後における右症状の変化に関する事実に証拠(証人西岡淳一の証言及び同人による本件鑑定)を総合して考えると、原告の本件事故後にみられる右のような症状の変化については、同事故によつて頚部に加わつた外力に基づいて、従前から存した症状がさらに増悪、拡大したことによるものであることを認め得ないではないというべきである。

(三) そうすると、原告の本件事故後に生じた前記症状の増悪、拡大と同事故との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。
 それゆえ、また、原告が右症状の治療のために受けた頚部脊柱管拡大術については、同事故後の症状改善のために必要な手術であつたというべきである。

 以上の認定判断に反する被告会社及び被告森田の前記主張は採用できない。

3 原告の既往症等の寄与
(一) 次に、被告会社及び被告森田は、本件事故が原告の同事故後の症状に与えた影響の割合は極めて小さく、同事故前からの既往症等が大きく寄与している旨主張する。

(二) そこで、検討するに、交通事故の被害者が罹患していた疾患が損害の発生ないし拡大に寄与した場合、損害額の算定に当たり、損害の公平な分担の見地から、民法722条2項の規定を類推適用してこれを斟酌することができると解すべきである(最高裁判所第一小法廷平成4年6月25日判決[民集46巻4号400頁]参照)。

 そして、これを本件についてみると、前記1で認定した事実関係によると、原告については、本件事故前から、自律神経失調症、高血圧症や肩甲関節周囲炎等のために多様な症状を訴え、長期間にわたつて通院治療を受けており、右症状はかなり難治化していたこと、そして、原告の本件事故後の症状と同事故前の症状の対比においては、かなりの部分が重なり合うものであることが認められる。

 さらに、原告の頚椎に関するレントゲン検査上の所見についても、本件事故直後の市立舞鶴市民病院においては、頚椎の多椎間ヘルニアについては本件事故による受傷前のものとする旨の診断がされていたり、その後の神戸海岸病院においても、頚椎後縦靱帯骨化症との診断がされていたことは前記認定のとおりであり、また、証拠(前記西岡証人の証言と本件鑑定)によると、西岡鑑定人は、右レントゲン所見につき、原告の頚椎には加齢による変化の像(第2頚椎から第7頚椎にかけての椎体変性及び椎間狭少化、アライメントの異常)が認められるとして、変形性脊椎症による脊髄の圧迫が存在していた旨判定していることが認められる。

 以上の事実によると、原告の本件事故後の症状については、同事故前からの前記既往症や加齢による頚椎の退行性変化が大きく寄与していることは明らかであるといわなければならない。したがつて、これに反する原告の主張は採用できない。
 そして、これまでの全認定説示を総合して考えると、右寄与の程度は少なくとも3分の1の割合を下回ることはないというべきである。


(三) よつて、原告の後記損害額の算定に当たつては、その全額について3分の1を減額するのが相当である。
以上:4,290文字
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R 1- 7-16(火):2019年07月16日発行第249号”弁護士の弁明”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和元年7月16日発行第249号「弁護士の弁明」をお届けします。

○ソクラテス、プラトン、アリストテレスというギリシャ哲学の偉人の名前だけは知っていますが、誰が何をして何を残したかなんて、昔、世界史や倫理社会等で習ったと思われますが、忘却の彼方で殆ど覚えておらず、勉強し直そうなんて気は全くありまません(^^;)。

○それを大山先生は、今でも読み直しているようで、その勉強意欲にはただただ恐れ入ります。ソクラテスというと、妻クサンティッペが悪妻だったと言うことくらいしか覚えていませんが、この話は、創作も多く、本当に悪妻であったのかどうかは不明であるとのことです。

○ソクラテスは弟子たちから脱獄を勧められたとき、「悪法もまた法なり」と、悪法であっても法を侵す行為をしてはならないと信じて自殺したといわれるそうですが、この自殺も、魂の永遠を信じ、死は恐れるに足りないと信じたためであり、彼が法律遵守の観点から死刑を受け入れたのかは疑問であるとの解説もあるようです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の弁明


プラトンの「ソクラテスの弁明」です。ソクラテスへの死刑判決がだされた裁判の記録ですね。2400年以上前の話ですが、今読んでも非常に感動します。

ソクラテスといえば、「汝、自らを知れ」と、皆に教えて回った人です。でも私だって、「自惚れ屋で利己的な自分自身」なんて真実を他人から突き付けられたくないです。40歳になってから結婚相談所に行って、「20代の女性をお願いします。」という男性が沢山いるそうです。こういう人に、「自分自身を知って下さい。何故あなたみたいなおじさんと結婚したがる若い女性がいると思うんですか?」なんて真実を伝えると、怒って脱会しちゃいます。こういう場合には、「なかなか難しいですが、一緒に頑張りましょう!」と言わないといけないんですね。

ソクラテス先生にも、この程度の世間知があれば良かったんですが、皆に「真実」を告げた結果、憎まれて裁判にかけられてしまいます。多くの支援者が、ソクラテスを助けようとして良いアドバイスをします。しかし、ソクラテス大先生は頑固ですから、そういうアドバイスは一切採用しないんです。「同情をひくために、涙を流してみせたり、親兄弟妻子を法廷に連れてきた方が良い」などと言うアドバイスは一蹴します。「裁判がそのようなことで左右されるのは、国民にとっても国家にとっても不名誉なことだ」なんて正論を言います。

そ、それはそうかもしれませんが、そんなこと言ったら刑事弁護が出来なくなります。私なんか、裁判を受ける被告人に対して、「結婚したとか、子供が生まれたとか、親が重病とかいうことありませんか?」などといった、少しでも有利になりそうな事情を確認します。ソクラテスが何と言おうとも、刑を軽くするために、出来ることなら何でもするのが弁護士の仕事なんです。

こんなソクラテスに対して、親身に忠告する人もいました。「そんな弁明をしていると死刑になることが分からないのか?」というわけです。これに対するソクラテスの返答が凄い。「自分のしている行為で、どういう結果が出るか分からないようなら、愚か者といわれてもしようがない。自分は、このままでは死刑になることは十分に分かっている。それでも間違ったこととは闘う。」というわけです。

学生の頃にこれを読んで、「ソクラテスはエライ人だ。」と感動もしましたが、「なんか頑固な、変な人だな。」とも、同時に思ったのです。弁護士をしていると、ソクラテスみたいな主張を依頼者から聞くことがよく有ります。例えば労働問題ですね。日本の法律では、相当問題のある社員でも解雇はできないことになっています。「挨拶もできない。お客様にお茶を、ドンと音を立てて乱暴に出す。顧客を怒らせ、他の社員の悪口ばかり言っている。いくら注意してもきかない」社員だからといって、法律上解雇は認められないんです。

「それがルールです。ルールに則ってゲームするしかありません。」と説得すると、多くの経営者は、しぶしぶでも納得してくれます。しかし、依頼者の中には、ソクラテスみたいな人もいるんです。「ルールが何かは理解した。このまま争っても、負けることも了解した。それでも、こんな間違った法律は、争わざるを得ない。最高裁まで闘う!」みたいに言われちゃいます。

もっとも、中には実際に負けると、文句を言ってきそうな依頼者もいます。そういう人には、「自分自身を知って下さい。負けて損したら我慢できないでしょう。」と伝えたいんですが、中々言えない。「一緒に頑張りましょう!」と結婚相談所みたいなことを言ってしまうのです。

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◇ 弁護士より一言

この「一言」は、クスっと笑ってもらえるように作りたいのですが、最近なかなか難しい。10年以上続けている中で、子供もすっかり大きくなり、面白いネタをパパに提供してくれなくなったのです。そんな中、頑張って「一言」を書いて妻に見せると「なんか最近面白くないな。」なんて言われます。そのやり取りを聞いていた中学生の息子が、「ママ、もっとオブラートに包んで言ってよ。『一緒に頑張ろうね。』って励ましてあげて!」と忠告してくれました。
以上:2,278文字
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R 1- 7-15(月):死亡退職金を特別受益として持ち戻しを認めた家裁審判紹介2
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○「死亡退職金を特別受益として持ち戻しを認めた家裁審判紹介1」の続きで、死亡退職金については国家公務員退職手当法2条及び11条の趣旨からすれば、同規定による受給権者は固有の権利として取得すると解するのが相当であるが、共同相続人間の実質的公平の見地からすると、やはり特別受益になるものと解すべきであるとした昭和51年11月25日大阪家裁審判(審判家月29巻6号27頁)を紹介します。

○この審判は、生命保険金についても、保険金の受取人と指定された相続人の固有財産に属するものと考えられるが、相続人間の公平という見地から被相続人がその死亡時までに払い込んだ保険料の保険料全額に対する割合を保険金に乗じて得た金額をもつて特別受益とすべきとしています。

○また被相続人の妻(相手方)において、その婚姻中勤務を続け、被相続人より少なくはない収入を得ていた場合、婚姻期間中に得た財産が被相続人名義になつているとしても実質的には被相続人及びその妻の共有に属すると考えるべきであり、妻の寄与分として5割をもつて相当と認めるとしました。

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主  文
申立人は金295万4385円を取得する。
相手方は金404万5615円を取得する。

理  由

第一 当事者双方の主張
一 申立の実情

1 被相続人Aは昭和48年8月28日××市○○区で死亡して相続が開始し、被相続人の母である申立人および妻である相手方がそれぞれ各2分の1の法定相続分をもつて、被相続人の遺産を相続した。

2 被相続人の生前、被相続人は申立人および相手方の3人で生活し、申立人は被相続人の扶養を受けていたものであるところ、昭和49年2月24日、申立人と相手方との間で下記の契約が成立した。
(1) 相手方は申立人に昭和49年2月24日金400万円を贈与する。
(2) 申立人は、同人の二男Bの扶養を受け、相手方は申立人に対して扶養の義務を負うことなく、かつ申立人の扶養者の扶養については一切関与せず、申立人もまた相手方に対して一切関与しない。

         (中略)


第二 当裁判所の判断
一 相続人および法定相続分

 本件記録中の戸籍謄本によると、被相続人Aが昭和48年8月28日死亡して、その相続が開始し、被相続人の妻である相手方および母である申立人が被相続人の遺産を相続した(但し、申立人は本件の調停進行中である昭和50年1月20日死亡し、被相続人のただ1人の弟であり、申立人の二男であるBが、本件手続を承継した)ことが認められ、従つて、申立人および相手方の法定相続分は各2分の1であることが認められる。

二 遺産の範囲および価額
1 本件記録中の登記簿謄本3通、「お支払明細書」と題する書面(○○生命保険相互会社保険金課作成)、△△大学退職手当決定通知書二通、家庭裁判所調査官長尾紘也作成の調査報告書、不動産売買契約証書、公団公社分譲住宅速報に、当事者間に争いのない事実を総合すると、被相続人の遺産およびその価額は次のとおりであることが認められる。
(1) 交通災害保険金(×××市の交通災害保険に基づくもの) 金50万円
(2) 預金 金155万円
(3) 社債 金80万円
(4) 別紙目録記載の土地、建物 価額金600万円
 同建物については昭和48年11月19日付で、相続を原因として被相続人から相手方に所有権移転登記がなされているが、後記の遺産分割協議がなされた時点での価額は金800万円程度であると考えるのが相当であるところ、同価額のうち、相手方が相続開始時以降支払うべきローン残高200万円を控除して、遺産分割の対象としての価額は金600万円をもつて相当とする。
(5) 自動車損害賠償責任保険金(以下自賠責保険金と称する)金700万円

2 上記認定の遺産の外に、申立人は被相続人が○○生命保険相互会社との間で締結した、相手方を受取人とする生命保険金1000万円についても、被相続人の遺産に含まれる旨主張するが、上記資料の外、相手方代理人作成の保険内容に関する書面によれば本件のように被相続人自身が契約し、相続人のうちの1人である相手方のみを受取人と指定している場合は、保険契約の効力として、支給された保険金は相手方の固有財産に属するものと考える。

 しかしながら、保険金請求権についても、相続人間の公平という見地から特別受益とみなして分割の際に考慮すべきである。但し、特別受益分として持戻すべき額は、保険契約者であり保険料負担者である被相続人において、その死亡時までに払い込んだ保険料の、保険料全額に対する割合を保険金に乗じて得た金額とすべきものと考える。しかして、本件保険契約の内容は、契約日は昭和48年1月1日、当時の被相続人の年齢は40歳8ヵ月で保険料年額8万3040円(月額6920円)を満60歳に達するまでの20年間支払うこととなつている。

 そうすると、支払うべき保険料の総額は
 83,040円×20 = 1,660,800円
 であり、被相続人が死亡時までに支払つた保険料は昭和48年1月から8月分までであるので、
 6,920円×8 = 55,360円
 となる。

 これに対して支給された保険金は997万2320円であつた(上記保険料年額の不足分9月から12月までの四ヵ月分2万7680円が差引かれたので、上記の額となつた。)。従つて、特別受益分として持戻されるべき金額は、
 9,972,320×55,360/1,660,800 = 332,410.66
 33万2410円(小数点以下切捨て)ということになる。

3 更に、被相続人のいわゆる死亡退職金について検討するに、上記各資料によれば、被相続人は死亡するまで、×××××として△△大学○学部に勤務していたので、その死亡によつて、金234万1160円の退職手当を支給されたことが認められるところ、国家公務員退職手当法2条および11条によれば、国家公務員の死亡による退職の場合は、1、配偶者、二、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していた者、三、上記の外、職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族、四、子、父母、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しない者、の順位で、その退職手当が支結されることが規定されており、この規定内容は民法に定める被相続人の順位決定の原則とは異なつていることから、公務員の退職金制度は公務員およびその遺族の生活の安定と福祉の向上を図ることを第一目的とするものであると考えられる。

従つて、死亡退職金の受給権を有する遺族、本件においては相手方は固有の権利として被相続人の死亡による退職手当を取得すると解するのが相当である。しかしながら、共同相続人間の実質的公平の見地から、遺産分割の際、これについて全く考慮に入れないのは妥当でなく、特別受益になるものと解すべきである。

4 なお、株式会社△△△公益社から前田家宛の領収書2通によれば被相続人の葬儀費用として金43万9800円を要したことが認められる(証拠上認められるもの)ところ、葬儀費用(相続開始後の法事の費用については遺産分割の際考慮すべきではないと解する)は遺産のうちから負担すべきものと解するので、遺産分割の対象となる遺産の範囲を確定する際には、これを遺産のうちから控除すべきである。

 相手方は墓地購入費についても遺産のうちから控除すべきである旨主張するが、墓地は祭祀用の財産であると解すべきであり、遺産とは別個にその帰属を定めるべきであるから、墓地購入費用は本件遺産のうちから控除しないこととする。

三 相手方の寄与分
 上記各資料および△△△市の市民税、府民税特別徴収税額の納税者への通知書六通ならびに本件調停および審判の過程で顕われた一切の事情を総合すると、相手方は被相続人との婚姻中、被相続人の死亡直前の昭和48年6月15日まで、大阪府立××療養所○○○病院、大阪府立△△病院等で○○○として勤務を続け、この間、被相続人の収入を上回りこそすれ決して低くはない収入を得ていたもので、その生活費、財産購入費等は、相手方と被相続人との収入をまとめたものの中から支出されていたことが認められる。

 上記事実によれば、相手方と被相続人との婚姻期間中に得た財産(本件においては、第2、2、1記載の遺産のうち(2)、(3)、(4))について、被相続人名義になつていても相手方の財産取得に対する寄与を認めるべきであり、実質的には相手方と被相続人の共有に属すると考えるべきである。しかして、その寄与割合は、上記資料によれば、相手方と被相続人の収入の比率はほぼ3対2ないし4対3となることは認められるけれども、これによつて、相手方の寄与割合を機械的に定めるのも相当でなく、5割をもつて相当と考える。

 なお、申立人は申立人自身にも被相続人の財産の増加に寄与がある旨主張し、上記各資料によれば相手方と被相続人がそれぞれの職業に従事している間、同居している申立人は家事のほとんどをとりしきつていたことは認められるけれども、これは、同居している親族としては通常なされるべき程度の協力であるから、これをもつて特に被相続人の財産の増加に寄与があつたとは認められない。

四 遺産分割協議の有無
(一) 申立人と相手方との間で、昭和49年2月に成立した贈与契約について、相手方は遺産分割の協議であると主張し、申立人は申立人に対する相手方の扶養義務の履行である旨主張するので、この点について判断する。


         (中略)



五 申立人と相手方との具体的相続分
(一) 以上述べたところを総合して遺産の総額を算出すると、第2、2、1の遺産のうち、(2)ないし(4)についてはその総額から相手方の寄与分5割を差引いた金額(なお、(4)については、本件が一部分割を有効とし、残余財産をもつてその修正を図るという見地から、評価の時期は一部分割がなされた時期を基準とすべきものと考える)を遺産分割の対象とすることになるので、金417万5000円となり、これに同(1)および(5)を加算して、1167万5000円となる。更に第2、2、2および3の特別受益分を加算すると、分割の対象として考慮すべき総額は金1434万8570円となるが、このうちから上記認定の葬儀費用43万9800円を控除すると、遺産総額は金1390万8770円となる。

(二) そこで、上記金額に申立人および相手方の各2分の1の相続分を乗ずると、申立人および相手方がそれぞれ取得すべき金額は、いずれも、金695万4385円となるが、申立人は一部分割の際既に金400万円を取得しているのでこれを差引いた金295万4385円を取得すべきであり、相手方は、既に金290万8770円を取得しているのでこれを差いた金404万5615円を取得すべきである。

六 結論
 以上の次第であるから、本件において具体的に分割の対象となるのは金700万円であり、このうち、申立人は金295万4385円、相手方は金404万5615円をそれぞれ取得すべきものと定める。
 よつて、主文のとおり審判する。
 (家事審判官 佐野久美子)
以上:4,588文字
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R 1- 7-14(日):死亡退職金を特別受益として持ち戻しを認めた家裁審判紹介1
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○「遺留分減殺請求で死亡保険金の特別受益持ち戻しを認めた地裁判決紹介」の続きです。死亡退職金は、受取人の固有の権利であり遺産に属さないので遺産分割の対象にならず、特別受益として持ち戻しの対象にはならないと一般に解説されています。しかし、最近の裁判例でこれを明言した例は余り見当たりません。

○古い判例ですが、被相続人と先妻との間の子が、後妻及びその間の子に対して遺産分割を求めた事案において、後妻が取得した死亡退職金、生命保険金及び被相続人が後妻名義で積立てた定期積立預金につき、これらは、いずれも被相続人が相手方母子両名の生活保障のためのもので、この両名による共同での特別受益にあたり、結局母子両名の具体的相続分はないとした昭和55年9月16日福島家裁審判(家月33巻1号78頁)を紹介します。

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主  文
一 被相続人Aの遺産をつぎのとおり分割する。
1 申立人X2はつぎの不動産を取得する。
ア 福島市○町×-× 宅地面積145・67平方メートル
イ 同上所在居住家屋番号×-× 木造瓦葺平家建
 床面積41・32平方メートル
2 申立人X1はつぎの物件を取得する。
ア 福島市○○○字○○○×-×× 原野面積1、270・00平方メートル
イ 期末勤勉手当(昭和53年度12月分支給分) 434、060円
ウ 死亡後被相続人名義で支給された給与 151、948円
エ ○○銀行(○○支店)普通預金 568、505円
オ ・普通乗用車(トヨタコロナ 49年型 1600CC)一台
3 申立人X2は同X1に対し550、995円を支払え。
二 相手方Y1、同Y2は本件遺産からなにも取得しない。
三 鑑定費用80、000円はこれを4分し、各当事者はその1づつを負担する。

理  由

(一) 相続人

 被相続人Aは昭和53年11月11日死亡し、その相続人は同人とその先妻亡Bとの間の長男申立人X1、長女同X2、および被相続人の妻であつた相手方Y1、同女との間の長男相手方Y2の4名である。
 
(二) 特別受益
1 別表二のうち一の死亡退職金および3~5の各保険金は被相続人の死亡によつて発生した財産権であるので、被相続人の遺産を構成するものではなく、その取得者によつて原始取得されたものといえる。しかし、右各財産権の発生には被相続人の生存中その財産からのなんらかの出損(被相続人の給料等からの退職金の積立て、保険掛金の支払)があるので右財産権の取得はその取得者における被相続人からの特別受益とみることができる

2 同表中二の定期積立貯金は被相続人が相手方Y1名義で積立てたものであるので、贈与として特別受益とみられる。

3 そしてこれらの財産権はその取得名義者は一応相手方Y1であるが、その趣旨は被相続人がその妻Y1とその間の子相手方Y2とのいわば遺族の生活保障のためになしたものであるとみられるので、Y1名義であるということはY2の受益を排除する趣旨ではなく、逆にこれを含めるものであると認められ、したがつて上記受益は相手方両者による共同での特別受益と認められる。

(三) したがつて被相続人の遺産は別表一の財産のみであり、その価額(被相続人の死亡時および現在時)はいずれも同表記載のとおりである。

(四) 遺産の分割
一 先ず特別受益をえた相手方Y1、同Y2がなお本件遺産につき相続分をもつか否かにつき検討する。
ア 被相続人死亡時の遺産の評価額は(一)不動産は計14、676、619円(二)その他の財産は計1、351、938円である。そこで相手方両名の特別受益額計22、362、259円を被相続人の死亡時の遺産額に加えると
 (14,676,619円+1,351,938円)+22,362,259円 = 38,390,816円
 となる。

イ 相手方Y1の法定相続分は3分の1、同Y2のそれは9分の2であるから
 38,390,816円×(1/3+2/9) = 21,328,231円

ウ したがつて相手方両名はすでに自己の法定相続分を越える特別受益をえていることになるので本件遺産についての相続分はないことになる。

二 そこで本件遺産を申立人両名間で配分するに
ア 遺産の現在価額での総額は、
 19,112,062円+1,246,071円 = 20,358,133円
 となりこれを申立人両名で平等配分すると
 20,358,133円×1/2 = 10,179,067円(円以下四捨五入)
 となる。

イ そこで諸般の状況より見て、申立人加代は表一遺産目録中の(一)不動産1・2の福島市○町×-×の土地、建物を、申立人光男はその他の遺産、すなわち(一)不動産三の同市○○○字○○○×-××の原野、と同表(二)のその他の財産をいずれも取得するのが相当であると認める。

ウ そうすると申立人加代の取得財産の価額は
 10,342,570円+387,492円 = 10,730,062円
 となつて自己の相続取得分10、179、067を550、995円越え、他方申立人光男の取得財産の価額は
 8,382,000円+1,246,071円 = 9,628,071円
 となつて上記自己の相続取得分10、179、067円より550、996円(一円は端数)不足することになる。

エ したがつて申立人加代は同光男にこの不足分550・995円を支払うこととして、同両者間を調整することにする。

三 なお鑑定人○○○○に支払つた鑑定費用80、000円はこれを当事者4名が平等分割負担することにする。
 (家事審判官 福島重雄)

 遺産目録〈省略〉

以上:2,291文字
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R 1- 7-13(土):遺留分減殺請求で死亡保険金の特別受益持ち戻しを認めた地裁判決紹介
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○「生命保険金持ち戻しは一律否認せずケースバイケースで柔軟に考えるべき」の続きです。遺産分割ではなく遺留分減殺請求においても生命保険金は遺産に属さない固有財産として特別受益とされないのが原則ですが、遺留分減殺請求において死亡保険金が遺留分の対象となる財産とした平成23年8月19日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)関連部分を紹介します。

○被相続人の子である原告が、被相続人の妻である被告に対し、遺留分減殺請求等をした事案において、保険契約に基づき保険受取人とされた相続人が取得する死亡保険金は、原則として、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが、保険受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が本条の趣旨に照らして到底是認することができないほどの著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により特別受益に準じて持ち戻しの対象となるしました。

○その上で、本件においては、被相続人が生命保険会社から借り入れをしており、本件死亡保険金から貸付額を控除される関係にあることから、本件死亡保険金には、特段の事情があり、持ち戻しの対象となるとしました。

*********************************************

主  文
1 被告は原告X4に対し、96万9136円及びこれに対する平成23年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は原告X4に対し、305万円およびこれに対する平成21年1月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は原告X4に対し、305万円及びこのうち18万3000円に対する平成10年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成11年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成12年1月1日から、このうち79万2000円に対する平成13年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成14年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成15年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成16年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成17年1月1日から、このうち79万2000円に対する平成18年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成19年1月1日から、それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告X4のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、これを6分し、その4を原告X4の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は原告X4に対し、942万6664円及びこれに対する平成18年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は原告X4に対し、105万円を引き渡せ。
3 被告は原告X4に対し、305万円およびこれに対する平成21年1月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は原告X4に対し、305万円及びこのうち18万3000円に対する平成10年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成11年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成12年1月1日から、このうち79万2000円に対する平成13年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成14年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成15年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成16年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成17年1月1日から、このうち79万2000円に対する平成18年1月1日から、このうち18万3000円に対する平成19年1月1日から、それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は原告X4に対し、18万5400円を支払え。
6 被告は原告X4に対し、8万7600円を支払え。
7 被告は原告X4に対し、被告が四谷税務署に提出した平成3年10月22日付け相続税の更正の請求書について、四谷税務署の受領印が押捺された控を開示せよ。

第2 当事者の主張
1 原告X4の請求原因

(1) 相続の開始
 原告X4、訴訟被承継人X2(以下「X2」という。)、同X3(以下「X3」という。)は、亡A(昭和61年7月9日死亡)の子であり、訴訟被承継人X1(以下「X1」という。)(原告X4、X2、X3、X1四名を、以下「原告ら」という。)は、亡Aの子の亡B(平成6年6月12日死亡。以下「亡B」という。)の妻である。
 被告は亡Aの妻である。
(2) 相続財産
 亡Aの死により開始した相続における相続財産は、別紙「遺留分侵害額等計算書」(以下、単に「計算書」という。)記載のとおりであるところ、被告は、亡Aの公正証書遺言により、別紙計算書記載(1)の財産を相続した。また、同公正証書遺言により、原告X4は同計算書(2)の、亡Aの子であるC(以下「C」という。)は同計算書(3)の、亡Bは同計算書(4)の、X2は同計算書(5)の、X3は同計算書(6)の財産を、それぞれ相続した。

(3) 遺留分減殺請求
ア 遺留分算定の基礎となる積極財産
 上記相続財産のほか、遺留分算定の基礎となる財産は、別紙計算書記載の特別受益欄記載の各財産(生命保険金受領権、死亡退職金受給権、被告が亡Aから生前贈与を受けたメリーチョコレートの株式及び現金)である。
 なお、被告は、別紙計算書のとおり亡Aの生命保険金の支払いを受けたが、生命保険金は、原告らと被告との間に相続財産について生じている不公平は著しいものがあるので、特別受益に準じて持ち戻しの対象となると解すべきである。

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 遺留分減殺請求について

 相続人については当事者間で争いはない。
 原告は、生命保険金受領権が特別受益であると主張する。

 この点、保険契約に基づき保険受取人とされた相続人が取得する死亡保険金又は死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらない。もっとも、保険受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が本条の趣旨に照らし到底是認することができないほどの著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、本条の類推適用により、死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となるものというべきである(最決平成16年10月29日民集58巻7号1979頁)。本件においては、第一生命保険から497万0067円の借り入れをしており、生命保険金の死亡保険金から貸付額を控除されることを考えると、特段の事情があり、持ち戻しの対象となるものというべきである。

 以上から、別紙遺留分侵害額等計算書記載の財産が遺留分の対象となる財産であり、その評価額は、同計算書の訴え変更申立書2記載のとおりの評価額となり(鑑定の結果)、原告らの遺留分額は3604万9572円である。
 そして、原告らの遺留分侵害額は、同計算書のとおり、原告X4が1457万8972円、亡Bが1473万3972円、原告X2が2174万3972円である。

 なお、被告は、原告らと被告は、原告らによる遺留分減殺の意思表示より後に行われた遺産分割調停申立事件において、原告らは現に被相続人の遺産を取得できたのであるから、かかる遺産を当初から原告らが取得したものとして遺留分侵害額を計算し直し、原告らは、信義則上、かかる金額についてしか遺留分を侵害されたと主張できないと解すべきであると主張する。

 しかし、遺留分減殺の効果は、遺留分減殺の意思表示をした時点で物権的効果を生ずるものであり、遺留分算定の基礎となる相続財産は相続の開始時点で判断すべきものであるから(民法1029条1項)、被告の主張は採用できない。
以上:3,194文字
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R 1- 7-12(金):不動産登記法第14条及び不動産登記規則の地図等備忘録解釈について2
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○「不動産登記法第14条及び不動産登記規則の地図等備忘録解釈について1」の続きです。

・地図に準ずる書面
第14条4項「第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。」
地図は、昭和35年不動産登記法改正によって創設(旧第17条)。それまでの登記制度と台帳制度の二元管理を不動産登記制度に一元化→登記所に地図を備えるべき責務を国が負う
この地図の整備方法については国土調査法に基づく地籍調査の成果のほかに法務省独自に整備していくことが予定されていたが、いまだにすべての地域に地図が備え付けられていないのが現状
そこで平成5年不動産登記法改正で、登記所に地図が備え付けられるまでの間、これに代えて「地図に準ずる書面」を備え付けることができるとされた(旧24条の3)
地図に準ずる書面の大半は、登記所に保管されている旧土地台帳附属地図(いわゆる公図)、昭和35年登記法改正で土地台帳法が廃止されたが、平成5年改正で旧土地台帳附属地図が地図に準ずる書面にされた

第14条5項「前項の地図に準ずる図面は、一筆又は二筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するものとする。」
その要件は次に掲げる図面
①旧土地台帳法施行規則2条の地図(旧土地台帳附属地図)
②国土調査法20条1項の規定により送付された地籍図ならびに土地改良登記令5条2項3号、土地区画整理登記令4条2項3号、新住宅市街地開発法等による不動産登記に関する政令6条2項の土地の全部についての所在図
ただし、現地占有状況と図面上の表示に大幅にかい離があることが明らかなもの等はダメ

・地図または地図に準ずる書面の訂正
地図または地図に準ずる書面(地図等)は、登記官が職権で登記所に備え付けるべきもので、誤りがあるときは登記官が職権でその訂正をする
旧法下においては、登記官の職権発動を促すため、所有者その他利害関係人が地図の訂正の申出をすることができた
現法下では、
不動産登記規則16条1項「地図に表示された土地の区画又は地番に誤りがあるときは、当該土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人は、その訂正の申出をすることができる。地図に準ずる図面に表示された土地の位置、形状又は地番に誤りがあるときも、同様とする。」
同12項「登記官は、申出に係る事項を調査した結果、地図又は地図に準ずる図面を訂正する必要があると認めるときは、地図又は地図に準ずる図面を訂正しなければならない。」

・電磁的記録に記録された地図等の取扱い
不動産登記法14条6項「第1項の地図及び建物所在図並びに第四項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。」
同120条(地図の写しの交付等)「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。」
不動産登記規則12条(地図等の閉鎖)「登記官は、新たな地図を備え付けた場合において、従前の地図があるときは、当該従前の地図の全部又は一部を閉鎖しなければならない。地図を電磁的記録に記録したときも、同様とする。
2 登記官は、前項の規定により地図を閉鎖する場合には、当該地図に閉鎖の事由及びその年月日を記録するほか、当該地図が、電磁的記録に記録されている地図であるときは登記官の識別番号を記録し、その他の地図であるときは登記官印を押印しなければならない。
3 登記官は、従前の地図の一部を閉鎖したときは、当該閉鎖した部分と他の部分とを判然区別することができる措置を講じなければならない。
4 前三項の規定は、地図に準ずる図面及び建物所在図について準用する。」
同13条2項「電磁的記録に記録する地図にあっては、前項各号に掲げるもののほか、各筆界点の座標値を記録するものとする。」
以上:1,630文字
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R 1- 7-11(木):不動産登記法第14条及び不動産登記規則の地図等備忘録解釈について1
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○「不動産登記法第14条及び不動産登記規則の地図等備忘録条文から」の続きでその条文解釈です。

・不動産登記法第14条の趣旨
登記所に土地の区画および地番を明確にする地図ならびに建物の位置および家屋番号を明確にする建物所在図を備え付け、地図が備え付けられるまでの間、地図に代えて土地の位置、形状および地番を表示した地図に準ずる図面を備え付けることを明らかにするとともに、地図、建物所在図および地図に準ずる書面の内容を定めたもの。


以下、ネット上で見つけた「地図」と「地図に準ずる書面」のサンプルです。

「地図」サンプル


「地図に準ずる書面」サンプル


・地図の意義
不動産の表示に関する登記制度は、土地および建物の物理的状況を登記記録に記録することにより明確にする制度で、そのため土地の登記記録には、一筆の土地毎にその所在、地番、地目、地積等を記録するが、文字記録だけでは具体的状況が不明なので、土地の区画を明らかにする地図を備え付ける。
地図は、登記記録によって観念的に示されている各筆の土地の区画を現地で示す能力(現地指示能力)と、当該土地の筆界線一定の誤差の範囲内で現地に復元する役割(現地復元能力)が必要。そのためには正確な測量および調査の成果に基づいて作成される必要があり、正確な測量は、測量法の規定によって設置されている基本三角点等のいわゆる国家基準点を基礎とし、座標値をもつものでなければならない。

・基本三角点等とは
①測量法第2章の規定による基本測量の成果である三角点および電子基準点
②国土調査法19条2項の規定により認証された基準点
③国土調査法19条5項に規定により指定された基準点
④これらと同等以上の制度を有すると認められる基準点

・地図の作成
地図は正確な測量および調査の成果に基づき作成されたもので誤差限度は厳しく制限され、地図作成に当たっては磁気ディスクその他の電磁的記録に記録して作成でき、それができないときはポリエステルフィルム等を用いて作成できる。この要件を満たして備え付けることができるものは
①法務局自らが作成する地図作成作業の成果である地図
②国土調査法20条1項の規定により登記所に送付された地籍図
③土地改良登記令4条2項3号の土地全部についての所在図
が該当

・地図に記録すべき事項
地図には各筆の土地の区画および地番を明確にするため
①地番区域の名称、②地図の番号、③縮尺、④国土調査法施行令2条1項1号に規定する平面直角座標系の番号または記号、⑤図郭線およびその座標値、⑥各土地の区画および地番、⑦基本三角点等の位置、⑧精度区分、⑨隣接図面との関係、⑩作成年月日を記録する。縮尺は、市街地地域が250分の1または500分の1、村落農耕地域が500分の1または1000分の1、山林原野地域が1000分の1または2500分の1

以上:1,164文字
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R 1- 7-10(水):不動産登記法第14条及び不動産登記規則の地図等備忘録条文から
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○境界確定事件を取り扱っていますが、不動産登記法第14条(旧17条)に規定されている地図等についての正確な理解が必要になっており、先ず不動産登記法(平成16年法律第123号)及びその法務省令である不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)についての備忘録で、先ず条文です。

不動産登記法(平成16年法律第123号)
第14条(地図等)

 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
2 前項の地図は、1筆又は2筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示するものとする。
3 第1項の建物所在図は、1個又は2個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番号を表示するものとする。
4 第1項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。
5 前項の地図に準ずる図面は、1筆又は2筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するものとする。
6 第1項の地図及び建物所在図並びに第四項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。

第15条(法務省令への委任)
 この章に定めるもののほか、登記簿及び登記記録並びに地図、建物所在図及び地図に準ずる図面の記録方法その他の登記の事務に関し必要な事項は、法務省令で定める。

第五章 登記事項の証明等
第119条(登記事項証明書の交付等)

 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付を請求することができる。
3 前2項の手数料の額は、物価の状況、登記事項証明書の交付に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める。
4 第1項及び第2項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。
5 第1項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。


第120条(地図の写しの交付等)
 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、地図、建物所在図又は地図に準ずる図面(以下この条において「地図等」という。)の全部又は一部の写し(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。
2 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、地図等(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。
3 前条第3項から第5項までの規定は、地図等について準用する。

第121条(登記簿の附属書類の写しの交付等)
 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類(電磁的記録を含む。以下同じ。)のうち政令で定める図面の全部又は一部の写し(これらの図面が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。
2 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。ただし、前項の図面以外のものについては、請求人が利害関係を有する部分に限る。
3 第119条第3項から第5項までの規定は、登記簿の附属書類について準用する。

第122条(法務省令への委任)
 この法律に定めるもののほか、登記簿、地図、建物所在図及び地図に準ずる図面並びに登記簿の附属書類(第153条及び第155条において「登記簿等」という。)の公開に関し必要な事項は、法務省令で定める。

不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)
第二節 地図等
第10条(地図)

 地図は、地番区域又はその適宜の一部ごとに、正確な測量及び調査の成果に基づき作成するものとする。ただし、地番区域の全部又は一部とこれに接続する区域を一体として地図を作成することを相当とする特段の事由がある場合には、当該接続する区域を含めて地図を作成することができる。
2 地図の縮尺は、次の各号に掲げる地域にあっては、当該各号に定める縮尺によるものとする。ただし、土地の状況その他の事情により、当該縮尺によることが適当でない場合は、この限りでない。
一 市街地地域(主に宅地が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ。) 250分の1又は500分の1
二 村落・農耕地域(主に田、畑又は塩田が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ。) 500の1又は1000の1
三 山林・原野地域(主に山林、牧場又は原野が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ。) 1000分の1又は2500分の1
3 地図を作成するための測量は、測量法(昭和24年法律第188号)第二章の規定による基本測量の成果である三角点及び電子基準点、国土調査法(昭和26年法律第180号)第19条第2項の規定により認証され、若しくは同条第5項の規定により指定された基準点又はこれらと同等以上の精度を有すると認められる基準点(以下「基本三角点等」と総称する。)を基礎として行うものとする。
4 地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度は、次によるものとする。
一 市街地地域については、国土調査法施行令(昭和27年政令第59号)別表第四に掲げる精度区分(以下「精度区分」という。)甲二まで
二 村落・農耕地域については、精度区分乙一まで
三 山林・原野地域については、精度区分乙三まで
5 国土調査法第20条第1項の規定により登記所に送付された地籍図は、同条第2項又は第3項の規定による登記が完了した後に、地図として備え付けるものとする。ただし、地図として備え付けることを不適当とする特別の事情がある場合は、この限りでない。
6 前項の規定は、土地改良登記令(昭和26年政令第146号)第5条第2項第三号又は土地区画整理登記令(昭和30年政令第221号)第4条第2項第三号の土地の全部についての所在図その他これらに準ずる図面について準用する。

第11条(建物所在図)
 建物所在図は、地図及び建物図面を用いて作成することができる。
2 前項の規定にかかわらず、新住宅市街地開発法等による不動産登記に関する政令(昭和40年政令第330号)第6条第2項(同令第11条から第13条までにおいて準用する場合を含む。)の建物の全部についての所在図その他これに準ずる図面は、これを建物所在図として備え付けるものとする。ただし、建物所在図として備え付けることを不適当とする特別の事情がある場合は、この限りでない。

第12条(地図等の閉鎖)
 登記官は、新たな地図を備え付けた場合において、従前の地図があるときは、当該従前の地図の全部又は一部を閉鎖しなければならない。地図を電磁的記録に記録したときも、同様とする。
2 登記官は、前項の規定により地図を閉鎖する場合には、当該地図に閉鎖の事由及びその年月日を記録するほか、当該地図が、電磁的記録に記録されている地図であるときは登記官の識別番号を記録し、その他の地図であるときは登記官印を押印しなければならない。
3 登記官は、従前の地図の一部を閉鎖したときは、当該閉鎖した部分と他の部分とを判然区別することができる措置を講じなければならない。
4 前3項の規定は、地図に準ずる図面及び建物所在図について準用する。

第13条(地図の記録事項)
 地図には、次に掲げる事項を記録するものとする。
一 地番区域の名称
二 地図の番号(当該地図が複数の図郭にまたがって作成されている場合には、当該各図郭の番号)
三 縮尺
四 国土調査法施行令第2条第1項第一号に規定する平面直角座標系の番号又は記号
五 図郭線及びその座標値
六 各土地の区画及び地番
七 基本三角点等の位置
八 精度区分

14条(建物所在図の記録事項)
 建物所在図には、次に掲げる事項を記録するものとする。
一 地番区域の名称
二 建物所在図の番号
三 縮尺
四 各建物の位置及び家屋番号(区分建物にあっては、当該区分建物が属する1棟の建物の位置)
五 第11条第2項の建物所在図にあっては、その作成年月日

第15条(地図及び建物所在図の番号)
 登記官は、地図に記録された土地の登記記録の表題部には第13条第1項第二号の地図の番号(同号括弧書きに規定する場合には、当該土地が属する図郭の番号)を記録し、建物所在図に記録された建物の登記記録の表題部には前条第二号の番号を記録しなければならない。

第15条の2(地図等の副記録)
 法務大臣は、電磁的記録に記録されている地図等に記録されている事項と同一の事項を記録する地図等の副記録を調製するものとする。
2 第9条第2項及び第3項の規定は、登記官が電磁的記録に記録されている地図等によって登記の事務を行うことができない場合について準用する。

第16条(地図等の訂正)
 地図に表示された土地の区画又は地番に誤りがあるときは、当該土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人は、その訂正の申出をすることができる。地図に準ずる図面に表示された土地の位置、形状又は地番に誤りがあるときも、同様とする。
2 前項の申出をする場合において、当該土地の登記記録の地積に錯誤があるときは、同項の申出は、地積に関する更正の登記の申請と併せてしなければならない。
3 第1項の申出は、次に掲げる事項を内容とする情報(以下「地図訂正申出情報」という。)を登記所に提供してしなければならない。
一 申出人の氏名又は名称及び住所
二 申出人が法人であるときは、その代表者の氏名
三 代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
四 申出人が表題部所有者又は所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人であるときは、その旨
五 申出に係る訂正の内容
4 第1項の申出は、次に掲げる方法のいずれかによりしなければならない。
一 法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用して地図訂正申出情報を登記所に提供する方法
二 地図訂正申出情報を記載した書面(地図訂正申出情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を登記所に提出する方法
5 第1項の申出をする場合には、地図訂正申出情報と併せて次に掲げる情報を提供しなければならない。
一 地図又は地図に準ずる図面に表示された土地の区画若しくは位置若しくは形状又は地番に誤りがあることを証する情報
二 地図又は地図に準ずる図面に表示された土地の区画又は位置若しくは形状に誤りがあるときは、土地所在図又は地積測量図
三 表題部所有者又は所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人が申出をするときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。以下同じ。)、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
6 令第4条本文、第7条第1項第一号及び第二号の規定は、第1項の申出をする場合について準用する。
7 第36条第1項から第3項までの規定は前項において準用する令第7条第1項第一号及び第二号の法務省令で定める場合について、第37条の2の規定は第1項の申出をする場合について、それぞれ準用する。
8 令第10条から第14条までの規定は、第4項第一号の方法により第1項の申出をする場合について準用する。
9 第41条及び第44条の規定は前項に規定する場合について、第42条の規定は前項において準用する令第12条第1項及び第2項の電子署名について、第43条第2項の規定は前項において準用する令第14条の法務省令で定める電子証明書について準用する。
10 令第15条、第16条第1項、第17条及び第18条第1項の規定は第4項第二号に掲げる方法により第1項の申出をする場合について、令第16条第5項の規定は第4項第二号に規定する地図訂正申出情報の全部を記録した磁気ディスクを提出する方法により第1項の申出をする場合について準用する。この場合において、令第16条第1項及び第18条第1項中「記名押印しなければ」とあるのは、「署名し、又は記名押印しなければ」と読み替えるものとする。
11 第45条、第46条第1項及び第2項、第53条並びに第55条の規定は第4項第二号に掲げる方法により第1項の申出をする場合について、第51条の規定は第4項第二号に規定する磁気ディスクを提出する方法により第1項の申出をする場合について準用する。この場合において、第51条第7項及び第8項中「令第16条第5項」とあるのは、「第16条第10項において準用する令第16条第5項」と読み替えるものとする。
12 登記官は、申出に係る事項を調査した結果、地図又は地図に準ずる図面を訂正する必要があると認めるときは、地図又は地図に準ずる図面を訂正しなければならない。
13 登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、第一項の申出を却下しなければならない。
一 申出に係る土地の所在地が当該申出を受けた登記所の管轄に属しないとき。
二 申出の権限を有しない者の申出によるとき。
三 地図訂正申出情報又はその提供の方法がこの省令の規定により定められた方式に適合しないとき。
四 この省令の規定により地図訂正申出情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。
五 申出に係る事項を調査した結果、地図又は地図に準ずる図面に誤りがあると認められないとき。
六 地図又は地図に準ずる図面を訂正することによって申出に係る土地以外の土地の区画又は位置若しくは形状を訂正すべきこととなるとき。
14 第38条及び第39条の規定は、第1項の申出について準用する。
15 登記官は、地図等に誤りがあると認めるときは、職権で、その訂正をすることができる。

第16条の2(行政区画の変更等)
 第92条の規定は、地図等について準用する。この場合において、同条第1項中「変更の登記」とあるのは「変更」と、同条第2項中「表題部」とあるのは「地図等」と読み替えるものとする。


以上:6,025文字
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R 1- 7- 9(火):市道道路脇側溝転落事故につき国家賠償責任を認めた地裁判例紹介
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○「アイスクリーム売場前通路上転倒事故に不法行為責任を認めた判例紹介」の続きです。現在、通路での転倒事故について工作物設置保存瑕疵を理由とする損害賠償請求訴訟を扱っており、関連判例を集めています。

○事故当時78歳であった原告が、被告(福島市)が設置・管理する市道(本件道路)を南から北に向けて自転車を押しながら通行していたところ、本件道路西側の側溝に自転車とともに転落して全身を強打したことにより頚髄損傷後遺症及び脊髄損傷後遺症の障害を負った事故で、原告が、被告に対し、本件道路が通常有すべき安全性を欠いており、公の営造物に設置保存の瑕疵があると主張して、国家賠償法2条1項に基づき、1億4255万0467円の支払等を求めた事案についての平成30年9月11日福島地裁判決(判時2405号87頁)の関連部分を紹介します。

○判決は、本件道路については、その利用に際して歩行者が傷害を負う事故の発生する危険性が客観的に存在し、かつ、それが通常の予測の範囲を超えるものでない一方で、管理者である被告において、特段の事情がないにもかかわらず、本件側溝への転落事故の発生を未然に防止するための措置を講じていなかったことからすれば,本件道路(公の営造物)に管理の瑕疵があると認め、4509万7636円の支払を命じました。

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主   文
1 被告は,原告に対し,4509万7636円及びこれに対する平成25年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求の趣旨

 被告は,原告に対し,1億4255万0467円及びこれに対する平成25年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 本件は,事故当時78歳であった原告が,平成25年10月11日午後6時頃,被告が設置・管理する市道平石・方木田線(以下「本件道路」という。)を南から北に向けて自転車を押しながら通行していたところ,本件道路西側の側溝に自転車とともに転落して全身を強打したことにより頚髄損傷後遺症及び脊髄損傷後遺症の障害を負ったこと(以下「本件事故」という。)から,原告が,被告に対し,本件道路が通常有すべき安全性を欠いており,公の営造物に設置保存の瑕疵があると主張して,国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条1項に基づき,1億4255万0467円及びこれに対する本件事故の日である平成25年10月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2 前提事実(認定に供した証拠等の掲記がない事実は,当事者間に争いがない。)

         (中略)


第3 当裁判所の判断
1 認定事実(前記前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。なお,認定に供した証拠等の掲記がない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)本件道路は,朝夕の時間帯は一定の交通量があるが,歩道等は設けられていない。また,路側帯については,本件道路を南方から北方へ進行する場合,仲橋の南端付近に至るまでは西側(左側)脇に限り,人が歩行できる程度の幅が確保されているが,仲橋に入ると,その西側(左側)脇も,約10ないし20cmの幅に狭まり,そのまま本件転落場所付近に至るまで,路側帯内を歩行者等が通行することは困難な状態であった。なお,本件道路は,仲橋の北端を通り過ぎると,左方に湾曲し,見通しが悪いため,本件転落場所付近まで至らないと,その状況を把握することは日中でも困難である。(甲1,35,弁論の全趣旨)

(2)本件事故当時における本件転落場所付近の明るさは,車両の通行がない状況で0.0~0.1ルクス程度(街灯のない星明かり程度の明るさ)であったことがうかがわれるところ,人間の視力は,0.2ルクス程度(満月の夜の明るさ)の明るさにおいても,0.1~0.2程度に低下する。なお,本件転落場所の比較的近くには,看板の照明施設が設置されているが,当該照明の明かりは本件転落場所まで届いていない。(甲3,29,30,34,37~44,乙16(枝番号を含む。),弁論の全趣旨)。

(3)被告は,本件事故後,本件転落場所付近にポストコーンを設置しているところ,その設置費用は35万3160円(消費税込み)であり,平成28年10月3日に発注し,同月12日頃に完成している(前記前提事実(2),甲30,34,乙8の1・2,弁論の全趣旨)。


         (中略)

2 争点1(本件道路の設置・管理の瑕疵の有無)について
(1)前記前提事実のとおり,本件道路は,被告が設置管理する公の営造物であるところ,国賠法2条1項にいう公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,その営造物が通常有すべき安全性を欠く状態をいい,このような瑕疵があるといえるか否かは,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等の諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべきものである。

 もっとも,道路整備の程度については,当該道路の位置,環境,交通状況に応じて一般の通行に支障を及ぼさない程度で足り,必ずしも完全無欠のものとしなければならないものではない。また,本件道路の管理者である被告において,通常予測することができない異常な行動に起因するものであるときには,営造物の通常の用法によらない行動の結果として事故が生じたものといえ,営造物の本来有すべき安全性に欠けるところはない(最高裁昭和53年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁)が,当該営造物の利用に付随して死傷等の事故の発生する危険性が客観的に存在し,かつ,それが通常の予測の範囲を超えるものでない限り,管理者としては,上記事故の発生を未然に防止するための措置を講ずる必要があり,上記のような事故防止措置を欠いたときには,特段の事情がない限り,公の営造物の管理に瑕疵があるというべきである(最高裁昭和55年9月11日第一小法廷判決・集民130号371頁)。

(2)
ア 本件側溝は,本件事故現場付近において,本件道路と平行して存在し,その間は基本的にガードレールで隔てられているが,本件転落場所付近に至るとガードレールは途切れており,しかも同時にガードレールの基礎部分もなくたるため,本件道路の幅員が約30cm狭くなり,その分本件側溝の幅が道路側に拡大している(前記前提事実(3))。

 そして,本件側溝は,本件転落場所地点において,本件道路との段差により,高さ最大90cm,幅約1.2mで存在するため(前記前提事実(2)),本件道路を歩行していた者が不意に同側溝に落ちれば身体に対して相当の衝撃が加わるものと推認され,人の生命身体に対して危険が大きい場所であったといえる。この危険性については,最近福島市内で他の市道脇の側溝においても,本件と同程度の高さ又はこれより低い側溝でもそれらに転落して死亡する事故が発生している点(甲32,33)からもうかがわれる。

 また,前記認定事実(2)のとおり,本件道路が本件転落場所に至る前で左方に湾曲しているため,日中でも近くまで行かないと本件側溝の状況を把握するのは困難であるが,本件事故当時(10月の18時頃)における本件転落場所付近の明るさは,車両の通行がない状況で0.0~0.1ルクス程度(街灯のない星明かり程度の明るさ)であったところ,人間の視力が0.2ルクス程度(満月の夜の明るさ)の明るさでも0.1~0.2程度に低下することに鑑みれば,本件道路を通行する歩行者は,夜間(少なくとも本件事故当時と同程度ないしそれより暗い状況)においては更に本件側溝を認識しづらい状況にあったと認められる。

 さらに,本件道路は,一定の交通量があるにもかかわらず,歩道等の設置はない上,歩行者が通行するのに十分な路側帯もないため,仲橋方面から本件道路の西側を通行してきた歩行者としては,通行車両との接触を避けようとできるだけ西側(左側)に寄って通行しようとする心理が働く点は容易に想像できるところであり,そこにガードレールが途切れた状況に直面すれば,本件道路の道幅が広がったと誤信し,西側(左側)に向かう可能性は極めて高いといえる。

 以上のとおり,本件道路は,本件側溝に転落しやすい状況がある上,同側溝を認識しづらい状況にあったにもかかわらず,本件転落場所には,本件事故当時は防護柵,本件側溝の存在につき注意喚起を促す看板,道路照明施設は設置されていなかったことからすれば,本件道路は,本件事故当時,歩行者が夜間に通行する際に本件側溝に転落し,負傷する事故が発生する危険性が客観的に存在するものであったと認めるのが相当である。

イ 被告は,本件事故後に本件道路にポストコーンを設置しているところ(前記前提事実(2)),少なくとも同措置が事前にあれば,本件事故は回避できたものと考えられる。そして,ポストコーンの設置費用は35万3160円(消費税込み)であり,工期も比較的短期間で終了していること(前記認定事実(3))からすれば,本件が道路整備の領域の問題という点を考慮に入れたとしても,被告が予算等の関係で本件側溝への転落事故を防止するための措置を講じることが困難であったとは考え難く、他に本件側溝への転落事故に関する防止措置を講じていないことを正当化するような特段の事情は見当たらない。

 また,本件道路は歩行者による通行が禁止されていないし,被告が主張する歩行者の左側通行という点についても,本件道路を南方から北方へ向かう場合,右側を通行しようとすると路側帯がほとんど存在せず,あえて左側(西側)を通行せざるを得ない状況にあり,しかも,被告が,そのことを予測することが困難ともいえず,道交法の問題(歩行者の左側通行)のみで異常な用法であるとするのは相当でなく,本件道路を夜間に通行する歩行者が本件側溝に転落する事故が予測の範囲を超えるものであったと認めることはできない。

 以上によれば,本件道路の管理者である被告においては,本件道路を夜間に通行する歩行者が本件側溝に転落する事故の発生を未然に防止するために防護柵,道路照明施設,本件側溝の存在を注意喚起する看板等を設置するなどの措置を講じる必要があったといえる。なお,防護柵設置基準や照明施設設置基準は,一般的な道路管理の観点から防護柵や道路照明施設の設置に関する基準を定めたものであり,道路に具体的な危険性が存在している以上,上記基準に従っていればそれ以上の措置を講じる必要がないということにはならない。

ウ 以上によれば,本件道路については,その利用に際して歩行者が傷害を負う事故の発生する危険性が客観的に存在し,かつ,それが通常の予測の範囲を超えるものでない一方で,管理者である被告において,特段の事情がないにもかかわらず,本件側溝への転落事故の発生を未然に防止するための措置を講じていなかったことからすれば,本件道路(公の営造物)に管理の瑕疵があると認めるのが相当である
以上:4,637文字
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R 1- 7- 8(月):相続分譲渡者は遺産確認訴訟当事者適格なしとした最高裁判例紹介
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○共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないとした平成26年2月14日最高裁判決(判タ1410号75頁、判時2249号32頁)全文を紹介します。

○民法第938条「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」の規定により相続放棄をした者は、同939条で「初めから相続人とならなかったものとみなす。」とされて相続人ではなくなります。相続登記をする場合、その者については相続放棄申述証明書を提出すれば、相続登記手続にその者の署名押印は不要です。

○しかし、被相続人死亡を知って3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしない者は民法第915条及び同921条で単純承認をしたとみなされ家庭裁判所に相続放棄申述はできなくなります。この単純承認をしたと見なされた者は、後に相続人間で「相続放棄証明書」を提出しても相続登記手続には相続人としての署名押印が必要になります。遺産分割協議書を作成し、遺産は取得しないとすれば、その遺産分割協議の提出で相続登記手続では相続人としての署名押印は不要です。

○遺産分割協議書を作成しないで相続人の1人を相続手続から外す簡明な方法は、「相続分譲渡証明書」に実印で署名押印し、印鑑登録証明書を添付することです。この相続分譲渡証明書を提出すれば、その者は相続登記等の相続手続上は、相続人ではなくなるからです。遺産分割を依頼され、相続は放棄すると言う方が居る場合、私はいつも相続分譲渡証明書の提出をお願いしています。これによりその方は相続人でなくなりその後の相続手続が簡単になるからです。このことを明らかにしたのが上記最高裁判例です。

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主   文
原判決中上告人らに関する部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 

理   由
 上告代理人片山主水,同青葉憲一,同杉山泰一郎の上告受理申立て理由(ただし,排除された部分を除く。)について
1 本件は,亡Aの共同相続人(代襲相続人又は共同相続人の権利義務を相続した者を含む。以下同じ。)である被上告人らが,同じくAの共同相続人である上告人らとの間で第1審判決別紙物件目録記載の各土地建物(以下「本件不動産」という。)がAの遺産であることの確認を求める事件(以下「第1事件」という。)と,上告人Y1が,同物件目録記載11の建物の一部を占有している被上告人X1に対し,所有権に基づき,上記占有部分の明渡し等を求める事件(以下「第2事件」という。)が併合審理された訴訟である。なお,上告人Y1,同Y2及び同Y3は原審口頭弁論終結後に死亡した亡Bの,被上告人X2,同X3,同X4及び同X5は同じく原審口頭弁論終結後に死亡した亡Cの各地位をそれぞれ承継した。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,本件不動産を所有していたが,昭和28年1月26日に死亡した。

(2) Aの共同相続人である被上告人X1,C,被上告人X6及び同X7(以下,この4名を併せて「原告ら」という。)は,同じくAの共同相続人である亡D(第1審係属中に死亡し,上告人Y4がその地位を承継した。),B,上告人Y1,同Y2及び同Y3(以下,上告人ら4名及びBを併せて「被告ら」という。)のほか,その余のAの共同相続人であるE,F,G及びH(以下,この4名を併せて「Eら」という。)を被告として第1事件の訴えを提起した。第1事件には,第2事件が併合された。

(3) 第1事件の係属後,Eらが自己の相続分の全部をそれぞれ他の共同相続人に譲渡していたことが明らかになったため,原告らは,Eらに対する訴えを取り下げる手続をした。

3 上記事実関係の下で,第1審は,第1事件につき,原告らの訴えの取下げによりEらが当事者ではなくなったことを前提に,原告らの請求を棄却する旨の判決をし,第2事件につき,上告人Y1の請求を棄却する旨の判決をした。これに対し,原審は,次のとおり判断して,第1審判決を取り消し,被告らに関する部分につき本件を第1審に差し戻した。

 固有必要的共同訴訟である遺産確認の訴えの係属中にした共同被告に対する訴えの取下げは効力を生じないと解されるところ,自己の相続分の全部を譲渡したEらも共同相続人として遺産確認の訴えの当事者適格を失うものではないから,第1事件につき,Eらに対する訴えの取下げが効力を生じないことを看過してされた第1審の訴訟手続には違法がある。また,第2事件は,第1事件と整合的・統一的に解決すべきである。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 遺産確認の訴えは,その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し,これに続く遺産分割審判の手続等において,当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり,そのため,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解されているものである(最高裁昭和57年(オ)第184号同61年3月13日第一小法廷判決・民集40巻2号389頁,最高裁昭和60年(オ)第727号平成元年3月28日第三小法廷判決・民集43巻3号167頁参照)。

 しかし,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり,遺産分割審判の手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから,その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はないというべきである。そうすると,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である。

(2) これを本件についてみると,Eらは,いずれも自己の相続分の全部を譲渡しており,第1事件の訴えの当事者適格を有しないことになるから,原告らのEらに対する訴えの取下げは有効にされたことになる。

5 以上と異なり第1事件につき第1審の訴訟手続には違法があるとし,また,第2事件につき本案の審理をせず第1事件と整合的・統一的に解決すべきであるとして,第1審判決を取り消した原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人らに関する部分は破棄を免れない。そして,本件については,本案の審理をさせるため,原審に差し戻すのが相当である。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 小貫芳信 裁判官 千葉勝美 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 山本庸幸) 
以上:2,850文字
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R 1- 7- 7(日):生命保険金持ち戻しは一律否認せずケースバイケースで柔軟に考えるべき
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○生命保険金を特別受益として持ち戻しの対象とするかどうかの判例を紹介してきました。私が担当している遺産分割事件で、相続人の内複数の方が生命保険金を受領し、その金額が遺産総額の一定割合を占めているため、これを特別受益として持ち戻しの対象とするかどうかの検討が必要だったからです。最終的には受領保険金額の一定割合を特別受益として持ち戻しの対象として分割協議を成立させました。生命保険金を受領していない相続人の不公平感が大きかったからです。

○生命保険金は受取人が固有の権利として原始取得する財産であるから特別受益とは認められないとされています。しかし、相続人の中で生命保険金受領者が居る場合、未受領者との間に不公平感があり、平成16年10月29日最高裁判決も、保険金自体は特別受益には当たらないが,民法903条の立法趣旨に照らし,相続人間の公平を著しく害する特段の事情のある場合は,例外的に特別受益に準じたものとして持戻しを肯定する余地を認めたました。

○民法903条の特別受益の制度趣旨は相続人間の実質的公平を図るものであり、特別受益について被相続人の持戻し免除の意思表示がある場合を除き,当該相続人の具体的相続分は特別受益を持戻したうえで相続割合を検討するのが原則です。生命保険金は理屈では相続財産ではありませんが、被相続人が保険契約を締結し保険料を負担したことにより特定の相続人が保険金を取得することから,特別受益に準じた扱いを肯定するかどうか見解の対立がありました。

○従来の通説は「受取人の指定」を贈与等と実質的に同視して考え,生命保険金について民法903条類推適用を肯定或いは原則として肯定したものがありました(鈴木禄弥・相続法講義〔改訂版〕46頁,遠藤浩「相続財産の範囲」中川善之助教授還暦記念・家族法大系(6)相続(1)180頁,松原正明「生命保険金・死亡退職金・遺族給付」梶村太市=雨宮則夫編・現代裁判法大系(11)140頁等)。一時払い養老保険に基づく死亡保険金は貯蓄的要素が強いとして,当然に特別受益とする見解もありました(司法研修所編・遺産分割事件の処理をめぐる諸問題262頁)

○判例は被相続人が保険契約者として,共同相続人のうち特定の相続人を死亡保険金の受取人とする保険契約による生命保険金は遺産ではなく受取人の固有の財産としていましたが、平成16年最高裁判決までは、保険金について持戻しの対象になるか否かについて,下級審では見解が多岐に分かれていたようです。

○平成16年最高裁判決は、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間で生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認できないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象」になると判示しましたが、この「共同相続人間の到底是認できないほどに著しい不公平があると評価できる特段の事情」について、明確な基準が示されませんでした。

○また、生命保険金を特別受益と認めたとしても、その持ち戻しの範囲については、最高裁の判断は見当たらず、従来の見解は,①保険金説,②死亡時解約返戻金説,③満期までの支払い予定保険料のうち被相続人の支払った保険料の割合を保険金額に乗じた額とする説,④被相続人の支払済み保険料説などがありました。下級審の判例でも、持ち戻しの範囲について、①説はありますが、②以下の説によったものは見当たりません。いずれにしても生命保険金は遺産ではないので一切特別受益の対象にならないと杓子定規に考えるのではなく、ケースバイケースで柔軟に考えるべきでしょう。
以上:1,508文字
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R 1- 7- 6(土):生命保険金を特別受益として持ち戻し対象としない高裁決定紹介1
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○「生命保険金を特別受益として持ち戻し対象とした高裁決定紹介2」の続きです。今回は、被相続人を保険契約者、相手方を受取人とする生命保険契約により相手方が受領した保険金は、民法903条1項所定の要件である被相続人からの遺贈又は贈与には該当せず、また、本件の場合は被相続人死亡後の相手方の生活保障を目的として同保険契約をしたものと認められるから、特別受益には当たらず、仮に同条項の要件に該当するとしても、被相続人は同保険金につき持戻の免除の意思表示をしたことが明らかであるとした平成11年3月5日高松高裁決定(家月51巻8号48頁)関連部分を紹介します。

○特別受益を含めたみなし相続財産総額は約1億1855万円のところ、問題の生命保険金額は約1072万円で、相続財産総額の10%程度でした。これまで見つけた生命保険金を特別受益として認めた裁判例は、生命保険金額が相続財産の50%以上の場合です。相続財産全体に対し、受領生命保険金額がどの程度の割合になれば、特別受益になるかについて基準を示した判例が欲しいところですが、現時点では見つかっていません。

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主  文
1 本件即時抗告に基づき原審判主文2、3項を次のとおり変更する。
(1) 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
イ 原審判添付別紙遺産目録I23記載の土地、同II3記載の建物、同III2ないし6、8ないし10、12ないし15記載の預貯金、同IV1、2記載の保険、本決定添付別紙遺産追加目録2記載の保険は、抗告人の単独取得とする。
ロ 原審判別紙遺産目録I1ないし22記載の土地、同II1、2記載の建物、同III1、7、11、16、17記載の預金、同IV3記載の有限会社a退職金、同V1記載のゴルフ会員権、同V2記載の有限会社a社員権、本決定添付別紙遺産追加目録1記載の立木売却益、同目録3ないし5記載の保険は、相手方の単独取得とする。
(2) 相手方は、抗告人に対し、本審判確定の日から3か月以内に、金1971万1633円を支払え。
2 本件手続費用は、原審及び当審を通じてこれを3分し、その2を抗告人の、その余を相手方の各負担とする。

理  由
第1 本件即時抗告の趣旨

 原審判について抗告する。

第2 一件記録に基づく当裁判所の認定判断は次のとおりである。
1 相続の開始、相続人及び法定相続分


         (中略)

5 みなし相続財産等
(1) みなし相続財産の額は、次のとおり、合計1億1855万3663円である。
 遺産額+特別受益額 = 107,779,885+8,771,000+2,002,778 = 118,553,663


         (中略)

第3 一件記録に基づく、抗告理由に関する当裁判所の認定判断は次のとおりである。

(1) 抗告人の主張

 相手方の特別受益である原審判添付別紙特別受益目録(以下「特別受益目録」という)3、4記載の土地の特別受益評価額が不当である。また、同土地について相手方が取得した駐車場収入を特別受益に加算すべきである。

         (中略)


(1) 抗告人の主張

 相手方が保険金受取人として受領した生命保険金を遺産分割の対象とすべきであるし、特別受益として加算すべきである。

(2) 検討
イ 被相続人を保険契約者とする生命保険契約により、相手方が受領した保険金は、遺産目録及び遺産追加目録記載の保険以外には、下記のとおりであり、相手方は、保険金1072万5150円を受領したものと認められる(なお、相手方は保険金内金300万円の交付を受けた残額772万5150円について、保険金据置の措置をとり、同金員は相手方の保険会社に対する預金となった)。
   記
 保険契約者 被相続人
 被保険者  被相続人
 受取人   相手方
 保険会社  b生命保険相互会社
 保険金   1072万5150円

ロ 相手方は、被相続人と保険会社間の保険契約における保険金受取人としての地位に基づき、相続とは無関係に前示イの保険金を取得したものである。そうであるから、前示イの保険金は、保険金受取人である相手方の固有資産であり、被相続人の遺産を構成するとはいえない。

ハ 前示ロと同様に、前示イの保険金は、相手方が保険金受取人としての地位に基づいて保険会社から受け取ったものであるから、これが、民法903条1項所定の要件である「被相続人から」の「遺贈」ないし「贈与」に該当するとはいえない。そうである以上、前示イの保険金が特別受益に当たるとはいえない。

 また、被相続人が前示イの保険契約をしたのは、同人と相手方夫婦間に子供がなかったことなどから、被相続人死亡後の相手方の生活を支える糧とするためであったものと認められる。すなわち、被相続人は、夫としての立場に基づき、同人死亡後の妻の生活保障をすることを目的として、前示イの保険契約をしたものと認められる。以上に、前示イの保険金の額等の諸般の事情を考えあわせると、同保険金は特別受益に当たらないものというべきである。
 なお、本件遺産分割による抗告人の取得資産が前示のとおりであること、抗告人の生活状況等の諸般の事情を考えあわせると、前示イの保険金を特別受益としなければ相続人間の衡平に反する事態が生ずるものとはいえない。


ニ のみならず、前示ハのとおり、被相続人は、相手方の生活保障をする趣旨で、前示イの保険契約をしたものといえるのであるから、被相続人は、相手方を保険金受取人とする保険契約を締結することにより、遺産に対する相手方の法定相続分に加えて、さらに同保険契約による保険金をも相手方に取得させる意思を有していたことが明らかである。そうすると、仮に前示イの保険金が民法903条1項所定の要件に該当するとしても、被相続人は、前示イの保険金につき持戻免除の意思表示をしたことが明らかである。したがって、前示イの保険金を特別受益として持ち戻すべきであるとはいえない。

ホ なお、抗告人が、他にも存在する旨指摘する生命保険は、保険契約者が有限会社a、被保険者が被相続人のものであると認められる。このように第三者が保険契約を締結した場合には、第三者が被相続人を保険金受取人として指定したのであれば、被保険者の死亡の時はその相続人を受取人に指定する旨の黙示の意思表示があったものと推定できるから、保険金請求権は、相続人の固有資産となる。また、第三者が保険金受取人を指定しなかったのであれば、受取人は保険契約者である第三者自身となる。したがって、保険金受取人の指定の有無・内容にかかわらず、抗告人指摘の生命保険が遺産となることはないものというべきである。

ヘ 次に、前示ホのとおり、抗告人の指摘する生命保険は、被相続人ではなく、第三者が保険契約者であるから、同生命保険は被相続人から受けた利益に該当しない。そうである以上、上記生命保険は特別受益に当たらないことが明らかである。
 なお、有限会社aは、被相続人が事実上支配していた会社ではあるものの、同会社は、それ自体独立した社会的実態を有していたものと認められる。また、上記会社の会計処理につき、被相続人個人の会計との混同があったとは認められない。そうであるから、第三者と被相続人を法律上同視すべき事情があったとはいえない。したがって、有限会社aが締結した保険契約を、被相続人が締結したものと同視することができない。

ト 以上のとおり、被告人の主張は理由がない。

第4 結論
 よって、本件即時抗告に基づき原審判主文2、3項を本決定主文1項のとおり変更することとし、本決定主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 大石貢二 裁判官 溝淵勝 杉江佳治)

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