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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 1-12- 9(月):代官山酒場画廊”bacchus gallery bun”のフラメンコギターの夜参加
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○令和元年12月8日は、岡弘祠フラメンコギター教室の仲間から誘われて代官山酒場画廊「bacchus gallery bun」のフラメンコギターの夜というLIVEイベントに参加しました。午後7時開演とのことで、午後6時頃、JR恵比寿駅から会場近辺までのグーグルマップを頼りに、会場に到達しました。会場入り口には左のポスターが掲示されていました。

○そのポスター、フラメンコギターの巨匠ニーニョ・リカルド氏の肖像が描かれて、横文字が巧くデザインされていると思いましたが、その横文字の内容を良く見ないで会場に入りました。私が、会場に着いたときには、私以外の参加予定の方は全員揃って、フラメンコギターを演奏する方は、既に盛んに指ならしをしていました。

○私は、令和元年11月3日FMホールで開催された第43回岡弘祠フラメンコギター教室門下生発表会で演奏したパナデロス・フラメンコス1曲だけを演奏する約束で参加しました。繰り返し記載していますが、30歳くらいまではたまにコンサート等人前で演奏し、さほど緊張することもなく、練習時と同じように弾けたのですが、ここ10年程前からは人前で演奏すると極端に緊張して練習時のように弾けなくなっていました。そのため人前で演奏する度胸試しを兼ねて、このイベントに参加することにしました。

○岡弘祠フラメンコギター教室門下生発表会終了後は、30歳の頃まで良く演奏していた「モンティのチャルダッシュ」練習に明け暮れ、パナデロス・フラメンコスは、殆ど練習していませんでした。発表会前には結構練習しており、また、シンプルでさほど難しい曲ではないので、練習しなくても弾けるだろうと高をくくっていましたが、いざ、本番、人前で弾くと指がもつれて肝心のスケールがサッパリ決まらず、全くひどい出来に終わりました。

○繰り返し、肝に銘じていますが、練習時にいくら巧く弾けたと思っても、人前で同じように弾けない限り、その曲をマスターしたとは言えません。人前で弾いたレベルが、真のレベルです。その意味で、パナデロス・フラメンコス、随分、長い間弾いていますが、いまだに全く中途半端なレベルに留まっています。まだまだ練習が必要と痛感させられた経験でした。

○イベントポスターをよく見ると「Guitarists KIICHI KOMATSU」なんて記載されていましたが、恥ずかしくて、とても、ギタリストなんて呼べません(^^;)
以上:1,001文字
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R 1-12- 8(日):養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えの利益を認めた高裁判決紹介
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○「養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えの利益を認めた高裁判決紹介」の続きで、その上告審である平成31年3月5日最高裁判決(判タ1460号39頁、判時2421号21頁)全文を紹介します。

○養親の相続財産全部の包括受遺者が提起した養子縁組の無効の訴えについて、一審平成29年9月22日徳島家裁判決(金商1569号20頁<参考収録>)は訴えの利益がないとして却下し、控訴審平成30年4月12日高松高裁判決(金融・商事判例1569号18頁、家庭の法と裁判21号57頁)は、訴えの利益があるとして、判断が分かれていました。

○平成31年3月5日最高裁判決は、養子縁組の無効の訴えを提起する者は養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと一審判決を支持して決着をつけました。

○理由は、縁組当事者以外の者が、養子縁組無効の訴えを提起できるのは、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることが要件であるところ、遺贈は,遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示であるから,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は,養子から遺留分減殺請求を受けたとしても,当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎないので、訴えの利益がないというものです。

○本件では、亡Cと養子縁組をしたYに対し、養親亡Cの実子であれば養子縁組無効の訴えを提起できますが、被上告人は、亡Cとの間に親族関係がなく,亡Yとの間に義兄(2親等の姻族)という身分関係があるにすぎないから,本件養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることはなく訴えの利益はないとされました。

(身分関係図)
   ____
   |    |
亡C=○   ○
     __|__
     |    |
   A=亡Y  D=X(被上告人)
亡Cと亡Yが養子縁組、亡CがXに包括遺贈

********************************************

主   文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 

理   由
上告補助参加人代理人○○○○,同○○○○,同○○○○の上告受理申立て理由について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 亡Cを養親となる者とし,亡Yを養子となる者とする養子縁組届に係る届書が,平成22年10月▲▲日,徳島県a郡b町長に提出された。なお,亡Cは亡Y及びその実姉の叔父の妻である。また,被上告人は当該実姉の夫であり,上告補助参加人は亡Yの妻である。
(2) 被上告人は,平成25年12月に死亡した亡Cの平成22年7月11日付けの自筆証書遺言により,その相続財産全部の包括遺贈を受けた。
(3) 被上告人は,平成28年1月,亡Yから遺留分減殺請求訴訟を提起された。
 亡Yが平成29年10月に死亡したため,上告補助参加人は,上記訴訟を承継した。

2 本件は,被上告人が,検察官に対し,本件養子縁組の無効確認を求める事案である。

3 原審は,上記事実関係の下において,要旨次のとおり判断し,被上告人が本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないとして本件訴えを却下した第1審判決を取り消して,本件を第1審に差し戻した。
 養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は,養親の相続人と同一の権利義務を有し,養子から遺留分減殺請求を受け得ることなどに照らせば,養親の相続に関する法的地位を有するものといえ,養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たる。そうすると,被上告人は,亡Cの相続財産全部の包括遺贈を受けた者であるから,本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有する。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 養子縁組の無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが,当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は上記訴えにつき法律上の利益を有しないと解される(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)。そして,遺贈は,遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示であるから,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は,養子から遺留分減殺請求を受けたとしても,当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない。
 したがって,養子縁組の無効の訴えを提起する者は,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと解するのが相当である。


(2) そして,被上告人は,亡Cの相続財産全部の包括遺贈を受けたものの,亡Cとの間に親族関係がなく,亡Yとの間に義兄(2親等の姻族)という身分関係があるにすぎないから,本件養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることはなく,本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないというべきである。

5 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の訴えは不適法であり,これを却下した第1審判決は相当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 宮崎裕子 裁判官 岡部喜代子 裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林景一)
以上:2,357文字
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R 1-12- 7(土):養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えの利益を認めた高裁判決紹介
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○「養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えを却下した家裁判決紹介」の続きで、その控訴審である平成30年4月12日高松高裁判決(金融・商事判例1569号18頁、家庭の法と裁判21号57頁)全文を紹介します。

○亡Cの自筆証書遺言により包括遺贈を受けたと主張する控訴人が、第1審被告亡Yに対し、CとYとの間の養子縁組の無効確認を求めたところ、原審が、控訴人はCとYとの間の養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たらないから、訴えの利益がないとして、控訴人の訴えを却下しました。

○控訴審判決は、Cの包括受遺者という地位は、本件養子縁組の養親であるCの相続に関する法的地位であるといえるから、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たるというべきであり、本件において、控訴人は、本件養子縁組無効確認訴訟につき、訴えの利益を有すると解するのが相当であるとして、原判決を取り消し、本件を徳島家庭裁判所に差し戻しました。

○本件は、上告されて、控訴審判決が覆されましたので、別コンテンツで紹介します。

********************************************

主   文
1 原判決を取り消す。
2 本件を徳島家庭裁判所に差し戻す。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
主文同旨

第2 事案の概要
1 事案の要旨

(1) 本件は,亡Cの自筆証書遺言により包括遺贈を受けたと主張する控訴人が,第1審被告亡Yに対し,CとYとの間の養子縁組の無効確認を求めた事案である。
(2) 原審は,控訴人はCとYとの間の養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たらないから,訴えの利益がないとして,控訴人の訴えを却下した。控訴人は,これを不服として控訴を提起した。
 第1審被告のYは,原判決後に死亡したため,人事訴訟法26条2項により検察官(高松高等検察庁検事長)が本件訴訟手続を受継し,Yの妻であるZが,当審において被控訴人に補助参加した(以下,Zを単に,「補助参加人」という。)。

2 前提事実
 以下の事実は,末尾の括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。
(1) 当事者及び関係者の身分関係
ア Cは,大正13年○月○日,Dを母とする嫡出でない子として出生し,昭和23年3月4日,Eと婚姻し,同月○日,同人との間に長女Lをもうけたが,昭和28年○月○日に夫Eが死亡し,平成6年○月○日には長女Lも死亡した。
 Cは,平成25年○月○日に死亡した。
 (以上につき,甲3の1~5)
 Cには,父を異にする兄(DとM間の子であるN及びO)とNの子ら(Cにとっては甥。以下,同人らを単に「甥」という。)が存する(甲2,丙1,弁論の全趣旨)。

イ Yは,昭和26年○月○日,H(上記Eの兄)とP間の子として生まれ,昭和58年8月17日に補助参加人と婚姻し,原判決後の平成29年○月○日に死亡した(甲2,4,丙1,弁論の全趣旨)。

ウ 控訴人は,平成4年12月10日にIと婚姻した。妻Iは,Yの姉であり,Cと親族関係にあるが(3親等の姻族),控訴人とCには親族関係はない。
 (以上につき,甲2,5,丙1,弁論の全趣旨)

(2) 養子縁組の届出
 C(本籍:〈省略〉,大正13年○月○日生まれ,平成25年○月○日死亡)を養親とし,Y(本籍:〈省略〉,昭和26年○月○日生まれ,平成29年○月○日死亡)を養子とする養子縁組(以下「本件養子縁組」という。)は,平成22年10月22日にa町長に対して届出がされた(甲3の4)。

(3) 養子縁組届の概要
 本件養子縁組に係る届出書(以下「本件養子縁組届」という。)には,「養子になる人」欄に「G」と表示され,同人名義の署名押印があり,「養親になる人」欄に「F」と表示され,同人名義の署名押印がある。
 なお,本件養子縁組届の証人欄には,控訴人名義の署名押印がある。
 (以上につき,甲1)

(4) F名義の遺言の存在
 F名義の平成22年7月11日付けの自筆証書遺言(以下「本件遺言」という。)が存在し,同遺言書は,平成27年7月3日に徳島家庭裁判所において検認された。
 本件遺言は,Cの全財産を控訴人に相続させるとの内容になっている。
 (以上につき,甲2,弁論の全趣旨)

(5) 遺留分減殺請求訴訟の存在
 Yは,平成28年1月21日,徳島地方裁判所に,控訴人及びその妻を被告として,遺留分減殺請求訴訟(同裁判所平成28年(ワ)第23号)を提起した(弁論の全趣旨)。

3 争点
(1) 控訴人は,本件養子縁組無効確認訴訟につき,訴えの利益があるか(争点(1))
(2) 本件養子縁組が縁組意思を欠き(民法802条1号)無効であるか(争点(2))

4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)について

〔控訴人〕
ア 控訴人はCの包括受遺者であるから,本件養子縁組が有効であるか無効であるかによって,包括受遺者としての受遺分の範囲に直接影響を受ける。また,包括受遺者は,遺言の内容を実現するために,遺言者の相続人と共同して手続を行い,債務の履行に当たる必要があるほか,他の相続人との間で,本件遺言と異なる遺産分割協議を行うこともできる。

 誰が相続人であるかは,包括受遺者にとって強い利害関係があり,法定相続人が自己の相続分に影響があるとして他の養子たる相続人に対して養子縁組無効確認を求めることと状況は異ならない。

イ 本件訴訟により本件養子縁組が無効であることを確定しておかなければ,補助参加人等が,本件遺言につき無効確認請求等をして紛争を蒸し返すことも可能になる。

ウ したがって,控訴人に本件訴訟の訴えの利益を認めるべきである。
〔被控訴人及び補助参加人〕
 控訴人は,本件請求が認容されても,遺留分減殺請求により財産を失うことがないという財産上の権利義務に影響を受ける者に過ぎないから,本件訴えには訴えの利益がない。
 民法990条は,包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有すると規定するが,完全に相続人と同じ地位を認めたものではなく(例えば,包括受遺者には代襲相続権も遺留分もないとされている。),専ら財産関係における権利義務を規定するものと解され,訴えの利益を基礎づけるものではない。

(2) 争点(2)について
〔控訴人〕
Yは,本件養子縁組届に署名押印しなかった。
また,Cは,専らその遺産を甥に相続させないための方便として本件養子縁組をしたものであって,Yとの縁組意思を有していなかった。
したがって,本件養子縁組は,当事者の縁組意思及び届出意思を欠き,無効である。

〔被控訴人及び補助参加人〕
控訴人の主張事実は否認し,主張は争う。
Yは,Cの面倒を見るつもりで本件養子縁組届に署名押印したし,CもYや補助参加人の世話を受け容れていたから,縁組意思及び届出意思はあった。
仮にCがその遺産を甥に相続させたくないと考えて本件養子縁組をしたとしても,成人間の養子縁組であって,その効力は左右されない。

第3 当裁判所の判断
1 控訴人は,本件養子縁組無効確認訴訟につき,訴えの利益があるか(争点(1))について
(1) 訴えの利益の有無について

ア 養子縁組無効確認の訴えは,縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は,訴えの利益を有しないと解される(最高裁判所昭和63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)。
 そして,ここでいう自己の身分関係とは,可能的なものを含め,身分に関する実体法規に定める地位(相続,扶養,婚姻制限)又はこれに関する権利の行使若しくは義務の履行に影響を受けることをいうものと解される。


イ これを本件について検討する。
(ア) 前記前提事実(1)記載のとおり,控訴人は,本件養子縁組上の養親であるCとは親族関係にはないが,本件養子縁組上の養子であるYとは親族関係(2親等の姻族)にある。

(イ) 前記前提事実(1)(4)記載のとおり,Cは,控訴人に全財産を包括遺贈する旨の本件遺言をし,同遺言は,平成25年○月○日のCの死亡により効力が生じ(民法985条1項),控訴人は,これにより相続人と同一の権利義務を有する地位を取得した(同法990条)。

(ウ) そうすると,控訴人は,本件養子縁組によりCの嫡出子たる身分を取得したYから遺留分減殺請求を受ける地位にあり(現に,前記前提事実(5)記載のとおり,同人は,遺留分減殺請求権を行使してその旨の訴訟を提起し,その地位は補助参加人が承継している。),同請求を受けた場合には,自己の財産上(相続)の権利義務に影響を受けることは明らかである。また,本件においては全部包括遺贈であるから直ちに問題となるわけではないが,一部包括遺贈の場合で他に相続人があるときには,遺産分割の当事者となるべき地位を有することになる。
 以上によれば,Cの包括受遺者という地位は,本件養子縁組の養親であるCの相続に関する法的地位であるといえるから,前記アにいう自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たるというべきである。


ウ そうすると,本件において,控訴人は,本件養子縁組無効確認訴訟につき,訴えの利益を有すると解するのが相当である。

(2) 被控訴人及び補助参加人の主張について
 被控訴人及び補助参加人は,包括受遺者は,相続人と同一の地位を有するものではなく,単に経済的な地位を有するに過ぎないから,前記(1)アの自己の身分関係に関する地位を基礎づけるものには当たらないと主張する。

 しかしながら,前記(1)アで判示したとおり,ここでいう自己の身分関係とは,可能的なものを含め,身分に関する実体法規に定める地位(相続,扶養,婚姻制限)又はこれに関する権利の行使若しくは義務の履行に影響を受けることをいうのであって,包括受遺者の地位は,相続という身分上の規律に関する地位であるというべきである。被控訴人及び補助参加人の上記主張は採用することができない。

2 結論
 以上によれば,控訴人は本件訴訟の訴えの利益を有するところ,これを欠くとして本件訴えを却下した原判決は取消しを免れない。
 そして,本件養子縁組の有効無効につき更に審理する必要があることから,民訴法307条に基づき,本件を第1審裁判所である徳島家庭裁判所に差し戻すこととする。
 よって,主文のとおり判決する。
 高松高等裁判所第2部(裁判長裁判官 神山隆一 裁判官 松阿彌隆 裁判官 横地大輔)

以上:4,309文字
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R 1-12- 6(金):養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えを却下した家裁判決紹介
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○原告が、被告に対し、被告と訴外Cとの間の本件養子縁組が無効であることの確認を求めた訴えについて、第三者の提起する養子縁組無効の訴えは,養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは,訴えの利益を欠くとして、訴えを却下した平成29年9月22日徳島家裁判決(金商1569号20頁<参考収録>)を紹介します。

○事案は以下の通りです。
・原告は、C女(t13生まれ)の原告に対する包括遺贈の自筆証書遺言を所持していると主張
・h22.10.22Cは被告Yと養子縁組届
・H25C死去
・h28被告Yは原告に遺留分減殺請求の訴え
・h29.5.8原告は被告YにCとの養子縁組無効確認の訴え


○判決は、原告はCの親族ではなく,本件養子縁組の養親であるCから包括遺贈を受けた者であり得るにとどまるから,本件養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者には当たらないとして、訴えを却下しました。

○原告からすれば、Cと被告Yの養子縁組が無効になれば、被告YはCの相続人ではなくなり、原告に対する遺留分減殺請求もできなくなるので、養子縁組無効確認に訴えの利益があると思われます。この家裁判決は、平成30年4月12日高松高裁判決で覆され、原告の主張が認められましたので、別コンテンツで紹介します。ところが最高裁でさらに覆され、難しいところです。

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主   文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 平成22年10月22日にa町長に対する届出によってされた被告とC(本籍〈省略〉,大正13年○月○日生まれ。●●●)との間の養子縁組(以下「本件養子縁組」という。)が無効であることを確認する。

第2 事案の概要
1 事案の骨子

 本件は,原告が,被告に対し,本件養子縁組が無効であることの確認を求める事案である。

2 前提事実等(後掲各証拠等及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) Cは大正13年○月○日生まれの女性であり(甲3の5),原告は昭和11年○月○日生まれの男性であり(甲5),被告は昭和26年○月○日生まれの男性である(甲4)。

(2) Cは,Dの非嫡出子であり,父から認知を受けておらず,同母兄がいたが早くに亡くした(甲3の1・5)。Cは,昭和23年3月4日にEとの婚姻届を了し,同年○月○日にEとの間に長女をもうけたが,同28年○月○日にEを亡くし(甲3の2),平成6年○月○日に長女を亡くした(甲3の3)。また,Cは,その間にDも亡くした(甲2,3の1,弁論の全趣旨)。

 Dには他の男性との間に子がおり,同人には子ら(Cの甥)がいたので(甲2,弁論の全趣旨),平成22年7月11日(後記(3)の遺言書の作成日付)当時,Cの推定相続人は上記甥らであった。

(3) 原告は,「私はぜん財産をXに相ぞくさせる。平成二十二年七月十一日」と記載された「F」作成名義の「ゆい言書」と題する書面を所持し(甲2),これを,Cが原告に遺産全部を相続させる意思で作成した自筆証書遺言であると主張している(記録から明らか)。

(4) a町長は,平成22年10月22日,「養子になる人」欄に被告が表示され,「G」との署名押印があり,「養親になる人」欄にCが表示され,「F」との署名押印がある養子縁組届を受理し(甲1),その頃,戸籍に同日被告とCとが養子縁組をした旨の記載をした(甲3の4)(本件養子縁組)。

(5) Cは,平成25年○月○日に死亡した(甲3の5)。

(6) 被告は,原告に対し,遺留分減殺請求の意思表示をしたことを理由とする訴え(徳島地方裁判所平成28年(ワ)第23号)を提起し,本件口頭弁論終結時も,上記訴えが係属している。

(7) 原告は,平成29年5月8日,本件訴えを提起した(記録上明らか)。

(8) なお,被告は,Eの兄であるHの子(Cの義理の甥)であり,原告の妻であるIの弟でもある。

3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 本件訴えに訴えの利益があるか

(原告の主張)
 原告はCの包括受遺者であるから,本件養子縁組が無効であるか否かによって,包括受遺者としての受遺分の範囲に直接影響を受ける。
 また,受遺者は,遺言の内容を実現するために,遺言者の相続人と共同して手続を行い,債務の履行に当たる必要があるから,誰が相続人であるかは,受遺者にとって強い利害関係がある。
 さらに,本件訴えにより本件養子縁組が無効であることを確定しておかなければ,被告が,Cの遺言の無効確認請求をして紛争を蒸し返すことも可能になってしまう。
 したがって,本件訴えに訴えの利益を認めるべきである。

(被告の主張)
 原告は,本件請求が認容されても,遺留分減殺請求により財産を失うことがないという財産上の権利義務に影響を受ける者に過ぎないから,本件訴えには訴えの利益がない。

(2) 本件養子縁組は縁組意思を欠き無効といえるか。
(原告の主張)
 被告は,本件養子縁組に係る養子縁組届に署名押印しなかった。
 また,Cは,専らその遺産を甥に相続させないための方便として,本件養子縁組の手続を行ったから,被告との縁組意思を有していなかった。
 したがって,本件養子縁組は,当事者の縁組意思を欠き,無効である。

(被告の主張)
 原告の主張事実は否認し,主張は争う。
 被告は養子としてCの面倒を見るつもりで本件養子縁組に係る養子縁組届に署名押印したし,Cも被告やその妻の世話を受け容れていたから,縁組意思があったはずである。仮にCがその遺産を甥に相続させたくないと考えていたとしても,成人間の養子縁組であるから,その効力は左右されない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件訴えに訴えの利益があるか)について

 第三者の提起する養子縁組無効の訴えは,養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは,訴えの利益を欠く(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁)。
 これを本件についてみると,前記認定のとおり,原告はCの親族ではなく,本件養子縁組の養親であるCから包括遺贈を受けた者であり得るにとどまるから,本件養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者には当たらない。
 原告は,本件請求の本案判決が得られなくても,別件訴訟(前提事実等(6))で本件養子縁組の無効を主張すれば,被告に対して自己の権利利益を防御することができるし,仮に被告が原告の包括受遺者の地位を争う別途の法的手続をとったとしても,同様に自己の権利利益を防御することができるから,上記のように解したとしても,原告に過酷な不利益が生ずることはない。

 原告の主張は,被告の同種の主張を先制攻撃的に封じておきたいというに過ぎず,採用の限りでない。

2 結論
 以上によると,その余の点について検討するまでもなく,本件訴えは不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。
 徳島家庭裁判所 (裁判官 平野剛史)
以上:2,948文字
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R 1-12- 5(木):後遺障害逸失利益について死亡時までに限られないとした最高裁判決紹介
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○「後遺障害逸失利益について死亡時までに限られるとした高裁判決紹介」の続きで、その上告審である平成8年4月25日最高裁判決(交事集29巻2号302頁、裁判所時報1170号1頁)全文を紹介します。

○後遺障害による逸失利益の算定に当たり、事故後に事故とは無関係の原因で被害者が死亡した場合、その後の逸失利益について、死亡時までしか認めない切断説(本件高裁判決)と、死亡しなければ後遺症が存続したであろう時点まで認める継続説(本件一審判決)の対立がありましたが、最高裁は、継続説で決着をつけました。

○最高裁判決は、交通事故の被害者が後遺障害により労働能力の一部を喪失した場合における逸失利益の算定に当たっては、事故後に別の原因により被害者が死亡したとしても、事故の時点で、死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないとしました。

○その理由は、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからであるとしました。

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主  文
 原判決中、上告人らの敗訴部分のうち、(1) 被上告人Y1株式会社及び同Y2に対し、上告人X1につき505万2373円並びに同X2及び同X3につき各252万1187円並びにこれらに対する平成元年7月5日から各支払済みまで年五分の割合による金員の連帯支払を求める部分、(2) 被上告人日産火災海上保険株式会社に対し、同Y1株式会社に対する右各請求に係る判決が確定したときに、上告人X1につき505万2373円並びに同X2及び同X3につき各252万1187円並びにこれらに対する平成元年7月5日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分を破棄する。
 前項の破棄部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理  由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由第二点について
一 原審の確定したところによれば、(1) 昭和63年1月10日、新潟県内の国道上において、被上告人Y1株式会社が保有し、被上告人Y2の運転する大型貨物自動車が、A(以下「A」という。)の同乗する普通貨物自動車と衝突し、Aは、右交通事故により脳挫傷、頭蓋骨骨折等の傷害を負った(以下「本件交通事故」という。)、(2) Aは、本件交通事故の後、山形県鶴岡市内の病院において入通院による治療を受けた結果、平成元年6月28日には、知能低下、左腓骨神経麻痺、複視等の後遺障害(以下「本件後遺障害」という。)を残して症状が固定した、(3) Aは、本件交通事故当時、大工として工務店に勤務していたものであるが、右の症状固定の後も就労が可能な状態になかったことから、毎日のように山形県西田川郡温海町内の自宅付近の海で貝を採るなどしていたところ、同年7月4日、海中で貝を採っている際に心臓麻痺を起こして死亡した(以下「本件死亡事故」という。)、というのである。

二 Aの相続人である上告人らは、本件において、Aの本件後遺障害による労働能力の一部喪失を理由として、Aの症状固定時である44歳から就労可能年齢67歳までの間の逸失利益の損害を主張している。原審は、Aの本件後遺障害による逸失利益があるとはしたものの、Aは本件交通事故と因果関係のない本件死亡事故により死亡したものであるところ、事実審の口頭弁論終結前に被害者の死亡の事実が発生し、その生存期間が確定して、その後に逸失利益の生ずる余地のないことが判明した場合には、後遺障害による逸失利益の算定に当たり右死亡の事実をしんしゃくすべきものであるとして、Aの死亡後の期間についての逸失利益を認めなかった。

三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる。

四 これを本件についてみるに、前記事実関係によれば、Aは本件交通事故に起因する本件後遺障害により労働能力の一部を喪失し、これによる損害を生じていたところ、本件死亡事故によるAの死亡について前記の特段の事情があるとは認められないから、就労可能年齢67歳までの就労可能期間の全部について逸失利益を算定すべきである。

 したがって、これと異なる判断の下に、Aの死亡後の期間について本件後遺障害による逸失利益を認めなかった原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は上告人らの敗訴部分のうち平成5年2月23日付け上告状補充書による不服申立て部分につき破棄を免れない。そして、本件については、損害額全般について更に審理を尽くさせる必要があるから、右破棄部分につきこれを原審に差し戻すのが相当である。
 よって、民訴法407条1項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 高橋久子 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄)
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R 1-12- 4(水):後遺障害逸失利益について死亡時までに限られるとした高裁判決紹介
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○「後遺障害逸失利益について死亡時までに限られないとした地裁判決紹介」の続きで、その控訴審である平成4年11月26日東京高裁判決(判タ806号195頁、判時1439号124頁)関連部分を紹介します。

○控訴審判決は、交通事故で負傷した後遺障害のある被害者が、その後交通事故と相当因果関係のない水難事故により死亡した場合には、交通事故の加害者の賠償すべき後遺障害による逸失利益は死亡時までのものに限られるとして認容額が一審認容額の約60%に減らされました。

○不法行為の被害者がその不法行為と相当因果関係のない原因で死亡した場合の逸失利益については、死亡時までしか認めない切断説と、死亡しなければ後遺症が存続したであろう時点まで認める継続説に分かれていましたが、一審は継続説、控訴審は切断説と分かれました。この見解の対立に平成8年4月25日最高裁判決が決着をつけていますので、別コンテンツで紹介します。

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主   文
原判決を次のとおり変更する。
控訴人Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、被控訴人X1に対し金549万0787円、同X2及び同X3に対し各金274万5393円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
控訴人日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対するこの判決が確定したときは、被控訴人X1に対し金549万0787円、同X2及び同X3に対し各金274万5393円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
被控訴人らの本件附帯控訴をいずれも棄却する。
訴訟費用は第1、2審を通じてこれを6分し、その1を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。
この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事   実
(申立て)
一 平成4年(ネ)第1289号事件
1 控訴人ら
(一) 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(二) 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
(三) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
2 被控訴人ら
 本件控訴をいずれも棄却する。

二 平成4年(ネ)第3165号事件
1 被控訴人ら
(一) 原判決を次のとおり変更する。
(二) 控訴人Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、被控訴人X1に対し金1391万4173円、同X2及び同X3に対し各金695万7086円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(三) 控訴人日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対するこの判決が確定したときは、被控訴人X1に対し金1391万4173円、同X2及び同X3に対し各金695万7086円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(四) 訴訟費用は第1、2番とも控訴人らの負担とする。
(五) 第二項につき、仮執行の宣言
(被控訴人らは、いずれも当審において右(二)及び(三)のとおり請求を減縮した。)
2 控訴人ら
(一) 本件附帯控訴をいずれも棄却する。
(二) 附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。
(主張)
 当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

         (中略)

理   由
一 当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由の説示と同一であるから、これを引用する。

         (中略)

4 原判決18枚目表4行目の「(二)」及び同行の「・予備的請求」を削り、同末行の「認められるところ、」を「認められるが、前掲」と、同裏1行目の「によって認められるところの」を「によれば」と、同5行目から同6行目にかけての「等の事実に鑑みれば」を「が認められるから」と改め、同末行の「甲第57号証」の前に「前掲」を加え、同19枚目表3行目から同9行目までを削り、同10行目の「5」を「4」と、同末行の「甲第18号証の1ないし7及び甲第61号証(いずれも領収書)」を「成立に争いのない甲第18号証の1ないし7、甲第61号証」と、同裏5行目の「単価」を「作成費用」と、同7行目の「6」を「5」と改め、同8行目の「甲第15号証」の前に「原本の存在及び成立に争いのない」を加え、同20枚目表1行目の「7」を「6」と、同6行目の「26日」を「28日」と改め、同裏1行目から同22枚目表末行まで〈同231頁4段22行目?232頁3段10行目〉を次のとおり改める。
「7 後遺障害による逸失利益
        金2万6800円
 前記のとおり昭和62年におけるAの実収入額は年額208万5750円であり、前記入通院期間中に見られたAの症状及び本件後遺障害の程度に照らすと、Aの本件後遺障害は全体として自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表の第六級に相当し、これによる労働能力喪失率は67パ?セントと認めるのが相当であり、これにより本件後遺障害が固定した平成元年6月28日から同年7月4日までの本件後遺障害によるAの逸失利益は金2万6800円(208万5750円×0.67÷365×7)と算定される。

 被控訴人らは、Aの死亡後についても本件後遺障害による逸失利益が認められるべきである旨主張する。
 しかし、Aの死亡と本件交通事故との間に因果関係が認められないことは前記のとおりである。そして、後遺障害による逸失利益の算出に当たって、一般に平均的な稼働可能期間を前提として将来の得べかりし収入を算定しているのは、事の性質上将来における被害者の稼働期間を確定することは不可能であるため擬制を行っているものであるから、本件のように事実審の口頭弁論が終結するまでに、本件交通事故と因果関係の存しない本件死亡事故によるAの死亡という事実が発生し、Aの生存期間が確定して、その後においては逸失利益の生ずる余地のないことが判明した場合には、右事実はAの本件後遺障害による逸失利益の算定に当たり斟酌せざるを得ないというべきであり、それがむしろ現実に発生した損害についてその公平な分担を図ることを理念とする不法行為による損害賠償制度の趣旨に沿うものというべきである。したがって、被控訴人らの右主張は採用することができない。

5 原判決22枚目裏1行目の「9」を「8」と、同行の「金850万円」を「金1100万円」と、同4行目の「事実」を「事情」と、同7行目の「10」を「9」と、同行の「2420万2103円」を「1729万7356円」と、同10行目の「1688万6321円」を「998万1574円」と改め、同23枚目表1行目の「甲第19号証」の前に「前掲」を加え、同2行目から同3行目にかけての「844万3160円」を「499万0787円」と、同3行目の「422万1580円」を「249万5393円」と、同8行目の「85万円」を「50万円」と、同行の「42万円」を「25万円」と改める。

二 以上の次第により、被控訴人らの控訴人らに対する本訴請求は、控訴人Y1及び同Y2に対し連帯して、本件交通事故による損害賠償として、被控訴人X1子につき金549万0787円、同X2及び同X3につき各金274万5393円並びにこれらに対する本件交通事故が発生した後である平成元年7月5日から右各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求め、控訴人日産火災に対し同青森定期に対する本判決が確定することを条件として、右同額の金員の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がなく、控訴人らの本件控訴は右の限度で理由があるから、原判決を主文のとおり変更し、また被控訴人らの本件附帯控訴は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法96条、89条、92条、93条を、仮執行の宣言につき同法196条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官菊池信男 裁判官吉崎直彌 裁判官奥田隆文は、転補のため、署名押印できない。裁判長裁判官菊池信男)

以上:3,362文字
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R 1-12- 3(火):後遺障害逸失利益について死亡時までに限られないとした地裁判決紹介
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○「重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた一・二審判決まとめ」に、「原告が49年生存した場合は、上記の通り、定期金では総額約2億6000万円もの膨大な逸失利益の賠償を受けることができますが、例えば20年後に別な交通事故等で死亡した場合どうなるかについては、平成8年4月25日最高裁判決で、原則として結論に変わりはないとの判断をしていますので、別コンテンツで紹介します。」と記載していました。

○平成8年4月25日最高裁判決の第一審である平成4年3月26日東京地裁判決(判タ799号225頁、判時1424号64頁)の関連部分を紹介します。事案は以下の通りです。
・Aは、昭和63年1月当時、建設関係のビル型枠工事を主な業務とする工務店に勤務していた
・Aは、同月10日、同僚の運転する普通貨物自動車に同乗して作業現場に向う途中、センターラインを越えて進行してきた大型貨物自動車と衝突し、脳挫傷、頭蓋骨骨折等の傷害を負った
・Aは、昭和63年1月10日から平成元年6月28日まで入通院して治療を受けたが、精神・知能の後遺障害(IQ「64」)が残ったので自宅でリハビリを行いつつ療養を続けていた
・Aは、同年7月4日、自宅近くの海岸に行って貝採りをしている最中、心臓麻痺を起こして死亡
・Aの遺族であるXらが、加害運転者Y2、保有者Y1、保険会社に対し、主位的には、Aの死亡とこの事故との間に相当因果関係があるものとして死亡による損害を、予備的には、相当因果関係がないとされた場合における後遺障害による損害を、それぞれ損害賠償ないし保険約款上の直接請求として請求


○一審東京地裁判決は、交通事故による精神・知能障害者がその約1年半後に心臓麻痺で死亡したことについて、死亡と交通事故との相当因果関係は認めず、被害者が水難事故により死亡したことについて、後遺障害による逸失利益は死亡時までに限られないと、死亡後の逸失利益も認めました。

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主   文
一 被告Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、原告X1に対し金929万3160円、同X2及び同X3に対し各金464万1580円、並びにこれらに対する平成元年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 被告日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対する本判決が確定したときは、原告X1に対し金929万3160円、同X2及び同X3に対し各金464万1580円、並びにこれらに対する平成元年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の各請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用はこれを4分し、その1を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。
五 この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨

1 (主位的)
(一) 被告Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、原告X1に対し金3226万3663円、同X2及び同X3に対し各金1613万1831円、並びにこれらに対する平成元年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(二) 被告日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対する本判決が確定したときは、原告X1に対し金3226万3663円、同X2及び同X3に対し各金1613万1831円、並びにこれらに対する平成元年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 (予備的)
(一) 被告Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、原告X1に対し金3532万7213円、同X2及び同X3に対し各金1766万3606円、並びにこれらに対する平成元年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(二) 被告日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対する本判決が確定したときは、原告X1に対し金3532万7213円、同X2及び同X3に対し各金1766万3606円、並びにこれらに対する平成元年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 1(一)、2(一)及び3につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二 当事者の主張

         (中略)

理   由
一 請求原因1(交通事故の発生)の事実のうち、(一)(事故の内容)については当事者間に争いがなく、〈書証番号略〉によれば、同(二)(事故の結果)が認められる。また、同2(責任原因)の事実のうち、(三)(被告日産火災の責任原因)については当事者間に争いがなく、〈書証番号略〉を総合すれば、同2(一)及び(二)(被告Y1及び同Y2の責任原因)の各事実を認めることができる。
 したがって、被告Y1及び同Y2は、連帯して、本件交通事故によってAが被った損害を賠償すべき責任があり、同日産火災は、同Y1に対する本判決が確定したときは右損害賠償責任の額を支払うべきものである。

二 進んで請求原因3(Aの治療経過及び死亡に至る経緯)について判断する。
1 〈書証番号略〉、証人阿部毅の証言及び原告X1本人尋問の結果によれば、以下の事実を認めることができる。
(一) 本件事故以前のAの状況

 Aは、昭和19年9月7日に出生した後、本人の意思で高校を中退して仮枠大工として働くようになり、昭和46年1月29日に原告X1と見合結婚をして、翌昭和47年2月25日に長女原告X2が、昭和49年2月2日に長男原告X3がそれぞれ生まれ、その後は父B、母C及び右Cの姉の3人を含めた7人家族で暮して来ており(父Aは昭和62年11月15日に死亡。)、一家の家計はAの仮枠大工としての収入と原告X1の製パン工場での稼働から得られる収入とで維持されていた。

 右の仮枠大工としての仕事は、以来、勤務先の工務店を数店転々とし、また、途中約2年間東京へ働きには出たものの、継続して行って来ており、本件交通事故当時は、昭和61年7月1日に入社した建設関係のビル型枠工事を主な業務とする阿部工務店において働いていた。阿部工務店でのAは、一人前の大工として仕事の能力の点においては他の者(同店の従業員数は、当時25、6名であった。)とかわらず、日当の形で得ていた給与も、昭和62年の実収入額は、他の者とほぼ同額の金208万5750円であった。

 また、仕事外でのAは、ときおり、本件死亡事故現場付近の海へ行き貝などを採ってきては、家族で食べたり隣近所へ配るということを行っており、飲酒については、毎晩2合か3合程度の晩酌をたしなむという程度であった。

(二) 荘内病院に入通院期間中のAの状況
 本件交通事故当日、本件傷害を負ったAは、半昏睡状態で事故後直ちに救急車で荘内病院に搬入され、当日のうちに壊死組織除去及び縫合、左脛骨骨折接合等の緊急手術を受け、その後、原告ら主張のとおりの入通院(入院期間中、脳神経外科への入院は、本件事故日から昭和63年2月23日までであり、その後、同月24日から同年3月16日まで及び平成元年2月20日から同年3月1日までは同病院の整形外科に入院した。)を行って治療を受け、本件後遺障害を残して平成元年6月26日症状が固定した。その経過の詳細は、次のとおりである。

(1) 脳神経外科関係の症状
 本件交通事故当日の意識レベルはⅢであり、当初は会話も困難であったが、三週間後の同月21日には意識レベルはⅠまで改善し、見当識障害も、その後しばらくは自己の名前や年齢等の質問に対し見当違いの答えを繰り返したが、同年2月に入ったころからは、依然つじつまの合わない言動はあるものの、自己の住所や職業を的確に答える等改善がみられ、同月23日に脳神経外科での入院治療は終えることとなり、整形外科での治療のため転科するはこびとなった。その後、脳神経外科へ通院して内服治療を続けた結果、入院期間中(1月22日及び2月22日)には異常と診断された脳波も、昭和63年4月8日の検査では正常なものへと回復した。しかし、自発性の低下、感情の変動、物忘れなどの症状は依然として認められる状態で、同年5月26日施行されたWAIS知能検査では、前示のとおり、動作性IQが64、言語性及び全体IQについては換算できず、課題理解が困難で思考能力も低下し、知的機能の低下が顕著である旨の診断がなされ、平成元年にはいってからも、頭重感、右頭痛とあわせて右のような状況が続いた。


         (中略)



(三) 本件死亡事故当日のAの行動
 本件死亡事故当日は、前日から降っていた雨は朝には止んでおり、日中は日も照っていたが、海中は濁っており水温は摂氏20度ほどであった。前夜に焼酎の水割りを約3合飲んでいたAは、自転車に乗って自宅から約300メートル離れた本件死亡事故の現場まで行き、ウエットスーツを着て、重りのベルト及び足ひれをつけた格好で貝採りを始め、一回は貝を採って陸に上がったが、再び海中に入って行き、心臓麻痺を起こして死亡した。発見されて海中から引き上げられたとき、海水を飲んだ形跡はなかった。

2 右認定の事実によれば、Aは、本件交通事故により本件傷害を負い荘内病院で入通院治療を続けた結果、平成元年6月26日に本件後遺障害を残して症状が固定したが、いまだ本件交通事故以前のような就労が可能な状態ではなかったため、リハビリテーションを兼ねて毎日のように海へ行って貝などを採る生活をしていたところ、本件死亡事故により死亡するに至ったものと認めることができる。

 原告らは、本件死亡事故当時、Aは本件交通事故により一種の神経衰弱状態ないしアルコール依存症に陥っていたために、酒気を帯びた状態で水温摂氏20度の海中に入るという正常な判断能力を有するものであればなさないような行動に出て死亡したものであるから、Aの死亡と本件交通事故との間には相当因果関係があると主張する。なるほど、Aは、本件交通事故以前は何ら問題なく通常の仮枠大工として稼働していたのであり(なお、〈書証番号略〉及び原告X1本人尋問の結果によれば、前示の東京での稼働期間中、Aは、金属バットで頭部を殴られ頭蓋骨骨折等の傷害を負って約1ヵ月間入院しており、その痕跡はCTスキャン上も残存していることが認められるが、前示認定の本件交通事故以前のAの状況に鑑みれば、右受傷は特段の後遺障害を残さず治癒したものと推認するのが相当である。)、本件交通事故に遭遇して本件後遺障害を残すことがなければ、リハビリテーションを行う必要もなく、大工として稼働していたであろうから、平日の日中(本件死亡事故は平日の日中に発生している。)に海へ行って貝を採るなどという行動に出ることはなかったであろうと推認される。

 したがって、本件交通事故がなければ本件死亡事故もなかったという意味での条件関係の存在は否定できないところである。しかしながら、本件交通事故によるAの症状は、荘内病院への入通院を行って治療を続けるうちに次第に回復に向かっていたのであり、前示認定の事実経過に照らすと、原告らが主張するように、本件死亡事故当時、Aが神経衰弱状態ないしアルコール依存症に陥っていたと認めることはできないし、本件死亡事故を招いた貝採り自体、正常な判断能力を欠く者の行った無謀な行動と認めることもできない。そして、他にAの死亡と本件交通事故との間に相当因果関係があることを認めるに足りる証拠はない。

 したがって、Aの死亡と本件交通事故との間に相当因果関係があることを前提とした原告らの主位的請求は理由がないといわなければならないが、本件傷害ないし後遺障害と本件交通事故との間に相当因果関係があることは前示認定より明らかであるから、被告らはこれらに基づく損害の限度において責任を負うものというべきである。

三 続いて請求原因4(二)(Aの損害・予備的請求)について判断する。
1 治療費 金373万0778円

         (中略)

8 後遺障害による逸失利益 金943万1547円
 前示の本件交通事故以前のAの状況からすれば、Aは、本件交通事故に遭わなければ症状固定時の年齢44歳から稼働可能年齢である67歳までの23年間につき、少なくとも昭和62年における同人の実収入額である208万5750円の収入を得ることができたものと推認され、入通院期間中にみられたAの症状及び後遺障害の程度に鑑み、労働能力喪失率を40パーセントとし、生活費の控除率を12パーセントとして、ライプニッツ方式により年5分の割合による中間利息を控除して、Aの逸失利益の本件事故時における現在価格を算定すると、次のとおり右金額となる。
 208万5750円×0.4×(1?0.4×0.3)×(13.7986?0.9523)=9431547.919

 ところで、被告らは、後遺障害による逸失利益を算定するにあたり、Aの死亡の事実を斟酌して、逸失利益は現実の死亡時までのものに限られるべきであると主張する。
 そこでこの点について考えるに、後遺障害の算定は、被害者の経歴、年齢、職業、健康状態その他の具体的事情を考慮した上で、経験則に基づき、その後遺障害が被害者の収入に影響を及ぼすであろうと考えられる期間を想定して行うものであり、右具体的事情の中には不法行為後その損害賠償請求事件の口頭弁論終結時までに生じた事情も含まれうるものというべきである。

 したがって、加害者の不法行為によりその労働能力に影響を及ぼすような後遺障害を残して症状が固定した被害者がその後口頭弁論終結時までに死亡した場合においても、右死亡の事実は被害者の逸失利益の算定にあたり考慮の対象となりうる(後述するように少なくとも生活費控除の点ではこれを考慮するのが相当である。)ものではあるが、右死亡を理由に逸失利益の継続期間を死亡時までとするためには、その死亡が被害者の寿命であったと評価しうるものでなければならず、死因により事実上の推定が働くことがあることはともかく、原則としては、加害者において、当該不法行為がなくとも被害者が右死亡時に確実に死亡したであろうことを立証しなければならないものと解するのが相当であり、また、このように解することが公平の原則にかなうこととなる(なお、その死亡につき第三者が責任を負うべき場合においては、当該第三者は前の不法行為による後遺障害に基づく労働能力の喪失から生じた逸失利益分につき賠償責任を負わないから、被害者が死亡による全損害の完全な賠償を不足なく受けるためには、死亡と前の不法行為との関係を問うことなく、想定される稼働可能期間中の右逸失利益分の賠償を前の不法行為者から受けるべきことは明らかである。)。

 これを本件についてみるに、Aの死亡については、前示のとおり本件事故との相当因果関係は認め難いものの、条件関係的な因果関係は是認しうるものであるから、本件交通事故がなくとも、本件死亡事故によって死亡したものと推認し、これを寿命による死亡と認めることは困難である。したがって、この点に関する被告らの主張は採用できないものといわなければならない。

 もっとも、Aの家族関係からすれば、後遺障害による逸失利益の賠償分のうち3割は、Aの生活費に充てられるべきものであったところ、Aの死亡によりその後その生活費の支出を免れていることは疑いがないから、右認定の労働能力喪失率の3割に相当する割合の控除を行うこととする。なお、前示認定の症状固定日と死亡日とは殆ど間隔がない。

9 慰謝料 金850万円
 前示認定の本件交通事故の態様、Aが本件交通事故により負った傷害の内容及び程度、入通院経過、残存した後遺障害の内容及び程度、その他、家族である原告らに与えたであろう影響等本件に現われた一切の事実を斟酌すれば、本件交通事故によるAの精神的苦痛を慰謝するための金額は、右金額と認めるのが相当である。

10 以上、弁護士費用を除く損害額は、合計金2420万2103円である。

四 填補について
 請求原因5の填補額については当事者間に争いがない。そうすると、原告らが請求しうる弁護士費用を除いた損害額は、金1688万6321円となる。

五 相続について
 〈書証番号略〉によれば、請求原因6(相続)の事実を認めることができる。したがって、弁護士費用を除いた原告らの損害額は、原告X1が金844万3160円、同X2及び同X3が各金422万1580円ということになる(一円未満切拾て)。

六 弁護士費用について
 原告らが本訴訟の提起及び遂行を原告ら代理人らに委任したことは当裁判所に顕著であるところ、本件事案の難易、経過、認容額等を考慮すると、弁護士費用の額は、原告X1が金85万円、同X2及び同X3が各金42万円とするのが相当である。

七 以上により、本訴各請求は、原告X1については金929万3160円、同X2及び同X3については各金464万1580円、並びにAの死亡日である平成元年7月5日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を被告青森定期及び同Y2に対して求め、また、被告青森定期に対する本判決が確定したときに右同額の各金員の各支払を被告日産火災に対して求める限度において理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法89条、92条本文、93条1項を、仮執行の宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官稲葉威雄 裁判官石原稚也 裁判官江原健志)

以上:7,237文字
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R 1-12- 2(月):2019年12月01日発行第258号”弁護士の西遊記”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和元年12月1日発行第258号「弁護士の西遊記」をお届けします。

○西遊記は、子供時代から読んでいましたが、現在一番記憶に残っているのが夏目雅子氏が三蔵法師を演じた40年前TVドラマ堺正章氏主演孫悟空が強烈に印象に残っています。沙悟浄と言えばカッパですが、沙悟浄役の岸部シロー氏の頭にサラが乗っていたような記憶もあります。

○中島敦氏の有名な「山月記」は高校時代習いましたが、「わが西遊記」は知りませんでした。一部が、青空文庫の「悟浄出世」として掲載されています。末尾のつぶやきは「どうもへんだな。どうも腑ふに落ちない。分からないことを強しいて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか? どうも曖昧あいまいだな! あまりみごとな脱皮だっぴではないな! フン、フン、どうも、うまく納得なっとくがいかぬ。とにかく、以前ほど、苦にならなくなったのだけは、ありがたいが……。」とのことです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の西遊記


西遊記は、天竺にお経を取りに行く三蔵法師のお供の孫悟空が大活躍する話です。悟空を始め登場人物は、みんな「キャラが立って」います。「孫悟空ってどんな人?」と聞かれれば、「単細胞だけど、凄く強い猿の妖怪だよ。」と答えられます。猪八戒なら、「怠け者で享楽主義の豚の妖怪」です。

ところが、もう一人のお供の沙悟浄については、どうもあまり特色がないんですね。なんとなく、おまけみたいな感じになっているはずです。中島敦に、そんな沙悟浄を主人公にした「わが西遊記」という小説があります。私の大好きな小説なんです。小説に出て来る沙悟浄は、ノイローゼ患者みたいに、全ての事柄について「いったい何故そうなんだ?」と問いかけずにはいられない。そして、「俺はばかだ」とか、「もうだめだ。俺は」なんて一人でぶつぶつ言ってる危ない人です。(わ、私も仕事が上手くいかないときなど、同じようなことぶつぶつ言ってますけど。。。)

沙悟浄は「何故?」の答えを求めて多くの賢者に弟子入りするけれども満足できない。そんな中で三蔵法師に出会い、天竺までお供をすることになります。ところが沙悟浄は、お供としての仕事をしないで、色々な「考察」ばかりしています。悟空については、「確かに天才だ。これは疑いない。」と、憧れに似た気持ちを持ちます。悟空は、知識も教養も沙悟浄の足元にも及ばない。そもそも、文字さえ読めません。しかし、現実の世界ではスーパーマンなんです。あらゆる動植物が何の役に立つかも、星座から方角や時刻を知ることもできます。「世間に通用する教養を身につけているだけで、現実社会では役に立たない自分とはなんと違うことか。」と、沙悟浄は慨嘆します。

これって、私もよく分かるんです。世の中には、本など一冊も読んでなくても、本当に凄い人がいます。会社の経営でも、「これって、フィリップ・コトラー先生がダメって言っていたのでは?」なんて思いながら私が見ているうちに、どんどん成果が上がっていくんです。沙悟浄は考えてばかりいますから、悟空が強敵と闘っているときにも、感動して見ているだけで、助太刀しようとしません。「一幅の完全な名画の上にさらに拙い筆を加えるのを愧じる気持からである。」だそうです。

「何じゃそれは。仕事しろよ!」と思っちゃう一方、沙悟浄の気持ちも分かります。弁護士として、契約交渉等に同席することがよくあります。法的にも論理的にもメチャクチャなんだけど、妙に迫力と説得力がある依頼者って居るんです。そういうときに、横から「これは法律的にはこういう風に考えて。。。」なんて口を挟むのは遠慮してしまいます。そもそも、私の得意な「法律の言葉」「論理の言葉」が、現実の交渉の場で説得力があるのか疑問に思えます。

天才悟空が従っている、三蔵法師がどういう人かということについても、沙悟浄は考察します。「内なる貴さが外の弱さに包まれているところに、師父の魅力があるのだ」だそうです。実務処理能力には問題があるが、「日本はこうなるべきだ!」という信念を持った創業者と、それを支えるスーパー・セールスマンなんて、今の日本にもいそうですね。

三蔵法師のもとで、沙悟浄の精神は落ち着いていきます。それでも最後まで、あらゆることに対する「何故?」という沙悟浄の疑問は晴れません。「分からないことを強いて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか?」なんて、最後までぶつぶつ言ってます。こんなところが、私だけでなく、多くの人が「沙悟浄ファン」になる理由だと思うのでした。

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◇ 弁護士より一言

学校の課題をやっていた高校生の娘から、「パパの事務所の信念って何?」と聞かれました。思わず、「信念は、『新年おめでとう』くらいかな。」と言ったところ、それを聞いていた妻から「もっとちゃんと答えてよ!」と怒られました。

しかし、よく考えてみると、確固たる信念を持っている人の方が少数派ですね。西遊記では三蔵法師だけです。悟空たちは、三蔵法師に惹かれて、行動を共にしてるに過ぎません。そんな深い思索に基づいての「新年おめでとう!」だったことを、妻にも分かって欲しいのです。ううう。。。
以上:2,276文字
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R 1-12- 1(日):重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた一・二審判決まとめ
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○「重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた高裁判決紹介」の続きで、一審平成29年6月23日札幌地裁判決と二審平成30年6月29日札幌高裁判決の逸失利益定期金賠償に関する部分のまとめです。

○先ず原告の請求です。
請求の趣旨は
(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月○日限り,44万1400円を支払え。
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。
請求の原因は、
逸失利益(定期金賠償)
 原告X1は,本件事故当時4歳であり,本件事故による後遺障害のために労働能力を100%喪失した。そして,平成24年賃金センサスの男子・学歴計・全労働者平均賃金の529万6800円を基礎収入とし,労働能力喪失期間を49年間(18歳から67歳まで)として逸失利益を求める。ただし,逸失利益についても,将来介護費用と同じく,月1回の定期金賠償を求める。なお,支払日は,逸失利益の発生日が平成32年○月○日であるから,毎月○日とする。


○判決内容です。
一審判決主文
(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月(※49年間)まで,毎月○日限り,35万3120円を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。


二審判決主文
(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月22日限り,35万3120円を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記5(1)の金員を支払え。


○一審・二審の逸失利益部分の結論は変わりません。原告の請求毎月44万1400円が35万3120円に減らされたのは、原告の過失割合2割が認定されたため8割相当部分になったためです。定期金での支払総額は、平成24年賃金センサスの男子・学歴計・全労働者平均賃金の529万6800円に49年分を乗じた2億5954万3200円という膨大な金額になり、保険会社は49年間に渡り支払を継続しなければなりません。

○それが一括請求だと
529万6800円×100/100(労働能力喪失率)×18.169(49年のライプニッツ係数)=9623万7559円
となり、定期金での支払総額の37%に減ります。実際、支払をしなければならない保険会社としては、定期金より一括支払の方が遙かに得です。そのため保険会社は逸失利益についての定期金賠償請求を激しく争いますが、札幌高裁も全く同じ結論でした。

○原告が49年生存した場合は、上記の通り、定期金では総額約2億6000万円もの膨大な逸失利益の賠償を受けることができますが、例えば20年後に別な交通事故等で死亡した場合どうなるかについては、平成8年4月25日最高裁判決で、原則として結論に変わりはないとの判断をしていますので、別コンテンツで紹介します。

以上:1,364文字
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R 1-11-30(土):重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた高裁判決紹介
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○「重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた地裁判決紹介」の続きで、その控訴審である平成30年6月29日札幌高裁判決(判タ1457号73頁、判時2420号78頁)関連部分を紹介します。

○逸失利益について定期金賠償を認めた原審判決に対し、保険会社側が後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることは,事故発生時に全ての損害が発生して遅滞に陥ることを前提として,後遺障害逸失利益についていわゆる継続説を採用した平成8年4月25日最高裁判判決に反する等と主張して控訴していましたが、控訴審判決もその結論を是認しました。

○札幌高裁判決は、定期金賠償の方法が問題なく認められる将来介護費用と後遺障害逸失利益とを比較し,両者は,事故発生時にその損害が一定の内容のものとして発生しているという点に加えて,請求権の具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような損害であるという点においても共通し、その性質を考慮すると,後遺障害逸失利益についても定期金賠償の対象になり得て、定期金賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えについて規定する民訴法117条も,その立法趣旨及び立法経過などに照らして,後遺障害逸失利益について定期金賠償が命じられる可能性があることを当然の前提としているものと解すべきとしました。

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主   文
1 被控訴人Y1,被控訴人会社及び被控訴人損保ジャパン日本興亜の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して2293万9806円及びうち900万円に対する平成19年2月3日から,うち1393万9806円に対する平成26年3月13日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記2(1)の金員を支払え。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して335万8000円及びこれに対する平成28年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記3(1)の金員を支払え。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して平成28年11月から控訴人X1の死亡まで,毎月27日限り,下記アないしウの金員を支払え。
 ア 平成28年11月から平成30年3月まで7万3000円
 イ 平成30年4月から平成46年6月まで16万1333円
 ウ 平成46年7月以降19万4666円
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。


(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月22日限り,35万3120円を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記5(1)の金員を支払え。


(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X2に対し,連帯して132万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X2に対し,上記6(1)の金員を支払え。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X3に対し,連帯して132万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X3に対し,上記7(1)の金員を支払え。
8 控訴人X1,控訴人X2及び控訴人X3のその余の請求をいずれも棄却する。
9 控訴人X1,控訴人X2及び控訴人X3の本件各控訴をいずれも棄却する。
10 控訴人X1の当審における拡張請求をいずれも棄却する。
11 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを4分し,その1を控訴人X1,控訴人X2及び控訴人X3の各負担とし,その余を被控訴人Y1,被控訴人会社及び被控訴人損保ジャパン日本興亜の各負担とする。
12 この判決は,2項(1),3項(1),6項(1)及び7項(1)に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判

         (中略)

第2 事案の概要
1 本件は,控訴人X1(平成14年○月○日生(下記本件事故当時4歳。当審口頭弁論終結時15歳))が,道路を横断中に被控訴人Y1の運転する大型貨物自動車(以下「本件車両」という。)に衝突される事故(平成19年2月3日発生。以下「本件事故」という。)により脳挫傷等の傷害を負い,自動車損害賠償保障法施行令別表第二(以下,単に「後遺障害等級」という。)3級相当の高次脳機能障害等の後遺障害が残存し,後遺障害逸失利益等の損害を被り,また,控訴人X1の両親である控訴人X2及び控訴人X3が,本件事故により控訴人X1に重篤な後遺障害が残ったため多大な精神的苦痛を被ったとそれぞれ主張して,被控訴人Y1に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき,本件車両の保有者である被控訴人会社に対しては自動車損害賠償保障法3条に基づいて,連帯して下記(1)ないし(5)の損害の賠償を求め,被控訴人会社との間で本件車両を被保険自動車とする対人賠償責任保険契約を締結していた被控訴人損保ジャパン日本興亜に対しては,保険契約に基づき,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決の確定を条件とする同額の損害の賠償を求めた事案である。

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,控訴人らの請求は,主文2項ないし7項の限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。
 その理由は,以下のとおり補正し,後記2において控訴人X1の当審における拡張請求に対する判断を,後記3において被控訴人らの当審における追加主張に対する判断をそれぞれ加えるほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。

         (中略)

3 被控訴人らの当審における追加主張に対する判断
(1) 控訴人X1の後遺障害について


         (中略)



エ なお,後述のとおり,当審は後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めるので,将来,控訴人X1の後遺障害の程度に関し,控訴人X1の労働能力に影響を及ぼすような顕著な改善が認められたような場合には,被控訴人らにおいて民訴法117条1項が規定する確定判決の変更を求める訴えを提起することも可能であることを付言する。


         (中略)

ウ 控訴人X1の後遺障害逸失利益に係る定期金賠償について
(ア)被控訴人らは,控訴人X1の後遺障害逸失利益に係る定期金賠償に関し,
①後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることは,事故発生時に全ての損害が発生して遅滞に陥ることを前提として,後遺障害逸失利益についていわゆる継続説を採用した最高裁判所平成8年4月25日第一小法廷判決(民集50巻5号1221頁。以下「平成8年最判」という。)と整合しない,
②消滅時効や除斥期間との関係を考慮すると,後遺障害逸失利益に係る損害賠償義務のため50年以上もの間当事者を拘束するのは合理的でない,
③後遺障害逸失利益が問題となる事案について定期金賠償が認められるとすれば,任意保険が付いている交通事故以外の損害賠償請求など他の事案においても定期金賠償の必要性が生じ,紛争の一回的解決の要請にも反する,などと指摘して,後遺障害逸失利益に係る定期金賠償については理論的に認められず,また,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることは相当ではないと主張する。

(イ)まず,後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることに理論的な問題があるかについて検討する。
 将来介護費用については,定期金賠償の方法が問題なく認められるところ,将来介護費用と後遺障害逸失利益とを比較した場合,両者は,事故発生時にその損害が一定の内容のものとして発生しているという点に加えて,請求権の具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような損害であるという点においても共通している(この点において慰謝料などとは本質的に異なっている。)。

 後遺障害逸失利益の上記の性質を考慮すると,後遺障害逸失利益についても定期金賠償の対象になり得るものと解され,定期金賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えについて規定する民訴法117条も,その立法趣旨及び立法経過などに照らして,後遺障害逸失利益について定期金賠償が命じられる可能性があることを当然の前提としているものと解すべきである。

 被控訴人らが指摘する上記①の点については,平成8年最判は,交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより,賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ,他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは,公平の理念に反する結果になることなどを考慮して,かかる実質的な不都合を回避するためにその限度でいわゆる継続説を採用したものに過ぎず,このことにより後遺障害逸失利益についての定期金賠償を否定したものではないと理解することができ,後遺障害逸失利益につき定期金賠償を認めることが平成8年最判と整合しないとはいえない。

 加えて,平成8年最判の後に言い渡された最高裁判所平成8年5月31日第二小法廷判決(民集50巻6号1323頁)は,被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合,事故と死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合は死亡後の生活費を控除することができる旨を判示しており,これは事故発生時に発生した損害がその後の事情によって変更することに他ならないことを考慮すれば,後遺障害逸失利益が定期金賠償の対象となると理解することも可能であると解される。

 また,上記②及び③の点については,それは後遺障害逸失利益に限らず,将来介護費用などを含む定期金賠償一般についていえることであって,特に後遺障害逸失利益について定期金賠償を認める場合に限って問題となるものではなく,個々の事案において,定期金賠償を認めることの相当性を検討すれば十分であると解される。

(ウ)進んで,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることの相当性について検討する。
 これまで述べてきた控訴人X1の年齢や後遺障害の性質や程度,介護状況などに照らすと,本件における控訴人X1の後遺障害逸失利益については,将来の事情変更の可能性が比較的高いものと考えられること,被害者側である控訴人らにおいて定期金賠償によることを強く求めており,これは後遺障害や賃金水準の変化への対応可能性といった定期金賠償の特質を踏まえた正当な理由によるものであると理解することができること,将来介護費用についても長期にわたる定期金賠償が認められており,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めても,被控訴人らの損害賠償債務の支払管理等において特に過重な負担にはならないと考えられることなどの事情を総合考慮すれば,本件においては,後遺障害逸失利益について定期金賠償を認める合理性があり,これを認めるのが相当である。

(エ)したがって,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めた原判決の判断は相当であって,被控訴人らの上記主張は採用できない。

エ その他,被控訴人らが種々指摘する点を考慮しても,上記1の結論を左右するものではない。

5 よって,被控訴人らの控訴に基づき主文2項ないし8項のとおり原判決を一部変更し,控訴人らの本件各控訴及び控訴人X1の当審における拡張請求は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
 札幌高等裁判所第2民事部
 (裁判長裁判官 草野真人 裁判官 下澤良太 裁判官 石田明彦)
以上:5,125文字
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R 1-11-29(金):重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた地裁判決紹介
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○交通事故により重度の後遺障害を負った被害者が、被害者側には過失がないとした上で、後遺障害逸失利益について定期金賠償の方法による支払を求めたのに対し、被害者側に2割の過失があるとする過失相殺をした上で、定期金賠償の方法による支払を命じた平成29年6月23日札幌地裁判決(自保ジャーナル2003号1頁)関連部分を紹介します。


*******************************************

主   文

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して2293万9806円及びうち900万円に対する平成19年2月3日から,うち1393万9806円に対する平成26年3月13日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記1(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して335万8000円及びこれに対する平成28年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記2(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成28年11月から同原告の死亡まで,毎月27日限り,以下の金員を支払え。 
ア 平成28年11月から平成30年3月まで7万3000円 
イ 平成30年4月から平成46年6月まで20万1666円 
ウ 平成46年7月以降24万3333円 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記3(1)の金員を支払え。
 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月○日限り,35万3120円を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。


(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X2に対し,連帯して132万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X2に対し,上記5(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X3に対し,連帯して132万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X3に対し,上記6(1)の金員を支払え。 
7 訴訟費用は,これを4分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。 
8 この判決は,第1項(1),第2項(1),第5項(1)及び第6項(1)に限り,仮に執行することができる。 

事実及び理由 
第1 請求
 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して5389万7352円及びこれに対する平成26年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記1(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して419万7500円及びこれに対する平成28年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記2(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成28年11月から同原告の死亡まで,毎月27日限り,以下の金員を支払え。 
ア 平成28年11月から平成30年3月まで9万1250円 
イ 平成30年4月から平成46年6月まで25万2083円 
ウ 平成46年7月以降30万4167円
 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記3(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月○日限り,44万1400円を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。
 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X2に対し,連帯して220万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X2に対し,上記5(1)の金員を支払え。 

(1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X3に対し,連帯して220万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
(2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X3に対し,上記6(1)の金員を支払え。 

第2 事案の概要 
1 本件は,原告X1(平成14年○月○日生。以下「原告X1」という。)が,道路を横断中に被告Y1(以下「被告Y1」という。)の運転する大型貨物自動車(以下「本件車両」という。)に衝突される事故(以下「本件事故」という。)により脳挫傷等の傷害を負い,自賠責法施行令別表第二(以下,単に「後遺障害等級」という。)3級相当の高次脳機能障害等の後遺障害が残存し,後遺障害逸失利益等の損害を被り,また,原告X1の両親である原告X2(以下「原告X2」という。)及び原告X3(以下「原告X3」という。)が,本件事故により原告X1に重篤な後遺障害が残ったために多大な精神的苦痛を被ったと主張して,被告Y1に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づいて,本件車両の保有者である被告日本ホワイトファーム株式会社(以下「被告会社」という。)に対しては自賠責法3条に基づいて,連帯して以下の損害の賠償を求めるとともに,被告会社との間で本件車両を被保険自動車とする対人賠償責任保険契約を締結している被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下「被告日本興亜」という。)に対しては,保険契約に基づいて,被告Y1又は被告会社に対する判決が確定したときは,同額の損害の賠償を求める事案である。


              (中略)


第3 当裁判所の判断 
1 本件事故態様及び過失割合について
 
(1) 前記前提事実,証拠(甲2,4,5,乙21から25まで,原告X3本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故態様について,以下の事実が認められる。


              (中略)


2 原告X1の損害について 
(1) 原告X1の治療費(292万9060円)については,当事者間に争いがない。


              (中略)



(7) 将来介護費用について 
ア 前記(5)アで認定した症状固定時における原告X1の状況に加え,証拠(甲5,8から11まで,34,乙2,3,19,原告X3本人)によれば,原告X1は,本件事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残存し,平成19年6月11日付けの知能検査(WPPSI)では全IQ79,平成26年1月8日付けの知能検査(WISC-Ⅳ)では全検査69点であり,知的レベルではやや遅れており,年齢が上がるに従って学習に付いていけなくなり,小学校5年生以降は特別支援学級に進学していること,食事や排泄は自立,入浴もほぼ自立しており,1人でバスで移動し,近所への買い物も一応は可能であるが,他方で,易怒性,固執性があり,感情の起伏があって粗暴になることもあり,対人関係の構築は難しく,また,金銭管理も困難であり,原告X3の援助によって通学のための準備ができていることの各事実が認められる。 

 上記認定事実によれば,高次脳機能障害の後遺障害のある原告X1が,将来にわたって完全に自立した生活を送ることができる見込みがあるとは到底認めがたく,日常生活を送る上で他人の看取や支援が必要であると認められるから,将来にわたって介護の必要性があると認めるのが相当である。 

イ そして,上記で認定した原告X1の自立度からすると,身体的介護は不要であるが,生活面全般における支援の必要性に鑑みて,原告X1の介護費用については,原告X1が義務教育期間中は平日においては親族による介護の負担がないが,休日,祝日,春休み,夏休み,冬休みの期間もあってその期間は介護による負担が増加することから,原告X1の義務教育期間は日額3000円(年額109万5000円,月額9万1250円)の介護費用とするのが相当である。また,原告X1が義務教育期間終了後は,原告X2及び原告X3が主として原告X1の生活全般の支援を行っていくことになるが,原告X2及び原告X3はともに有職者であるため,親族及び職業介護が中心となるものと認められるから,職業介護による介護費用を1日1万円,休日(祝日を含む。)は親族介護による費用として日額5000円として算定するのが相当である(年額302万5000円,月額25万2083円)。そして,原告X1の介護を中心的に担う原告X3が67歳に達した以降は,職業介護が中心となるものと推認されるから,日額1万円(年額365万円,月額30万4166円(小数点以下切捨て。以下,同じ。))として算定するのが相当である。 

(8) 逸失利益について 
 原告X1が,本件事故当時4歳であり,本件事故により後遺障害等級3級3号に該当する後遺障害が残存したことは前記認定のとおりであり,前記で認定した原告X1の後遺障害固定時の状況等に鑑みると,原告X1は,本件事故により労働能力を完全に喪失したと認めることができる。そうすると,原告X1の症状固定時(平成24年12月27日)の賃金センサス(男子・学歴計・全労働者平均賃金)529万6800円を基礎収入とし,原告X1が後遺障害逸失利益に関して毎月○日限りの定期金賠償を求めているから,原告X1が就労可能となる年齢に達する日(平成32年○月○日)から原告X1が67歳に達する日(平成81年○月○日)までの間,毎月○日限り,44万1400円が後遺障害逸失利益として支払われるべきである。 

 なお,被告らは,後遺障害逸失利益について定期金による賠償を命じることについて争う。しかし,後遺障害逸失利益について実務上一時金によって運用される例が多いのは,事故前収入,症状固定時の後遺障害による労働能力喪失率及び症状に鑑みた労働能力喪失期間を予測して適切な金額を算定することができ,被害者側も一時金による賠償を望んでいるからであるにすぎず,定期金による賠償を命ずることができ,かつ,被害者側もその賠償方法を望んでいるときには,後遺障害逸失利益について定期金による賠償を命ずることはできるというべきである。ちなみに,民訴法117条は,定期金による賠償を命じた確定判決の基礎となった後遺障害の程度に著しい変更が生じた場合には,その判決の変更を求めることができる旨規定するところ,同条は,後遺障害逸失利益について定期金による賠償が命じられることを当然の前提としている。 

(9) 慰謝料 
ア 入通院慰謝料 
 原告X1は,本件事故から症状固定までの間,入院期間179日間,通院期間約64か月(実通院日数159日)の治療を余儀なくされたものであり,これに伴う入通院慰謝料については,310万円をもって相当と認める。 

イ 後遺障害慰謝料 
 原告X1が,本件事故により,後遺障害等級3級3号に該当する後遺障害が残存したことは前記で説示したとおりであり,後遺障害慰謝料としては1990万円をもって相当と認める。 

(10) 損害の填補及び充当 
 原告X1については,①平成26年3月12日,自賠責保険により2219万円が支払われたこと,②被告日本興亜から治療費として468万5944円が支払われたことは,当事者間に争いがない。 
 そこで,①については法定充当し,②については元本に充当すると,原告X1の損害(ただし,弁護士費用を除く。)は,以下のとおりとなる。 
ア 将来介護費用(ただし,平成25年1月分から平成28年10月分までの介護費用を含む。)及び逸失利益,弁護士費用を除く損害金の合計3918万2457円 
イ 過失相殺後の残額(ア×80%) 3134万5965円 
ウ ②をイに元本充当 2666万0021円 
エ ①をウに法定充当(ウの7年38日間の遅延損害金946万9785円) 1393万9806円 

(11) 弁護士費用 
 弁論の全趣旨によれば,原告X1は,本件事故による損害賠償を求めるために原告ら訴訟代理人弁護士に委任したところ,本件事案の性質,内容及び認容額その他一切の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,900万円をもって相当と認める。 

(12) 小括 
 本件事故による原告X1の損害額は,前記で説示した被害者側の過失を相殺すると,以下のとおりとなる。 
ア 将来介護費用及び逸失利益を除く損害額 
 2293万9806円 

イ 平成25年1月分から平成28年10月分までの介護費用 
 335万8000円 

ウ 将来介護費用(定期金賠償) 
 平成28年11月から原告X1が死亡するまで,毎月27日限り,以下の金額 
(ア) 平成28年11月から平成30年3月まで7万3000円 
(イ) 平成30年4月から平成46年6月まで20万1666円 
(ウ) 平成46年7月以降24万3333円 

エ 逸失利益(定期金賠償) 
 平成32年9月から平成81年8月まで,毎月○日限り,35万3120円 

2 原告X2及び原告X3の損害について 
(1) 前記1(5)及び(7)の認定事実によれば,原告X1は,本件事故により脳挫傷等の重傷を負い,受傷当初は意識障害もあり,意識回復後も原告X2及び原告X3による懸命な介護や援助により身体的には自立するまでには至ったものの,本件事故により受けた脳損傷による高次脳機能障害のために,症状固定後も,引き続き日常生活面において原告X2及び原告X3による声かけや援助が必要となる後遺障害が残存したものであって,原告X1が本件事故当時4歳であってこれからの健全な子どもの成長を期待していた原告X2及び原告X3が本件事故により受けた精神的苦痛は相当なものであったものと認められる。これらの原告X1の事故後の病状,その後の介護の状態に鑑みると,父母である原告X2及び原告X3の慰謝料としては,それぞれ150万円をもって相当と認める。 
 そして,前記で説示した被害者側の過失を相殺すると,本件事故と相当因果関係のある原告X2及び原告X3の慰謝料額は,それぞれ120万円となる。 

(2) また,原告X2及び原告X3は,被告らに対し,本件事故による損害賠償を求めるために,原告ら訴訟代理人弁護士に委任したところ,本件事案の性質,内容及び認容額その他一切の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,それぞれ12万円をもって相当と認める。 

(3) 小括 
 本件事故による原告X2及び原告X3の損害額は,合計でそれぞれ132万円であると認める。 

3 結論 
 以上によれば,原告らの請求は,前記1(12)及び2(3)の限度で理由があり,その余については棄却すべきである。 
 よって,主文のとおり判決する。 
 札幌地方裁判所民事第5部 
 (裁判長裁判官 岡山忠広 裁判官 根本宜之 裁判官 牧野一成) 

 〈以下省略〉
以上:6,888文字
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R 1-11-28(木):対弁護士懲戒請求呼び掛け発信者情報開示請求を認容した高裁判決紹介
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○「対弁護士懲戒請求呼び掛け発信者情報開示請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審である令和元年10月25日大阪高裁判決(ウエストロー・ジャパン)関連部分を紹介します。

○弁護士である控訴人が、インターネット上のブログにおける本件氏名不詳者による各投稿記事は控訴人に対する違法な懲戒請求を呼び掛ける行為ないし名誉毀損行為に該当し、これによって控訴人の人格権等の権利利益が侵害されたことが明らかであると主張して、本件氏名不詳者にサーバホスティング等のサービスを提供した被控訴人会社に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、同社の保有する発信者情報の開示を求めていました。

○ホスティングサービス(サーバホスティングとも)とはサーバの利用者自身でサーバの運営・管理をしなくてもいいように、有料または無料でサーバ機のHDDの記憶スペースや情報処理機能などを利用させるサービスで、サーバの運営・管理はプロバイダや通信事業者が行っているものから、SOHOで個人的に行っているものまであるが、総じて1台のサーバを仕切ってクォータとして複数の利用者に貸し出す形を取る場合が多いと解説されています。

○高裁判決は、本件ブログ上の本件投稿による控訴人に対する懲戒請求の呼び掛け行為の掲載によって控訴人が受忍限度を超える精神的苦痛を被ったと認めるのが相当であり、本件投稿の発信者に対する人格的利益及び名誉権の侵害による不法行為に基づく損害賠償を求めるために発信者情報の開示を求めていることが認められ,発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるととして、発信者情報開示請求を認めました。

***************************************

主   文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
3 訴訟費用は,第1・2審を通じて,被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

 主文同旨

第2 事案の概要等
1 事案の概要


         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 当裁判所の認定した事実は,原判決「事実及び理由」中の第3の1(10頁17行目から14頁23行目まで)に記載のとおりであるから(ただし,原判決14頁23行目の次に改行して,「(4) 平成29年11月10日,本件ブログ上に本件投稿2がされた(甲26)。」を加える。),これを引用する。
 
2 争点2(懲戒請求の呼び掛けを内容とする本件投稿により控訴人の被った精神的苦痛が受忍限度を超えたものと認められるか。)について
 事案に鑑み,争点2以下について,まず判断する。
(1) プロバイダ責任制限法4条1項1号について
 発信者情報の開示請求について,プロバイダ責任制限法4条1項1号は,「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかなとき」に該当することを要件としているところ,プロバイダ責任制限法による発信者情報開示の制度は,発信者情報が発信者のプライバシー及び匿名表現の自由,通信の秘密といった憲法上の権利を根拠として保護されるべき情報であることを前提としつつ,情報の流通によって被害を受けた者の被害救済との利害を調整するものとして,厳格な要件のもとに開示請求を認めたものであること,発信者情報開示請求権は,侵害情報の発信者自体に対してではなく,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(開示関係役務提供者)に対する請求の形で実現されるものであることに鑑みれば,同法4条1項1号にいう「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」とは,侵害情報の流通それ自体によって他人の権利を侵害したということが明らかな場合をいうものと解するのが相当であり,また,「権利が侵害されたことが明らか」とは,権利の侵害がされたことが明白であるという趣旨であり,不法行為等の成立を阻却する事由の存在を窺わせるような事情が存在しないことまでを意味するものと解するのが相当である(甲24)。

(2) 懲戒請求を呼び掛ける行為と「情報の流通によって」について
 ところで,一般に特定の弁護士につき懲戒請求をするように呼び掛ける行為に応じて懲戒請求がされ,これによって当該弁護士の人格的利益が侵害され,当該弁護士が精神的苦痛を被ることもあるところ,呼び掛けに応じて実際にされた懲戒請求が違法な懲戒請求として不法行為を構成するのとは別個に,当該呼び掛け行為自体が不法行為を構成する場合もあるものと解され,このような場合には,呼び掛け行為自体によって権利の侵害が生じていると評価することができる。すなわち,このような場合には,懲戒請求の呼び掛けを内容とする情報の流通自体によって,つまり,「情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)権利の侵害が生じているものと解される。

(3) 懲戒請求を呼び掛ける行為と「権利が侵害されたことが明らかなとき」について
 そして,特定の弁護士につき懲戒請求をするように呼び掛ける行為が不法行為法上違法な権利侵害行為といえるかについては,懲戒請求を呼び掛けられた弁護士の被った精神的苦痛という人格的利益と懲戒請求をするように呼び掛ける表現行為との調整の問題であることから,当該呼び掛け行為の趣旨,態様,対象者の社会的立場及び対象者が被った負担の程度等を総合考慮し,対象者の被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるといえる場合には,そのような呼び掛け行為は不法行為法上違法の評価を受けると解するのが相当であり(最高裁判所平成21年(受)第1905号・第1906号,平成23年7月15日第二小法廷判決,民集65巻5号2362頁参照),このような場合は,対象者の「権利が侵害されたことが明らかなとき」に当たると解される。

(4) 本件投稿の発信自体によって控訴人の権利が侵害されたことが明らかといえるかについて
ア そこで,弁護士である控訴人に対する懲戒請求を呼び掛ける本件投稿の発信自体によって控訴人に権利の侵害が生じていることが明らかであると評価できるかについて検討するに,本件投稿の内容は,控訴人が,本件会長声明に賛同し,その活動を推進しているというものであるところ,朝鮮学校に対する補助金の交付の適否に関して様々な見解が述べられていることは公知であるが,少なくとも,朝鮮学校に対する補助金の支給に向けた活動をすること一般が憲法及び何らかの法令に反するものではなく,弁護士としての品位を損なう行為でもないことは明らかであって,同活動に関する本件会長声明及びこれに賛同する行為についても,表現行為の一環として,同様に法令や弁護士倫理に反するものでないことは明らかである。

イ それにもかかわらず,前記1で引用した原判決の認定事実(3)アないしエのとおり,平成29年6月15日,a弁護士会に対し,本件投稿に掲載された本件ひな形に氏名が記載された控訴人を含む10名の弁護士につき,総勢190名から懲戒請求書が送付され,これらには本件ひな形と同一の懲戒事由が記載されており,その後も,控訴人についての同内容の懲戒請求が相次ぎ,同年10月頃までに少なくとも1000名を超える請求者から,a弁護士会に対し,懲戒請求書の送付があり,同年9月2日に控訴人がツイッターに懲戒請求者らに向けた記事を掲載すると,同月11日には,a弁護士会に対し,控訴人を対象弁護士とする本件投稿と同一の懲戒事由による懲戒請求が更に100件ほど申し立てられ,本件投稿が本件ブログに掲載された後,平成30年5月頃までに,控訴人について,a弁護士会に対して送付された懲戒請求書の総数は約3000件に及んだことが認められ,本件投稿による呼び掛けに呼応した多数の懲戒請求により控訴人が多大な精神的苦痛を被ったことは否定することができない。

ウ また,前記第2の2で補正の上引用した原判決の前提事実(2)ア及びイの本件投稿の内容に照らすと,本件投稿の趣旨は,朝鮮学校に対する補助金の支給に反対する自己の考えを踏まえて,朝鮮学校に対する補助金の支給を求める本件会長声明に賛同し,その活動を推進する行為が違法行為ないし犯罪行為であり,懲戒事由に当たるものとして,控訴人に対する懲戒請求を呼び掛けるものであり,不特定多数の者に懲戒請求を呼び掛ける行為により自己の考えと反対の立場の主張や表現行為それ自体を封じ込める意図が窺われるものである。

エ そして,前記第2の2で補正の上引用した原判決の前提事実(2)ア及びイの本件投稿の内容に照らすと,本件投稿の態様も,朝鮮学校に対する補助金の支給を求める本件会長声明に賛同し,その活動を推進する行為が違法行為ないし犯罪行為であるという懲戒事由が記載された控訴人に対する懲戒請求書のひな形(本件ひな形)の形式を掲載し,これに懲戒請求者の氏名・住所等を書き込めば,簡単に控訴人に対する懲戒請求書が作成できる体裁のものであり,控訴人に対する懲戒請求を強く誘引する性質のものというべきである。

 また,前記1で引用した原判決第3の1(1)イのとおり,本件投稿者は,本件投稿以前から本件ブログへの投稿を通じて,在日韓国人や同朝鮮人に関する問題等を取り上げ,これらについて繰り返し多数の意見を表明し,本件ブログの投稿記事をまとめた複数の書籍が出版されていることや,前記イのとおり,実際に本件投稿者の呼び掛けに応じて多数の懲戒請求がされたことからすると,本件投稿の社会的影響は,本件投稿者の意見に同調する者を中心に少なからずあったと認めるのが相当である。

 これらのことを総合すると,控訴人に対する懲戒請求が最終的には本件投稿における呼び掛けに応じた各懲戒請求者の判断によるものであるとしても,控訴人に対する懲戒請求を呼び掛けた本件投稿の発信自体が,本件投稿に挙げられた本件ひな形どおりの多数の懲戒請求がされたことの不可欠かつ重要な原因になったというべきである。

オ 以上で認定・説示した本件投稿における懲戒請求の呼び掛け行為の趣旨,態様,対象者の社会的地位,本件投稿の発信によってもたらされた結果等の事情を総合すれば,控訴人が弁護士であり,その資格や使命に鑑みて,様々な意見や批判を受けるべき社会的立場にあるとしても,本件投稿の発信自体によって控訴人の被った精神的苦痛は社会通念上受忍すべき限度を超えたものであると評価することができるから,控訴人は,本件投稿の発信自体によって権利が侵害されたことが明らかであると認めることができる

(5) 違法性阻却事由について
 前記(4)のとおり,本件投稿の発信自体によって控訴人の被った精神的苦痛は社会通念上受忍すべき限度を超えたものであるところ,本件全証拠を検討しても,本件投稿に関する違法性阻却事由の存在を窺わせるような事情は見当たらない。

(6) 被控訴人の主張について
ア これに対し,被控訴人は,発信者情報が発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密に深く結びついた情報であることに照らし,その開示については慎重な取扱いが求められ,プロバイダ責任制限法4条1項1号の要件についても厳格に解釈すべきであり,同号が「侵害情報の流通によって」,「権利が侵害された」と規定していることに照らし,同号は掲載されている情報自体が他者の名誉権等の権利を侵害するものであることが明白な場合を予定していると解釈するのが自然である旨主張する。

イ しかし,「侵害情報の流通によって」とは,権利の侵害が情報の流通自体により生じたものであることを意味するにすぎず,情報自体が開示請求者の権利を侵害することが明らかな内容であるものに限定されるものではなく,権利の侵害が明らかであるか否かは,裁判所が当該情報自体のほか,それ以外の当事者の主張した事実をも踏まえつつ,証拠及び経験則から認定した事実に基づき,違法性阻却事由の不存在などを含めて,総合判断した結果,その情報の流通自体によって開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであると認められる場合も含まれると解するのが相当である。

ウ 確かに,開示関係役務提供者にとっては,投稿された情報以外に開示すべきか否かを判断する材料が乏しく,当該情報自体が開示請求者の権利を侵害することが明らかなものであるか否かによって,任意の開示に応じるか否かを判断せざるを得ないという面があることは否定することができない。

エ しかしながら,プロバイダ責任制限法による発信者情報開示の制度は,発信された情報による被害の拡大防止のために緊急の判断や処理が求められる制度というより,むしろ,同法4条1項2号が,開示を受けるべき正当な理由として,開示請求者の損害賠償請求権の行使のため必要である場合を挙げていることからしても,情報の流通によって被害を受けた者の被害救済と情報を発信した者の保護との間の権利調整という事後的,総合的判断を求められる制度であるから,開示関係役務提供者の判断の容易性の要請は,必ずしも最優先に考慮すべきことにはならないと考えられる。

オ また,プロバイダ責任制限法が,発信者情報を開示すべきであるのに開示されなかったことにより開示請求者が損害を被った場合について,同法4条4項本文で,開示しないことが故意又は重大な過失がある場合でなければ開示関係役務提供者は賠償の責めに任じない旨を規定していることからすると,同法は,発信者情報が開示されるべきであるのに,開示関係役務提供者において過失なく開示されない場合,すなわち,発信情報自体を見ても,それだけでは通常人において開示請求者の権利を侵害することが明らかであるとは判断することができない場合が存在することを想定しているというべきであり,前記イのとおり解釈することは,同項の規定とも整合するというべきである。

カ したがって,被控訴人の主張は採用することができない。

(7) 以上のとおり,本件ブログ上の本件投稿による控訴人に対する懲戒請求の呼び掛け行為の掲載によって控訴人が受忍限度を超える精神的苦痛を被ったと認めるのが相当である。

(8) したがって,本件投稿による控訴人の人格的利益の侵害については,「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)に該当するというべきである。

3 争点3(本件投稿及び本件投稿2が控訴人に対する違法な名誉毀損に当たるか。)について
(1) 本件投稿について


         (中略)

 しかし,朝鮮学校に対する補助金の支給の適否について,様々な見解が述べられていることは公知であるが,朝鮮学校に対する補助金の支給を要求することやその活動を推進する行為の相当性と適法性の区別について明確に意識することが一般に浸透しているとは限らない状況にあり,その状況下で,本件投稿の意見論評は,同補助金の支給を要求する本件会長声明が違法であり,控訴人が違法な本件会長声明に賛同し,その活動を推進する行為が確信的犯罪行為であり,これが懲戒事由に該当すると断言しているものである。

 そして,弁護士の懲戒処分は,弁護士法又は所属弁護士会若しくは日弁連の会則に違反し,所属弁護士会の秩序又は信用を害し,その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったときに出されるものである(弁護士法56条1項)。

 以上に照らすと,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として,本件投稿を読んだ場合,本件投稿によって摘示された事実及びこれを前提とする意見の表明によって,一般人においては,控訴人が違法行為ないし犯罪行為に加担したり,懲戒処分に値する非違行為を行ったりしたという否定的な印象を抱くものというべきである。

         (中略)

オ 以上に照らすと,本件ブログ上の本件投稿により控訴人の名誉権が侵害されたと認めるのが相当である。

(2) したがって,本件投稿による控訴人の名誉権の侵害については,「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)に該当するというべきである。

4 争点4(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について
 発信者情報の開示請求について,プロバイダ責任制限法4条1項2号は,「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使に必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」に該当することを要件としている。そして,弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件投稿の発信者に対する人格的利益及び名誉権の侵害による不法行為に基づく損害賠償を求めるために発信者情報の開示を求めていることが認められる。したがって,控訴人には,発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるというべきである。

5 結論
 以上の次第で,争点1並びに争点3及び4のうち本件投稿2の点について判断するまでもなく,控訴人の被控訴人に対する別紙発信者情報目録記載の各情報の開示請求は理由があるから認容すべきところ,これを棄却した原判決は失当である。
 よって,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消した上,控訴人の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
 大阪高等裁判所第5民事部
 (裁判長裁判官 本多俊雄 裁判官 木太伸広 裁判官 河本寿一)
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