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会社所有建物工場抵当権が個人所有機械も及ぶとした最高裁判決全文紹介

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平成28年 2月29日:初稿
○「工場抵当権対象動産搬出後抵当権者に現状回復請求権を認めた判例紹介」に引き続き、工場抵当法に関する裁判例を紹介します。
今回は、会社代表取締役が、担保貸主兼保証人として、会社の債務担保のため、個人所有の建物と、同建物内備付の会社所有にかかる機械につき設定した工場抵当法2条による根抵当権の効力は右機械に及ぶとした昭和37年5月10日最高裁判決(裁判集民60号589頁、訟月8巻5号956頁)全文を紹介します。

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主  文
原判決を破棄する。
本件控訴を棄却する。
控訴費用および上告費用は被上告人の負担とする。

理  由
 上告代理人○○○○の上告理由第三点について。
 工場抵当法2条は、同条により抵当権の効力の及ぶ機械、器具は、抵当権の設定された土地または建物と所有者を一にするものたることを要する趣旨であることは、原判示のとおりである。

 ところで原判決の確定したところによれば、訴外株式会社Aは昭和27年2月22日上告銀行との間に元本極度額を金150万円とする手形取引契約を結び、その際右債務につき同訴外会社所有の原判決添付目録記載の機械、器具のみを担保に差入れようとしたが、上告銀行から工場抵当でなければ特別の融資はできないといわれ、右訴外会社の代表取締役である訴外Bはその個人所有の原判決添付目録記載の各建物と同建物内に備付けてある右訴外会社所有の右機械、器具に工場抵当法2条による根抵当権を設定することを承諾し、右訴外会社と上告銀行間の手形取引根抵当権設定契約に基づき、右訴外Bは、担保貸主兼保証人として上告銀行と右訴外会社の債務担保のため右建物ならびに機械、器具について前記法条による根抵当権設定契約を締結したものであるというのである。

 しからば、かかる事実関係の下においては、本件不動産および動産たる機械、器具を一体として根抵当権を設定されたものであり、そして原判決添付目録記載の各建物につき、根抵当権設定登記がなされ、その際、工場抵当法3条による本件機械、器具の目録も提出されたのであるから、本件建物および機械、器具は一体として同法2条の適用をうけ、本件根抵当権の効力は右機械、器具に及ぶものと解するを相当とする。されば原判決は、この点において工場抵当法2条の解釈、適用につき誤あり、被上告人のした審査決定は違法であつて、所論は理由があるといわなければならない。

 よつて、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決はこれを破棄すべきものであり、そして本件はこの段階において自判するに熟するものと認められるから、被上告人がした審査決定が違法であることは前述のとおりであり、第一審判決の理由は上述したところと異るけれども、本件審査決定を取消した同判決は結局正当たるに帰するので、被上告人がした本件控訴を棄却するものとし、民訴408条、384条、96条および89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判官 入江俊郎 斎藤悠輔 下飯坂潤夫 高木常七)

上告代理人○○○○の上告理由
第一点

 名古屋高等裁判所(以下第二審と略称する)は上告人及被上告人間の同庁昭和35年(ネ)第395号国税徴収法の差押処分取消控訴事件につき昭和35年8月3日言渡した判決理由に於て上告人の第一審及第二審の主張を斥け被上告人の主張をとつた理由として次ぎのように説明判断している。(判決書5枚目裏9行目)

 「ところが成立に争のない乙第1号証の1ないし4、同第2ないし第4号証、当審証人B、原審証人加藤正二の各証言を総合すると本件抵当権設定に際し被控訴銀行の事務担当者も訴外株式会社Aの代表者Bその他の関係者はいずれも工場抵当法第3条の工場抵当権を設定するにつき当該工場建物と機械器具とが同一の所有者に帰属していることを必要とするかどうかについて検討した形跡はなく前記のとうり本件建物は右B個人の機械器具は右訴外会社のそれぞれ別個の所有ではあるが同会社は個人会社のようなものであるから所有関係をそのままにしても問題はないと考え右機械類を一たんB個人に譲渡するようなことには思い及ばずしてそのまま前記のとおり抵当権設定の契約ならびに登記をなすに至つたものでその後も本件機械器具は右訴外会社の所有であつたことが認められ、右認定にそわない当審証人望月良之助の証言は信用できず他に右認定を左右するに足る証拠はない」
 以上のように事実を認定しているのであるが、このような認定は本件判決の理由に齟齬があるもので民事訴訟法第395条第6号にいう法令に違反しているものである。

 上告人が右の如く主張する理由は第二審は右判決の冒頭に於て次ぎのように当事者間に争いのない事実として認定しているのである。(理由第5行目より)
「訴外株式会社Aは昭和27年2月22日被控訴人との間に元本極度額150万円とする手形取引契約を結びその際右債務につき同訴外会社所有の別紙目録記載の機械器具のみを担保に差入れようとしたが被控訴人から工場抵当でなければ特別の融資はできないと云われ、右訴外会社の代表取締役である訴外Bはその個人所有の別紙目録記載の各建物と同建物内に備付けてある右訴外会社所有の右機械器具に工場抵当法第2条による根抵当権を設定することを承諾し右訴外会社と被控訴人間の手形取引根抵当権設定契約に基き右訴外Bは担保貸主兼保証人として被控訴人と右訴外会社の債務担保のため右各建物ならびに機械器具について工場抵当法第2条による根抵当権設定契約を締結したものであることが認められ(右各建物及機械器具の所有関係は当事者間に争がない)同月26日右各建物につきその旨根抵当権設定登記手続(工場抵当法第3条による本件機械器具の目録提出)のなされたことは当事者間に争がなく云々」

 以上のように事実を認定しているのである、即ち本件根抵当権の目的物件である建物及機械器具は訴外B個人所有として登記手続が為されている事実を認定しているものである。
 右のように判決理由の前段に事実を認定して置きながら前示の如く後に於て右建物並機械器具が両方共右訴外B個人のものとして本件根抵当権設定登記が為されたものでないと認定することは理由に齟齬があると謂はねばならない。

第二点
 仮りに前述の上告人の主張が理由ないとして第二審は上告人の主張を判断しない違法がある、この事は判決に重大な影響がある。第二審は前示のような理由で上告人の請求を棄却したのであるが上告人は本件機械器具を訴外会社より訴外Bに信託譲渡するについては明示の意思表示は必要ではなく暗黙のものでも差支ないと主張するもので第二審も上告人(被控訴人)の判決事実摘示第2項に之を明記している。

 然るに判決はその理由に於てこの点について明確なる判断をしていないのである、凡そ所謂個人会社に於ては法律行為について暗黙の意思表示の為さるることは実例が少なくないことであつて本件に於ても少なくとも信託譲渡を為すにつき暗黙の意思表示が為されたのである、これは頗る重要事項であつて第二審はこの点について明確に判断を明示すべきである、成程第二審は前示のように契約当事者が建物と機械器具が同一所有者である必要はないと思つていたと事実を認定しているから消極的に暗黙の意思表示もなかつたと判定をくだしているかにみえるも甲第1号証の契約に訴外Bが担保貸主並連帯保証人と記載しあり且つ根抵当権設定登記手続に於ては明らかに建物並機械器具とも訴外人個人の所有として為されている事実があるのであるから第二審は右暗黙の意思表示について明確な判断を示すべきものである、この点からみて理由不備の判決である。

第三点
 第二審本件判決は工場抵当法第2条の解釈を誤つた違法がある、即ち右判決は本件の如く工場抵当法第2条に基き設定する場合は土地又は建物の所有者と該土地又は建物に備付けた機械、器具の所有者は同一人でなければならないとの見解を堅持している。

 然しながら工場抵当法第2条には右のように明記はしてない、唯々工場の土地又は建物に抵当権が設定されたときは抵当権の効力は該土地又は建物に備付けられた機械、器具にも及ぶ旨を規定しているのである。

 抑々工場低当法は通常の不動産を目的とする抵当権の効力よりもその効力の及ぶ範囲を拡大せしめて工場施設を一体として担保に供する途を開いたものである、右の趣旨から考ゆれば本件の如く個人会社のような場合に社長個人所有の不動産と会社所有の動産を一体として工場抵当法に依る抵当権の目的とする際に仮令右の如く所有者を異にしても機械器具の動産の所有者が該動産を工場抵当法に依る抵当権の目的として提供することを承認した場合は結局該動産に抵当権の効力が及ぶことを承認しているものであるから右動産を工場抵当法の抵当権の目的物として差支ないと解すべきである。即ち工場抵当法は右の如き場合を排斥しているものと解釈すべきではない。斯くてこそ工場抵当法はその効用を顕わすものである。

 されば第二審が工場抵当法第2条を頗る狭義に解釈して不動産と動産の所有者は同一人であることを要すると解釈するはその解釈を誤つたものと謂わねばならない。

第四点
 さて前述の上告人の工場抵当法第2条の解釈は拡張解釈に過ぎるとし矢張り不動産と動産の所有者は同一人でなければならないとしてもそれは抵当権設定時に両者の所有権が同一人に帰属していればよいのである第二審としてもこの点には異存あるまい。

 そこでこの不動産の所有者と同一人であることは抵当権設定の目的範囲内で所有権を信託的に移転した場合でも差支ないか、この点について第二審判決は触れていないが之は何等差支ないと解すべきである。

 唯し問題は右信託譲渡は明確な明示の意思表示又は明認出来る暗黙の意思表示に基かなければならないか。或は看做すとの推定でも差支ないかの点である。
 第二審の判決に依れば当事者の意思を擬制することは適当でないとの見解をとつている。

 然しながら本件の如く抵当権設定当事者は明らかに工場抵当法第2条に依る根抵当権の設定を合意し建物に抵当権を設定すると共に工場抵当法第3条の目録提出をし之が登記も完了している場合は特別な反対の意思表示のない限り当然工場抵当法の規定し予期している不動産と動産の所有者は同一人であることを要するとの趣旨に当事者は従いその異つていた所有権を同一人に帰属せしめたものと看做して抵当権者を保護すべきである、具体的に本件について云うならば訴外株式会社Aはその所有動産の所有権を工場建物の所有者である訴外Bに根抵当権の目的の範囲で信託的に譲渡したものと看做すべきである。而して斯くの如く擬制しても第三者に不測の損害を蒙らしめる恐れは全然存しない、蓋し第3条の目録として登記もしてあるからである。

第五点
 上告人は第一審、第二審を通じ本件建物に根低当権の登記が為され且つ機械器具についても工場抵当法第3条に基きその目録を提出しその登記も完了している旨を主張し被上告人も之を争つていない。

 そこで上告人は右抵当権と共に第3条の目的として登記された本件機械器具は該抵当権の目的物件として第三者に対抗出来る、即ち上告人は被上告人に対し右動産は抵当権の目的物件であるとして対抗出来るのである。
 されば法律上被上告人は先づ右動産は抵当権の目的物件ではないとして第3条の目録の変更登記を訴外株式会社Aに代位して為して第3条の目録から本件機械器具をはずして然る後差押えを為すべきである。

 この見地からして形式的にせよ第3条の目録の提出がありその登記も為されている物件に対し被上告人の本件の如き滞納処分に依る差押えは法律上許容すべきものではない。
 右被上告人の本件動産に対する差押えが法律上不当であることは本件上告人の低当権が第3条の目録も共に適法有効に設定され且つ登記されているか否かを判断する前に判断さるべき問題である。第二審はこの点について一考も与えず抵当権の目的物件内に本件機械器具が入つているか否かを判断して上告人の本訴請求を棄却したのである。之れは明らかに法律の適用を誤つたものであつてこの点からも破棄さるべき判決である。
 以上
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