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隣の土地と自分の土地の公図地番取違いの場合の地番訂正方法-関係判例4

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平成27年 8月11日:初稿
○「隣の土地と自分の土地の公図地番取違いの場合の地番訂正方法-関係判例3」の続きで、今回は、公図(土地台帳附属地図)訂正申出手続協力を求める請求を認めた昭和37年3月15日宇都宮地裁判決(下級裁判所民事裁判例集13巻3号422頁)を紹介します。

○土地所有者が土地台帳付属地図(公図)の地番の記載の誤りにつき、利害関係人を相手方として地番訂正の申告に協力すべきことを求める訴えについて、土地台帳附属地図(公図)の地番の記載は、地番の所在や形状に関していわゆる公定力を有するものではないけれども、土地所有権の範囲を証明すべき公の資料であつて、その記載のいかんによつて私人間の権利義務について無用の紛争をひき起す虞があるから、地番の記載に誤謬のあるときは、当該地番の所有者は、利害関係人に対し、所轄登記所に対する地番訂正の申告に協力すべきことを請求しうるとして、これを認めました。

○しかし、「公図の研究5訂版」410頁で、著者藤原勇喜氏は、公図の機能は、宇都宮地裁判示のとおりだが、公図に誤りがあるときは、登記官が職権でも訂正することができるので、相手方が申出手続に加わっていれば訂正が円滑に行われるのが実際だとしても、これだけで相手方に利害関係人として公図訂正協力義務まで認めることには必ずしもならないとして、「隣の土地と自分の土地の公図地番取違いの場合の地番訂正方法-関係判例3」で紹介した昭和49年2月13日東京地裁判決を支持しています。

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主  文
(一) 別紙第一図面中2・3・4・5・6・7・7イ・7ロ・7ハ・7ニ・8・9・10・12・13・2ハ・2ロ・2イ・2の各点を順次直線で結んだ範囲の山林実測一町六反一畝七歩が原告の所有であることを確認する。
(二) 被告は、原告と連署して、宇都宮地方法務局矢板出張所に対して、矢板市下伊佐野字下堂地の地租改正山岳地引見取図につき、地図地番の下堂地574番を575番に、同575番を574番に、錯誤による地番訂正の申告をせよ。
(三) 原告のその余の請求を棄却する。
(四) 訴訟費用は、被告の負担とする。

事  実
(請求の趣旨及び原因)
 原告訴訟代理人は、主文第1、2項及び第四項と同旨並びに「別紙第一図面中1・2・2イ・2ロ・2ハ・13・18・21・22・1の各点を順次直線で結んだ範囲の山林実測三反五畝24歩が被告の所有であることを確認する。」との判決を求め、請求の原因として次のとおり述べた。

(中略)

理  由
 被告が、矢板市下伊佐野字下堂地574番山林三反八畝15歩につき、昭和34年3月17日宇都宮地方裁判所大田原支部の競落許可決定を受け、現にその登記簿上の所有者であることは、当事者間に争いがなく、また、成立に争いのない甲第四号証及び原告本人の供述によれば、原告は、昭和34年12月25日、滝田定雄及び滝田敏雄から同市同字575番山林九反一畝18歩を買受け、現にその登記簿上の所有者であることが認められる。そして、本件においては、原告及び被告はそれぞれ別紙第一図面の甲山林が自己所有の右各地番の山林であると主張するものであるから、甲山林が果して575番であるかそれとも574番であるかについて考えよう。

 まず、公図について検討すると、宇都宮地方法務局の当裁判所に対する調査嘱託の回答によれば、同法務局矢板出張所の保管にかかる「下野国塩谷郡下伊佐野村地租改正山岳地引見取図」と題する図面が右地域の土地台帳附属地図として使用されているのであることが明らかであるが(以下右図面を本件公図という。)、図面の検証の結果によれば、本件公図の係争部分の記載は別紙第二図面のとおりであつて、公図上の574番と575番は隣接して東西に位置していることが認められる。そして、これを現地にあてはめると、右両地番の公図と現地とはその形状・範囲において相当の差異があるけれども、その方位・位置の点から見て、公図上の574番が甲山林に、公図上の575番が別紙第一図面の乙山林にそれぞれ該当するものであることは、証人山口健太(第一、2回)、同福田清次(第1、2回)、同滝田定雄、同渡辺善哉、同関谷嘉1、同渡辺栄士並びに原告及び被告各本人の各供述の一致して認めるところであり、現地の検証の結果によつても、これを肯定することができる。

 そうすれば、本件公図が各地番の位置を正確に図示しているならば、甲山林は574番、乙山林は575番ということになるが、一般に明治6年の地租改正当時作成された公図は、土地の物理的状況を表示する点において、必ずしも信頼度が高いものとはいえず、往々にして土地の形状・範囲等が極めて杜撰な例があることは、当裁判所に顕著な事実であつて、地図地番の記載についても誤謬がないとは断定しきれないものがある。

 現に本件公図はその表題に徴し地租改正当時作成されたものと推認されるが、この場合、成立に争いのない甲第2、3号証によれば、575番と574番の公簿上の地積は、明治31年当時から現在の地積と同じく九反一畝18歩と三反八畝15歩であることが認められ、前者が後者の約2・2倍になつているのに、本件公図によれば、逆に575番の範囲が574番の2分の1以下になつており、格別本件公図の他の地番相互間にも同様の関係が認められるというわけではないから、右地積関係から考えても、原告主張のように、公図上の575番と574番の記載が逆ではないかとの疑問の生ずることもあながち根拠がないものとはいえない。

 そればかりでなく、鑑定人鈴木泰蔵の鑑定の結果によれば、甲山林と乙山林の実測面積は、それぞれ一町六反一畝七歩と三反五畝24歩と認められるから、これを右各地番の公簿上の地積と対照して見ると、面積の出入はあるけれども、甲山林を575番、乙山林を574番と考えた方が、その逆の場合と比較して、面積の割合においてはるかに適わしいことは、何人の目にも明らかである。(もつとも、図面の検証の結果によれば、本件公図上、571番、572番、573番、574番、575番の連続した地番の山林が順次接続して一巡していることが認められ、従つて、もし575番と574番の記載が逆であるとすれば、右一連の地番は順次に接続しないで二列に並ぶことになるけれども、一連の地番の配列に一定の法則があるものとも考えられないから、本件公図上の地番の配列からその記載に誤りがないとの結論を導くことはできない。)

 進んで、成立に争いのない甲第4、5号証及び乙第1、2号証、証人山口健太(第1、2回)、同福田清次(第1、2回)、同滝田定雄、同渡辺善哉、同中村武達、同渡辺正二、同関谷嘉1、及び同渡辺栄士の各証言、原告本人の供述並びに現地の検証の結果を綜合すれば、次のような事実が認められる。すなわち、
(一) 575番の山林は、明治44年当時渡辺寅次郎の所有名義であつたが、大正12年5月売買により滝田定及び滝田定雄の共有となり、その後滝田敏雄が滝田定の持分を家督相続し、昭和34年12月売買により原告の名義となつたものであり、574番の山林は、明治25年2月格和又三郎から売買により佐々木甚平の所有名義となり、大正11年3月売買により渡辺栄次郎に移転し、その後家督相続や売買を経て、昭和27年11月田代ヒロ及び田代守仁の共有となり、昭和29年12月売買により渡辺正二の名義となつたものであるが、その間少くとも大正12年ごろから渡辺正二の取得した昭和29年当時までの間は、右両地番の所有名義人はもとよりその近隣関係者において、甲山林が575番であり、乙山林が574番であることに関しては、疑問を挾んだ者がなく、右両地番の境界線についても、境界木のしらびが点在していて争いがなかつた。被告の前主であり兄である渡辺正二自身、田代ヒロらから574番の山林を買受けるに際して、現地について乙山林を指示されており、渡辺正二はその後に森林組合から助成金の交付を受けて乙山林の一部に植林をした事実さえあつた。

(二) ところが、時期は明確でないが、渡辺正二が574番の所有名義人となつた後、同人の父である渡辺善哉が、部落保管の図面等を見て、公図上は甲山林が574番、乙山林が575番となつていることを発見したのであるが、同人は、同人の娘婿の船山岩雄から金5万円を借受けたとして、その債務を担保するため長男の渡辺正二所有の574番の山林に抵当権を設定し、船山は、昭和33年宇都宮地方裁判所大田原支部に対して、右抵当権に基き任意競売の申立をし、昭和34年3月17日渡辺善哉の次男の被告が金15万6700円で競落して競落許可決定を受けた。

(三) そして、昭和34年5月15日、前記裁判所の執行吏職務代行中村裁判所書記官が、574番の山林に対する引渡命令の執行のため現地に赴いたが、右山林が現地のどの範囲に該当するか知らなかつたので、競落人の被告に対して公図の提出と現地を案内する証人の立会を求めたところ、被告の依頼によつて、渡辺栄士及び関谷嘉一が立会人となり、その3名が中村書記官を甲山林に案内し、従来甲山林が575番、乙山林が574番とされていたことは一切默秘して、甲山林を574番であると指示したため、中村書記官としては、立会証人らの指示も一致し、甲山林が公図上の574番の形状に相似しているので、これを574番と考えて被告に引渡す旨の手続をとつた。

 証人渡辺善哉及び同渡辺正二の各証言並びに被告本人の供述中以上の認定に反する部分は、採用することができない。また、甲第五号証(574番の登記簿謄本)には、前記競売手続が強制競売によるものであるごとき記載があるが、乙第1、2号証と対比すると、右記載は何らかの手続上の錯誤によるものと推測される。その他、以上の認定をくつがえすべき証拠はない。

 そこで、以上認定の事実から考えると、父が娘婿に対する債務のために長男所有の山林に抵当権を設定し、その競売手続で次男が競落するという一連の所為それ自体、甚だしく作為的に感じられ、本件弁論の全趣旨をも参酌すれば、渡辺善哉や被告らは、甲山林が575番であることを十分知りながら、それが公図上574番に該当することを奇貨として、ことさら右の競売手続を進めたうえ、国家機関である執行吏の手を通して、574番として甲山林の引渡を受けようとくわだてたのではないかとの疑が濃い。(被告本人は、574番の所在ははつきり知らぬ、父や兄にも聞いたことがない旨の供述をするのであるが、被告が昭和32年ごろから父や兄と同居していることは、被告本人の供述から認められるから、その間みずから競落しようとする山林の所在を所有者である兄や債務者である父に確かめたことがないなどということは、到底信じがたい。)

 しかし、右のような疑いの当否はさておくとしても、前記認定の事実に、さきに説示した点、とくに甲乙両山林の実測面積関係を綜合して考察すると、右に認定した大正12年以降にとどまらず、その以前においても、甲山林は575番、乙山林は574番として各地番所有者その他関係者によつて扱われてきたものと推定することが相当であり、そのような扱いが現地を取りちがえたものであるという証拠資料が存しない本件においては、結局、甲山林は575番、乙山林は574番であると判定せざるをえないものであり、これによれば、本件公図における右両地番は、何らかの理由によつて、誤つて逆に記入されたものといわなければならない。

 そうであるとすれば、574番たる乙山林につき競落許可決定が確定し、これに基く引渡執行として、誤つて575番たる甲山林が引渡されたことになるが、執行機関は、第三者の所有不動産につき何ら処分権を有するものではなく、また、引渡執行により当該不動産の地番が定まつたりその実質的帰属が確定されたりするものでもないから、右引渡によつて甲山林の所有権に何らの変動が生ずる筋合ではなく、被告がその所有権を取得しえないことはいうまでもない。

 従つて、その後575番の山林の所有者である滝田定雄及び滝田敏雄からこれを買受けた原告は、有効に甲山林の所有権を取得したものであり、被告との間で甲山林につき所有権の確認を求める原告の請求は理由がある。

 ところで、原告は、さらに乙山林が被告の所有であることの確認をも求めるのであるが、乙山林が被告の所有でなければ甲山林が被告の所有であるということは、単に事実上甲乙両山林の所有者が表裏の関係にあるだけのことであつて、原告としては、甲山林につき自己の所有権の確定を求めれば十分であり、被告が乙山林につき自己の所有権を否定することによつて直接、原告の権利あるいは法律的地位に不安定が生ずるものとはいえないから、被告との間で乙山林につき被告の所有権の確認を求める即時確定の利益を欠くことになり、原告の右請求は理由がない。

 次に、原告の地番訂正申告の請求について判断する。
 本件公図が現在土地台帳附属地図として使用されていることは、すでに述べたとおりであり、また、将来昭和35年法律第14号附則の規定によつて、旧土地台帳法の適用が終了した場合でも、当分の間不動産登記法第17条の地図として使用されるものと考えられるが、土地台帳附属地図は「土地の区劃及び地番を明らかにするものでなければならない」とされ(旧土地台帳法施行細則第二条第二項。不動産登記法第18条第1項も同旨。)、不動産登記法第21条の規定によれば、何人も地図の写の交付あるいは地図の閲覧を請求しうるものであつて、これらの点から考えると、土地台帳附属地図の地番の記載は、地番の所在や形状に関していわゆる公定力を有するものではないけれども、土地所有権の範囲を証明すべき公の資料であつて、その記載のいかんによつて私人間の権利義務について無用の紛争をひき起す虞があるから、地番の記載に誤謬のあるときは、当該地番の所有者は、利害関係人に対し、所轄登記所に対する地番訂正の申告に協力すべきことを請求しうるものと解する。

 そうすると、本件公図においては、すでに判断したように、地図地番の575番と574番とが逆に記入されているものであるから、575番の所有者である原告は、574番の所有名義人である被告に対して、主文第二項記載のような地番訂正の申告を求めることができる。
 以上のとおりであるから、原告の請求中、甲山林所有権の確認と地番訂正申告を求める部分を正当として認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第92条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判官 橋本攻)
以上:6,029文字

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