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協議離婚届には届出時に離婚意思が必要とする最高裁判例紹介

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平成29年 6月15日:初稿
○以下の都道府県別協議離婚の割合の年次比較を見ると各県によって多少の増減はありますが、年間20数万件ある離婚の内協議離婚が85%以上を占めています。


○協議離婚届出に関する民法の規定は以下の通りです。
第763条(協議上の離婚)
 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
第765条(離婚の届出の受理)
 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定(※証人2名)及び第819条第1項の規定(※親権者の決定)その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。


○協議離婚は上記民法の規定の通り、離婚当事者が署名押印して作成した離婚届出書を戸籍係に提出しこれが受理されることによって成立します。当事者の一方が、離婚届出書に署名押印したときは離婚する意思があっても、届出をする時点では心変わりして離婚の意思がなくなっていた場合、他方当事者が離婚届出書を戸籍係に提出し、戸籍上離婚と記載されてもその離婚は無効です。

○しかし、いったん戸籍上離婚が記載されるとこれを覆すためには離婚届出無効確認の訴えを提起して判決を取る必要があります。そこで、離婚意思を欠く届出がなされるのを防止するため戸籍係に対し、離婚届出についての不受理処分をするように申し出る不受理申出制度が戸籍法で定められています。その規定は以下の通りです。
戸籍法27条の2第3項「3 何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であつても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第一項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができる。」

○離婚意思のない離婚届出は無効とであるとの昭和34年8月7日最高裁判決全文を紹介します。「離婚の合意は届出書作成のときに正当に成立したのである。この合意を届出書という形式によつて市町村長に届け出ることによつて離婚は当然に効力を発生するのである。そして、その届出行為を他人に依頼してその届出書をその他人に托した後において、本人が内心、変心してその他人が届出行為を実行する瞬間において、たまたま本人が離婚の意思をなくしていたとしても、それだけの事実で、その届出が当然無効となるものではない。離婚意思の喪失によつて届出による離婚の効力の発生を阻止するためには、届出の受理される以前に、届出による表示行為の効力の発生を妨げるに足りるなんらかの行為がなされなければならないものと解する。」との補足意見も紹介します。

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主  文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理  由
 上告代理人○○○○の上告理由第一点について。

 原審の引用する第一審判決によれば、本件協議離婚届書は判示の如き経緯によつて作成されたこと、右届出書の作成後被上告人は右届出を上告人に委託し、上告人においてこれを保管していたところ、その後右届出書が光市長に提出された昭和27年3月11日の前日たる同月10日被上告人は光市役所の係員甲野太郎に対して上告人から離婚届が出されるかもしれないが、被上告人としては承諾したものではないから受理しないでほしい旨申し出でたことおよび右事実によると被上告人は右届出のあつた前日協議離婚の意思をひるがえしていたことが認められるというのであつて、右認定は当裁判所でも肯認できるところである。

 そうであるとすれば上告人から届出がなされた当時には被上告人に離婚の意思がなかつたものであるところ、協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、本件の如くその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になつた以上、右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない。そして、かならずしも所論の如く右翻意が相手方に表示されること、または、届出委託を解除する等の事実がなかつたからといつて、右協議離婚届出が無効でないとはいいえない。従つて、論旨は採用できない。

 同第二点について。
 原判決挙示の関係証拠中、証人甲野太郎の「離婚届出の前、昭和27年3月10日と思う(届書を受付ける前であることは確実である)が被上告人から戸籍吏員たる同証人に対し上告人との離婚届が出されるかも知れないが被上告人としては承諾したものではないのだから受理しないでほしいとの申入れがあつた」旨の証言(記録44丁裏)によれば、被上告人が協議離婚を翻意した事実を充分に推認することができるから原審に所論の違法はない。
 よつて、民訴401条、95条、89条に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官藤田八郎の補足意見があるほか、全裁判官一致の意見によるものである。
 (裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

藤田裁判官の補足意見
 原判決は「協議離婚は市町村長に対してこれを届出でて始めてその効力を生ずる身分上の要式行為であるから市町村長に対して届出がなされた当時に夫婦ともに協議離婚をしようとする意思を保有することが必要であつて、たとえ、協議離婚の合意が成立して当事者双方署名捺印した届書を作成してもこれを市町村長に提出した当時離婚の意思を有しなくなつた場合はその届書の提出を依頼(委任)された者にその委任を解除したかどうか、又その依頼を受けた者が当事者の意思の変更を知ると否とを問はずこの届出は、本人の意思に基かないものであるから無効と解するのを相当とする」と判示している。

 若しも原判決の判意が、離婚届出書作成当時、すなわち届出書に当事者双方が署名捺印をした当時、当事者に離婚の意思がありその合意が成立したとしても、本件のようにその市長村長に対する届出を他人に托した場合、この届出書がその他人によつて市町村長に提出された当時において、当事者が離婚の意思を有しなくなつた場合は、それだけで、その届出は本人の意思にもとづかないものとして離婚は無効であるとする趣意であるならば甚だ疑問であるとしなければならない。

 離婚の合意は届出書作成のときに正当に成立したのである。この合意を届出書という形式によつて市町村長に届け出ることによつて離婚は当然に効力を発生するのである。そして、その届出行為を他人に依頼してその届出書をその他人に托した後において、本人が内心、変心してその他人が届出行為を実行する瞬間において、たまたま本人が離婚の意思をなくしていたとしても、それだけの事実で、その届出が当然無効となるものではない。離婚意思の喪失によつて届出による離婚の効力の発生を阻止するためには、届出の受理される以前に、届出による表示行為の効力の発生を妨げるに足りるなんらかの行為がなされなければならないものと解する。

 ところが本件においては原判決の認定するところによれば、被上告人(原告)は右届出提出の前日頃市役所に来て係員に対して上告人(被告)から離婚届が出されるかも知れないが被上告人としては承諾したものでないから受理しないでくれと申し入れをしたというのであつて、この申し入れによつて、右届出撤回の意思は当該吏員に対し明瞭に通達されたと解することができるのであるから、これによつて、本件離婚の届出は遂にその効力を発生するに至らなかつたものと解すべきであると思料する。

以上:3,107文字

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