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遺言と異なる内容の遺産分割協議を理由とする遺言執行者の解任は疑問

○相続人全員で、被相続人亡父が残した公正証書遺言内容と異なる遺産分割協議をして、遺言で指定された遺言執行者を解任できますかとの質問を受けました。民法第1013条(遺言の執行の妨害行為の禁止)には「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」、同第1019条(遺言執行者の解任)には「遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。」との規定からは、質問に対する回答はいずれも出来ませんとなりそうです。

○しかし、相続人の一人に対し遺産の一部を相続させる旨の遺言がある場合において、遺言執行者の同意を得ることなく、相続人らが遺言による指定と異なる遺産分割協議を成立させ各持分の登記を経由したところ、遺言執行者が相続登記の無効を主張した事案につき、遺産分割方法の指定がされ、遺言執行者が指定されている場合には、相続人はその遺言の執行を妨げる行為をすることができず、これに反する遺産分割行為は無効であるが、本件の遺産分割協議は、相続させる旨の遺言により直接に取得した取得分を相続人間で贈与ないし交換的に譲渡する有効な私法上の合意であるとして、遺言執行者からの請求を棄却した平成13年6月28日東京地裁判決(判タ1086号279頁)があります。

○これについて、私は、「信託銀行を遺言執行者にした遺言執行を解除できるか?3」に「(遺言執行者である)信託銀行に対し、相続人全員一致で遺産分割及び遺産の分配手続は全て相続人が共同で行いますので遺言執行業務はして頂かずとも結構ですと通知しても、信託銀行はこれに異議を唱えることは出来ないはずです。」と記載していました。

○前記質問の内、相続人全員での遺言に反する内容の遺産分割協議についてはOKですが、これを理由とする遺言執行者の解任は、「その他正当な理由」になるかどうかを直接判断した判例は現時点では見つかっていません。平成13年6月28日東京地裁判決(判タ1086号279頁)全文を更に復習して検討します。この事案では、事前に相続人らは、東京家庭裁判所に対し、遺言執行者解任の申し立てをしたものの、その却下が確定しているとの記述があり、原則は、遺言執行者の解任はできないようです。

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主   文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

1 被告廣川春子は、補助参加人廣川夏子に対し、別紙物件目録1記載の土地持分10000分の246について、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続をせよ。
2 被告廣川二郎は、補助参加人廣川夏子に対し、別紙物件目録1記載の土地持分10000分の455について、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続をせよ。
3 被告廣川三郎は、補助参加人廣川夏子に対し、別紙物件目録1記載の土地持分10000分の455について、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続をせよ。
4 被告広洋不動産株式会社は、補助参加人廣川夏子に対し、別紙物件目録1記載の土地持分10000分の122について、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続をせよ。

第2 事案の概要
 本件は、遺言執行者である原告の同意なしに、相続人である被告ら及び補助参加人(以下「相続人ら」という。)がした遺産分割協議に基づく、補助参加人が取得した持分を除く相続登記は被相続人の遺言に反し無効であるとして,遺言執行者である原告が、被告らに真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続を求めている事件である。

1 争いのない事実
(1)廣川一郎(以下「被相続人」という。)は、別紙物件目録1記載の土地の5分の1の持分(以下「本件土地持分」という。)等の所有者かつ登記名義人であったが、平成8年5月2日死亡し、相続が開始した。同人の相続人は、妻である被告廣川春子(以下「被告春子」という。)、子である同廣川二郎(以下「被告二郎」という。)、同廣川三郎(以下「被告三郎」という。)及び補助参加人廣川夏子(以下「夏子」という。)の4名である。

(2)被相続人は、平成2年8月8日、次の内容の自筆証書遺言(以下「本件遺言」という。)をした。
ア 各相続人の相続分を次の通り指定する。
 被告春子  4分の1
 被告二郎 12分の1
 被告三郎 12分の1
 夏子   12分の7

イ 遺産の分割方法の指定を遺言執行者に委託する。但し、夏子に対しては、相続分12分の7に満つるまで、以下の遺産を次の順序にしたがって相続させる。
〔1〕別紙物件目録3記載の建物(但し、この建物については、平成2年12月12日に被相続人から夏子に生前贈与されている。)
〔2〕被告広洋不動産株式会社(以下「被告広洋不動産」という。)の株式全部
〔3〕本件土地持分及び別紙物件目録2記載の土地の持分5分の1

ウ 遺言執行者として原告を指定する。

(3)原告は、被相続人の死亡後、遺言執行者への就任を相続人らに通知した。これに対し、相続人らは、東京家庭裁判所に対し、遺言執行者解任の申し立てをしたものの、その却下が確定している(以下「家事審判」という。)。

(4)相続人らは、原告の同意なしに独自に遺産分割協議(以下「本件遺産分割協議」という。)を成立させた上、平成9年12月8日、相続を原因として本件土地持分について、被告春子10000分の246、被告二郎10000分の516、被告三郎10000分の516及び夏子10000分の722とする持分移転登記(以下「本件相続登記」という。)をなした。そして、平成10年3月12日には、被告広洋不動産に対し、売買を原因として、被告二郎及び被告三郎各々持分10000分の61、夏子持分10000分の267の持分移転登記をした。

2 争点
(1)訴訟要件の有無(2)被告らの主張の可否
(3)本件遺言の効力
(4)本件遺産分割協議の効力
(5)原告の登記請求の可否

3 原告の主張
(1)原告適格

 夏子への本件土地持分移転登記がなされる前に、他の相続人が持分移転登記を経由したため、遺言の実現が妨害される状態が出現した場合、原告は、遺言執行の一環として、その妨害を排除するため、夏子への真正な登記名義の回復を原因とする本件土地持分移転登記をする原告適格がある。この場合には、夏子が自ら本件土地持分に基づき同様の登記手続請求をすることができるとしても、このことが遺言執行者の職務権限に影響を及ぼすものではない。

(2)被告らの主張の可否
 本件訴訟における被告らの主張は、家事審判において主張してきたことの蒸し返しに過ぎないから、このような主張をすることは信義則に反し許されない。

(3)本件遺言の効力
 相続させる趣旨の遺言は、遺産の分割方法を定めたものであり、他の共同相続人もその遺言に拘束されるから、これと異なる遺産分割協議はできない。

(4)本件遺産分割協議の効力
 遺言執行者である原告の承諾を得ずになされた本件遺産分割協議及びこれに基づいてなされた本件土地持分についての相続登記は、遺産分割方法の指定を定める本件遺言に示された夏子の取得分である12分の7に満たないものであり、したがって本件土地持分は、遺言により当然に夏子に帰属しており、各持分移転登記の内、相続を原因とする夏子への持分移転登記及び夏子が被告広洋不動産に対してなした持分移転登記を除く部分は民法1013条に違反し絶対的に無効である。

(5)原告の登記請求の可否
ア 登記請求の利益
 本件遺産分割協議が、相続によって夏子が取得した本件土地持分を他の相続人に贈与・交換する趣旨であれば、本件相続登記は中間省略登記ということになろうが、このような登記手続は、実質的に遺言者の意思に反する行為であるから許されない。

イ 権利濫用
 原告の登記請求は、遺言者の意思を実現するためのものであり、権利濫用には当たらない。

4 被告らの主張
(1)訴えの利益

 相続人らの間でなされた本件遺産分割協議は、遺贈の性質を有する本件遺言に優先する以上、遺言執行の余地はなくなったものであり、原告の訴えは、訴えの利益を欠き、訴訟要件を欠く不適法なものである。
 仮に、本件遺産分割協議成立によって、さかのぼって相続開始から本件遺産分割協議のとおりに相続がなされたものとみることができないとしても、遺産分割の協議と共に、夏子が本件遺言により観念的にいったん取得していた相続財産に対する権利につき、交換ないし贈与が行われたことにより他の相続人に帰属するに至ったと解すべきであり、本件遺産分割協議は何ら遺言執行を妨げるものではなく、訴えの利益を欠くというべきである。

(2)被告らの主張の可否
 家事審判は、遺言執行者と相続人の遺言執行に関する見解に対立があれば、基本的には訴訟事項であるとしている。また、家事審判は、そもそも遺言執行者解任の理由の有無について判断したに過ぎないから、蒸し返しにはあたらない。

(3)本件遺言の効力
 本件遺言は、その一部において具体的な相続財産の帰属を定めているのであって、その範囲においては遺贈であると解される。

(4)本件遺産分割協議の効力
 本件遺産分割協議は有効に成立しており、本件遺産分割協議に抵触する限度で本件遺言の効力は失われるので原告の本訴請求に理由がない。
 仮に、本件遺産分割協議成立によって、さかのぼって相続開始から本件遺産分割協議のとおりに相続がなされたものとみることができないとしても、遺産分割の協議と共に、夏子が本件遺言により観念的にいったん取得していた相続財産に対する権利につき、交換ないし贈与が行われたことにより他の相続人に帰属するに至ったと解すべきであり、本件遺産分割協議は何ら遺言執行を妨げるものではない。


(5)原告の登記請求の可否
ア 登記請求の利益
 私的自治の原則により、遺言と異なる内容の権利移転を定めることは可能であり、現在の実体的権利関係を反映する登記を抹消して、いったん遺言の内容どおりの登記を実現しなければならない理由はない。

イ 権利濫用
 本件遺産分割協議が本件遺言に優先しないとしても、相続人全員の希望により、本件遺産分割協議が成立しているのであって、本件請求は夏子の意思に反するものであり、相続人全員にとっても何らの利益もない。本件のように、相続人全員の意思及び利益に反することが明らかである場合にまで、遺言執行者が遺言の執行を強要することは権利濫用にあたり許されない。

第3 争点に対する判断
1 訴訟要件の有無

 相続させる趣旨の本件遺言は、即時の権利移転の効力を有するが、そのことから当然に遺言の執行行為が不要になるものではなく、遺言執行者は当該遺産について不実の登記が経由されるなど、遺言の実現が妨害される事態が生じたときには、その妨害を排除するため、遺言の執行として必要な登記手続きを求めることができる(最高裁平成10年(オ)第1499号・1500号同11年12月16日第一小法廷判決・民集53巻九号1989頁参照)から、原告には、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記をする原告適格があり、また、遺産分割の効力如何によっては、原告の登記請求を認める余地もあるので、一般に訴えの利益がないとはいえないというべきである。

2 被告らの主張の可否
 審判書(甲9)によれば、家事審判は、本件遺産分割協議によって、直ちに、遺言が無効になったり、遺言執行の余地がなくなることはないという遺言執行における一般論を前提に、解任の正当事由があるとはいえないと結論付け、遺言執行者と相続人の現実の遺言執行に関する見解の対立については、むしろ訴訟事項であるとしてその解決を本件訴訟に委ねたものと理解できるから、被告らの主張は、必ずしも蒸し返しにはならないというべきである。

3 本件遺言の効力
 特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割方法の指定の性質を有するものであり、これにより何らの行為を要することなく被相続人の死亡時に直ちに相続により承継されるものと解される(最高裁平成元年(オ)第174号同3年4月19日第二小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。そして、本件遺言の記載をみるに、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情が存するとは認めがたいから、本件遺言による当該遺産の承継は、遺産分割協議を経るまでもなく生じると解される。したがって、本件土地持分は、遺言により当然夏子に帰属していることになる。

4 本件遺産分割協議の効力
 本件遺言は、前記のとおり、遺産分割方法の指定と解されるが、このように被相続人が、遺言により特定の財産をあげて共同相続人間の遺産の分配を具体的に指示するという方法でもって相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定をし、あわせて原告を遺言執行者に指定した場合には、遺言者は、共同相続人間において遺言者が定めた遺産分割の方法に反する遺産分割協議をすることを許さず、遺言執行者に遺言者が指定した遺産分割の方法に従った遺産分割の実行を委ねたものと解するのが相当である。そして、民法1013条によれば、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることが出来ず、これに違反するような遺産分割行為は無効と解すべきである。

 もっとも、本件遺産分割協議は、分割方法の指定のない財産についての遺産分割の協議と共に、本件土地持分については、夏子が本件遺言によって取得した取得分を相続人間で贈与ないし交換的に譲渡する旨の合意をしたものと解するのが相当であり、その合意は、遺言執行者の権利義務を定め、相続人による遺言執行を妨げる行為を禁じた民法の規定に何ら抵触するものではなく、私的自治の原則に照らして有効な合意と認めることができる。

5 原告の登記請求の可否
 前記のとおり、本件土地持分に関する相続人らによる合意が有効であるとすると、少なくとも現状の登記は現在の実体的権利関係に合致していることになる。そして、本件の場合、いったん夏子が取得した持分を自己の意思で処分すること自体は、夏子による本件土地持分の取得を強く希望する旨の遺言を残した遺言者としても容認せざるを得ないところ、遺言書に現れた遺言者の意思として、そのような実体関係のみならず、対抗要件面においても正確な権利移転の経過を登記簿に反映することを厳格に希望していたとまでは認めがたい。また、原告自身も、本件において抹消登記請求ではなく真正な登記名義の回復を原因とする夏子への直接の移転登記請求を求めているように必ずしも過去の権利移転の経過を正確に反映することを求めていない。そうすると、遺言者の意思を受けた遺言執行者にとって、現状の権利関係に合致する現在の登記の抹消を求める法律上の利益があるとは言い難い。
 したがって、原告の登記請求は認められない。


第4 結論
 以上によれば、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する

(裁判官 藤原俊二)

別紙 物件目録〈省略〉

以上:6,322文字

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