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共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介5

○「共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介4」の続きで、原告持分20分の19、被告持分20分の1の土地について、土地・建物の売買・仲介等を目的とする会社である原告が、民法258条に基づき共有物分割を求め、全面価格賠償による分割を認めた令和6年12月12日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○判決は、本件各土地の共有物分割の方法として、全面的価格賠償の方法によることを求めているところ、本件各事情によれば、本件各土地について、現物を分割する方法によって分割することは適当ではなく、むしろ、本件各土地の性質及び形状、共有関係の発生原因、原告と被告の持分割合、本件各土地の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法に関する原告の意見等を踏まえて、本件各土地を原告に取得させるのが相当であると認められるとしました。

○被告の持分割合(20分の1)を踏まえた使用収益の可能性及び流動性の程度という観点も踏まえると、本件訴訟において、本件各土地の固定資産評価額を基準とすることも相当であると認められ、また、本件各土地上に原告が所有するに至った建物が存在することを考慮すると、建付減価として2割を減じることは相当として、価格賠償額を585万円としました。

*********************************************

主   文
1 別紙訴状写し物件目録記載の各土地を次のとおり分割する。
(1)別紙訴状写し物件目録記載の各土地を原告の所有とする。
(2)原告は、被告に対し、後記(3)の持分移転登記手続と引換えに585万1083円を支払え。
(3)被告は、原告に対し、前項の金員の支払と引換えに、別紙訴状写し物件目録記載の各土地について、この判決が確定した日の共有物分割を原因とする持分20分の1の共有持分全部の移転登記手続をせよ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 別紙訴状写し「第1 請求の趣旨」記載のとおりである。

第2 請求原因及び共有物分割に関する原告の意見
 別紙訴状写し「第2 請求の原因」及び別紙原告の令和6年11月1日付け第1準備書面に記載のとおりである。

第3 当裁判所の判断
1 請求の原因について

 証拠(甲1~7)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因事実(別紙訴状写し「第2 請求の原因」1項、2項及び3項(1)の各事実)が認められる。

2 共有物の分割方法について
(1)上記1の認定事実のほか、証拠(甲2~9)及び弁論の全趣旨によれば、別紙訴状写し物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)の性質、形状、共有関係の発生原因、利用状況等について、別紙訴状写し「第2 請求の原因」の3項(3)ア~エの各事実が認められる。

(2)原告は、本件各土地の共有物分割の方法として、全面的価格賠償の方法によることを求めているところ、上記1及び2(1)の各事情によれば、本件各土地について、現物を分割する方法によって分割することは適当ではなく、むしろ、本件各土地の性質及び形状、共有関係の発生原因、原告と被告の持分割合、本件各土地の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法に関する原告の意見等を踏まえて、本件各土地を原告に取得させるのが相当であると認められる。

(3)
ア 全面的価格賠償の方法による共有物分割を命じるためには、共有物を特定の者に取得させるのが相当であると認められることに加えて、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が必要となる。

イ 原告は、被告が取得する対価(賠償金)の額について、〔1〕本件各土地の令和6年度の固定資産評価額(別紙訴状写し物件目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)につき7609万0500円、同目録記載2の土地(以下「本件土地2」という。)につき7018万6580円)に被告持分割合(20分の1)を乗じた金額(本件土地1:380万4525円、本件土地2:350万9329円)である合計731万3854円を基準額とし、〔2〕本件各土地上に原告所有建物が存在することから、借地権減価率を2割としてこれを減価し(減価後の額は585万1084円)、〔3〕更に流動性の低い持分であることによる3割の減価をした金額が、適正な価格であるとの意見を述べている。また、原告が今後、所在不明の被告に代わって納税を行うものであることを斟酌すべきであり、価格賠償金は550万円が相当である旨の意見も述べている。

ウ 上記原告の意見〔1〕については、被告の持分割合(20分の1)を踏まえた使用収益の可能性及び流動性の程度という観点も踏まえると、本件訴訟において、本件各土地の固定資産評価額を基準とすることも相当であると認められる。

エ また、上記原告の意見〔2〕についても、本件各土地上に原告が所有するに至った建物が存在することを考慮すると、建付減価として2割を減じることは相当であると認められる。

オ 他方で、上記原告の意見〔3〕については、共有物分割の結果として、原告が本件各土地の単独所有者となることに加えて、上記ウのとおり、被告の持分割合を踏まえた使用収益の可能性及び流動性について既に斟酌していることも踏まえると、更に流動性を理由とする減価をすることは相当ではない。
 また、原告は、原告が今後所在不明の被告に代わって納税を行うことを斟酌すべきであるとの意見も述べているが、共有物分割における賠償金額を定めるに当たり、共有者間における当該不動産に係る固定資産税の負担状況を斟酌することは困難であり、採用できない。

(4)以上によれば、本件各土地について、全面的価格賠償の方法によって原告の単独所有とする場合における被告共有持分の対価(賠償金)の額は、585万1083円とすることが相当である。
(計算式)
731万3854円(〔1〕)×(1-0.2)(〔2〕)=約585万1083円

(5)原告は、不動産の売買等を目的とする事業者であり、本判決の確定後、価格賠償金を支払う意思及び用意があると認められること(弁論の全趣旨)からすると、原告には被告に支払うべき賠償金の負担能力があると認めることが相当である。

(6)そして、原告の被告に対する本件各土地の被告持分に係る持分移転登記手続請求権と、被告の原告に対する賠償金支払請求権とは、実質的に対価関係にあることからすると、引換給付の判決をするのが相当である。

第4 結論
 よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判官 平井直也

別紙訴状抜粋
第1 請求の趣旨

1 別紙物件目録1及び2記載の各不動産を次のとおり分割する
(1)同目録1及び2記載の各不動産を,いずれも原告の所有とする
(2)原告は,被告に対し,204万7880円を支払え
2 被告は,原告に対し,同目録1及び2記載の各不動産について,この判決確定の日の共有物分割を原因とする持分20分の1の持分全部移転登記手続をせよ
3 訴訟費用は被告の負担とする
との判決を求める。

第2 請求の原因
1 当事者

 原告は,土地・建物の売買・仲介等を目的とする株式会社である(甲第1号証)。

2 共有関係の成立
(1)原告による別紙物件目録1(以下,「本件土地1」という。)及び2(以下,「本件土地2」といい,本件土地1と本件土地2の両土地を指す場合には「本件各土地」という。)記載の土地に関する共有持分の取得
ア 訴外cの死亡に伴う相続の発生
 本件各土地は,訴外cが単独所有していたところ,同人が平成7年8月3日に死亡したため,同日付相続を原因として,訴外d持分10分の2,訴外e持分10分の1,訴外f持分10分の1,訴外g持分10分の6につき,所有権移転登記がなされている(甲第2号証及び甲第3号証)。

イ 原告による本件各土地の共有持分の取得
 訴外gは,平成26年1月17日に死亡し,同日付相続を原因として,その持分全部につき,訴外hへの所有権移転登記がなされている。
 訴外hは,令和6年3月7日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分10分の6を譲渡した。
 訴外fは,令和6年4月26日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分10分の1を譲渡した。
 訴外dは,令和6年5月20日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分10分の2を譲渡した。
 訴外eは,令和4年11月13日に死亡し,同日付で訴外i及び被告が本件各土地の共有持分20分の1をそれぞれ相続し,その後,訴外iは,令和6年8月7日,原告に対し,同人が所有する本件各土地の共有持分20分の1を譲渡した。

ウ 小括
 以上の結果,原告は,本件各土地のうち20分の19の持分を有するに至った(甲第2号証及び甲第3号証)。

(2)被告の持分
 被告は,本件各土地のうち,20分の1の持分を有している(甲第2号証及び甲第3号証)。

3 共有物分割の方法
(1)原告が求める共有物分割の方法
 原告は,被告と本件各土地の共有物分割に関する協議を行おうとしたが,被告は所在不明であり(詳細は後述(3)イ(ウ)の通り。),協議を行うことができなかった。
 これは民法258条1項柱書の「協議をすることができないとき」に該当する。
 そこで,原告は,本件各土地の共有物分割請求の訴を提起し,その方法として,全面的価格賠償による分割を請求する次第である。

以上:3,904文字

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