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離婚の法律

平成10年10月 1日(木):初稿 平成17年 2月 6日(日):更新
■「法律」とは国家権力での実現を保証した取り決め

 離婚についての法律の話をする前に、ここで法律の意義について少々ご説明します。法律の話は一般に余り面白くありませんが、我慢してお付き合い下さい。
 現代民主主義のもとで法律とは、秩序ある国家・社会を建設するため選挙で選ばれた国民の代表が議会で制定する取り決めです。この法律による取り決めは、最終的には国家が権力をもってその実現を保証してくれます。
 その意味を具体的に考えてみましょう。先ず民事の事例で、民法587条にはお金などを貸した場合の返還請求の権利が規定されています。例えばAがBに100万円貸すとBに対し100万円返還請求の権利を持ちます。Bが返済しない場合、AはBに対して「100万円を支払え」との訴えを裁判所に出します。判決が出てもBが返済しない場合、Aは判決に基づきBの財産に対して強制執行申立が出来ます。申立があると裁判所(国家)は、Bの財産を差押し、Bから返済がない限り有無を言わせず無理やり売却し、その売却代金から100万円をAに返し、Aの100万円返還請求の権利を実現してくれます。但し、Bに財産が全くない場合、強制執行をしても回収は不可能です。
 刑事の例では刑法199条で、「人を殺した者は死刑又は無期若しくは3年以上の懲役に処す」と規定されています。AがBを殺した場合、検察官がAの処罰を求めて裁判所に起訴します。裁判所が、刑法199条という「法律」の定めによって「被告人を死刑に処す」との判決を出すと、Aは、国家によって生命を奪われます。
 このように民事でも刑事でも「法律」による取り決めは、最終的には国家権力によって実現が保証されます。先の具体例での判決によるXの離婚手続は法律による離婚請求権の実現です。


■法律上の離婚事由

 ご存知の様に結婚も、離婚も双方の意思が合致して役所の戸籍係に届出書を提出する事により成立します。問題は一方が離婚したいがもう一方が同意せず離婚の合意が成立しない場合です。この場合、最終的には裁判により離婚判決をとれば、判決書を添付して一方的に離婚届出をする事が出来ます。
 離婚に応じない相手に対して裁判上離婚判決が認められる理由としては民法第770条に5要件が記載されています。以下簡単に説明します。
先ず
第1は「不貞行為」です。これは婚姻外の性関係で、流行言葉では「不倫」「失楽園」、昔風に言えば「浮気」です。
第2は、「悪意の遺棄」です。これは、サラ金債務を抱えて妻子をおいて行方不明になる場合等が典型です。
第3は、「3年以上生死不明」です。これは文字どおり生死不明となった場合です。
第4は、「回復の見込みのない強度の精神病」です。これは、不治の精神病です。
第5は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」です。これは暴力、酒乱、浪費等文字どおり婚姻を継続し難いあらゆる理由です。
 離婚理由は以上の通りですが、裁判官は、第1ないし4の離婚理由が存在しても、必ず離婚を認める必要はありません。ここは、次に述べる離婚の考え方が有責主義か破綻主義か裁判官の価値観によって結論が大きく異なります。同じ事案でも甲裁判官なら離婚を認めるのに、乙裁判官は認めないという場合も多々あります。
 先の裁判具体例でXは次に述べる純粋有責主義者の裁判官に当った場合、離婚は認められなかったかも知れません。

■離婚についての有責主義と破綻主義

 離婚を認めるべきかどうかについて考え方は、大きく分けて有責主義と破綻主義の2つに別れます。
 有責主義とは、たとえ婚姻関係が完全に破綻しても、不貞等責任がない限り離婚は認めないと言う考えで、破綻主義は、婚姻関係が破綻した以上は、責任云々は言わないで離婚を認めるべきという考えです。有責主義は夫婦、親としての責任を厳格に考える古風律儀な考えで、破綻主義は現代風柔軟現実的な考えとも言えます。
 世間に良くある例は、妻以外の女性と事実上の夫婦関係となり、別居中の戸籍上の妻に対して離婚の裁判を出し、妻が意地になって離婚に応じない場合です。いわゆる有責配偶者からの離婚請求で、有責主義では妻に責任がない以上離婚は認めません。しかし最近、やや破綻主義の考え方を取入れ・別居期間が長いこと、・幼少など世話を要する子供がいないこと、・離婚しても妻が精神的、経済的に苛酷な状況にならないこと等要件が整えば有責配偶者からの離婚も認められるようになりました。

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