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ある聾唖者の窃盗事件結論

平成13年12月 1日(土):初稿
■さて、Kさんの仕事場をどうするか。
 B、C、Dさん達があちこちに当たり、ようやくある肢体障害の方々の共同作業所を見つけてきました。ここでは賃金は安いけれども、聴覚・視覚だけで肢体障害のないKさんの参加は、お互い補い合いながら仕事もできると言うことで歓迎され、現住所からバスで通える距離で、Bさん達と離れないで済むことからKさんもやる気になり、やっと仕事場も決まりました。

■指導監督助言者の証人尋問
 これは、B、C、Dさん何れもが進んで証人となって頂き、これからは、Kさんが、絶対に犯罪を犯さないように、これまで以上に世話をし面倒を見て、指導監督に努めることを裁判官の面前で約束してくれました。
 そして私は、最終弁論(弁護側の主張)で次のように訴えました。
「40代半ばまで窃盗の繰り返しで、刑務所と社会の往復の生活であった被告人が、この10年間犯行に至らなかった最大の原因は、周囲の人々の献身的愛情であった。それが、仕事を失い生活に困窮し、今回の犯行に至った。しかし、周囲の人々の愛情は継続しており、且つ今回の犯行を契機に仕事の目処もたった。被告人の犯行原因は除去された。
 然るに実刑を科したのでは、元の木阿弥で、再度社会と刑務所の往復生活に戻す可能性があります。何卒、今回に限り執行猶予の判決を賜りたく御願い申し上げます。」

■判決結果
 40代半ばまでは、前科20犯近い常習犯で必ず実刑となっていたKさんでしたが、Bさん達の献身的な協力で、執行猶予の判決を頂き、釈放されて私に挨拶に来たとき抱きついて感謝を示してくれました。
 正に弁護士冥利に尽きる事件でした。
 人間は、他人との関係で生きるもので、一人では生きられないと言うことを、民事刑事の紛争を扱って実感しますが、次回は、夫婦親子問題を取り上げようかと思っております。
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