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第5章新実用新案法2 井上順子

平成17年 8月 6日(土):初稿
4 権利行使における制約
(1)警告の段階(実用新案権侵害訴訟の提起前)実29の2

(2)実用新案権侵害訴訟の提起後
(a)無効の抗弁(平成16年改正により新設)(実30→特許104の3)
権利無効が侵害訴訟における抗弁化された。
上記新設により,無効審判請求による訴訟中止権制度はなくなった。
ただし,濫用的無効抗弁を防止する見地から,審理を不当に遅延させる目的による抗弁は却下(実30→特許104の3)。
(b)権利行使者の責任(実29条の3)
権利者自身に登録の有効性について自己負担を課し,行使した権利が無効になった場合には原則として権利者自身に相手方に対する賠償責任を負わせる。過失がなければ免責(ex.評価書の範囲内であったのに権利無効とされた)。

5 明細書・図面の補正及び訂正
(1)出願中の補正(実2条の2)
出願当初の明細書または図面に記載された範囲内でのみ補正が認められる。

(2)登録後の訂正(実14条の2)
平成16年改正前は請求項の削除しか認めていなかったため,多数の請求項を列記して訂正に備えるという無駄が横行。そこで,改正により訂正の許容範囲を,a請求範囲の減縮,b誤記訂正,c明瞭でない記載の釈明 と拡大。

6 無効審判(実37条)
権利の有効性(考案の新規性,進歩性,先願性などの実体要件の具備)を判断。

7 存続期間
改正前「6年」 → 平成16年改正「10年」 長くなり利用価値が高まった。

第3節 新実用新案法に基づく実用新案侵害訴訟の留意点
1 訴訟提起前

(1)評価書はすみやかに入手しておく。
但し,将来の特許出願への変更の得失の見極め必要(特許46の2第1項2号参照)

(2)警告書(内容証明郵便)と同時に普通の書留郵便で図面や評価書を送る場合,後で「評価書は封筒に入ってなかった」と言われないようにする工夫が必要。

2 訴訟提起後
(1)無効の抗弁について(既述)
(2)権利行使者の責任が重くなったこと(既述)
(3)特許法,意匠法,商標法では侵害者の過失の立証責任転換があるが,無審査登録制度を採用した実用新案制度ではそれがない。
(4)評価書を提示しないまま侵害訴訟を提起した場合
提示は訴訟要件ではないが,不提示では請求認容されない。係属中に提示したらどうなるかについて規定はないが,訴訟経済を考えると充足するいうべき

第4節 新実用新案と特許との関係
両者は先後願が判断される(ダブルパテント排除原則)ことは従前通り。

また,これまでは同日併願があると協議によっていずれを登録するかを決めていたが,平成5年改正により実用新案が無審査となり協議の機会がなくなったため,実用新案は特許と併願禁止(実7条7項,特許39条4項)となった。
しかし,これでは,早期権利化可能な実用新案で権利行使後→特許登録完了→実用新案権を放棄し特許に一本化,という方策がとれない。
すると,実用新案登録出願がためらわれてしまう。
そこで,平成16年改正で実用新案権設定登録後も特許出願できる途を認めた(特許46条の2)。

~実用新案に基づく特許出願について
・この場合,実用新案権は要放棄。
・実用新案登録出願時に遡及
・①出願人又は権利者から技術評価請求があったとき,②それ以外のものから評価請求があってその旨の通知を受けてから30日を経過したときは,特許出願への変更不可(評価書の先行技術調査目的利用防止)

以上:1,386文字

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